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【発明の名称】 タイツ
【発明者】 【氏名】澤井 由美子

【氏名】木下 直之

【氏名】中川 正平

【要約】 【課題】本発明は、従来のタイツの有する審美性や機能性を損うことなく、ムレ感やべとつき感等の着用快適性に優れたタイツを提供せんとするものである。

【解決手段】本発明のタイツは、スパンデックスを芯糸とし、その周囲にポリアミド繊維を巻き付けてなるカバリング弾性糸で編成されたタイツにおいて、少なくともレッグ部分が、下記T(保温特性)とH(透湿特性)のタイツ編地特性を満足することを特徴とするものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スパンデックスを芯糸とし、その周囲にポリアミド繊維を巻き付けてなるカバリング弾性糸で編成されたタイツにおいて、少なくともレッグ部分が、下記T(保温特性)とH(透湿特性)のタイツ編地特性を満足することを特徴とするタイツ。
T≧1.0H≧65【請求項2】 前記ポリアミド繊維が、2−ピロリドンおよび/または3−ピロリドンの含有量が0.1重量%以下であるポリビニルピロリドンを3〜15重量%含有するポリアミドからなる繊維であることを特徴とする請求項1記載のタイツ。
【請求項3】 前記ポリアミド繊維が、単糸繊度2.0デシテックス以下であり、かつ、捲縮性を有するものであることを特徴とする請求項1または2記載のタイツ。
【請求項4】 前記ポリアミド繊維が、長繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイツ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、秋冬期における着用快適性に優れたタイツに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、女性の生活環境の変化や、ファッション思考の高まりは、タイツの要求特性にも変革をもたらしている。すなわち、タイツの位置づけが、“防寒”から“ファッション”へシフトしてきている。
【0003】また、“デニール”がいわゆるタイツの生地厚さの目安として認知されるようになり、季節に応じて履き分ける消費者が多くなり、タイツのデニールバリエーションも多様になってきている。
【0004】しかしながら、タイツの“デニール”が大きくなるほど、生地厚さが増すため、保温性は良くなるが、ムレ感が生じやすくなる傾向であり、特に冬季は暖房が完備され、外と中の環境が著しく異なるため、着用快適性に劣る問題点を抱える。
【0005】また、タイツの編成糸としては、耐摩耗性、ソフト性、吸水性及び染色性が他の合成繊維よりも優れていることからポリアミド繊維が好適に用いられている。しかし、ポリアミド繊維は綿等の天然繊維に比べると吸湿性が劣っているため、満足する着用快適性能には至っていない。
【0006】かかる問題を改善するために、吸湿性の高い木綿や羊毛などの天然繊維やアクリル系繊維を混繊して、ムレ感を解消する方法が提案されている(特開平10−325005号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような天然繊維やアクリル繊維を混繊する技術では、着用により生じた水蒸気を吸湿させて、衣服外に放出させ、ムレ感を解消させる効果はあるが、触感が劣ったり、染色性が異なるため、発色性に欠けるなどの問題があって、審美性が強く要求されるタイツには不満足なものであった。
【0008】本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、従来のタイツの有する審美性や機能性を損うことなく、ムレ感やべとつき感等を改善した着用快適性に優れたタイツを提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のタイツは、スパンデックスを芯糸とし、その周囲にポリアミド繊維を巻き付けてなるカバリング弾性糸で編成されたタイツにおいて、少なくともレッグ部分が、下記T(保温特性)とH(透湿特性)のタイツ編地特性を満足することを特徴とするものである。
【0010】T≧1.0H≧65【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、前記課題、つまり審美性や機能性を損うことなく、ムレ感やべとつき感等を改善した着用快適性に優れたタイツについて、鋭意検討し、特定なカバリング弾性糸を用いて、かつ、T(保温特性)とH(透湿特性)のタイツ編地特性を特定なものにしてみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0012】本発明のタイツは、少なくともレッグ部分の保温、透湿特性のタイツ編地特性が、T(保温特性)≧1.0、H(透湿特性)≧65であることが重要である。
【0013】すなわち、Tが1.0以上の場合、得られるタイツを着用したときの保温特性を優れたものとすることができ、Hが65以上の場合、得られるタイツを着用したときのムレ感を解消することができるものである。すなわち、T≧1.0で、かつ、H≧65とすることにより、保温性に優れ、ムレ感を改善させ、住環境の変化に対応した、着用快適性に極めて優れたタイツにすることができる。好ましくは、T≧1.5で、かつ、H≧70であるのが、さらに優れた着用快適性を与えるものを提供することができる。
【0014】本発明に用いるポリアミド繊維は、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維等のポリアミド繊維であればよいが、好ましくは2−ピロリドンおよび/または3−ピロリドンの含有量が0.1重量%以下であるポリビニルピロリドンを3〜15重量%含有するポリアミド繊維からなるものであることが、着用快適性の上から良い。
【0015】すなわち、かかるポリビニルピロリドンを含有することにより、ムレ感やべとつき感を改善することができ、着用快適性に極めて優れたタイツを提供することができる。また、タイツの審美性にとって重要な発色性にも優れ、多様なカラーバリエーション化を可能とし、ファッション性に富んだタイツを提供することができる。
【0016】かかるポリアミド繊維において、該ポリビニルピロリドンの含有量は、好ましくは3〜15重量%、さらに好ましくは4〜8重量%とするのが、着用快適性をさらに優れたものとすると共に、安定して製糸することができるという観点からよい。
【0017】また、かかるポリビニルピロリドン中に含まれる2−ピロリドンおよび/または3−ピロリドンの含有量は、好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.03重量%以下である。このピロリドン含有量がタイツ用に適した色調良好な繊維とする観点から、好ましく採用される。
【0018】また、本発明で用いるポリビニルピロリドンは、重合度の尺度であるK値が、好ましくは20〜70、さらに好ましくは20〜60であるものが、ポリアミドへの練り混みやチップ化を容易にする観点から好ましく使用される。
【0019】ここでいうK値は、ポリビニルピロリドンを濃度1%の水溶液とし、その相対粘度を測定し、Fikentsherの式により求めることができる。
【0020】
logZ=C{75k2/(1+1.5kC)+k}
但し、Z:濃度Cの水溶液の相対粘度、k:K値×10-3 、C:水溶液濃度(W/V%)である。
【0021】さらに、本発明に用いるポリアミド長繊維は、優れた吸湿特性、良好な風合いや触感を、長期にわたり保持する観点から、ポリビニルピロリドンなどの水溶性成分の溶出率が、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下であるのがよい。ここでいう溶出率は、本発明のポリアミド長繊維を沸騰中で30分間処理した際の重量変化率から求めた水溶性成分溶出率の値である。
【0022】本発明で用いるポリビニルピロリドンは、極めて水溶性が高く、ポリマ中に含有させた後でも、ポリマ表面へブリードアウトし易い性質を持っている。また、副生成物のピロリドンも、きわめて水溶性が高く、同様にポリマ表面へブリードアウトし易い。従って、ポリビニルピロリドン含有による高級湿性ポリアミド繊維では、その中に含有するポリビニルピロリドンやピロリドンの溶出を抑えることが、吸湿特性の保持、及びタイツの風合いの保持のために必要である。溶出率5%以下、特に0重量%であることが、風合いの観点から望ましい。
【0023】このように水溶性成分の溶出率を抑制するためには、ポリビニルピロリドンとポリアミドとの分子鎖の絡み合いを強くする手法が望ましい。例えば、ポリビニルピロリドンをエクストルーダにより、ポリアミド中に練り込み、マスターポリマーとする方法が、ナイロンとポリビニルピロリドン分子鎖の絡み合いを強くすることができて好ましい。
【0024】その練り込みは、低酸素濃度での練り込み法により行うことが、紡糸時の糸切れを低減させるために好ましい。その低酸素濃度の水準は、例えば、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下であるのがよく、そのためには、窒素などの不活性気体をホッパーやシリンダーに流して、酸素濃度を低減させる方法をとるのが好ましい。マスターポリマー中にポリビニルピロリドンを練り込む場合のポリビニルピロリドンの含有量は10〜50重量%であるのが好ましい。
【0025】このようにして得たマスターポリマーチップは、実質的にポリビニルピロリドン無添加のポリアミドチップとチップブレンドして、ポリビニルピロリドン含有量を調整した後に、溶融紡糸され常法により繊維化される。
【0026】本発明で用いるポリアミド繊維は、好ましくは単糸繊度2.0デシテックス以下、さらに好ましくは単糸繊度0.5〜1.5デシテックスであるものが、触感に優れたタイツを得るという観点から使用される。すなわち、単糸繊度が0.5デシテックス未満の場合、触感に優れたタイツは得られるが、タイツ製造の際に毛羽、生折れ等が発生しやすくなり、生産性が悪くなる傾向がある。
【0027】本発明で用いるポリアミド繊維は溶融紡糸法により製糸される。その製糸方法は溶融紡糸、冷却、給油の後に、一旦巻き取り延伸を施す通常の方法以外に、紡糸速度1000m/分以上、たとえば1000〜3000m/分で引き取り、一旦巻き取ることなく、延伸して巻き取る直接紡糸延伸方法によってもよいが、3000m/分以上、たとえば3000〜5000m/分の高速で紡糸し、延伸することなく巻き取る高速紡糸法によって製糸してもよい。
【0028】好ましくは、高速紡糸法により、POYを製造し、その後、フリクション仮撚加工、スピンドル仮撚加工などの高次加工したポリアミド長繊維がよい。この場合には、触感、保温性に優れたタイツを得ることができる。
【0029】
【実施例】以下におけるストッキング製品のレッグ部の評価は次の方法によった。
<保温性(T)>30℃に保温された人体足型の上に温度計を置き、タイツを履かせる前の温度(T1)とタイツを着用させた10分後の温度(T2)としたときに、T=T2−T1 で表す。(測定環境条件 15℃×60%RH)
<透湿性(H)>ビーカー内湿度が30℃75%になるよう硫酸水溶液を調整(温水でも可)し、その上に2枚重ねしたタイツをのせ、そのタイツ表面の湿度を測定し、その湿度をHで表す。(測定環境条件 20℃×60%RH)
<触感>タイツ製品を人体足型に履かせ、検査者(5人)の触感によってソフト感を相対評価したものであり、その結果は、◎:極めて良好、○:良好、△: やや不良、×:不良、の4段階基準でもって示す。
発色性:タイツ製品(黒)を、検査者(5人)によって、発色性を相対評価したものであり、その結果は、◎:極めて良好、○:良好、△: やや不良、×:不良、の4段階基準でもって示す。
<実施例で使用するポリアミド繊維の製造>ポリビニルピロリドンとして、イソプロピルアルコールを溶媒として、通常の方法で合成されたK値が30のポリビニルピロリドン(BASF社製“ルビコール”K30スペシャルグレード)を用いた。このポリビニルピロリドン中のピロリドン含有量は0.02重量%であった。このポリビニルピロリドンをエクストルーダを用いて、98%硫酸相対粘度2.72のナイロン6に練り混み、ガット状に押し出し、冷却後にペレタイズすることで、ポリビニルピロリドン濃度20重量%のマスターポリマチップとした。この際、ホッパー、シリンダーに窒素を流すことで、酸素濃度8%以下とした。
【0030】回転真空乾燥機中で、ナイロン6チップと上記マスターポリマチップとを所定の割合でブレンドしながら通常の方法で乾燥した。乾燥して得られたブレンドチップにおけるナイロン6に対するポリビニルピロリドンの含有量は5重量%であった。
実施例1〜3ポリビニルピロリドンブレンドチップを270℃で溶融し、引き取り速度3000m/分で紡糸した。
【0031】得られたPOY原糸を、延伸倍率1.2倍、熱板温度165℃でフリクション加工し、33デシテックス26フィラメント、56デシテックス48フィラメント、78デシテックス68フィラメントのナイロン6仮撚加工糸条を得た。
【0032】得られた糸条をカバリング用糸に用い、19.8デシテックスのポリウレタン弾性糸“ライクラ”(登録商標、東レデュポン(株)製)を芯糸とし、ドラフト2.7倍に設定し、カバリング撚数をそれぞれ、1200、1000、800t/mでシングルカバリングして、シングルカバリング弾性糸(SCY)を得た。得られたカバリング弾性糸を、針本数360本の4口給糸の靴下編機で、レッグ部をプレーン編成して、得られた生地を酸性染料で染色し、仕上げ及び型板セットして、得られたタイツ製品の特性評価結果を表1に示した。
実施例4ポリビニルピロリドンブレンドチップを270℃で溶融し、伸度が40〜45%になるように延伸した後、150℃で熱処理し、引き取り速度4000m/分で紡糸し、56デシテックス48フィラメントのナイロン6糸条を得た。
【0033】得られた糸条をカバリング用糸に用い、19.8デシテックスのポリウレタン弾性糸“ライクラ”(登録商標、東レデュポン(株)製)を芯糸とし、ドラフト2.7倍に設定し、カバリング撚数1000t/mでシングルカバリングして、シングルカバリング弾性糸(SCY)を得た。得られたカバリング弾性糸を、針本数360本の4口給糸の靴下編機で、レッグ部をプレーン編成して、得られた生地を酸性染料で染色し、仕上げ及び型板セットして、得られたタイツ製品の特性評価結果を併せて表1に示した。
比較例1〜398%硫酸相対粘度2.8のナイロン6ペレットを270℃で溶融し、引き取り速度3000m/分で紡糸した。得られたPOY原糸を、延伸倍率1.2倍、熱板温度180℃でフリクション加工し、33デシテックス26フィラメント、56デシテックス48フィラメント、78デシテックス68フィラメントのナイロン6仮撚加工糸条を得た。
【0034】得られた糸条をカバリング用糸に用い、19.8デシテックスのポリウレタン弾性糸“ライクラ”(登録商標、東レデュポン(株)製)を芯糸とし、ドラフト2.7倍に設定し、カバリング撚数をそれぞれ、1200、1000,800t/mでシングルカバリングして、シングルカバリング弾性糸(SCY)を得た。得られたカバリング弾性糸を、針本数360本の4口給糸の靴下編機で、レッグ部をプレーン編成して、得られた生地を酸性染料で染色し、仕上げ及び型板セットして、得られたタイツ製品の特性評価結果を併せて表1に示した。
比較例4ポリビニルピロリドンブレンドチップを270℃で溶融し、引き取り速度3000m/分で紡糸した。
【0035】得られたPOY原糸を、延伸倍率1.2倍、熱板温度165℃でフリクション加工し、11デシテックス7フィラメントのナイロン6仮撚加工糸条を得た。
【0036】得られた糸条をカバリング用糸に用い、19.8デシテックスのポリウレタン弾性糸“ライクラ”(登録商標、東レデュポン(株)製)を芯糸とし、ドラフト2.7倍に設定し、カバリング撚数1900t/mでシングルカバリングして、シングルカバリング弾性糸(SCY)を得た。得られたカバリング弾性糸を、針本数360本の4口給糸の靴下編機で、レッグ部をプレーン編成して、得られた生地を酸性染料で染色し、仕上げ及び型板セットして、得られたタイツ製品の特性評価結果を併せて表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】表1から明らかなように、実施例1〜5のタイツは、保温性、ムレ感解消、発色性、触感いずれにも優れていた。これに対して、比較例1〜3のタイツは、ムレ感解消、発色性に劣っていた。また、比較例4のタイツは、保温性に劣っていた。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、着用により生じた水蒸気を吸湿させて、衣服外に放出させ、ムレ感を解消させる効果がある上に、触感、発色性に優れ、もって審美性に優れたタイツを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成13年1月9日(2001.1.9)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−212802(P2002−212802A)
【公開日】 平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願番号】 特願2001−1184(P2001−1184)