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【発明の名称】 層状食品
【発明者】 【氏名】河島 武志

【氏名】西野 恒夫

【氏名】加藤 正一

【要約】 【課題】折り込み油脂組成物を少なくしても本来のバターの美味しさであるコク味が得られる層状食品を提供すること。

【解決手段】焦がしバター風味を有する油脂組成物を含んでなる折り込み用油脂組成物を用いた層状食品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 焦がしバター風味を有する層状食品。
【請求項2】 焦がしバター風味を有する油脂組成物を含んでなる折り込み用油脂組成物を用いることを特徴とする請求項1記載の層状食品。
【請求項3】 焦がしバター風味を有する油脂組成物を含んでなる折り込み用油脂組成物を小麦粉100重量部に対して20〜80重量%用いることを特徴とする請求項1または2記載の層状食品。
【請求項4】 層状食品がペーストリー類である請求項1〜3何れかに記載の層状食品。
【請求項5】 請求項1〜4何れかに記載の層状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、層状食品に関するものであり、詳しくは、クロワッサン、デニッシュなどのペーストリー類、パイなどの菓子類において、内外層を層状にしてボリュームに優れ、且つ風味の良い層状食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のごとく層状食品であるクロワッサン、デニッシュやパイを製造するには、折り込み前の生地を冷却、リバースシーターなどの圧延機で適当なサイズに展延した後、折り込み油脂組成物を生地に包み、折り重ねて展延する操作を繰り返し、生地の厚みを調整し分割、成型、焼成するものである。これら層状食品は、生地と油脂類の積層を形成させ、風味、食感の特徴をつけるものである。一般には、バター、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングをシート状に成型されたもの、または成型しながら生地に折り込むなどして製造される。
【0003】層状食品は、生地の風味・食感に特徴を有するクロワッサン、多種多様なフィリングと共に新たな風味を醸し出すデニッシュ等、多くの製品がある。
【0004】層状食品の美味しさを求める場合、殆どが折り込み油脂組成物を多く配合する、或いは、乳製品そのものの味に頼る等の手法によるため、配合上高価なものになる上、油っぽく、食感の重いものにならざるを得ない。一方、層状食品特有の軽い食感、歯切れの良さを出すためには、折り込み用油脂組成物の量を少なくすることが必要である。しかしながら、折り込み用油脂組成物量を減らすと、層状食品特有の油脂由来の風味が低減するという相反する問題がある。
【0005】また、層状食品の特徴の一つである油脂由来の風味であるが、中でも、とりわけ特徴的な風味とも言える焦がしバターの風味を有する層状食品は今までなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような現状に鑑み、折り込み油脂組成物を少なくしても本来のバターの美味しさであるコク味が得られる層状食品を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特徴的な風味である焦がしバター風味を有する折り込み用油脂組成物を層状食品に用いることで、焦がしバター風味を有する層状食品を得ることが出来、また、風味が良好、且つ、特徴的であるため、折り込み油脂組成物の量を従来の層状食品と比して低減させても、外観風味ともに問題ない層状食品を得ることが出来るという知見を得、本発明を完成させるに至った。
【0008】即ち、本発明の第1は、焦がしバター風味を有する層状食品に関する。好ましい実施態様としては、焦がしバター風味を有する油脂組成物を含んでなる折り込み用油脂組成物を用いることを特徴とする上記記載の層状食品に関する。更に好ましい実施の形態としては、焦がしバター風味を有する油脂組成物を含んでなる折り込み用油脂組成物を小麦粉100重量部に対して20〜80重量%用いることを特徴とする上記記載の層状食品に関する。別の好ましい実施態様としては、層状食品がペーストリー類である上記記載の層状食品に関する。
【0009】本発明の第2は、上記記載の層状食品の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下本発明につき更に詳細に説明する。
【0011】本発明の層状食品は、例えばバター、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどの態様の焦がし風味を有する油脂組成物を含んでなる折り込み用油脂組成物を用いて製造するものである。具体的には、デニッシュ、クロワッサン等のペーストリー類やパイ等の菓子類をいい、好ましくは、デニッシュ、クロワッサン等のペーストリー類である。
【0012】本発明に関わる焦がしバター風味を有する油脂組成物は、特に限定はなく、例えば、バターを加熱処理することで得られる、本来の焦がしバターでも、通常の食用油脂に焦がしバター風味を付与した組成物でもよい。中でも、油脂と乳製品を含んでなる組成物を加熱処理して得られる油脂組成物を用いる方が、簡便、且つ安価に製造することが出来るため好ましい。
【0013】本発明に用いる油脂は、食用に供されるものであれば、特に限定はなく、例えば、魚油、牛脂、豚脂、乳脂肪等の食用動物油脂、パーム油、大豆油、菜種油、コーン油、サフラワー油等の食用植物油脂が挙げられ、これらの硬化、エステル交換、分別などを行った加工油脂を1種または2種以上混合したものでもかまわない。
【0014】本発明において用いることの出来る乳製品とは、厚生省の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に明記されている乳製品を言い、例えば、脱脂粉乳、カゼインソーダ、バターミルクパウダー、生クリーム等が挙げられる。これら乳製品の量は、使用する種類、目的・用途に応じて適宜決めることが出来る。例えば、油脂に対して0.1〜20重量%の割合で使用することが好ましい。更に好ましくは0.5〜10重量%である。乳製品の量が上記範囲に満たない場合は焦がしバター風味を付与し難く、また、上記範囲を超えての添加は効果が頭打ちとなる。
【0015】また、必要に応じて、各種乳化剤や安定剤を用いても何ら問題ない。
【0016】本発明に関する焦がしバター風味を有する油脂組成物の製造方法は、油脂、乳製品、必要に応じて水、各種乳化剤、安定剤等を混合し、130〜150℃で10〜25分間加熱し水分を留去することで得ることが出来る。加熱温度が上記温度より低い、或いは、加熱時間が短いと、油脂組成物に付与される焦がしバター風味が弱いため好ましくない。上記範囲温度を超えての加熱、或いは加熱時間が長いと、焦がしバター風味に加えて、過度の焦げ臭や苦味等が付与されるため好ましくない。
【0017】例えば、以下のような方法によって、焦がしバター風味を有する油脂組成物をつくることが出来る。油脂部に油溶性の乳化剤、抗酸化剤など必要に応じて添加する。水相部は、脱脂粉乳、カゼインソーダ、バターミルク、発酵乳、生クリーム等の乳製品類、または糖類等の水溶性組成物を適宜添加する。溶解、または分散した後、攪拌しながら、140℃に加熱し15分間保持した後、60℃まで冷却し、必要に応じて濾過することで焦がしバター風味を有する油脂組成物を得ることが出来る。
【0018】この様にして得られた焦がしバター風味を有する油脂組成物を用いて、本発明の折り込み用油脂組成物を作製する。折り込み用油脂組成物に用いる、焦がしバター風味を有する油脂組成物の量に特に限定はなく、目的・用途に応じて適宜選択することが出来るが、折り込み用油脂組成物中の油脂量に対して10〜100重量%であることが好ましい。即ち、焦がしバター風味を有する油脂組成物全量を折り込み用油脂組成物の油脂分として製造に供することもできるし、焦がしバター風味を有する油脂組成物を他の食用油脂と併用して折り込み用油脂組成物の製造に用いることも出来る。焦がしバター風味を有する油脂組成物の量が、10重量%未満であると層状食品に焦がしバター風味を付与することが難しい。併用することの出来る他の食用油脂には特に限定はなく、通常食用に供されるのものであればよい。折り込み用油脂組成物を製造する際には、これらの油脂を10〜100重量%用いることが好ましい。即ち、水を加えなくてもよいし、或いは水を加えたW/O型乳化油脂組成物でもよい。油脂が10%未満であるとW/O乳化油脂組成物として安定的に製造できない。
【0019】焦がしバター風味を有する油脂組成物を含んでなる油相部と水相部を混合乳化した後パーフェクター、コンビネーター、ボテーターなどを用いて急冷捏和した後、連続的に一定の形状のノズルなどを使い成形して折り込み用油脂組成物を得ることが出来る。本発明に用いる折り込み用油脂組成物の形状については、特に規定するものでない。
【0020】このようにして得た焦がしバター風味折り込み油脂を用いて層状食品を製造する。
【0021】本発明の折り込み用油脂組成物の使用量は特に限定はなく、目的とする層状食品の風味・外観等に応じて、適宜使用量を変えることが出来るが、小麦粉に対して、好ましくは20〜80重量%、更に好ましくは、20〜60重量%である。20重量%より少ないと出来上がった層状食品のボリュームがあまり大きくない。80重量%を超えての使用は、焦がしバター風味は良好ではあるが、油こくなる場合がある。
【0022】層状食品は、本発明の折り込み用油脂組成物を使用すること以外は常法によって製造することが出来る。例えば以下のようにして、層状食品を製造することが出来る。
【0023】ミキサーボールに表1の配合のうち、ショートニング、および折り込み用油脂以外の材料を入れ、ミキシングし、更にショートニングを加えミキシングする。フロアタイムをとった後、リタードをとり、本発明の折り込み用油脂組成物を加える。4つ折を2回行い、中間リタードを取った後、シーターでゲージ2.5mmまで伸ばしてクロワッサン形状に成型し、ホイロをとった後、200℃のオーブンで焼成し、焦がしバター風味を有するクロワッサンを得ることが出来る。
【0024】
【表1】

【0025】
【実施例】以下に実施例、比較例を示し本発明を具体的に説明するが本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0026】(実施例1)
<焦がしバター風味を有する油脂組成物の製造>乳脂肪35部、パーム油46部を加え油相部とした。加熱溶解後、予め水17部、脱脂粉乳2部を加え、溶解、油相部へ添加混合した。その後、昇温して水分を飛ばした後、140℃まで加熱15分ホールドした後、60℃まで冷却し、ガーゼによる濾過を行い、油脂組成物Aを得た。
【0027】
【表2】

<折り込み用油脂組成物の製造>油脂組成物Aを用いてW/O乳化組成物を表2の配合で作製した。油相タンクに上記配合で油脂を仕込み油溶性原料を約60℃で撹拌溶解、水相部は、水、脱脂乳を仕込み撹拌しながら食塩を添加溶解した。その後、80℃で20分の殺菌を行い60℃に降温後、油相タンクに移送、15分間乳化した。コンビネーターで12℃迄冷却、捏和を行った後、レストチューブで結晶の安定化を行い、成形ノズルを使い押しだし、折り込み用油脂組成物を得た。
<デニッシュの製造>上記で製造した折り込み用油脂組成物を用いて、折り込み量30部のデニッシュを製造した。表3の配合において、ミキサーボールにショートニング、および折り込み用油脂組成物以外の材料を入れ、低速2分、中高速3分ミキシングした。これにショートニングを加え低速2分、中高速5分ミキシングした。生地のこね上げ温度は25℃とした。フロアタイムを30分とった後、1℃の恒温槽に生地を入れ、4時間リタードをとった。生地玉1945gに対し折り込み用油脂組成物を300g加えて、3つ折を2回行い、1℃の恒温槽で一晩寝かせて中間リタードを取った。中間リタード後3つ折を1回行い、シーターで伸ばして正方形に成型した。35℃のホイロに50分間入れた後、200℃のオーブンで10分間焼成した。
【0028】
【表3】

(実施例2)乳脂肪60部、パーム油21部を加え油相部とした。加熱溶解後、予め水17部、脱脂粉乳2部を加え、溶解、油相部へ添加混合した。その後、昇温して水分を飛ばした後、140℃まで加熱15分ホールドした後、60℃まで冷却し、ガーゼによるの濾過を行い、油脂組成物Bを得た。油脂組成物Bを用いて、実施例1と同様に折り込み用油脂組成物を作製し、これを用いて折り込み量30部のデニッシュを作製した。
(実施例3)バター100部溶解、その後、昇温して水分を飛ばした後、140℃まで加熱15分ホールドした後、60℃まで冷却した。ガーゼで濾過を行い、油脂組成物Cを得た。油脂組成物Cを用いて、実施例1と同様に折り込み用油脂組成物を作製し、これを用いて折り込み量30部のデニッシュを作製した。
(実施例4)実施例1で製造した折り込み油脂組成物を用いて、折り込み量60部のデニッシュを製造した。
【0029】(比較例1)W/O乳化組成物を表2の配合で製造した。即ち、実施例1と同様に折り込み用油脂組成物を製造し、これを用いて折り込み量30部のデニッシュを作製した。
【0030】各実施例、比較例について以下のように作製したデニッシュで製パン特性を比較・評価を行った。展延性、内層の薄さ、外観、ボリューム、食感、風味についての評価の基準は以下の通りである。
◎:かなり優れている○:優れている△:劣っている×:かなり劣っている。
【0031】結果を表4に示す。
【0032】
【表4】

実施例1〜3のデニッシュは、比較例1と同レベルの内層、外観、食感を持っていたがコク味について顕著な差がみられ、本発明の層状食品が、折り込み油脂量を少なくしても、デニッシュ本来の外観および内層の美味しさを有し、且つ、コク味を有することが判った。また、実施例4では、コク味が一段と強く、バターの風味の有るものが得られた。
【0033】
【発明の効果】本発明の層状食品は、焦がしバター風味を有することから、層状食品を製造する際、折り込み油脂組成物量を少なくしても、焦がしバター特有のコク味・風味がある為、従来の重く、油っぽい層状食品と比して、フィリングとの組み合わせ風味もよく、食感が軽く、歯切れの良いペーストリー類を得ることが出来る。その結果、商品価値の高いペーストリー類、菓子類を提供することが出来るものである。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成12年10月24日(2000.10.24)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−125580(P2002−125580A)
【公開日】 平成14年5月8日(2002.5.8)
【出願番号】 特願2000−323858(P2000−323858)