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【発明の名称】 冷菓及びその製造方法
【発明者】 【氏名】小倉 香奈恵

【要約】 【課題】オーバーラン特性(起泡性)を有しつつも、食感が損なわれることなく、保型性に優れ、安定な乳化作用を有する冷菓を提供する。

【解決手段】冷菓中に、構成脂肪酸残基のうちの20重量%以上がパルミチン酸残基であるグリセリンジ脂肪酸エステルを含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】構成脂肪酸残基のうちの20重量%以上がパルミチン酸残基であるグリセリンジ脂肪酸エステルを含有することを特徴とする冷菓。
【請求項2】グリセリンジ脂肪酸エステルの含有量が0.2〜1重量%である請求項1記載の冷菓。
【請求項3】構成脂肪酸残基のうちの20重量%以上がパルミチン酸残基であるグリセリンジ脂肪酸エステルを含有することを特徴とする冷菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、風味や食感の改良された冷菓に関する。特に、本発明は、オーバーラン特性(起泡性)を有しつつも、食感が損なわれることなく、保型性に優れ、安定な乳化作用を有する冷菓に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、アイスクリーム等の冷菓の製造において、フリージングの段階で良好なオーバーラン特性(起泡性)を有し、また、得られたアイスリーム類は良好な保型性(溶けて形崩れしにくい)を有するための方法が種々検討されている。
【0003】オーバーランとは、フリージングにより、冷却しながら攪拌しミックスに空気を混合させる際、ミックスに対する空気の含有率(%)をいう。オーバーラン値が高いほど、容積に占めるミックスの割合が減少し、その結果、同じ容積のアイスクリーム類でも原料コストが低く抑えられるので、高いオーバーラン値を有する冷菓の製造方法について、種々検討されている。
【0004】その例として、モノグリセリドを冷菓に含有させる方法、例えば、コハク酸モノグリセライドを冷菓に含有させること(特開昭61−185156公報)が記載されている。確かに、モノグリセリドを使用すると、保型性は良好になるが、ヨウ素価の高いモノグリセリドを使用すると、粉末状でなくオイル状のものとなるため、取り扱いにくくなったり、また、モノグリセリド特有の臭いがあるものもあり、問題となっていた。
【0005】それに加えて、オーバーラン値が高い程、冷菓そのもののボディー感や食べ応えなどが損なわれるような傾向があり、高いオーバーラン値を維持しつつ、食感を変化させないような冷菓の製造方法が望まれていた。
【0006】そこで、オーバーラン値が高く、食感も維持されたアイスクリーム類として、ジグリセリドを使用したアイスクリーム類について、例えば、特開平7−313066号公報には、水、食用油脂、タンパク質及び糖類を含むアイスクリーム類であって、該油脂中に構成脂肪酸残基のうちの20重量%以上がラウリン酸残基であるグリセリンジ脂肪酸エステルが5〜50重量%含有されているアイスクリーム類が記載されており、該アイスクリーム類は、食感が改良され、オーバーラン特性及び保型性に優れる効果を有するとされている。しかし、上記アイスクリーム類では、グリセリンジ脂肪酸エステルの添加量をかなり多くしなければならず、例えば、特開平7−313066号公報の実施例1表2によると、ラクトアイス中、グリセリンジ脂肪酸エステルの含有量が1.6重量%となっている。冷菓には、乳化剤、安定剤といった種々の食品添加剤が含まれるが、こうした添加剤の使用は、風味、食感の低下を招きやすいので、なるべく使用量を少なくすることが好ましい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、オーバーラン特性を有しつつも、食感が損なわれることなく、また、保型性や、乳化特性に優れた冷菓を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、冷菓に含有させる乳化剤に特に注目して鋭意研究を重ねていたところ、構成脂肪酸残基のうちの20重量%以上がパルミチン酸残基であるグリセリンジ脂肪酸エステルを含有することにより、少ない添加量で、オーバーラン特性を有しつつも、食感が損なわれることなく、保型性や乳化特性が向上した冷菓ができることを見つけた。すなわち本発明は、特定のグリセリンジ脂肪酸エステルを含むことを特徴とする冷菓に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、構成脂肪酸残基のうちの20重量%以上がパルミチン酸残基であるグリセリンジ脂肪酸エステルを含有することを特徴とする冷菓である。
【0010】本発明でいうグリセリンジ脂肪酸エステルは、構成脂肪酸残基のうちの20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、最も好ましくは、90重量%以上がパルミチン酸残基であることを特徴とする。これらのグリセリンジ脂肪酸エステルを使用することにより、高いオーバーラン値を得ることができ、オーバーラン特性に優れた冷菓が得られる。また、本発明により得られた冷菓は、高いオーバーラン値を有しながらも、食感が損なわれることなく、保型性、乳化特性に優れた冷菓を得ることができる。パルミチン酸残基が20重量%より少ないと、本発明に係る充分な効果が得られない。
【0011】更に、ラウリン酸残基以外の構成脂肪酸残基としては、炭素数8〜22の脂肪酸残基を挙げることができ、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等があげられる。
【0012】また、本発明のグリセリンジ脂肪酸エステルは、モノエステル純度80%以上であり、ヨウ素価が2以下であることが好ましい。
【0013】更に、グリセリンジ脂肪酸エステルの構成脂肪酸残基中には、飽和脂肪酸残基が50重量%以上、更に好ましくは65重量%以上、特に90重量%以上を占めていることが好ましい。
【0014】なお、本発明で用いられるグリセリンジ脂肪酸エステルは、商業的に入手可能である。当該グリセリンジ脂肪酸エステルの冷菓への配合量は、対象となる冷菓の種類及び内容成分に応じて適宜選択することができる。本発明の良好な効果を得るためには、通常冷菓に対して、0.2〜1重量%、好ましくは、0.3〜0.5重量%の範囲で用いるとよい。
【0015】本発明の冷菓は、前述のグリセリンジ脂肪酸エステルが含まれている以外は、通常の冷菓と同様の構成をとることができる。すなわち、前述のグリセリンジ脂肪酸エステル以外に、本発明の効果を奏する限り、水、油脂、タンパク質、糖質、無脂乳固形分、香料、色素、乳化剤、安定剤、酸化防止剤等より選択された添加材料を、所定の割合で混合させ溶融したものが用いることができる。
【0016】油脂としては、植物油脂、バター、乳脂肪分、あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂等の中から一種又は二種以上を併用することができる。植物油脂の例としては、ヤシ油、パーム油、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油及びパーム核油等を挙げることができる。上記のうちでは、通常パーム油、ヤシ油などのパルミチン酸含有率の、比較的高い油脂が好ましく用いられる。これらの油脂を使用すると、前記グリセリンジ脂肪酸エステルとの相溶性がよく、得られる冷菓の口溶け感などの食感、風味が更に良好となるからである。
【0017】タンパク質としては、通常、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、全脂加糖練乳、脱脂加糖練乳或いは生クリームなどの水溶性の乳由来のタンパク質や、卵由来のタンパク質が好適に用いられる。
【0018】糖質としては、例えば、ショ糖、異性化糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水飴、粉末水飴、還元麦芽水飴、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D−キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類;サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセサルファムK、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等を挙げることができる。
【0019】乳化剤として、例えば、クエン酸あるいは乳酸等の有機酸モノグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、レシチン等などを、本発明の効果を損なわない程度において、併用することもできる。
【0020】安定剤としては、例えば、ローカストビーンガム、トラガントガム、タマリンドガム、タラガム、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、グアガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム等のガム質;カラギナン、寒天、ゼラチン、ペクチン、カードラン、グルコマンナン、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)等のゲル化剤;CMC、微結晶セルロース、大豆多糖類等を挙げることができる。
【0021】また、香料や色素は公知のアイスクリーム生地に添加されるものが選択されて用いられる。
【0022】本発明の冷菓は、前述のグリセリンジ脂肪酸エステルを添加する他は、常法に従い製造することができる。例えば、前述のグリセリンジ脂肪酸エステル、水、油脂、糖質、タンパク質、更に必要により乳化剤、安定剤、香料、色素などの原料を混合、予備乳化し、次いで均質化(乳化)後、殺菌し、その後1〜6℃にて冷却してエージングを行い、更に得られた乳化物を−6℃〜−4℃にてフリージングすることによって製造することができるが、この方法に限定されない。
【0023】本発明の冷菓は、目的とする製品により、種々の構成をとることができ、例えば、アイスクリーム類(アイスクリーム、ラクトアイス、アイスミルク);ソフトクリーム;アイスケーキ;シャーベット;アイスキャンデー、みぞれ、かき氷等のウォーターアイス(氷菓);フローズンヨーグルト、シェイク等があげられる。その中でも、比較的油脂成分を多く含む冷菓、例えば、アイスクリーム類、中でも、アイスクリームやアイスミルクが、本発明の効果をより発揮する。なお、冷菓以外にも、例えばホイップクリームのような、オーバーラン特性に優れていると良好な効果を発揮するようなものにも適用できる。
【0024】本発明により、得られた冷菓は、製造時に、高いオーバーラン値が得られることにより、原料コストが安く抑えられ、また、高いオーバーラン値でも、ボディー感や食べ応え等の食感は維持され、しかも、口溶けも良い冷菓となった。また、保型性、乳化特性に優れていることがわかった。
【0025】
【実施例】以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。 また、記載中「*」は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製を示す。
【0026】実施例1,比較例1:アイスクリーム(アイスミルク)の調製香料を除く表1の原料を85℃まで加温し、溶解させてパドルミキサーを使用して10分間混合予備乳化を行った。その後、高圧ホモゲナイザー(三和機械(株)製)を用いて150kg/cm2 の条件で乳化を行った。得られた乳化物を85℃まで加温し、殺菌した後、5℃まで冷却し、そのまま保温して一昼夜エージングを行った。その後、得られたアイスクリームミックスに香料を添加し、アイスクリームフリーザー(三菱電機(株)製)に仕込んだ。そして冷却開始後、1分毎に品温及びオーバーランを測定し、最大オーバーランに達するまで攪拌を続けることにより、本発明に係るアイスクリーム(アイスミルク、実施例1)を調製した。
【0027】また、比較例として、グリセリンジ脂肪酸エステルに代えて、モノグリセリドを使用した以外は実施例1と同様にして、比較例1のアイスクリーム(アイスミルク)を調製し、1.オーバーラン、2.保型性、3.食感(口溶け)、4.乳化力について比較した。
【0028】
【表1】

【0029】1.オーバーラン実施例1,比較例1のアイスクリームについて、経時的にオーバーラン値(%)を測定した。結果を表2に記す。
【0030】
【表2】

【0031】表2の結果から、実施例1は比較例1と比べ、オーバーラン値が高く、優れたオーバーラン特性を示した。
【0032】2.保型性実施例1,比較例1のアイスクリームについて、経時的に融解率(%)を測定した。結果を表3に記す。
【0033】
【表3】

【0034】表3の結果より、実施例1と比較例1は、同程度の保型性を有することがわかった。よって、本発明の冷菓は、モノグリセリド使用の冷菓と同程度の高い保型性を有することがわかった。
【0035】3.食感男女各6名のパネラーによる評価で判断した。実施例1のアイスクリームは、比較例1と比較して、ボディー感や食べ応えがあり、なおかつ口溶けがよいという評価であった。
【0036】4.乳化力ホモジナイズ後、プレート殺菌し、その後エージングしたものについて、粒子径を測りデータを取った。比較例1が10〜20μmの粒子経を持つのに対して、実施例1は8〜15μmの粒子経を持つものがピークにシフトしている結果を得た。粒子径が小さいほど乳化効力が優れているが、この結果より、実施例1の方が、比較例1よりも乳化力が優れていることがわかった。
【0037】実施例2:オレンジシャーベットの調製香料、色素を除く下記処方例の原料を85℃まで加温し、溶解させてパドルミキサーを使用して10分間混合予備乳化を行った。その後、高圧ホモゲナイザー(三和機械(株)製)を用いて150kg/cm2 の条件で乳化を行った。得られた乳化物を85℃まで加温し、殺菌した後、5℃まで冷却し、そのまま保温して一昼夜エージングを行った。その後、得られたシャーベットミックスに香料を添加し、これを、アイスクリームフリーザー(三菱電機(株)製)に仕込んだ。そして冷却開始後、1分毎に品温及びオーバーランを測定し、最大オーバーランに達するまで攪拌し、その後急速凍結(−35℃)することにより、本発明に係るオレンジシャーベットを調製した。
【0038】
処方例砂糖 15粉末水飴 6脱脂粉乳 2ヤシ油 15倍濃縮オレンジ果汁 450%クエン酸 0.2安定剤(サンベストSHM-3*) 0.5ハ゜ルミチン酸残基95%のク゛リセリンシ゛脂肪酸エステル 0.1(ポエムDP−95RF(理研ビタミン(株)製))香料(サンアロマオレンジBF-65946*) 0.15色素(カロチンベースNO.9400-S) 0.05 水にて合計 100とする【0039】得られたオレンジシャーベットは、ボディー感や食べ応えがあり、なおかつ口溶けも良いおいしいシャーベットとなった。
【0040】実施例3:アイスクリーム(ストロベリーラクトアイス)の調製香料、色素を除く下記処方例の原料を85℃まで加温し、溶解させてパドルミキサーを使用して10分間混合予備乳化を行った。その後、高圧ホモゲナイザー(三和機械(株)製)を用いて150kg/cm2 の条件で乳化を行った。得られた乳化物を85℃まで加温し、殺菌した後、5℃まで冷却し、そのまま保温して一昼夜エージングを行った。その後、得られたアイスクリームミックスに香料、色素を添加し、最大オーバーランに達するまで攪拌し、その後急速凍結(−35℃)することにより、本発明に係るアイスクリーム(ストロベリーラクトアイス)を調製した。
【0041】
処方例アマルティシロップ 15(東和化成工業(株)製)
PO−40 10(東和化成工業(株)製)
スクラロース 0.0058脱脂粉乳 7ヤシ油 5安定剤(サンベストYOS-1*) 0.4ハ゜ルミチン酸残基95%のク゛リセリンシ゛脂肪酸エステル 0.4(ポエムDP−95RF(理研ビタミン(株)製))クエン酸(結晶) 0.1香料(ストロベリーフレーバーNO.70040*) 0.07色素(SRレッドK-3) 0.05 水にて合計 100とする【0042】得られたストロベリーラクトアイスは、ボディー感や食べ応えがあり、なおかつ口溶けも良いおいしいアイスクリームとなった。
【出願人】 【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
【出願日】 平成12年6月28日(2000.6.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−10738(P2002−10738A)
【公開日】 平成14年1月15日(2002.1.15)
【出願番号】 特願2000−195114(P2000−195114)