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【発明の名称】 ほのかな香りと甘みを有するパン及びその製造法
【発明者】 【氏名】吉 田 勝 彦

【要約】 【課題】小麦粉本来の持つ風味、旨みを引き出し、「ほのかな香り、ほのかな甘み」、あっさりとした口当たり、すっきりとした後味を実現し、それにより、一緒に食する食材の風味、旨みを損なわないパンを得る。

【解決手段】小麦粉を主材とし、これにドライイースト、αアミラーゼ、小麦デンプン及び適量の水を配合して攪拌混合した後、所定の短時間発酵させて中種を生成し、該発酵終了中種にトレハロース、ショートニング及びその他の製パン原料と水を配合して攪拌混合した後、所定時間発酵させてパン生地とし、次いでパン生地を所定量分取し、成型後焼成することを特徴とするほのかな香りと甘味を有するパンの製造法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 製パン原料中のイーストとしてドライイーストを、糖化酵素としてαアミラーゼを、糖類としてトレハロースを、そして油脂としてショートニングを含有することを特徴とする、ほのかな香りと甘みを有するパン。
【請求項2】 小麦粉を主材とし、これにドライイースト、αアミラーゼ、小麦でんぷん及び適量の水を配合して攪拌混合した後、所定の短時間発酵させて中種を生成し、該発酵終了中種にトレハロース。ショートニング及びその他の製パン原料と水を配合して攪拌混合した後、所定時間発酵させてパン生地とし、次いでパン生地を所定量分取し、成型後焼成することを特徴とする、ほのかな香りと甘味を有するパンの製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ほのかな香りと甘味を有し、あっさりした口当たりとすっきりした後味を実現したパン、及びこのようなパンの製造法、いわゆる淡麗熟成仕込みによるパンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、パンは、小麦粉を主原料とし、イースト、イーストフード、食塩、砂糖、油脂及び脱脂粉乳等を配合して作られるのが一般である。例えば、小麦粉に砂糖、食塩、脱脂粉乳、イーストフード等を配合したものに、イーストを混入した水を加えて混捏し、これを一次発酵、ガス抜き及び二次発酵させて生地を作り、この生地を分割し、丸め、ベンチタイム、整形の後、型詰して培炉、焼成して製造される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のパン製造方法においては、生地の発酵に伴う酸の生成により、酸味、酸臭が生じやすい。欧風パンのようにその酸味酸臭を特徴のひとつとするものでない限り、特に食パンのようにフィリング(中身)、トッピング(上掛け)等のないものは、酸味酸臭はパンそのものの風味、旨み、または一緒に食する食材の風味、旨みを損ないかねないという問題点があった。
【0004】本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、パンの酸味、酸臭を低減し、小麦粉本来の持つ風味、旨みを引き出し、「ほのかな香り、ほのかな甘み」、あっさりとした口当たり、すっきりとした後味を実現し、それにより、一緒に食する食材の風味、旨みを損なわないパンを得ることを目的とする。そして、二次的効果として、「ほのかな香り、ほのかな甘み」にふさわしい、淡い焼き色とソフトで且つしっしりとした食感を有するパンが得られることを意図する。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するために鋭意検討を行い、ほのかな香りを達成するためには、ドライイーストと短時間発酵が重要な因子であることを見出し、また、ほのかな甘味を達成するためには、でんぷんの糖化の促進、そのための糖化酵素としてのαアミラーゼ、使用する原料の見直しとして糖類としてのトレハロースの使用、及び油脂としてのショートニングの使用が重要な因子であることを見出し、これらの知見に基づてい本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は下記の構成からなるものである。
(一)製パン原料中のイーストとしてドライイーストを、糖化酵素としてαアミラーゼを、糖類としてトレハロースを、そして油脂としてショートニングを含有することを特徴とする、ほのかな香りと甘みを有するパン。
(二)小麦粉を主材とし、これにドライイースト、αアミラーゼ、小麦でんぷん及び適量の水を配合して攪拌混合した後、所定の短時間発酵させて中種を生成し、該発酵終了中種にトレハロース、ショートニング及びその他の製パン原料と水を配合して攪拌混合した後、所定時間発酵させてパン生地とし、次いでパン生地を所定量分取し、成型後焼成することを特徴とする、ほのかな香りと甘味を有するパンの製造法。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。先ず、ほのかな香りを実現する2重要因子について説明する。
(1)ドライイーストパン生地の発酵に不可欠なイーストを、見直し、中種にドライイーストを用いた。ドライイーストは含まれる成分の作用により、生イーストでは得られない風味を醸し出す。しかしながら、ドライイーストを大きな仕込みロッドにて用いた場合、発酵が不安定となりやすく、大量生産の工業ラインには不向きである。本発明では、こまめな発酵調整(温度、湿度)を行うことで、酸臭の少ない、まろやかな風味を実現した。なお、ドライイーストとはインスタントドライイーストを含む。また、ドライイーストに替えて、ドライイーストと生イーストの併用も可能である。
【0008】(2)短時間発酵中種パン生地の発酵過程においては、生地中の糖がイーストの持つ各種酵素の作用で、アルコールと炭酸ガスに分解される。さらに、小麦粉や空気中から混入した各種微生物によって乳酸発酵、酢酸発酵、酪酸発酵などが行われ、各種有機酸が生成される。最近は、特有の風味を創り出すために、長時間発酵を用いたパンの製造が多く見られる。長時間発酵は、生成される有機酸の量が増えるために、独特の味と香りを醸し出すことが出来るものの、往々にしてpHの低下により酸味、酸臭が強くなりやすい。本発明では、発酵を短時間で行うことにより酸味、酸臭の発生を抑え、軽やかな風味を実現した。
【0009】次に、ほのかな甘味を実現するための3重要因子について説明する。
(1)でんぷんの糖化を促進生地発酵過程において、小麦粉中のでんぷんの一部(損傷でんぷん)は、アミラーゼの作用を受け、デキストリンや麦芽糖へと液化、糖化し、生地の伸展性を助け、焼き上がりの色や香りを良くする役割を果たす。本発明では、中種に糖化酵素(αアミラーゼ)を添加し、小麦粉に含まれる澱粉の糖化を促進せしめた。生成される麦芽糖は、甘味度が砂糖の35%であるために、生地はまろやかな甘みとなる。
【0010】(2)使用する原材料の見直しa.糖類.....トレハロースの使用パンに使用される糖類の役割は、(a)甘味をつける、(b)焼き色をつける、(c)老化を遅らせる、(d)食べ口をソフトにするなどの効果がある。トレハロースは(c)、(d)の効果を確保しながら、砂糖の45%という低甘味により、「ほのかな甘味」を実現した。また、その物性上加熱されても掲変しないため、「ほのかな香り、ほのかな甘み」にふさわしい、ソフトな焼き色をも得ることが出来た。
【0011】b.油脂.....ショートニングの使用使用する油脂をバターやマーガリンとした場合、それぞれ油脂の持つ風味がパンの風味に影響してくる。無味無臭のショートニングを使用することで、パン本来の風味が引き立つ。なお、ショートニングに替えてバターやマーガリンを使用することで、それぞれの油脂の持つ風味を引き立てたパン生地とすることも出来る。
【0012】
【実施例】以下に、食パンの製造の実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものでなく、食パン以外のロールパン等、生地そのものを食する(味わう)パン類全般に応用できることは言うもでもない。
【0013】(実施例)以下に示す基本配合と工程を使用して中種を得た。
1.中種A 基本配合小麦粉 75.0重量部ドライイースト 0.5〜1.5重量部ドライイーストにはインスタントドライイーストを含む。生イーストと併用することも可能。その場合、イースト合計量は3.0重量部以下である。
イーストフード 0.1重量部乳化剤 0.25重量部糖化酵素(αアミラーゼ) 0.8重量部小麦でんぷん 4.0重量部脱脂粉乳 1.0重量部水 43.0重量部【0014】B 工程(1)小麦粉にその他の原料と水を加え、混捏する。
(2)3〜6時間発酵させる。(生地温度28〜30℃)
通常の製法に比べて、本発明では発酵状態の個体差(ばらつき)が生じやすく、中種毎に発酵時間の調整を行うことが必要である。
【0015】2.本捏A 基本配合前記1の中種(発酵終了のもの)に加えて小麦粉 25.0重量部生イースト 1.0〜2.0重量部砂糖 5.0重量部トレハロース 5.0重量部食塩 1.5〜2.0重量部ショートニング 3.0〜8.0重量部水 10.0〜20.0重量部【0016】B 工程(1)前記Aの中種に小麦粉、その他の原料と水を加え、混捏する。
(2)得られたパン生地は、通常のパン製法と同様に発酵させた後に焼成することにより、パンとした。
ただ、本発明により得られた生地は、通常のパン製法で得られた生地に比べて、発酵状態の個体差(ばらつき)が大きく、最終発酵工程において、通常の製法よりこまめな温度と湿度、時間の調整が必要である。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、下記の(1)、(2)の事情に対応して、(3)に示す優れた効果を奏する。
(1)現代においては、食事の多様化が進み、パンもそのまま生やトーストで食される以外に、様々なメニュー、食材と合わせて食べられる場面が多くなってきている。そのため、パンに求められる風味や旨みも多様化している。
(2)通常のパンの製法では、パン生地の発酵に伴い酸味、酸臭が発生し、パンと一緒に食する食材が本来持っている風味、旨みを損なうことがある。
(3)本発明では、原材料の選定、発酵工程の微細な調整管理を行うことにより、発酵に伴う酸味、酸臭を低減せしめることを可能とし、パンの持つ小麦粉本来の風味、旨みを引き出すと共に、あっさりとした口当たりとすっきりとした後味を実現できた。また、一緒に他の食材を食する場合、それぞれの食材の風味、旨みを損なわず、おいしく食することを可能にした。
【出願人】 【識別番号】501033316
【氏名又は名称】日糧製パン株式会社
【出願日】 平成13年5月29日(2001.5.29)
【代理人】 【識別番号】100112416
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 定信
【公開番号】 特開2002−345392(P2002−345392A)
【公開日】 平成14年12月3日(2002.12.3)
【出願番号】 特願2001−160886(P2001−160886)