トップ :: A 生活必需品 :: A21 ベイキング;生地製造または加工の機械あるいは設備;ベイキングの生地

【発明の名称】 菓子類用ミックス粉、菓子類用生地、菓子類及び菓子類の製造方法
【発明者】 【氏名】佐々木 早苗

【氏名】落合 潔

【要約】 【課題】シューやポップオーバーといった網状組織の空洞を有する菓子類を、良好なボリューム及び食感を有しながら且つ特殊な原料・工程を必要とせず、簡便に製造することができる手段を提供する。

【解決手段】小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部含有することを特徴とする、網状組織の空洞を有する菓子類用のミックス粉;小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部、並びに水及び/又は牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように水及び/又は牛乳を含有する生地を焼成することにより製造される、網状組織の空洞を有する菓子類;さらに冷凍されている上記菓子類;小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部、並びに水及び/又は牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように水及び/又は牛乳を添加して生地を調製し、該生地を190〜240℃で焼成することを特徴とする、網状組織の空洞を有する菓子類の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部含有することを特徴とする、網状組織の空洞を有する菓子類用のミックス粉。
【請求項2】 小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部、並びに水及び/又は牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように水及び/又は牛乳を含有することを特徴とする、網状組織の空洞を有する菓子類用の生地。
【請求項3】 小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部、並びに水及び/又は牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように水及び/又は牛乳を含有する生地を焼成することにより製造される、網状組織の空洞を有する菓子類。
【請求項4】 さらに冷凍されている請求項3記載の菓子類。
【請求項5】 製品の比容積が9.0cm3/g以上である請求項3記載の菓子類。
【請求項6】 小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部、並びに水及び/又は牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように水及び/又は牛乳を添加して生地を調製し、該生地を190〜240℃で焼成することを特徴とする、網状組織の空洞を有する菓子類の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は菓子類用のミックス粉、生地、菓子類及び菓子類の製造方法に関し、より詳しくはシューやポップオーバーといった網状組織の空洞を有する菓子類の製造に適したミックス粉、生地、それらの菓子類、及びそれらの菓子類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、パン・菓子類の製造に当たり、種々の方法で内部に気体を含ませ容積を増大させる(膨化)のが一般的である。膨化の目的としては嗜好性の改善、消化性の向上等いくつか考えられるが、特に最近は軽い食感や外観上のボリューム感が求められ、商品企画上でも膨化の果たす役割は大きい。従来、膨化を特に重視した菓子としてシュークリーム、エクレア、揚げシュー、フレンチクルーラー、ポップオーバー等があり、いずれも網状組織の空洞を有し、比較的容積が大きく軽い食感を特徴とする。これらはいずれも生地中に含まれる水分が加熱によって気化する際の膨張力を利用したものである。製法上は原料小麦粉や澱粉の加熱の有無、調理の手段(焼成、油揚げ等)、形状等の組合せによって多くの種類がある。また最近は添加物を極力使わない食品が好まれ、肥満等の問題から油脂類を多く使った食品は敬遠される傾向がある。更に近年の人手不足から、製法にも簡便さが求められる。
【0003】上記シュー等の菓子類の容積を増大させるために様々な手段が試みられており、例えば、特開昭63-87936号公報に開示されるように特定粘度範囲のα化澱粉を組み合わせる方法、特開平4-11830号公報に開示されるようにラクトアルブミンを含んだ全卵を使う方法、特開平9-224551号公報に開示されるように卵白粉末・糊化澱粉・クエン酸を特定比率で併用するもの、特開平7-135887号公報に開示されるように水溶性ヘミセルロースを配合したもの、特開昭62-239939号公報に開示されるように特定グルテン含量の小麦粉と全卵を使ったもの等が提案されている。
【0004】またシュー等の製造に用いる油脂の組成を工夫した例として、特開平3-259032号公報に開示されるようにカゼインアルカリ塩とソルビタンオレイン酸エステルを併用したもの、特開昭51-41472号公報に開示されるようにカゼインアルカリ塩とリン酸塩類等を併用したもの、特開昭62-244344号公報に開示されるようにL-アスコルビン酸を配合したもの、特開平9-65819号公報に開示されるように不飽和ジグリセリン脂肪酸エステルを配合したもの、特開平5-161445号公報に開示されるようにカードランを配合したもの、特開平8-242766号公報に開示されるようにタマリンドガムと有機酸モノグリセリドを併用配合したものなどが知られる。
【0005】更に生地の製造を特定条件下で行い目的を達する試みも多く、特開平6-141757号公報に開示されているように生地調製時の品温を特定温度範囲で行うもの、特開平6-253723号公報に開示されているように油脂と小麦粉からなる水中油型乳化物を高圧処理し粉末化して特定量配合したもの、特開平5-219879に開示されているように高湿度且つ特定温度範囲の雰囲気条件下で焼成するもの、特開平7-194292号公報に開示されているように内部が空洞のカップ状耐熱容器を被せて焼成する方法等がある。上記のように種々の工夫を加えても従来技術では最終製品の比容積で8.0cm3/g(特開昭63-214136号公報参照)程度が限度であり、これ以上ボリュームを出すことが困難であった。しかも各々の技術は特殊なα化澱粉を使うなど原材料の面で制約があり、複雑な工程や製造条件など製法の面でも制約があり、添加物を多用するなど最近の嗜好傾向に逆行する。等の問題点がある。
【0006】従来一般的なシューの配合では油脂を多用しており、特に膨らみのよいシューを得るためには油脂の配合比率を上げる必要があり、これも最近の嗜好傾向に反する欠点がある。しかもシューの製法は生地調製時の加熱度合等で製品の出来方が大きく変わるため熟練を要し、安定した製品を作ることが困難である。また、ポップオーバーは通常、小麦粉(グルテン含量8%〜13%程度)と水及び/又は牛乳、及び生全卵を主原料とし、油脂や食塩、膨脹剤等を混合し焼成して得られる。従来一般的に、小麦粉のグルテン含量が少ないと生地にガス保持力がなく製品のボリュームは小さい。一方グルテン含量が多いとふくらむものの製品の皮が薄く焼成後焼きしぼみや腰折れがおこる等、使用する小麦粉の影響を受けやすく、安定した製品を得ることが困難であった。しかも製品のボディが弱く、食感は水っぽい口当たりになり、商品として多くの問題を抱えていた。一方、ボリュームを充分出し網状組織の良好な内相を得るためには200℃以上の高温で焼成する必要があるが、この温度では短時間で焼き色がつき焦げやすい。反対に200℃以下の低温で焼成すると焦げの問題は起きないが、十分なボリュームが得られない。このような事情から、焼成を二段階で行うことがなされている。例えば特開昭62-239939号公報に開示されるように、最初は200〜240℃の高温で焼き、次いで160〜200℃に温度を下げて焼く方法が提案されているが、工程が煩雑である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、シューやポップオーバーといった菓子類を、良好なボリューム及び食感を有しながら且つ特殊な原料・工程を必要とせず簡便に製造することができる菓子類用ミックス粉、及び菓子類用生地を提供することを目的とする。本発明はまた、良好なボリューム及び食感といった優れた品質を有し、添加物や油脂の使い方も最近の嗜好に合った、シューやポップオーバーといった網状組織の空洞を有する菓子類を提供することを目的とする。本発明はさらに、シューやポップオーバーといった網状組織の空洞を有する菓子類を、良好な品質で特殊な原料・工程を必要とせず簡便に製造することができる菓子類の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、小麦粉に対し全卵を比較的多い量で配合することにより、及び更に、水及び/又は牛乳と全卵との合計量を所定量とすることにより、従来の菓子類よりもボリュームが大きくかつボディのしっかりしたソフトで適度なしとりのある製品が簡便な工程で得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。従って本発明は、小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部含有することを特徴とする、網状組織の空洞を有する菓子類用のミックス粉である。また、本発明は、小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部、並びに水及び/又は牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように水及び/又は牛乳を含有することを特徴とする、網状組織の空洞を有する菓子類用の生地である。本発明はまた、小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部、並びに水及び/又は牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように水及び/又は牛乳を含有する生地を焼成することにより製造される、網状組織の空洞を有する菓子類である。本発明は、さらに冷凍されている上記菓子類にも向けられている。本発明の菓子類は好ましい実施態様において、その比容積が9.0cm3/g以上である。本発明はさらに、小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部、並びに水及び/又は牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように水及び/又は牛乳を添加して生地を調製し、該生地を190〜240℃で焼成することを特徴とする、網状組織の空洞を有する菓子類の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】本明細書中でいう網状組織の空洞を有する菓子類には、シュー、ポップオーバーなどが含まれる。本発明で使用する小麦粉は、菓子類の製造に通常使用されるものでよく特に制限がないが、グルテン含量6〜13%程度のものが通常用いられ、特にグルテン含量8〜11%が好ましく、グルテン含量9〜10%程度のものが特に好ましく使用される。小麦粉はグルテン含量が異なるものを2種以上組み合わせて使用してもよい。また、小麦粉には澱粉や他の穀粉を混ぜてもよく、その場合の澱粉や他の穀粉の配合量は、小麦粉と澱粉や他の穀粉の合計に対して50質量%までが適当である。小麦粉に澱粉や他の穀粉を混ぜた場合は、それら全体を小麦粉100質量部とする。
【0010】本発明では、小麦粉100質量部に対して全卵を130〜230質量部使用することを特徴とする。全卵の使用量は好ましくは150〜200質量部である。全卵は生全卵、殺菌濾過卵、冷凍全卵、全卵粉などのいずれでもよいが、生全卵が好ましい。全卵粉の場合は、全卵粉1質量部に対し水3質量部を加えれば生全卵4質量部と同等となる。本発明のミックス粉を流通させる場合は、全卵粉を用いることが望ましい。本発明のミックス粉にはさらに、油脂類、糖類、香料、着色料、膨張剤等を含ませることができる。
【0011】本発明では、生地の調製にあたって水、牛乳のいずれか一方、又は水と牛乳とを使用する。水及び/又は牛乳の使用量は、小麦粉100質量部に対して水及び/又は牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように、好ましくは250〜300質量部となるように選択する。即ち、もし水だけを使用すれば水と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように、牛乳だけを使用すれば牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるように、また、水と牛乳を併用すれば水と牛乳と全卵との合計質量が230〜350質量部となるようにする。牛乳としては普通牛乳、加工乳、もしくは水と粉乳とを使用することができる。全卵及び水及び/又は牛乳を上記の範囲内で使用することにより、製品のボリューム、食感、ボディの強さが適当となり、腰折れ、焼きしぼみの発生や水っぽい食感などを防ぐことができる。
【0012】生地の調製にあたっては、上記成分の他に、油脂を小麦粉100質量部当り0〜20質量部の範囲で使用することができる。使用する油脂としては液状油、固形油及びその溶解油脂、半流動状油脂などのいずれでもよいが、液状油脂が好ましい。また、食塩を小麦粉100質量部当り0〜5重量部の範囲で使用することができ、精製塩、天然塩、いずれでもよい。その他、生地の調製にあたり必要に応じ糖類、香料、着色料、膨張剤等を配合することもできる。
【0013】生地の調製は、小麦粉に上記成分を添加し、常法に従って実施することができる。生地の調製は例えば、製菓用竪形ミキサーでホイッパーを使用して低速1分、中速1分程度原料を混合して生地とする。こうして調製した生地を、通常アルミカップ、紙カップ、マフィンカップ、耐熱性プラスチックカップ、スポンジケーキ型、エンゼルケーキ型等を使用できる。中でも底面の径よりも深さの方が大きい型が好適である。このようなカップに、一個当り生地量50〜150g程度を入れて、190〜240℃の範囲の温度で、好ましくは200〜220℃の範囲の温度で焼成する。焼成には、ピールオーブン、コンベクションオーブン、リールオーブン、トンネルオーブンなどを使用することができる。焼成時間は生地が充分に膨らむような時間であればよく、一般的に20〜40分間の範囲が適当である。このように生地を焼成した後、オーブンから取り出し、熱いうちに食するか、又は室温で放冷した後に食することもできる。また焼成後の製品を凍結し、冷凍状態で保存、流通することができる。冷凍する手順は常法に従うことができ、例えば−20℃〜−30℃の急速冷凍が適当である。冷凍品を食するときは、室温で1時間程度解凍するか、オーブンで再加熱すればよい。
【0014】本発明の網状組織の空洞を有する菓子類は、好ましくは9.0cm3/g以上の比容積を有し、具体的には9.0〜13.0cm3/gの比容積を有する。比容積とは製品1g当りの容積(cm3)を意味する。この比容積の値が大きい方が、膨化度が高いことになる。比容積は、例えば3次元レーザースキャナーによって測定することができ、3次元レーザースキャナーの具体例として(株)アステックス製SELNAC-VM型がある。
【0015】このように製造された菓子類はそのまま食してもよいし、或いは網状組織の空洞に適当な具材を詰めて、例えば味付けをした肉類、魚貝類、野菜類などを詰めて、その他、クリームやチョコレートを詰めたりして食することができ、また、ジャム、ハチミチ、シロップ、スープなどをつけながら食してもよい。適当な具材を詰めた状態で凍結することもでき、その冷凍手順及び解凍手順は上述と同様でよい。
【0016】
【発明の効果】本発明の菓子類用ミックス粉、菓子類用生地あるいは菓子類の製造方法によれば、特殊な原料・工程を必要とせず簡便に、良好なボリューム及び食感等の品質を有するシューやポップオーバーといった網状組織の空洞を有する菓子類を製造することができる。
【0017】
【実施例】以下に本発明を実施例及び比較例により説明する。
【実施例1、2及び比較例1〜3】実施例1生地の配合(単位:質量部)
小麦粉(グルテン含量 10%) 100生全卵 200牛乳 100サラダ油 10食塩 2【0018】ボール容量10リットルの製菓用竪形ミキサーでホイッパーを使用して、低速1分、中速1分上記原料を混合して生地とした。得られた生地をアルミプリンカップ(底径4cm×深さ5cm)に80g入れ、220℃のオーブンで30分焼いた。実施例2として、上記実施例1の生地の配合において生全卵の量を変えて、その他は実施例1と同様に焼成し、また、比較例1〜3として実施例1の配合の全卵と牛乳の比率を変えて同様に焼成し、製品を比較した。製品の評価は、10名のパネルによる4段階の官能評価で行い、項目毎に10名の平均を以って得点とした。
・・・・・・非常に良好 ○・・・・・・良好 △・・・・・・やや不良 ×・・・・・・不良なお、比容積の測定には、(株)アステックス製 SELNAC-VM型 3次元レーザースキャナーを用いた。各例の生地の組成(単位:質量部)と評価結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
【実施例3〜7】表2に示す組成(単位:質量部)で、実施例1と同様に生地を調製し、焼成した。得られた製品について、実施例1〜2、比較例1〜3と同様に評価を行った。その結果を表2に併せて示す。
【0021】
【表2】

【0022】実施例1〜7で得られた製品はボリュームが大きく外観上の特徴があり、食感が軽く口溶け良好で嗜好性が高く、極めて優れた品質であった。また焼成工程中に焼成温度を変える必要がなく、製法は極めて簡便である。
【出願人】 【識別番号】000231637
【氏名又は名称】日本製粉株式会社
【出願日】 平成13年5月24日(2001.5.24)
【代理人】 【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔 (外9名)
【公開番号】 特開2002−345391(P2002−345391A)
【公開日】 平成14年12月3日(2002.12.3)
【出願番号】 特願2001−155051(P2001−155051)