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【発明の名称】 ベーカリーの製造法
【発明者】 【氏名】平岡 香織

【氏名】山來 けい子

【氏名】後藤 勝

【氏名】玉越 篤男

【要約】 【課題】浮きに優れ、かつ、食感、保存安定性、電子レンジやオーブントースターなど再加熱後の食感が改善なされた美味なベーカリーを提供すること【解決手段】 馬鈴薯、タピオカ、糯種穀物に由来する澱粉及び穀粉を、ベーカリー原料粉に5〜20%配合する。

【解決手段】馬鈴薯、タピオカ、糯種穀物に由来する澱粉及び穀粉を、ベーカリー原料粉に5〜20%配合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 原料粉から調製した生地を圧延してベーカリーを製造する際に、馬鈴薯、タピオカ及び糯種穀物に由来する澱粉又は穀粉の少なくとも一種以上を、原料粉中に5〜20重量%配合することを特徴とするベーカリーの製造法。
【請求項2】 澱粉及び穀粉の10%水溶液のゲル強度が0.5kg重以下であることを特徴とする、請求項1に記載のベーカリーの製造法。
【請求項3】 澱粉が、酸化、酸処理及びデキストリン化のうち少なくとも一種の処理を施した加工澱粉であることを特徴とする請求項2に記載のベーカリーの製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は「浮き」が良く、ボリューム感に溢れ、なおかつ食感の改善されたベーカリー、特に生地を圧延してなるベーカリーの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】デニッシュやクロワッサンなどのベーカリーは、通常、生地を圧延、積層すると共に、各々の生地の間に油脂やフラワーペーストなどの折り込み用素材を折り込んだ後、発酵、焼成して製造される。その際、生地と折り込み用素材双方の温度や物性等が均質になるように調整しないと、「浮き」が良く、食感も良好な製品を得ることができない。しかし、このような微妙な調整作業を些かの瑕瑾もなく行なうには、熟練した職人の経験と勘に頼らざるを得ず、勢い、小規模の製造となり、工業的規模において高品質のベーカリーを安定して製造するには、充分な態勢とは言えないのが実情である。一方、一旦、製造されたベーカリーには、1)製造直後は外皮がパリパリ、中がしっとりとソフトで、風味も優れているが、製造後日が経つにつれて、ぼそぼそし、硬くなり、あるいはしけった感じになる、2)電子レンジやオーブントースターによる加熱、いわゆる再加熱を行なうと、噛み切り難い状態いわゆる「ひき」が生じる、しばらく放置して冷めるとぱさついてしまう、というような種々の問題が発生し、それらにより食感を損じ、急激に商品価値が下がってしまうという重大な欠点があった。
【0003】こうしたベーカリー製造に関する問題点を解決するために、生地中の原料粉に、穀物粉35〜85%、高アミロース澱粉15〜60%、高アミロペクチン澱粉0.25〜5%をそれぞれ配合してなる穀物粉澱粉混合物を用いることにより、生地を圧延して製造するベーカリーの食感劣化を改良する方法が提案されている(特開平5−295167号公報)。しかしながら、この方法では、高アミロペクチン澱粉の配合量が少ないため、ベーカリー中のグルテンネットワークの伸展が充分ではなく、生地を圧延して製造されるベーカリーに適用しても「浮き」を改善することはできない。さらに、十分な食感改良、保存安定性、再加熱時の食感劣化防止の効果を得るためには、多くの配合量が必要となり、その結果、ベーカリーの生地強度低下による作業性の悪化や、原料粉の風味の低下を招く傾向があるなど、充分な改良効果を発揮しているとは言い難い。一方、小麦粉に餅粉やタピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉を加えてなるピザ台様食品のミックスも提案されている(特開平3-262436号)。しかし、当該ミックスは、厚い生地を一枚使用するピザ台を家庭で手軽に作ることができる様にしたものであり、工業的規模でベーカリー、特に圧延した生地を複数積層してなるベーカリーを製造するに際して、作業性に悪影響を及ぼすことなく、浮きを改良するという点については些かの開示も示唆もされていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、作業性を悪化させることなしに、食感が良好で、「浮き」が良く、老化が遅く、さらに再加熱しても良好な食感を保持し得る優れたベーカリーを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の澱粉及び/又は穀粉を、ベーカリー原料粉に所定量配合することによって、製パン作業性を悪化させることなく、「浮き」に優れ、かつ、食感、保存安定性、電子レンジやオーブントースター等の再加熱後の食感が改善された美味なベーカリーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、原料粉から調製した生地を圧延してベーカリーを製造する際に、馬鈴薯、タピオカ及び糯種穀物に由来する澱粉又は穀粉の少なくとも一種以上を、原料粉中に5〜20重量%配合することを特徴とするベーカリーの製造法である。本発明においてベーカリーとは、原料粉として小麦粉を主原料とし、これにイースト(またはベーキングパウダー)、水等を加え、さらに必要に応じて他の原料を添加し、発酵工程を経てあるいは経ずして得られる一般的なベーカリー生地を、圧延後、焼成(蒸し、油ちょうを含む)して得られるベーカリーをいい、上記原料粉には小麦以外の穀物、例えばライ麦、米、とうもろこし等を混入しても良い。当該ベーカリーを具体的に例示すると、ピザクラスト、フォカッチャ、ロゼッタ、ナン、トルティアのように、生地をそのまま圧延して製造されるもの、またはデニッシュペストリー、クロワッサン、パイ生地のように、生地にバター、マーガリン等の油脂もしくはフラワーペースト等のゲル状食品を折込み後、圧延して製造されるものなどがあり、これらの中にはチョコレート等により風味付けをしたものも含まれる。
【0006】本発明における生地の調製法としては、中種法、直捏法などパン製造時に一般的に使用される方法が適用できる。いずれの場合も基本的に原材料混合時に、本発明の澱粉及び/又は穀粉を添加するが、中種法では本捏の原材料混合時に添加する。添加方法としてはあらかじめ他の原材料、あるいはその一部とプレミックスにして添加することもできるし、調製時にそれぞれの原材料を同時にあるいは順次添加混合しても良い。例えば、デニッシュペストリーを例に挙げれば、小麦粉、砂糖、卵、イースト、食塩、マーガリン及び水等の通常の原料配合中に、本発明の澱粉及び/又は穀粉を添加、混捏し、一次発酵後、フリーザーで生地を冷却する。次に折込み用油脂を包み込み、圧延して所望の折り数とした層状のシート生地を得て、整型し、最終発酵後、焼成する。得られたシート状生地は所望の形に整型できる。さらに得られた生地で餡類、フルーツ類、カレー等のフィリング類を包んだり、巻き込んだりしても良く、製品の形態には特に制限はない。本発明のベーカリーの製造においては、得られた生地をそのまま用いても良く、または、一旦、冷蔵又は冷凍処理した物でも好適に使用できる。
【0007】本発明に用いられる澱粉と穀粉は、馬鈴薯、タピオカ、糯種穀物に由来する澱粉及び穀粉であり、糯種穀物としては、糯種とうもろこし、糯種小麦、糯米などがある。これらの澱粉及び穀粉は、未変性のまま用いても加工処理を施してから用いても良い。加工法としては、エステル化、エーテル化などの置換・架橋処理、酸化、酸処理、デキストリン化などの低粘度加工、水の存在下で加熱して糊化し乾燥を行なうα化処理などがあり、そのうち、酸化、酸処理、デキストリン化のいずれかの処理を施すのが特に好ましい。これらの加工処理は単独であるいは二種以上を組み合わせて施しても良い。上記の変性、未変性の澱粉及び穀粉は、一種単独で又は二種以上を併用して原料粉中に配合することができる。
【0008】また、本発明は、 原料粉中に配合する澱粉及び穀粉の10%水溶液のゲル強度が0.5kg重以下であることも特徴とする。その際には、当該ゲル強度が元来0.5kg重以下である未変性の澱粉あるいは穀粉を用いても、上記加工処理を施して当該ゲル強度を0.5kg重以下に調製した加工澱粉(穀粉)を用いても良い。加工処理の方法は、使用する澱粉及び穀粉の種類、及びゲル化力の関係から決められる。例えば、置換澱粉を例に取ると、置換度を上げた場合ゲルは柔らかくなることは知られているところである。本来ゲル強度が大きい馬鈴薯澱粉を原料とする場合は、所定のゲル強度を得るのに、本来、馬鈴薯澱粉よりゲル強度が小さな糯種とうもろこし澱粉を原料にする場合より、高い置換度を必要とする。本発明のベーカリーの製造においては、上記の澱粉及び穀粉を、原料粉100重量%に対し5重量%から20重量%、望ましくは6重量%から15重量%の割合で配合する。配合量が5重量%未満では、効果が見出し得なくなり、一方、20重量%を越えると、ベーカリーの生地強度低下による作業性の悪化や、原料粉の風味の低下を招く傾向がある。なお、一般にベーカリーには、種々の目的で種々の添加剤が使用されている。これらの添加剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤、マルトース、ソルビット、水飴などの糖類、濃縮乳、卵、活性グルテンの他、香料、着色料、保存料、膨張剤等が挙げられ、本発明においてもこれらを必要に応じて適宜添加することができる。
【0009】本発明の作用機構は定かではないが、以下のごとく推測される。加熱工程にあるベーカリー生地では、温度上昇にしたがって、まず生地中の炭酸ガスや水蒸気の膨張及びグルテンネットワークの伸展が始まる。その際、ガスの膨張に耐えうる生地膜強度が適当でないと、膨らまなかったり、膨らんだ後に萎んでしまったりと良好で安定した「浮き」が得られない。次に澱粉糊化及びグルテンの熱凝固が始まる。澱粉糊化には大量の水が必要となり、生地中の水分、すなわち遊離水やグルテンの保持している水を奪うことになる。その結果、グルテンは伸縮性を失い、固化し、ベーカリーの「浮き」、いわゆる膨らみが完成し、ベーカリーの最終的な形が決定される。馬鈴薯、タピオカ、糯種穀物は一般的に糊化し易く、その糊液はしなやかで柔軟性に富む性質を持つ。この特徴的な糊液の性質によって、グルテンネットワークの伸縮性を阻害することなく良好に膨らみ、かつ当該澱粉及び穀粉が適度に水を保持してゲル化することにより、得られたベーカリーのぱさつき等の食感劣化を防ぎ、結果として「浮き」が良く、かつ、食感、保存安定性に優れ、電子レンジやオーブントースターなど再加熱を行なっても、硬化等の食感劣化が少ない、美味なベーカリーを得ることができるのではないかと考えられる。
【0010】
【実施例】以下に、実施例をあげて本発明を更に説明するが、本発明の趣旨はもとよりこれらに限定されるものではない。
澱粉の調製:参考例1〜3に記載した方法により、表1に示す供試澱粉を調製した。なお、未加工とうもろこし澱粉(試料NO.1)、未加工馬鈴薯澱粉(試料NO.3)は各々市販品を用いた。
【0011】参考例1.酸化アセチルタヒ゜オカ澱粉の調製未加工タピオカ澱粉の絶乾物40%スラリーを温度40℃、pH8〜11に調整して、次亜塩素酸ソーダを対絶乾物0.1〜2.5%(有効塩素)添加し、4時間程度酸化反応させた後、塩酸でpH4まで下げて反応を停止し、水酸化ナトリウム溶液でpH6.5に調整後、水洗乾燥させて下に示す試料NO.2の酸化アセチルタヒ゜オカ澱粉を得た。
【0012】参考例2.エーテル化馬鈴薯澱粉の調製硫酸ナトリウムを澱粉に対し30%、水酸化ナトリウムを同じく2%になるように未加工馬鈴薯澱粉の絶乾物40%スラリを調製し、プロピレンオキサイドを加えて40℃にて24時間反応させる。希塩酸にて中和し、水洗乾燥させて下に示す試料NO.4のエーテル化馬鈴薯澱粉を得た。
【0013】参考例3.糯種とうもろこしデキストリンの調製糯種とうもろこし澱粉を酵素処理することにより、下に示す試料NO.5の糯種とうもろこしデキストリンを得た。
【0014】澱粉及び穀粉のゲル評価1)ゲルの調製澱粉10重量%、0.15%キサンタンカ゛ム溶液90重量%からなる懸濁液100gを直径3cmの塩化ヒ゛ニルチューフ゛にいれ、85℃にて30分ホ゛イルする。 ただちに流水にて60分冷却して澱粉ゲルを得る。得られた澱粉ゲルは、厚さ15mmに輪切りにして、ゲル強度の測定に供した。
2)ゲル強度の測定調製したゲルを用いてタケトモ電気製「テクスチュロメーター」にて測定する。テクスチュロメーター測定条件は、一例を挙げると、クリアランス1.5mm、使用プランジャー13mm径円柱型、出力電圧1〜15Vであるが、ゲルの強度に応じて、条件は適宜選択すればよい。結果を表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】試料NO.1の未加工とうもろこし澱粉のゲルは、粉っぽく、ぼそぼそとしてしなやかさに欠けた。また、試料NO.2、5は、ゲルを形成せず、液状であった。よって15mmのサンプル厚さを確保できなかったので、テクスチュロメーターサンプルカップに入れて、ゲル強度の測定を行なった。その結果、0.003kg重のゲル強度を示した。以上から、本発明における澱粉および穀粉の望ましいゲル強度は、約0.003kg重から0.5kg重の範囲であると考えられる。
【0017】以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。表2に示す配合割合でデニッシュペストリーを製造した。得られたデニッシュ生地の作業性については、生地圧延時に評価を行い、品質に関しては、デニッシュを焼成して冷却後、ビニール袋に入れて密閉して25℃に保持し、1日後、4日後に以下の基準に従って評価を行った。また、再加熱方法として、電子レンジは東芝製家庭用センサーオーブングリルレンジを用い、出力500Wで1分、レンジ加熱した。
【0018】<ベーカリー生地の作業性>○:製パン上問題ない×:切れ・べたつき・生地表面の荒れが見られ、製造工程上問題となる可能性がある<ベーカリーの「浮き」>ベーカリーの厚さを測定し、これを「浮き」とする<ベーカリーの食感>◎:表面はさくっとし、中はしっとりとしている○:表面はややさくっとし、中はしっとりとしている△:全体的にややパサつく×:全体的にパサつく【0019】
【表2】

【0020】
<製造方法>ミキシング: 全材料をミキサーボールに投入しミキシング捏上温度: 22℃発酵: 23℃−30分リタード: 2℃−3時間ロールイン: リタード後の生地に対し、折り込み用油脂を30%折込み、リバースシーターで3折り3回のロールインを行い、厚さ3mmの層状シート生地を得た成形: 縦50mm、横100mm、重さ約30gの短冊状にカットホイロ: 30℃、湿度72%−60分焼成: 220℃−8分生地及びデニッシュの評価結果を表3に示す。
【0021】
【表3】

【0022】比較例1〜4のデニッシュは、「浮き」が悪かった。また、4日後にはぱさつき、かつ、電子レンジ加熱後は硬化および噛みきり難い、いわゆる「ひき」が見られ、食感は劣った。中でも比較例4は、生地強度が弱く、圧延時に切れや荒れが見られ、作業性にやや問題があった。また、「浮き」に関しては、焼成中はまずまずの「浮き」を得られるが、オーブンから出すと同時に萎んでしまい、「浮き」の安定性が悪かった。実施例1〜4は生地の作業性にはまったく問題が無かった。また得られたデニッシュは、「浮き」に優れ、表面はさくっとして中は柔らかく、しっとりしており、かつ、4日後もその優れた食感が維持された。また、電子レンジ加熱後にも、好ましい食感を保っており、非常に高品質なデニッシュを得ることができた。
【0023】
【発明の効果】本発明法によると、馬鈴薯、タピオカ、糯種穀物に由来する澱粉及び穀粉を、ベーカリー原料粉に対して5重量%から20重量%配合することにより、製パン作業性を低下させることなく 「浮き」、食感、老化防止等品質に優れ、かつ、電子レンジやオーブントースター等を用いた再加熱後の食感が改善されたベーカリーを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000241544
【氏名又は名称】株式会社ホーネンコーポレーション
【出願日】 平成13年5月28日(2001.5.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−345394(P2002−345394A)
【公開日】 平成14年12月3日(2002.12.3)
【出願番号】 特願2001−158274(P2001−158274)