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【発明の名称】 生蓮根の鮮度保持方法
【発明者】 【氏名】菅原 忠雄

【氏名】及川 和男

【要約】 【課題】生蓮根の商品価値を長期にわたり保持することが可能な実用的な生蓮根の鮮度保持方法を提供する。

【解決手段】水洗浄し、亜塩素酸塩と有機酸類・アルコールとからなる除菌剤で前処理した生蓮根を、水洗浄後、アルカリ性化合物と吸収物質からなる鮮度保持剤とともにガスバリヤー性袋に収納し、密封して、0〜10℃の冷蔵温度で保存する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】生蓮根を洗浄し、塩素系化合物を含有する除菌剤による除菌処理をし、さらに洗浄した後、アルカリ性化合物と吸着物質を含有する鮮度保持剤とともにガスバリヤー性容器に収納し、0〜10℃にて保存することを特徴とする生蓮根の鮮度保持方法。
【請求項2】除菌剤が、亜塩素酸化合物、エチルアルコール及び有機酸類化合物からなる組成物である請求項1記載の生蓮根の鮮度保持方法。
【請求項3】鮮度保持剤に含有されるアルカリ性化合物が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物または弱酸塩である請求項1記載の生蓮根の鮮度保持方法。
【請求項4】鮮度保持剤に含有される吸着物質が、活性炭である請求項1記載の生蓮根の鮮度保持方法。
【請求項5】ガスバリヤー性容器の酸素透過度が、30ml/m2・24hr・atm以下(20℃)、水蒸気透過度が2g/m2・24hr・atm以下(20℃)である請求項1記載の生蓮根の鮮度保持方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生蓮根を長期間にわたり鮮度保持が可能な実用的な鮮度維持方法に関する。
【0002】
【従来の技術】蓮根は、通常、露地栽培で夏場7月から冬場3月にかけ収穫されるが、最近では、ハウス栽培で、5月からの収穫も可能となりほぼ通年の収穫、出荷が可能になってきた。収穫された蓮根は、通常、泥付のまま又は水切りして、段ボールに無包装のまま入れて商品として保管され、出荷される。
【0003】生蓮根は、澱粉・糖類と共に鉄分、ビタミンCの含有量が多く、収穫後、空気中の酸素によって酸化劣化して褐色、黒変し易く、短期間で商品価値が低下していく。例えば、冬場では、5日程度、夏場では、1〜2日程度しか日持ちしないため、収穫後、出来るだけ早く出荷、消費するか、一時的に冷蔵で保管する以外、有効な鮮度劣化防止策は無かった。
【0004】そこで、従来より、生蓮根の鮮度をより長期間保持する種々な方法が提案されてきた。例えば、(1)特開昭63−196227号公報では、蓮根などの根菜類を酸素透過度30ml/m2・24hr・atm以下のガスバリヤー性包装袋に真空包装後、100〜120℃で加熱処理後、室温(15〜30℃)またはチルド(0〜15℃)で保存する方法、(2)特開平9−271320号公報では、生蓮根に有機酸類および/またはカラシ抽出物0.001〜0.05wt%、および/またはエチルアルコール0.05〜5vol%を含む水溶液を加え、静菌処理する方法、(3)特開平1−132334号公報では、大谷石の微粉末を低密度ポリエチレンフィルム層中及び表面に分散含有させたガス吸収・透過性フイルム製袋に水洗、水切りした生蓮根を収納し、1〜5℃の温度範囲及び相対湿度50〜60%の空気雰囲気中に保存する方法などが提案されている。
【0005】しかし、(1)の方法では、加熱処理によって風味、歯切れ感の食感が喪失する、(2)の方法では、カラシ抽出物及びエチルアルコールによる残留臭気及び風味喪失が心配される、(3)の方法では、生蓮根を密封収納した袋を取り巻く空気雰囲気の相対湿度は50〜60%の範囲に保持されることが必要であるが、多種類の商品が共存し得る流通過程において空気雰囲気の湿度の管理は難しく、いずれも実用的な方法ではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、生蓮根の鮮度保持方法において、上記の従来技術の課題を解決し、長期間にわたり風味、食感が保持され、しかも有害な添加物を用いず、残留臭気の心配も無く、外観観察が良好な鮮度保持方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記の課題を解決する方法を検討した結果、収穫後の生蓮根は、通常、付着泥土を洗浄して土壌腐敗菌を洗浄しているが、より完全に除菌・静菌処理なくしては、長期間にわたり安心して鮮度保持するといった目的を達成することは出来ないことが分かった。更に、生蓮根は、室温でガスバリヤー性容器内に収納、密封、減圧すると、袋内の酸素が除去され、酸素濃度は急速に低下し、低酸素分圧による劣化は防止できる状態になるが、低酸素状態になると異常呼吸作用により炭酸ガスその他の劣化促進物質が発生する。この現象は、常温では通常、密封28時間後程で最高に達し、それを境に急激に生蓮根の品質劣化が起こり、1〜2日で部分黒変などの外観劣化、発酵臭の発生が顕著に観察されることが分かった。また、発生炭酸ガスにより密封容器に内圧がかかり、時として容器破裂が起こり、保存物品の大気暴露に至ることも発生する。これら異常呼吸による発生ガス類の適切な除去による濃度制御なくしては、長期間にわたり安定して鮮度保持するといった目的を達成することは出来ないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】即ち、本発明は、生蓮根を洗浄し、塩素系化合物からなる除菌剤による除菌処理をし、さらに洗浄した後、アルカリ性化合物と吸着物質を含有する鮮度保持剤とともにガスバリヤー性容器に収納し、0〜10℃にて保存することを特徴とする生蓮根の鮮度保持方法に関する。
【0009】本発明においては、収穫後、水洗、水切りし、続いて除菌剤で処理した生蓮根を、アルカリ性化合物と吸着物質とを含有する鮮度保持剤とともに、ガスバリヤー性容器に収納し、冷蔵保存することによって、2週間以上の長期間にわたる鮮度保持が可能になる。
【0010】
【発明の実施の形態】圃場から掘り取り収穫された蓮根は、付着している泥土を水洗により除去後、水切りを行なう。水切りは、表面に微量の水分が残存する程度まで行なうのが好ましく、表面が乾燥するまで長時間行なってはいけない。水切り終了後、外観形状、色調、表面傷の外観検査により、深い傷のない外観が良好な蓮根を選別することが好ましい。水洗、水切り、選別された生蓮根は、次に、除菌剤による除菌・静菌処理を行なう。
【0011】除菌処理は、除菌剤を含む液に生蓮根を浸漬することにより行われる。除菌剤を含む液を生蓮根に均一に塗布又は散布しても良い。本発明で用いる除菌剤は、塩素系化合物を必須成分として含有する。塩素系化合物としては、食品添加物に認可されている亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウムが好適に用いられるが、特に、塩素臭がなく変色防止効果が高い亜塩素酸ナトリウムがより好適に用いられる。食品衛生法に従い、亜塩素酸ナトリウム濃度は、0.05重量%以下で用いられ、最終的には検出されないように完全に分解洗浄される。生蓮根を塩素系化合物を含む水溶液に接触させることにより、除菌・静菌処理が行なわれる。
【0012】また、好ましい除菌剤は、塩素系化合物、エチルアルコール及び有機酸類化合物、特に、亜塩素酸化合物、エチルアルコール及び有機酸類化合物からなる。この場合、生蓮根に、塩素系化合物、エチルアルコール及び有機酸類化合物のそれぞれの成分を含む混合水溶液を用いて接触させることにより、除菌・静菌処理が行なわれる。あるいは、塩素系化合物、エチルアルコール及び有機酸類化合物のそれぞれの成分を個別に含む水溶液に順次、接触させてもよい。
【0013】本発明で用いられる有機酸類化合物としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸などの有機酸類及びその塩があげられるが、クエン酸が好適に用いられる。更に、これら有機酸類又はその塩を2種以上組み合わせて用いても良い。例えば、クエン酸三ナトリウムとD,L−リンゴ酸もしくはD,L−酒石酸などとの混合物が挙げられる。有機酸類化合物は、通常、単独濃度にして、15重量%以下、望ましくは10重量%以下の濃度の水溶液にして用いられる。
【0014】除菌処理された生蓮根は、水で洗浄する。洗浄に用いる水には、好ましくは、滅菌した水を使用する。洗浄した後の生蓮根は、好ましくは水切り後、鮮度維持剤と共にガスバリヤー性容器に収納される。
【0015】本発明の鮮度維持剤は、アルカリ性化合物及び吸着物質を含有する。鮮度維持剤に含有されるアルカリ性化合物とは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物または弱酸塩などの塩基性無機物である。この中で水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが使用しやすさ、安全性(食品添加物指定)の点でより好ましい。
【0016】本発明の鮮度維持剤に含有される吸着物質には、例えば、シリカ・アルミナ系吸着剤、炭素系吸着剤があげられる。シリカ・アルミナ系吸着剤は、シリカおよび/または、アルミナ成分を含む吸着剤のことである。その例として、パーライト、ゼオライト、シリカアルミナゲル、シリカゲル、アルミナゲル、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム等があげられる。炭素系吸着剤は、植物由来物を炭化、活性化したもの、石炭を活性化したものなどであり、その代表例として、活性炭があげられる。
【0017】本発明の鮮度維持剤は、粉末もしくは粒状のアルカリ性化合物及と吸着物質とを混合したものを含有した組成物である。組成物の混合比は、生蓮根の発生する炭酸ガス、過熟、老化を助長する低級アルキン類もしくはアルケン類のガス、又はアルデヒド類などの老化促進物質を吸着するために必要な量、通常、アルカリ性化合物が5〜95重量%、吸着剤が95〜5重量%にするが、好ましくは、アルカリ性化合物が50〜95重量%、吸着剤が5〜50重量%にする。アルカリ性化合物と吸着剤以外の成分を添加しても良い。
【0018】本発明の鮮度維持剤は、通常、通気性包装材料で包装して、小袋状にして用いられる。アルカリ性化合物と吸着剤をあらかじめ混合後、一つの小袋に包装しても良いし、アルカリ性化合物と吸着剤を一つの小袋に同時又は逐次充填、包装して同封状態にしても良い。アルカリ性化合物と吸着剤以外の成分を添加しても良い。また、アルカリ性化合物を包装した小袋と吸着剤を包装した別の小袋を同じガスバリヤー性容器内にて併用しても良い。鮮度維持剤成分を包装する通気性包装材料としては、紙、樹脂製有孔フィルム、不織布、微多孔膜などを組み合わせ、積層し、必要に応じて開孔して用いられる。生蓮根は、高水分活性な食品であるため、耐水性を有する通気性包装材料がより好ましい。
【0019】本発明のガスバリヤー性容器は、袋状、箱状、バレル状など種々の形状が可能であるが、通常、袋状の容器が用いられる。ガスバリヤー性容器の材質には、アルミ箔も使用できるが、価格、成形などの使い勝手の点から樹脂製フイルムが好ましい。フイルム構成は、ガスバリヤ性フイルム基材層と接着シーラント層との2層以上の積層フイルムからなる。ガスバリヤ性フイルム基材層としては、できるだけガスバリヤー性の高いものを用いることが重要である。ガスバリヤー性容器として、20℃における酸素透過度が、30ml/m2・24hr・atm以下、好ましくは10ml/m2・24hr・atm以下、水蒸気透過度が3g/m2・24hr・atm以下、好ましくは2g/m2・24hr・atm以下が好ましい。このような条件を満たすガスバヤー性容器として、具体的には、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン(KON)/ポリエチレン(PE)、KON/ナイロン(NY)/PE、ナイロン(NY)もしくはポリエステル(PET)/延伸エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)/線型低密度ポリエチレン(LLDPE)、延伸ポリプロピレン(OPP)/ナイロンMXD6/低密度ポリエチレン(LDPE)などが挙げられる。
【0020】ガスバリヤー性容器に、洗浄、水切り、除菌剤処理した生蓮根をアルカリ性化合物と吸着物質からなる鮮度維持剤と共に収納し、ヒートシール等により密閉する。密閉時には、減圧することが好ましい。密閉容器内部は高湿度状態が好ましい。密閉後、0〜10℃、好ましくは1〜5℃以下の冷蔵条件で保存する。これによって、2週間以上の長期間にわたり生蓮根の鮮度が保持される。本発明になる鮮度保持方法は、露地栽培及びハウス栽培で生産された取り立ての蓮根を生のままで長期間保存する際に、好適に用いることができる。
【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
(除菌剤)実施例で用いた除菌剤は、以下の方法で調製した。食品用99.5容量%エチルアルコール(日本エタノール(株)製)38gクエン酸三ナトリウム(協和発酵(株)製)6g、D,L−リンゴ酸(協和発酵(株)製)5g、水51gからなる100gのエタノール製剤を調製した。このエタノール製剤5gを0.05重量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液995gに加え1kgの除菌剤を調製した。
(KON/PE積層フイルムの物理的性質)実施例で用いたKON/PE積層フイルムの物理的性質は、以下の方法によって測定した。
(1)水蒸気透過度:g/m2・24hrJIS−Z−0208に従って測定した。
(2)酸素透過度:ml/m2・24hr20℃、60%RHの条件で酸素透過度測定装置OXY-TRAN100型(モダンコントロール社製)にて測定した。
【0022】実施例1収穫した生蓮根(千葉県産)1kgを水道水で充分に水洗して付着した泥土を完全に除き、籠に入れて約30分水切りした後、深い傷、表面変色のない外観観察が良好な生蓮根を選び取った。選別した生蓮根は、節毎に10cm程の長さに切断した後、上記の除菌剤に1グループ約160gの切断生蓮根を3グループ同時に、室温20℃で30分浸漬した。浸漬終了後、煮沸滅菌した水で沃化カリウムデンプン溶液試薬により残存塩素が検出されなくなるまで洗浄し、約30分水切りした。これを15cm×220cmのポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン(KON)/ポリエチレン(PE)/線形低密度ポリエチレン(LLDPE)シーラント=15/20/60μm(酸素透過度7ml/m2・24hr(20℃);水蒸気透過度0.57g/m2・24hr(20℃))に収納し、同時に消石灰1.3g及び活性炭0.3gを良く混合した組成物を、微細貫通孔を有するポリエステル/紙/微細孔を有するポリオレフィンの三層の通気性材料からなる小袋に充填した鮮度維持剤1個を入れ、減圧下にて密封し、試験体を得た。このように準備した3個の試験体を、温度10℃、湿度30%RHの冷蔵庫で15日間保存し、経日的にガスクロマトグラフィーで袋内の湿度、酸素濃度、炭酸ガス濃度を分析するとともに、生蓮根の表面色調観察、袋内ガスを1mlサンプリングして臭気検査を行なった。その結果を表1に示した。
【0023】表1から分かるように、15日経過に至るまで外観色調検査、臭気検査ともに良好であった。袋内湿度は、90%RH前後であった。また、袋内の酸素濃度は、1日経過後から無酸素状態になり、しかも、発生炭酸ガスも7%以下の低濃度に制御され、望ましい保存条件が保持され、2週間の保存期間後も、充分に商品価値があることが確認された。2週間保存した生蓮根には、除菌剤の臭気の残留は全く認められなかった。
【0024】比較例1実施例1において、鮮度保持剤を用いなかった以外は、同様に行なった。結果は、表1に示した。表1から分かるように、鮮度保持剤を用いない場合、10日経過から変色、発酵臭が起こり商品価値が失われた。また、袋内の湿度は、90%RH前後、酸素濃度は、1日経過後から無酸素状態が続くが、炭酸ガスの存在により異常呼吸が起こり、発生炭酸ガスの発生が加速的に増加し、袋が膨張してしまった。結局、商品価値があったのは、5日未満であった。
【0025】比較例2実施例1において、保存温度を冷蔵温度10℃ではなく、室温20℃にした以外は、同様に行なった。結果は、表1に示した。表1から、1日経過で、僅かに発酵臭がし、5日後には、発酵臭が強くなった。結局、5日未満で商品価値が失われた。
【0026】比較例3実施例2において、鮮度保持剤C剤を用いない以外は、同様に行なった。結果は、表1に示した。表1から、1日経過で強い発酵臭がし、5日後には、発酵臭が強く、結局、1日経過で商品価値が失われた。
【0027】
【表1】

【0028】
【発明の効果】本発明の生蓮根の鮮度保持方法は、■2週間以上の長期間保存しても、色調・匂いが保持され、■処理に有害な添加物を用いず、■臭気の残留がない等の利点を有する。
【0029】本発明の方法によれば、生蓮根が2週間以上の長期間にわたり表面色調が不変で、異臭の発生もなく、採り立ての風味が保持される、実用的な生蓮根の鮮度維持方法が提供される。
【出願人】 【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
【出願日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−320444(P2002−320444A)
【公開日】 平成14年11月5日(2002.11.5)
【出願番号】 特願2001−130988(P2001−130988)