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【発明の名称】 スポンジケーキの製造方法
【発明者】 【氏名】庄司 禎

【氏名】後藤 真彦

【氏名】筒井 薫

【要約】 【課題】コンニャク精粉を加水分解することなく利用し、異臭や異味が無く、優れたソフト感やウエット感と食感を有すると共に、経時的な硬化を防止してウエット感やソフト感を長期に保持できる、高品質なスポンジケーキの製造方法を提供する。

【解決手段】小麦粉又はその他の穀粉を主原料としてスポンジケーキを製造する際に、水に対し0.1〜5.0重量%のコンニャク精粉を添加混合して水和ゾルを調製し、このコンニャク精粉の水和ゾルを主原料に対し0.1〜50.0重量%添加してスポンジケーキ生地を作製し、これを焼成してスポンジケーキを製造する。コンニャク精粉の水和ゾルは、予め包装した状態にて100〜130℃で常圧又は加圧下に加熱処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 小麦粉又はその他の穀粉を主原料とするスポンジケーキの製造方法において、水に対し0.1〜5.0重量%のコンニャク精粉を添加混合して水和ゾルを調製し、このコンニャク精粉の水和ゾルを主原料に添加してスポンジケーキ生地を作製することを特徴とするスポンジケーキの製造方法。
【請求項2】 前記コンニャク精粉の水和ゾルは、予め包装した状態において100〜130℃で常圧又は加圧下に加熱処理したものであることを特徴とする、請求項1に記載のスポンジケーキの製造方法。
【請求項3】 前記コンニャク精粉の水和ゾルを主原料に対し0.1〜50.0重量%添加することを特徴とする、請求項1又は2に記載のスポンジケーキの製造方法。
【請求項4】 前記スポンジケーキ生地の作製に必要な水の一部又は全部の代わりに、前記コンニャク精粉の水和ゾルに含まれる水を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のスポンジケーキの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スポンジケーキの製造方法、特にコンニャク精粉の水和ゾルを用いたスポンジケーキの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、スポンジケーキは小麦粉又はその他の穀粉を主原料とし、これに全卵、砂糖、油脂及び水、更には膨張剤や起泡剤などの添加剤を添加してスポンジケーキ生地を作製し、この生地を焼成することによって製造されている。尚、スポンジケーキの製造では、パンと違ってイーストは添加せず、従って発酵の必要もない。
【0003】しかしながら、このようにして製造されたスポンジケーキは、使用した水分の大半が焼成により消失しているため、製造直後から急速に硬化が進行し、時間の経過と共にソフトでしっとりした食感が失われる。これを防ぐために、加工油脂、糖質、乳化剤などの品質改良剤を添加することが通常行われているが、硬化抑制の効果が十分でないうえ、スポンジケーキ本来の風味を損なった食感のものとなりやすい。
【0004】一方、コンニャク芋を粉に加工したコンニャク精粉は、カロリーがゼロに近いことや、食物繊維による整腸作用やコレステロールの低下作用が着目され、各種の食品に利用され始めている。しかしながら、コンニャク精粉の主成分であるグルコマンナンは水分の吸収能に優れていることから、コンニャク精粉をそのまま小麦粉などと共に水と混合すると、コンニャク精粉と小麦粉の吸水する速度が異なることにより水の偏在化が起こるため、小麦粉を主原料とする食品に利用することは難しかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】コンニャク精粉を使用してパンやスポンジケーキを製造する方法として、特開平7−327583号公報には、コンニャク精粉に含まれるグルコマンナンを有機酸類により部分加水分解してコンニャク精粉を液状とし、且つ有機酸塩を添加して中和した練り水を調整して、これらを小麦粉などと混練して用いる方法が提案されている。この方法によれば、食物繊維を均一な状態で含有したパンやスポンジケーキなどが製造できるとされている。
【0006】しかし、同公報に記載の方法では、コンニャク精粉の食物繊維を均一な状態で使用することは可能であるが、コンニャク精粉を予め有機酸類によって部分的に加水分解し、分子量を小さくしてから用いるため、コンニャク精粉が本来有する保水性が損なわれてしまう。そのため、得られるパンやスポンジケーキは単に食物繊維を含むだけであって、水分を含むことによって実現されるソフト感やウエット感などの品質が殆ど認められず、特にスポンジケーキとしては品質が極めて劣ったものである。
【0007】本発明は、このような従来の事情に鑑み、食物繊維であるコンニャク精粉を加水分解することなく利用して、異臭や異味の無いのは勿論のこと、優れたソフト感やウエット感と食感を備えると共に、経時的な硬化を防止してウエット感やソフト感を長期に保持できる、高品質なスポンジケーキの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明における小麦粉又はその他の穀粉を主原料とするスポンジケーキの製造方法は、水に対し0.1〜5.0重量%のコンニャク精粉を添加混合して水和ゾルを調製し、このコンニャク精粉の水和ゾルを主原料に添加してスポンジケーキ生地を作製することを特徴とする。
【0009】上記本発明のスポンジケーキの製造方法において、前記コンニャク精粉の水和ゾルは、予め包装した状態において100〜130℃で常圧又は加圧下に加熱処理したものであることを特徴とする。
【0010】また、上記本発明のスポンジケーキの製造方法においては、前記コンニャク精粉の水和ゾルを主原料に対し0.1〜50.0重量%添加することが好ましい。更に、前記スポンジケーキ生地の作製に必要な水の一部又は全部の代わりに、前記コンニャク精粉の水和ゾルに含まれる水を使用することができる。
【0011】尚、本発明において、「スポンジケーキ」の用語は、本来のスポンジケーキ以外に、カステラを含む意味で使用する。カステラはスポンジケーキと同様の方法によって製造されるが、スポンジケーキに通常添加される膨張剤や起泡剤などはカステラの製造時には一般に使用しない。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明では、コンニャク芋の粉であるコンニャク精粉を水と混合して水和ゾルとし、このコンニャク精粉の水和ゾルを小麦粉又はその他の穀粉からなる主原料に添加してスポンジケーキ生地を作製する。作製したスポンジケーキ生地は、通常のごとく、焼成(蒸し加熱を含む)することによりスポンジケーキを製造することができる。
【0013】一般に、コンニャク精粉をそのまま小麦粉などと共に水と混合すると、コンニャク精粉の主成分であるグルコマンナンが水を優先的に吸収するため、コンニャク精粉がダマになったり、小麦粉に必要な水分が不足するなど、水分の偏在化のために良好なスポンジケーキ生地を得ることができない。コンニャク精粉を部分加水分解すると、分子量が小さくなり保水性が失われる。また、コンニャク精粉を水で膨潤させ、水酸化カルシウムのような凝固剤で固めた水和ゲルでは、スポンジケーキにアルカリによる異臭や異味が残る。
【0014】そこで、本発明においては、コンニャク精粉、好ましくは精製し、脱臭処理したコンニャク精粉に、水を加えて膨潤させることにより水和ゾルとする。水に対するコンニャク精粉の添加割合は、0.1重量%未満ではペースト状にならず、また5.0重量%を越えると主原料と混合したとき別途添加する水の量に拘わらず水分の偏在が起こりやすくなり、均一な混合が難しくなるので、0.1〜5.0重量%の範囲とするが、0.5〜3重量%の範囲が更に好ましい。
【0015】コンニャク精粉を水和ゾルとすることにより、保水性を維持したまま、小麦粉などの主原料と共に水と混合したときの水の偏在化をなくして、良好なスポンジケーキ生地を作製することが可能となる。しかしながら、コンニャク精粉は一般に保存性に欠け、腐敗しやすいうえ、数時間〜数十時間で粘度が低下してしまう。このため現状では、コンニャク精粉の水和ゾルは更に凝固剤でゲル化して市販コンニャクや白滝として食される以外に、従来から食品材料として殆ど使用されていない。従って、コンニャク精粉に水を添加して作製した水和ゾルは、一般的には、その後あまり時間をおかずに主原料と混合して、スポンジケーキ生地を製造することが好ましい。
【0016】しかし、このように保存性に欠けるコンニャク精粉の水和ゾルも、包装した状態において、100〜130℃で常圧又は加圧下に15〜150分程度の加熱処理を施すことにより、常温でも長期保存が可能となることが判明した。即ち、作製したコンニャク精粉の水和ゾルに上記加熱処理を施せば、経時的な粘度低下を防止でき、細菌の繁殖を防ぐことができるので、小麦粉などの主原料に添加する前に長期にわたって保存することが可能である。また、添加した食品の日持ちを損なうことはない。
【0017】スポンジケーキ生地の作製に際しては、上記コンニャク精粉の水和ゾルを小麦粉などの主原料に添加し、全卵、砂糖、油脂及び水を加え、更に必要に応じて起泡剤や膨張剤その他の添加物を加えて混合する。コンニャク精粉の水和ゾルの添加量は、少ないと添加の効果がなく、また多すぎてもスポンジケーキの食感が損なわれるので、主原料に対して0.1〜50.0重量%の範囲が好ましく、0.5〜10.0重量%の範囲が更に好ましい。
【0018】また、スポンジケーキ生地の作製には水を添加するが、コンニャク精粉の水和ゾルは既に水を含有しているので、生地作製に必要な水の一部又は全部の代わりに、コンニャク精粉の水和ゾルに含まれる水を使用することができる。即ち、添加するコンニャク精粉の水和ゾルに含まれる水の量だけ、スポンジケーキ生地の作製時に自由水として添加する水の量を少なくすることができる。
【0019】このようにして作製したスポンジケーキ生地は、通常のごとく焼成することによって、優れたソフト感やウエット感があり、きめが細かく優れた食味を備えると共に、従来使用されている品質改良剤を添加しなくても経時的な硬化が遅く、2〜3日経過してもソフト感やウエット感を保持できる高品質なスポンジケーキを得ることができる。また、コンニャク精粉の水和ゾルは、優れた保水性と乳化力を有し、多量の水で湿潤されているため、短時間で簡単に良質なスポンジケーキ生地を作製することができると共に、水和ゲルのように凝固剤のアルカリを含むことがないので、得られるスポンジケーキにアルカリの異臭や異味が残ることはない。
【0020】また、スポンジケーキは一般に冷凍して長期保存され、解凍してケーキなどに使用されることが多いが、本発明によるスポンジケーキは冷凍保管した場合においても、ソフト感やウエット感などの優れた特性を長期にわたって保持することができる。
【0021】
【実施例】精製と脱臭処理を施した市販のコンニャク精粉を水に対し2.0重量%となるように添加して攪拌し、十分に膨潤したことを確認した後、容器に密封して110〜120℃で40分間加熱処理した。得られたコンニャク精粉の水和ゾルは、常温で180日間保持した後も、粘度の低下や細菌の増殖が認められず、優れた保水性と長期保存性を有していた。
【0022】このコンニャク精粉の水和ゾルが小麦粉の物性に与える影響を調べるために、小麦粉に対してコンニャク精粉の水和ゾルを1〜5重量%添加して、公知のファリノグラフ試験を行った。その結果、無添加の試料と比較して、コンニャク精粉の水和ゾル1重量%当たりの吸水率は平均−0.7%であり、小麦粉の物性に影響を与えないことが分った。また、無添加の試料と比較して、生地のまとまる時間に差は認められなかったが、伸展性に優れていることが分った。
【0023】次に、上記コンニャク精粉の水和ゾル(コンニャク精粉2.0重量%)を用いてスポンジケーキを作製した。即ち、小麦粉(薄力粉)100重量%に対して、下記表1に示す割合で、コンニャク精粉の水和ゾル、生全卵、砂糖、コーン油、水を加え、更に膨張剤と起泡剤を添加混合し、オールインミックス法(仕込み量約1.1kg)により、ホバートミキサーを使用して低速で30秒予備混合し、更に中速で10分間混合してスポンジケーキ生地を作製した。尚、比較のための対照試料として、コンニャク精粉の水和ゾルを使用しない以外は上記と同様にして、スポンジケーキ生地を作製した。
【0024】
【表1】

【0025】得られた各スポンジケーキ生地350gを、上火175℃及び下火165℃に設定した6号デコにより、35分間焼成してスポンジケーキを製造した。得られた各スポンジケーキは、試料ごとに、常温(25〜28℃)又は冷蔵(5℃)にて1〜3日間保存した後、官能テストに供した。また、各スポンジケーキを急速冷凍した後、−18℃で10日間保管し、その後冷蔵庫(5℃)にて解凍して1〜3時間冷蔵保存したものについても、官能テストを行なった。
【0026】尚、上記の官能テストにおいては、スポンジケーキを4等分し、底から1cm上の部分を3ヶ所切り取って、横2cm×縦4cm×高さ2cmの測定試料とした。各測定試料について、クリープメータ(山電(株)製:REONER RE−3305)を用い、ソフト感の目安として測定試料の高さが50%になるときの荷重(g/cm)を測定した。
【0027】
【表2】

【0028】この試験結果から分るように、コンニャク精粉の水和ゾルを添加していない対照試料のスポンジケーキでは、常温保存、冷蔵保存、及び冷凍保管後解凍保存のいずれの保存状態においても、3日間保存後には測定試料の高さが50%になるときの荷重が大きくなり、ソフト感が低下して硬くなっていた。これに対して本発明の試料1〜2では、いずれの保存状態でも、上記の荷重に大きな変化はなく、長期保存してもソフト感を維持することができた。
【0029】また、上記と同じ各試料のスポンジケーキについて、複数の試験員により、実際に食したときの食感を比較評価した。その結果、常温保存、冷蔵保存、及び冷凍保管後解凍保存のいずれの保存状態においても、本発明の試料1〜2のスポンジケーキは1〜3日間保存後において、ソフト感やウエット感のある良好な食感が得られた。
【0030】しかし、対照試料のスポンジケーキでは、常温保存、冷蔵保存、及び冷凍保管後解凍保存のいずれの保存状態においても1日間保存後では良好な食感が得られるものの、常温保存では3日間保存後にソフト感がやや損なわれ、冷蔵保存及び冷凍保管後解凍保存では3日間保存後にソフト感やウエット感が失われた。尚、特に冷凍保管後解凍保存した対照試料のスポンジケーキは、食したとき歯に付着するクチャ付き感が認められた。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、小麦粉などの主原料にコンニャク精粉の水和ゾルを添加することにより、水和ゲルの場合のようなアルカリの異臭や異味の無いのは勿論のこと、スポンジケーキ本来の食感が損なわれず、長期保存しても保水性を失わずに優れたソフト感やウエット感を保持できる、食物繊維を含み且つきめ細かく高品質なスポンジケーキを提供することができる。
【0032】特に、本発明によるスポンジケーキは、室温又は冷蔵庫で保存する場合はいうまでもなく、通常一般的に行なわれている冷凍保管した後解凍して使用する場合であっても、従来使用されている品質改良剤を添加することなく、経時的な硬化を防止することができ、ソフト感やウエット感及び優れた食感を長期に維持することができる。
【出願人】 【識別番号】301000804
【氏名又は名称】庄司 禎
【識別番号】595044797
【氏名又は名称】株式会社関越物産
【識別番号】591025462
【氏名又は名称】旭東化学産業株式会社
【出願日】 平成12年11月9日(2000.11.9)
【代理人】 【識別番号】100083910
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 正緒
【公開番号】 特開2002−142659(P2002−142659A)
【公開日】 平成14年5月21日(2002.5.21)
【出願番号】 特願2000−341286(P2000−341286)