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【発明の名称】 パンのケービング防止剤及びパンの製造法
【発明者】 【氏名】外山 一吉

【氏名】水口 建治

【氏名】小室 昭

【氏名】市橋 信夫

【氏名】野村 哲夫

【氏名】飯住 壽勝

【氏名】門間 紀子

【氏名】西 賢司

【要約】 【課題】ケービングや腰折れ等の見られない外観が良好なパンのケービング防止剤及びパンの製造法を提供する。

【解決手段】ホエー蛋白質濃縮物及びカルシウムからなるケービング防止剤、並びに、パンを製造するに際し、原料にホエー蛋白質濃縮物及びカルシウムを添加するパンの製造法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ホエー蛋白質濃縮物及びカルシウムからなるケービング防止剤。
【請求項2】 カルシウムがミルクカルシウムである請求項1に記載のケービング防止剤。
【請求項3】 ホエー蛋白質濃縮液及び液中に分散されたカルシウムを混合し、噴霧乾燥してなる請求項1又は2のケービング防止剤。
【請求項4】 原料を配合し、混捏し、発酵し、及び焼成することからなるパンの製造工程において、焼成前にホエー蛋白質濃縮物及びカルシウムを添加することを特徴とするパンの製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パンのケービング防止剤及びパンの製造法に関する。更に詳しくは、原料にホエー蛋白質濃縮物及びカルシウムを混合することにより、ケービングや腰折れ等が見られない外観が良好なパンを得られるケービング防止剤、及びパンの製造法に関する。本明細書において百分率は、特に断りのない限り重量による表示である。
【0002】
【従来の技術】わが国の食文化の欧米化が進む中、パンの消費は年々増加してきている。消費者は、パンのように既に成形された食品を購入する際、食べて美味しいと感じるものを選択すると同時に、食品の外観が優れていることも購入条件として必須になってきている。
【0003】しかし、市販のパンの外観については、ケービング、腰折れ、及び皺などがみられ、パンの外観が消費者の購買意欲に影響を与えている。
【0004】パンのケービングとは、高温で焼き上がってきたパンが室温レベルにまで冷却される間に、パンの内部に充満している水蒸気がクラストを通して外部に放散して、パンのクラストが湿ってしまい、これが軟化してパンの外壁部が変形し易くなる現象である。
【0005】パンのケービングは、商品価値を損なうのみならず、サンドイッチを作る際には切断した断面形状が臼状となり、パンの耳を切る際、作業性が悪く、ロスも多くなるなどの問題点が生じていた。結果として不良品扱いにされるなど、パンの製造現場では是非とも避けなければならない事項である。
【0006】上記の問題に対して、パン生地の調製法、焼成方法や焼成後の冷却の条件など、様々な面から検討されているが、未だ十分に満足できる技術には至っていない。
【0007】特開昭49−117639号公報では、品質の改善されたパンの製法として、L−アスコルビン酸、ステアリル乳酸カルシウム、及びグリシンの3者の共存下で製パン工程を実施することにより、ケービングが防止されることが開示されている(以下、従来技術1と記載する。)。
【0008】ところで、ホエー蛋白質濃縮物(whey protein concentrate:以下、WPCと略記することがある。)は、ホエー中の乳糖と一部のミネラル分が限外濾過法によって除かれ、比較的に蛋白質濃度が高く、殆ど熱変性のない濃縮物であり、一般に固形中に含まれる蛋白質が25%以上あるものの総称であり、用途に応じて25%から80%程度までの製品がある。用途としては、溶解性、起泡性、乳化性などに優れているので、健康強化食品、飲料、アイスクリームなどの乳製品、及び製菓などに添加し、栄養強化や機能性向上のために使われている(ミルク総合事典、山内邦男,横山健吉編、朝倉書店、第356乃至357頁、1992年)。
【0009】一般的に、パンの原料には風味の向上や老化抑制のために、脱脂粉乳が使われているが、これに代わってホエー蛋白質濃縮物が製パンの原料として現在注目されている。ホエー蛋白質濃縮物は、多くの成分に栄養・生理活性上の価値があり、パンの焼色、風味の改良、及び脱脂粉乳と比較してコストが掛からない点で優れている(乳技協資料、第36巻、第3号、第3乃至4頁、1986年。以下、従来技術2と記載する。)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来技術1では、原料に添加するL−アスコルビン酸、ステアリル乳酸カルシウム、及びグリシンの3者の配合率が複雑であり、それに伴って混捏工程も細かく条件を設定する必要があるという問題点を有していた。
【0011】また、従来技術2では、パンの膨らみ具合による形状等の製パン性には不十分な点が多く、脱脂粉乳の代わりにホエー蛋白質濃縮物を製パンに使用するには、さらに技術の改良が必要であった。このために、ホエー蛋白質濃縮物をパンの焼成に利用することは注目されていたものの、普及するまでには至っていない。
【0012】本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、パンのケービング防止法に関し、鋭意研究を重ねた結果、パンの製造に際し、原料にホエイ蛋白質濃縮物とカルシウムを添加することで、簡便にパンのケービングが防止されることを見出し、更にホエー蛋白質濃縮物を脱脂粉乳の代替物として問題なく使用することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】本発明の目的は、簡便にかつ効果的にケービングを抑え、カルシウムが強化されたパンを製造することができ、しかも脱脂粉乳を使用する場合と比較して、低コストでパンを製造することができ、ホエー蛋白質濃縮物を使用するにもかかわらず製パン性を良好にできるケービング防止剤を提供することである。
【0014】また、本発明の他の目的は、効果的にケービングを抑え、カルシウムが強化されたパンを製造でき、しかも脱脂粉乳を使用する場合と比較して、コストが掛からず、ホエー蛋白質濃縮物を使用するにもかかわらず製パン性を良好にできるパンの製造法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発明の第一の発明は、ホエー蛋白質濃縮物及びカルシウムからなるケービング防止剤であり、カルシウムがミルクカルシウムであること、及びホエー蛋白質濃縮液及び液中に分散されたカルシウムを混合し、噴霧乾燥してなることを望ましい態様としてもいる。
【0016】前記課題を解決する本発明の第二の発明は、原料を配合し、混捏し、発酵し、及び焼成することからなるパンの製造工程において、焼成前にホエー蛋白質濃縮物及びカルシウムを添加することを特徴とするパンの製造法である。次に、本発明について具体的に説明する。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明に使用するホエー蛋白質濃縮物の蛋白質含量は、脱脂粉乳の蛋白質含量である34〜35%に従って、その含量を含む30〜40%が好ましく、特に蛋白質34%含有のホエー蛋白質濃縮物(例えば、ドモ社製、WPC−34)が望ましい。
【0018】本発明に使用するカルシウムは、パンの風味が損なわれることを少なくするために、水に不溶解性であることが望ましい。具体的には、公知の方法(例えば、米国特許第4143174号等)により製造されたミルクカルシウム、市販の骨粉、卵殻粉の天然物、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等であり、これらの1種又は2種以上を組合わせて使用することができるが、特に生体内への吸収性に優れているミルクカルシウムが最も望ましい。
【0019】本発明に使用するケービング防止剤は、本願発明者等が先に開示した発明による方法(特開2000−50843号公報)によって製造することが可能であり、特に市販のホエー蛋白質濃縮物とカルシウムの混合製剤をそのまま利用することが可能である。
【0020】本発明のパンの製造法は、公知の直捏法及び中種法の両方に適用することができる。即ち、原料を配合し、混捏し、発酵し、及び焼成する工程から成り、これらの公知の工程において、焼成前に添加することが望ましい。
【0021】なお、本発明のケービング剤の添加は、直捏法においては、原料の配合時、中種法においては、本捏生地ミキシング時にそれぞれ添加することが望ましい。
【0022】本発明の製造方法は、プルマン型及びワンローフ型の成形食パン、並びに菓子パン等の製造に好適に使用することができる。
【0023】次に試験例を示して本発明を詳細に説明する。
試験例1この試験は、本発明のケービング防止剤のケービング防止効果を確認するために行った。
【0024】(1)試料の調製後記実施例2の原料配合で、オーブンの焼成温度を上火200℃、下火210℃、及び焼成時間を22分に変更した以外は実施例2に従って、プルマン型の食パンを製造し、試料1とした。
【0025】また、この試料1の原料配合において、ホエー蛋白質濃縮物及びミルクカルシウムを添加する代わりに、実施例1のケービング防止剤を2ベーカーズ%添加して、同様にプルマン型の食パンを製造し、試料2とした。
【0026】これに対して、試料2の配合のうち、実施例1のケービング防止剤2ベーカーズ%に代えて、等量の脱脂粉乳を添加して、同様に製造したものを対照試料1、更に、同様に実施例1のケービング防止剤2ベーカーズ%に代えて、脱脂粉乳1.83ベーカーズ%、及びミルクカルシウム0.17ベーカーズ%を添加して、同様に製造したものを対照試料2とした。
【0027】尚、パン原料の配合に使用されるベーカーズ%は、配合中の粉の重量を100%とし、その他の材料(砂糖、食塩、イースト、水など)をその粉に対する割合で表わす方法である。
【0028】これらの配合を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】(2)試験方法図1は、各試料のケービング状態を示す指標を説明するための説明図である。図1において、Aはプルマン成形食パンを示し、Xはプルマン成形食パンのセンター幅を示し、Yはプルマン成形食パンのサイド窪み幅を示す。
【0031】ケービングの防止効果を測定するために、製造したプルマン成形食パンを室温で1日放置し、図1に示すセンター幅X(mm)及びサイド窪み幅Y(mm)をノギスを用いて測定した。
【0032】(3)試験結果この試験の結果は、図2及び図3に示すとおりである。図2は各試料のセンター幅の計測結果を示す図である。図3は、各試料のサイド窪み幅の計測結果を示す図である。
【0033】図2及び図3から明らかなとおり、原料にホエー蛋白質濃縮物及びカルシウムを使った試料1、及び実施例1のケービング防止剤を使った試料2は、対照試料1又は対照試料2に比して、センター幅の減少は抑えられ、サイド窪み幅の増加はほとんど起きなかった。
【0034】この試験の結果、本発明のケービング防止剤の添加によって、パンのケービングは効果的に防止されることが明らかになった。
【0035】次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
【実施例】実施例1(1)ミルクカルシウム原料の調製ミルクカルシウムは米国特許第4143174号の記載と同一の方法により、次のとおり調製した。
【0037】チーズホエー500kgを1規定塩酸でpH3.5に調整し、ウルトラフィルトレーション・メンブレンフィルターにより分画し、パーミエイト約475kgを得た。このパーミエイトを1規定水酸化ナトリウムでpH8.0に調整し、生じた沈殿を遠心分離し、再び水に懸濁して遠心分離し、洗浄の後に噴霧乾燥し、粉末状のミルクカルシウム約1.5kg(カルシウム25%、乳糖3%、乳清蛋白質9%、乳脂肪1%、及びカルシウムを除く灰分62%含有)を得た。
【0038】(2)本発明のケービング防止剤の調製以上のように調製したミルクカルシウム原料1kgと、34%ホエー蛋白質濃縮物(ドモ社製)10kgとを粉体混合機(三功工業社製)により混合し、固形分当たり乳糖43%、乳清蛋白質32%、及び不溶性カルシウム3%を含有する原料約11kgを調製した。次いで、調製した原料(固形分95%)10kgを水道水13.8kgに、スパイクミル(井上製作所社製)を使用して分散し、40%の固形分濃度の分散液約23kgを調製した。次いで、前記分散液を回転円盤式噴霧乾燥装置(Niro社製)を使用して噴霧乾燥し、ケービング防止剤7.6kgを得た。
【0039】得られたケービング防止剤を使用して、実施例4の方法にてパンを製造したところ、パンのケービングを抑止する効果が確認された。
【0040】実施例2原料にホエー蛋白質濃縮物及びミルクカルシウムを用いて、下記の配合に従って、直捏法でプルマン型食パンを5kg仕込みで製造した。
強力粉 100(ベーカーズ%)
生イースト 2.5 イーストフード 0.1 上白糖 6 食塩 2 ホエー蛋白質濃縮物 1.77 ミルクカルシウム 0.23 バター 6 水 72強力粉、生イースト、イーストフード、上白糖、食塩、水、及びホエー蛋白質濃縮物及びミルクカルシウムをそれぞれミキサーに投入し、捏上温度26℃の条件で、低速で2分間、中速で5分間ミキシングした。更に、バターを加え、低速で2分間、中速で4分間ミキシングした。次いで、温度26℃で90分間一次発酵を行った。
【0041】発酵生地を215g宛に分割して丸目を行い、ベンチタイムを20分間取った後、成形モルダーを用いて生地を成形して型に詰めた(4個詰め、2斤型)。次いで、乾湿球式ホイロ(江戸川冷熱社製)を用いて、温度38℃、湿度85%の状態で約40分間、型の75%程度の膨張度になるように二次発酵させた。
【0042】二次発酵が終了した生地を、オーブン(SANKO社製、コンポオーブンNC−GG−13)に入れ、上火を210℃、下火を220℃に設定して、30分間焼成した結果、ケービングが抑制されたプルマン型食パン10斤を得た。
【0043】実施例3原料にホエー蛋白質濃縮物及びミルクカルシウムを用いて、下記の配合に従って、中種法でプルマン型食パンを5kg仕込みで製造した。
〔中種〕
強力粉 70(ベーカーズ%)
生イースト 2 イーストフード 0.1 水 40 〔本捏〕
強力粉 30 上白糖 6 食塩 2 ホエー蛋白質濃縮物 1.77 ミルクカルシウム 0.23 バター 6 水 30【0044】(1)中種中種の配合材料の全てをミキサーに投入し、捏上温度24℃の条件で低速で3分間、中速で2分間ミキシングし、その後、27℃で4時間静置し、一次発酵を行った。
【0045】(2)本捏中種生地、及びバターを除く本捏材料の全てをミキサーに投入し、捏上温度28℃の条件で低速で3分間、中速で2分間ミキシングした。次いでバターを添加し、更に、低速で2分間、中速で2分間、高速で3.5分間ミキシングした。その後、フロアータイムを15分間とり、発酵生地を220g宛に分割して丸目を行った。
【0046】その後、ベンチタイムを15分間とり、生地を成形モルダーで成形して型に詰めた(4個詰め、2斤)。次いで、乾湿球式ホイロ(江戸川冷熱社製)に入れ、温度38℃、湿度85%の条件で約40分間、型の75%程度になるように二次発酵させた。
【0047】二次発酵が終了した生地を、オーブン(SANKO社製、コンポオーブンNC−GG−13)に入れ、上火を210℃、下火を220℃に設定して、30分間焼成した結果、ケービングが抑制されたプルマン型食パン10斤を得た。
【0048】実施例4実施例1のケービング防止剤を用いて、下記の配合に従って、実施例3と同一の方法で、プルマン型食パンを5kg仕込みで10斤製造した。
〔中種〕
強力粉 70(ベーカーズ%)
生イースト 2 イーストフード 0.1 水 40 〔本捏〕
強力粉 30 上白糖 6 食塩 2 実施例1のケービング防止剤 2 バター 6 水 30【0049】
【発明の効果】以上記載したとおり、本発明はパンのケービング防止剤及びパンの製造法に関するものであり、本発明により奏される効果は次のとおりである。
1)本発明のケービング防止剤を添加することにより、簡便にかつ効果的にケービングを抑え、カルシウムが強化されたパンを製造することができる。
2)脱脂粉乳を使用する場合と比較して、低コストでパンを製造することができる。
3)ホエー蛋白質濃縮物を使用するにもかかわらず、膨らみ具合、形状等の製パン性が良好なパンを得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
【出願日】 平成12年10月16日(2000.10.16)
【代理人】 【識別番号】300019386
【氏名又は名称】重兼 彰夫
【公開番号】 特開2002−119196(P2002−119196A)
【公開日】 平成14年4月23日(2002.4.23)
【出願番号】 特願2000−315666(P2000−315666)