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【発明の名称】 食パンの製造方法
【発明者】 【氏名】古川 明理

【要約】 【課題】食パンのクラムの風味や食感を損なうことなく、クラストの風味や食感を高めることである。

【解決手段】食パン生地1を油脂含有率の高い外皮パン生地2で全体または部分的に包み込み、この外皮パン生地2を焼成型3と接触させて、油脂含有率の低い食パン生地1を焼成型3と接触させないようにすることにより、クラムの風味や食感は従来通りに確保した上で、クラストの風味や食感を高めることができるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 食パン生地を焼成型で焼成する食パンの製造方法において、前記食パン生地を、この食パン生地よりも油脂含有率の高い外皮パン生地で、全体的または部分的に包み込んで焼成するようにしたことを特徴とする食パンの製造方法。
【請求項2】 前記外皮パン生地の油脂含有率を、小麦粉に対する質量配合率で、20〜80%とした請求項1に記載の食パンの製造方法。
【請求項3】 前記外皮パン生地の生地全体に対する質量混合率を、20〜50%とした請求項1または2に記載の食パンの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、食パンの製造方法に関し、特に、クラストの風味や食感が優れた食パンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】食パン生地が焼成型と接触して焼成される食パンの外周部のクラストは、中央部のクラムと比較すると、風味や食感が劣る。クラストの食感を高める手段としては、食パン生地の糖分や焼成温度を調整して、クラストを柔らかくする方法が開発されている。しかしながら、この方法で製造した食パンは、クラストの風味や香りが乏しく、かつ、クラストの焼き色が白くなるので視覚的な違和感も与える。
【0003】また、食パン生地全体を油脂含有率の高いものとする方法もあるが、この場合は、肝心のクラムの風味や食感が食パンとは全く異なるものとなるので、食パンとは異質の感じを与えるものとなってしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明の課題は、食パンのクラムの風味や食感を損なうことなく、クラストの風味や食感を高めることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、この発明は、食パン生地を焼成型で焼成する食パンの製造方法において、前記食パン生地を、この食パン生地よりも油脂含有率の高い外皮パン生地で、全体的または部分的に包み込んで焼成する方法を採用した。
【0006】すなわち、食パン生地を油脂含有率の高い外皮パン生地で全体的または部分的に包み込み、この外皮パン生地を焼成型と接触させて、油脂含有率の低い食パン生地を焼成型と接触させないようにすることにより、従来通りのクラムの風味や食感を確保した上で、クラストの風味や食感を高めることができるようにした。食パン生地は、焼成型に詰める前に外皮パン生地で包み込んでもよいし、焼成型の中で外皮パン生地に包み込まれるように配置してもよい。
【0007】なお、全周が焼成型と接触する角形食パンを製造する場合は、食パン生地全体を外皮パン生地で包み込むようにし、上面が焼成型と接触しない山形食パンを製造する場合は、山形となる部分に相当する上面側を除いて、部分的に食パン生地を外皮パン生地で包み込むようにすればよい。
【0008】前記外皮パン生地の油脂含有率は、小麦粉に対する質量配合率で20〜80%、より好ましくは40〜60%とするとよい。
【0009】すなわち、外皮パン生地の油脂含有率が20%未満では、クラストの風味や食感を十分に高めることができず、油脂含有率が80%を越えると、クラストの保形性が損なわれてスライス作業がし難くなる。なお、通常の食パン生地の油脂含有率は3〜5%程度である。
【0010】前記外皮パン生地の生地全体に対する質量混合率は、20〜50%、より好ましくは30〜40%とするとよい。
【0011】すなわち、外皮パン生地の質量混合率が20%未満では、クラストの内層が包み込まれた通常の食パン生地の部分まで達して、この内層のクラストの風味や食感が不十分なものとなり、質量混合率が50%を越えると、クラムの風味や食感が食パンとは異質のものとなる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図1乃至図6に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1乃至図3は、第1の実施形態を示す。図1は、食パンの製造工程を示す工程図である。この製造工程は山形食パン用のものであり、大別して、主たる食パン生地1を作成する主生地作成工程、油脂含有率の高い外皮パン生地2を作成する皮生地作成工程、食パン生地1を外皮パン生地2で包み込んで焼成型3で焼成する焼成工程、および製品とする仕上げ工程とから成る。
【0013】
【表1】

【0014】前記主生地作成工程は中種法を採用したものであり、まず、表1に示す食パン生地1の配合率に従って原料を計量し、中種を作成する。表1の各配合率は、小麦粉を100としたときの質量%で表示されている。表中に示す外皮パン生地2の追加油脂の配合率は、後の実施例で述べるように、5レベルに変化させた。なお、外皮パン生地2は本捏材料自体に5%の油脂が含まれているので、外皮パン生地2の油脂含有率は、追加油脂の配合率+5%となる。
【0015】前記中種作成は、中種材料を低速で3分間、中速で2分間混合したのち、発酵時間を4時間とる。本捏は、油脂を除く本捏材料を中種材料に加えて低速で3分間、中速で2分間混合したのち油脂を添加し、さらに、低速で3分間、中速で2分間混合する。
【0016】前記本捏した生地は、フロアタイムを20分間とったのち分割され、ベンチタイムを25分間とったのちにガス抜きを行なわれて、丸目整形により食パン生地1とされる。
【0017】前記皮生地作成工程は直捏法を採用したものであり、表1に示す外皮パン生地2の配合比に従って原料を計量し、これらを直接本捏する。本捏は、食パン生地1の場合と同様に、油脂を除く本捏材料を低速で3分間、中速で2分間混合したのち油脂を添加し、さらに、低速で3分間、中速で2分間混合する。
【0018】前記本捏した生地は、フロアタイムを20分間とったのち分割され、冷蔵庫で数時間冷やされて寝かされたのち、所定の油脂含有率とするために、追加油脂がロールイン法により添加される。本捏した生地の油脂含有率は、この追加油脂と本捏材料自体に含まれる油脂とを合計したものとなる。なお、ロールイン法は、2つ折りにした生地間に追加油脂を添加しては、生地をロールで圧延、折りたたみするのを繰り返す方法である。
【0019】前記追加油脂を添加された生地は冷蔵庫で冷やされ、この冷えた状態を保たれながら所定の厚さに圧延され、さらに、所定のサイズに切断されて、外皮パン生地2とされる。この外皮パン生地2は、冷凍庫に保管し、必要に応じて解凍して使用するようにしてもよい。
【0020】前記焼成工程では、図2(a)に示すように、外皮パン生地2を切断線5に沿って3枚の長方形状の生地シート2aに切断し、図2(b)に示すように、これらの各生地シート2aを焼成型3の底面と両側面に沿わせて型詰めする。こののち、図2(c)に示すように、丸目整形された各食パン生地1を、各生地シート2aで包み込まれるように焼成型3に型詰めする。この型詰め後、ホイロを60分間とり、焼成を40分間行なう。なお、外皮パン生地2は、切断せずにコ字状に折り曲げ、焼成型3の底面と両側面に沿わせて型詰めしてもよい。
【0021】前記焼成された山形食パン4は、仕上げ工程で90分間放冷されたのち、図3に示すように、スライスされて製品となる。この山形食パン4は、焼成温度を調整することなく通常の温度で焼成されているので、クラスト4aの焼き色は従来の食パンと同じ褐色を呈し、視覚的な違和感を与えない。また、クラム4bについても、糖分を調整していないので、発酵と膨化が十分に促進され、火通りも良好である。なお、この実施形態の山形食パン4は、外皮パン生地2で包み込まれていない長手方向端面のクラスト部分を除去して製品とされる。
【0022】図4は、第2の実施形態を示す。この実施形態も山形食パン用のものであり、食パン生地1と外皮パン生地2の材料配合比と生地作成工程は、第1の実施形態と同じである。
【0023】この実施形態では、図4(a)に示すように、外皮パン生地2を切断線5に沿って4枚の正方形状の生地シート2bに切断し、図4(b)に示すように、これらの各生地シート2bで丸目整形された各食パン生地1を包み込む。こののち、図4(c)に示すように、生地シート2bで包み込まれた各食パン生地1を焼成型3に型詰めする。型詰め後の焼成手順は、第1の実施形態と同じである。なお、この実施形態の山形食パン4は、長手方向端面も外皮パン生地2で包み込まれているので、この長手方向端面のクラスト部分も製品とすることができる。
【0024】図5および図6は、第3の実施形態を示す。この食パンの製造方法は、角形食パン6用のものであり、食パン生地1と外皮パン生地2の材料配合比と生地作成工程は、上述した各実施形態と同じである。
【0025】この実施形態では、図5(a)に示すように、焼成型3に蓋3aが設けられ、外皮パン生地2は切断線5に沿って4枚の長方形状の生地シート2aに切断される。図5(b)に示すように、切断された各生地シート2aのうちの3枚は、焼成型3の底面と両側面に沿わせて型詰めされ、図5(c)に示すように、残りの1枚の生地シート2aは、丸目整形された各食パン生地1が焼成型3に入れられたのち、焼成型3に落とし込まれ、食パン生地1が各生地シート2aで包み込まれるように型詰めされる。この型詰め後、ホイロを60分間とり、焼成型3に蓋3aを取り付けて焼成を40分間行なう。
【0026】図6に示すように、焼成された角形食パン6はスライスされて製品となる。この実施形態の角形食パン6も、第1の実施形態の山形食パン4と同様に、長手方向端面のクラスト部分を除去して製品とされる。
【0027】上述した各実施形態では、食パン生地1の作成に中種法を採用したが、直捏法やその他の方法も採用することができる。また、外皮パン生地2への追加油脂の添加方法についても、ロールイン法に限定されることはなく、他の方法で添加してもよい。
【0028】なお、第1および第3の実施形態においては、外皮パン生地の生地シートを焼成型の長手方向端面にも沿わせて型詰めし、食パンの長手方向端面のクラスト部分を、第2の実施形態のように製品としてもよい。
【0029】以下に、実施例と比較例を挙げる。
【0030】
【実施例】第1の実施形態に示した製造方法で、外皮パン生地の追加油脂の配合率と、外皮パン生地の生地全体に対する混合率を変化させて、山形食パンを製造した。
【0031】
【比較例】生地全体を表1に示した配合率の食パン生地とした山形食パンを製造した。
【0032】これらの実施例と比較例の山形食パンについて、そのクラストとクラムの風味や食感等を評価した。各評価項目の評価は、良好を◎、やや良好を○、やや劣るを△、劣るを×とする4段階評価とした。
【0033】
【表2】

【0034】表2は、外皮パン生地の油脂含有率(追加油脂の配合率+5%)を変化させたときの評価結果を示す。なお、実施例の食パンは、外皮パン生地の生地全体に対する質量混合率が30%のものを対象とした。この表ではクラムの評価結果を省略するが、クラムの風味や食感等は、従来の食パンと同質で良好なものであった。
【0035】この結果からも分かるように、実施例の食パンのクラストは、油脂含有率が40〜60%の範囲で全ての評価項目が良好であり、20〜80%の範囲で全ての評価項目がやや良好以上である。また、油脂含有率が100%のものは、風味や食感は良好であるが、クラストの保形性とスライス作業性が劣る。一方、油脂含有率が5%の比較例は、この保形性とスライス作業性は良好であるが、クラストの風味、香り、食感、および柔らかさがいずれも劣る。
【0036】
【表3】

【0037】表3は、外皮パン生地の生地全体に対する質量混合率を変化させたときの評価結果を示す。この場合の実施例の食パンは、外皮パン生地の油脂含有率が30%のものを対象とした。
【0038】実施例の食パンは、外皮パン生地の混合率が30〜40%の範囲で、クラストとクラムの両方に関する評価項目が全て良好となり、20〜50%の範囲ではやや良好以上となっている。また、混合率が60%のものは、クラストに関する評価項目は良好であるが、クラムに関する評価項目と製品の保形性が劣り、混合率が10%のものは、外皮パン生地の厚みが不足するため、クラストに関する評価項目がやや劣る。一方、外皮パン生地を使用しない比較例は、クラムに関する評価項目は良好であるが、クラストに関する評価項目が全て劣る。
【0039】
【発明の効果】以上のように、この発明の食パンの製造方法は、食パン生地を油脂含有率の高い外皮パン生地で全体的または部分的に包み込み、この外皮パン生地を焼成型と接触させて、油脂含有率の低い食パン生地を焼成型と接触させないようにしたので、従来通りのクラムの風味や食感を確保した上で、クラストの風味や食感を高めることができる。
【出願人】 【識別番号】000146973
【氏名又は名称】株式会社神戸屋
【出願日】 平成13年5月29日(2001.5.29)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
【公開番号】 特開2002−345390(P2002−345390A)
【公開日】 平成14年12月3日(2002.12.3)
【出願番号】 特願2001−160119(P2001−160119)