トップ :: A 生活必需品 :: A21 ベイキング;生地製造または加工の機械あるいは設備;ベイキングの生地

【発明の名称】 パン用乳化剤組成物
【発明者】 【氏名】清水 孝明

【氏名】櫻井 宣之

【氏名】鈴木 倫江

【氏名】渡邉 厚夫

【氏名】上領 英二

【氏名】多田 正勝

【要約】 【課題】製パン工程での生地物性が良好で且つ焼成されたパンの物性及び風味が優れたパン製品を提供する製パン改良剤の開発を課題とする。

【解決手段】グリセリン飽和脂肪酸モノエステル60〜80質量%とグリセリン不飽和脂肪酸モノエステル40〜20質量%とから構成されるグリセリン脂肪酸モノエステル40〜65質量%とグリセリン脂肪酸ジエステル60〜35質量%との混合グリセリン脂肪酸エステル95〜85質量%及びジグリセリン脂肪酸モノエステル5〜15質量%とから構成される組成物又は当該組成物とグリセリンコハク酸脂肪酸エステルとの溶融混合物を冷却粉末化することにより課題が達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 グリセリン飽和脂肪酸モノエステル60〜80質量%とグリセリン不飽和脂肪酸モノエステル40〜20質量%とから構成されるグリセリン脂肪酸モノエステル40〜65質量%とグリセリン脂肪酸ジエステル60〜35質量%との混合グリセリン脂肪酸エステル95〜85質量%及びジグリセリン脂肪酸モノエステル5〜15質量%とから構成される混合組成物を加熱溶融した後冷却粉末化することを特徴とするパン用乳化剤組成物。
【請求項2】 請求項1記載の組成物とグリセリンコハク酸脂肪酸エステルとを併用することを特徴とするパン用改良剤組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パン用改良剤。詳しくは、製パン工程でのパン生地のハンドリング性に優れ、良好な風味と品質を備えたパン製品を焼成することができるパン用の品質改良剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】市場に流通するパンの製造規模は、家内的小規模なものから広域販売を目的とする機械的な大量生産規模のものまで大小様々であるが、市場の流通量からは大量生産方式が大きな比重を占めている。
【0003】パンの製造工程は一般に、仕込み−混捏−醗酵−ベンチ−成型−ホイロ−焼成等から構成され、最終的に焼成されたパンの品質は、醗酵の状態、分割・成型工程での生地の物性や品質によって大きく左右される。
【0004】大量生産方式においては、特に製造工程での機械的負荷が大きくかかるために生地の損傷が起こり易く、それを改善し機械耐性の良いパン生地を調製するため生地改良剤が使用され、流通中の品質を維持し保存性の良い製品を得る目的で老化防止剤等の改良剤が使用されている。
【0005】これら製パン用生地改良剤としては、グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウムあるいはレシチン等の乳化剤が広く使用されているが、中でもグリセリン脂肪酸モノエステルは小麦粉の損傷澱粉と複合体を形成することによりパン生地の粘着性を抑制して機械への付着を少なくすること、及び澱粉との複合体形成により焼成したパンの澱粉の老化を防止することによりパンの保存性を向上する効果があり、製パン改良剤の主成分として使用されている。
【0006】グリセリン脂肪酸モノエステルの中においては一般的には炭素数14〜18の飽和脂肪酸のモノエステルが澱粉との複合体形成能に優れているといわれているが、これら長鎖飽和脂肪酸から構成されるグリセリン脂肪酸モノエステルは融点が高く、水への溶解・分散性が小さく、それらを単に粉末としてパン生地に添加しても目的とする改良効果は十分には発揮されない。
【0007】グリセリン脂肪酸モノエステルはその融点付近の水温で形成される液晶構造であるα−結晶による分散相(α−ゲル)が最も機能を発揮するが、その温度を維持することは経済的あるいは流通上の問題があり実用的ではない。しかしながら、そのα−ゲルを冷却した後の結晶転移物であるβ−ゲル及びその凍結乾燥物は良好な製パン改良効果を示すことが知られ、β−ゲルに防腐剤を添加したペースト状製品とする方法(特公昭51−26500号公報)、β−ゲルに水溶性保護コロイド物質を添加して乾燥粉末とする方法(特公昭44−26900号公報)が開示されている。しかしながら、特公昭51−26500号公報の方法はペースト状で取り扱いの不便さがあり、特公昭44−26900号公報の方法は水溶液を乾燥するために高い加工費を必要とする等の難点があった。
【0008】本出願人はグリセリン飽和脂肪酸モノエステルとグリセリンシス型不飽和脂肪酸モノエステルとは固溶体を形成しないことに着目して、これら両成分から構成される混合物を5℃以下の環境下で噴霧冷却粉末化する方法(特開昭60−102151号公報)を開発した。この方法により経済的に良好な改良機能を発揮するグリセリン脂肪酸エステル製品が得られた。
【0009】このような技術の開発により、優れた物性と性能を有するグリセリン脂肪酸モノエステルを主成分とする製パン改良剤が得られたが、一方において、これらグリセリン脂肪酸エステルが使用されたパンの風味の問題が提起されてきた。このグリセリン脂肪酸モノエステル添加によるパンの風味については、グリセリン脂肪酸モノエステルの持つ固有の風味の問題と、それが添加されることにより二次的に発生する風味の変化との2種類の問題がある。グリセリン不飽和脂肪酸モノエステルはグリセリン飽和脂肪酸モノエステルに比べて特有の風味を有することから、特開昭60―102151号公報に開示される技術においては、グリセリン脂肪酸モノエステル固有の風味と二次的に発生する風味の両方の改善についての課題が残されていた。
【0010】グリセリン脂肪酸モノエステルの風味を改良する方法としては酵母エキスを添加する方法(特開昭62−58961号公報)、あるいはグリセリン脂肪酸モノエステルを油脂に溶解したのち水蒸気蒸留により脱臭する方法(特開昭64−55145号公報、特開平9−154504号公報)が開示されている。
【0011】しかしながら、酵母エキスを添加による方法では、酵母エキスの味や酵母エキスに含まれる還元剤成分がパン生地物性に悪影響を与える等の問題があり、油脂に溶解した後水蒸気蒸留する方法では微量成分の除去による臭いの改善はできるが、グリセリン脂肪酸モノエステルが本来保有する風味は改善できず、また油脂に溶解したものであるためにグリセリン脂肪酸モノエステルの水への分散は悪く澱粉との複合体形成は劣ったものとなり製パン改良剤としての実用性はない。
【0012】又、グリセリン脂肪酸モノエステルのパン生地への添加量を減らすことで風味は改善されるが、製パン改良効果も小さくなるため焼成されたパンの品質の低下が起こる。従って、グリセリン脂肪酸モノエステル添加量を減らすことでは根本的な解決はできない。
【0013】製パン改良剤として使用される乳化剤としてはグリセリン脂肪酸モノエステル以外にグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸エステル、ステアリル乳酸カルシウムあるいはレシチン等が使用されるが、これらの中で、ステアロイル乳酸カルシウム及びレシチン類はグリセリン脂肪酸モノエステルとは異なる風味の悪さがあり、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルはそれらに比較して風味は良好であるが、特有の風味を有しておりグリセリン脂肪酸モノエステルの風味改善には直接的には貢献しない。
【0014】以上記載した如く、従来開示された技術あるいは使用されてきた改良剤との併用においてはグリセリン脂肪酸モノエステルの風味を改善をすることは困難であった。
【0015】一方、ポリグリセリン脂肪酸エステルはエステルを構成する成分であるポリグリセリンのグリセリン重合度と脂肪酸の種類あるいはエステル化率等によって各種のエステルが存在し得るが、製パン効果に関しては、トリグリセリン脂肪酸エステルからデカグリセリン脂肪酸エステルの各種エステルについて試験し、グリセリンの重合度、エステルのHLB等の物性により製パン性が異なり、オクタグリセリンあるいはデカグリセリンモノラウレートが米国で汎用されているステアロイル乳酸ナトリウムと同等の製パン性が発揮されるとの報告(BAKERS DIGEST,55(4), p.19,1981)、L−アスコルビン酸又はL−アスコルビン酸と2価のカルボン酸とポリグリセリン脂肪酸エステルとを併用する方法(特開昭60−30633号公報、特公平1−13327号公報)、水酸基価900以下のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加する方法(特開昭62−122549号公報)等の方法が開示されている。しかしながらこれらの方法に使用されているポリグリセリン脂肪酸エステルはグリセリンの平均重合度が3以上のエステルであり、本発明に使用されるジグリセリン脂肪酸モノエステルについては具体的な試験はなされていない。公知の如くポリグリセリンは通常グリセリンに少量のアルカリ触媒を添加して加熱重合反応して得られるもので、トリグリセリン以上の重合物は沸点が高く蒸留による分割が困難なために各種重合度のポリグリセリンの混合物で用いられており、そのために純度の高いモノエステルの調製も困難である。これに対して本発明によるジグリセリン脂肪酸モノエステルはジグリセリン及びジグリセリン脂肪酸モノエステル共に分子蒸留が可能であり、高純度の製品が得られ、従って性能の安定した製品が供給できる利点がある。
【0016】グリセリン脂肪酸ジエステルの製パンへの応用に関しては、低融点のジグリセリドを添加する方法(特開平02−124055号公報)、飽和モノグリセリドと不飽和ジグリセリドとの特定割合配合物を乳化油脂として添加する方法(特開平02−124052号公報)等が開示されているが、本来グリセリン脂肪酸ジエステル(ジグリセリド)は澱粉との複合体形成能やグルテンとの結合性は小さく、又、乳化油脂として使用される場合は乳化系であるために、有効成分であるグリセリン脂肪酸モノエステル(モノグリセリド)が乳化系外に十分量遊離することができず十分な製パン効果が示されないと同時にグリセリン脂肪酸モノエステルに由来する風味の問題は解決されない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、風味が良好で、品質の優れたパンの調製が可能な製パン用改良剤を提供することを課題とする。詳しくは機械耐性等のパン生地物性が良好で、グリセリン脂肪酸モノエステルに起因する風味が改善され、且つ食感が優れたパンを提供するグリセリン脂肪酸モノエステルを主成分とし、ハンドリング性が優れた粉末状の製パン用乳化剤製剤を開発することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の脂肪酸組成を有するグリセリン脂肪酸モノエステルに、グリセリン脂肪酸ジエステル及びジグリセリン脂肪酸モノエステルとを配合することにより、機械耐性あるいは焼成したパンの品質等の製パン改良効果を落とすことなくグリセリン脂肪酸モノエステルに起因する風味が改善され、食感及びパンの老化抑制効果の大きいパンが得られることを見出し本発明を完成させたものである。
【0019】グリセリン脂肪酸エステルの風味はグリセリン脂肪酸モノエステルよりもグリセリン脂肪酸ジエステルの方が良好であるが、グリセリン脂肪酸ジエステルは澱粉との複合体結合形成能あるいはグルテンとの結合性に劣り単独では製パン性改良効果はグリセリン脂肪酸モノエステルの方がグリセリン脂肪酸ジエステルよりも大きく優れている。
【0020】又、グリセリン脂肪酸モノエステルとジグリセリン脂肪酸モノエステルではジグリセリン脂肪酸モノエステルの方が風味において良好であるが、澱粉との複合体形成能はグリセリン脂肪酸モノエステルの方が優れている。しかしながら、分子内の水酸基数が多いことからグルテンの伸展性改良効果についてはジグリセリン脂肪酸モノエステルは優れた効果を有している。又、ジグリセリン脂肪酸モノエステルとグリセリン脂肪酸モノエステルとは相溶性が良好で、且つ、ジグリセリン脂肪酸モノエステルが非晶質であるためにジグリセリン脂肪酸モノエステル中に溶解したグリセリン飽和脂肪酸モノエステルは結晶性が抑制される。従って、グリセリン飽和脂肪酸モノエステルとジグリセリン脂肪酸モノエステルとを混合して粉末化した場合グリセリン飽和脂肪酸モノエステルの水への分散性が向上され、グリセリン飽和脂肪酸モノエステルの製パン改良効果をあげるものと推定される。グリセリン不飽和脂肪酸モノエステルはこのグリセリン飽和脂肪酸モノエステルの結晶化を抑制すると同時に水和を促進しグリセリン飽和脂肪酸モノエステルの水分散性を向上させるのに寄与するものである。グリセリン脂肪酸ジエステルの混合された反応モノグリセライドをモノグリセライドと置きかえることが可能である。グリセリン脂肪酸ジエステルはグリセリン脂肪酸モノエステルに比較して製パン効果は小さいが、適当量の配合により製パン効果と同時に焼成されたパンの風味の改善が認められる。
【0021】又、グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステル及びジグリセリン脂肪酸モノエステルの混合組成物にグリセリンコハク酸脂肪酸エステル等の生地改良剤を併用することにより焼成されたパンの風味を損なうことなく、更に生地改良効果に優れた製パン用乳化剤組成物を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明で用いられるグリセリン飽和脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸は炭素数14〜22、好ましくは炭素数16〜18の脂肪酸を主成分とするものである。グリセリンとパルミチン酸あるいはステアリン酸等の脂肪酸との公知の方法によるエステル化反応、又はグリセリンと牛脂、豚脂、鶏脂、大豆油、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、パーム油等の動植物油脂又はそれらの水素添加物との公知の方法によるエステル交換反応、あるいはグリセリンと脂肪酸の低級アルキルアルコールとのエステルとの公知の方法によるエステル交換反応等の方法によって得られるグリセリン脂肪酸モノエステルとグリセリン脂肪酸ジエステルとを含む反応物から分子蒸留やクロマトグラフィー等の公知の方法でグリセリン脂肪酸モノエステルを分離濃縮して得られるが、通常は分子蒸留により濃縮されたいわゆる蒸留モノグリセライドが経済的に使用される。
【0023】本発明に用いられるグリセリン不飽和脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸は炭素数16〜22の不飽和脂肪酸であり、グリセリンとオレイン酸、リノール酸、エルシン酸等の不飽和脂肪酸との公知の方法によるエステル化反応、グリセリンとオレイン酸、リノール酸、エルシン酸等の不飽和脂肪酸と低級アルキルアルコールとのエステルとの公知の方法によるエステル交換反応、あるいはグリセリンと牛脂、豚油、鶏脂、大豆油,ナタネ油、コーン油、サフラワー油、パーム油等の不飽和脂肪酸を含む動植物油脂あるいはそれらの部分水素添加物との公知の方法によるエステル交換反応により得られるグリセリン不飽和脂肪酸モノエステルとグリセリン脂肪酸ジエステルとを含む反応物から分子蒸留、クロマトグラフィー等の公知の方法により分離濃縮して得られる。
【0024】本発明において使用されるグリセリン脂肪酸モノエステルは上記グリセリン飽和脂肪酸モノエステルとグリセリン不飽和脂肪酸モノエステルとの混合比率がグリセリン飽和脂肪酸モノエステル60〜80質量%及びグリセリン不飽和脂肪酸モノエステル40〜20質量%の範囲であることが必要である。グリセリン飽和脂肪酸モノエステル含有比率が80質量%を超える量の場合は改良剤組成物のパン生地への分散性が劣り、グリセリン飽和脂肪酸モノエステルの比率が60質量%より少ない場合においては十分なパンの品質が得られない。
【0025】本発明に用いられるグリセリン脂肪酸ジエステルは上記グリセリン飽和脂肪酸モノエステル又はグリセリン不飽和脂肪酸モノエステルの製造過程で得られる反応物から未反応のグリセリンを除去したもの、あるいはそれら反応物からグリセリン脂肪酸モノエステルを分離した残分をそのままあるいはそれらの混合物として用いることができる。これらのグリセリン脂肪酸ジエステルは必要に応じて脱臭、脱色等の精製処理が施される。又、ジグリセリン脂肪酸ジエステルは酵素反応を使用した公知の方法で得ることができる。
【0026】本発明におけるグリセリン脂肪酸モノエステルとグリセリン脂肪酸ジエステルの比率は、上記グリセリン飽和脂肪酸モノエステルとグリセリン不飽和脂肪酸モノエステルの混合物であるグリセリン脂肪酸モノエステル40〜65質量%及びグリセリン脂肪酸ジエステル60〜35質量%であることが必要である。グリセリン脂肪酸モノエステルの比率が40質量%より小さくなると改良効果が不充分となり、65質量%を超えると焼成されたパンの風味が劣るようになる。
【0027】本発明におけるジグリセリン脂肪酸モノエステルは上記グリセリン脂肪酸エステル類の製造方法におけるグリセリンをジグリセリンに置き代える形で製造することができる。即ち、ジグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応、ジグリセリンと脂肪酸の低級脂肪族アルコールエステル又は油脂とのエステル交換反応等によって得られる。得られた反応物から減圧蒸留、分子蒸留、クロマトグラフィー等の公知方法で高純度のジグリセリン脂肪酸モノエステルを得ることが可能であり、本発明に使用されるジグリセリン脂肪酸モノエステルはモノエステル純度は可及的高いことが望ましい。
【0028】本発明におけるジグリセリン脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸はパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸あるいはエルシン酸等の炭素数16〜22の飽和又は不飽和脂肪酸、好ましくは不飽和脂肪酸である。
【0029】本発明におけるパン改良剤は、上記のグリセリン脂肪酸モノエステルとグリセリン脂肪酸ジエステルとの混合物95〜85質量%及びジグリセリン脂肪酸モノエステル5〜15質量%との混合物より構成される。ジグリセリン脂肪酸モノエステルの比率が5質量%より小さい場合にはパン生地への分散が劣り十分な改良効果が得られず、ジグリセリン脂肪酸モノエステルの比率が15質量%以上になると焼成したパンの老化防止等の品質が不充分となる。
【0030】本発明におけるグリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステル及びジグリセリン脂肪酸モノエステルから構成されるパン用改良剤はグリセリンコハク酸脂肪酸エステルあるいはグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等の製パン生地改良剤と併用することが可能であり、これらの生地改良剤との併用においても上記グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステル及びジグリセリン脂肪酸モノエステル混合物から構成される改良剤の風味優位性が損なわれることなく良好なパン生地及びパン製品が得られる。
【0031】本発明による組成物はそれぞれの成分を加熱溶融混合したものを15℃以下の低温環境下に噴霧することにより効率的に粉末化される。又、ブロックとして固めた後、粉砕して粉末化しても良い。
【0032】また本発明組成物の添加量は製パン用の小麦粉に対し0.05〜1.0質量%、好ましくは0.2〜0.5質量%である。
【0033】本発明品は製パン工程において粉末で添加することが最も一般的な使用法であるが、プレミックスに添加すること、あるいは水に分散した後添加することも可能であり、特にその使用方法は限定しない。
【0034】
【実施例】以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0035】<実施例1>ヨウ素価25の大豆微水添油とグリセリンとをエステル化率30%でエステル交換反応を行い、得られた反応物から未反応のグリセリンを減圧留去して大豆微水添油反応モノグリセライド(グリセリン飽和脂肪酸モノエステル:38質量%、グリセリン不飽和脂肪酸モノエステル:15質量%、グリセリン脂肪酸ジエステル:39質量%、グリセリン脂肪酸トリエステル:8質量%)を得た。この大豆微水添油反応モノグリセライド100質量部にジグリセリンオレイン酸モノエステル(ポエムDO−100:理研ビタミン社製、ジグリセリン脂肪酸モノエステル:80質量%)10質量部を加えて加熱溶融し、この溶融混合物を−20℃の雰囲気下に噴霧し粉末を得た。
【0036】<実施例2>大豆極度硬化油とグリセリンとをエステル化率30%でエステル交換反応を行い、得られた反応物から未反応のグリセリンを減圧留去して大豆極度硬化油反応モノグリセライド(グリセリン飽和脂肪酸モノエステル:52質量%、グリセリン脂肪酸ジエステル:40質量%、グリセリン脂肪酸トリエステル:8質量%)を得た。この大豆極度硬化油反応モノグリセライド65質量部にジグリセリンオレイン酸モノエステル(ポエムDO−100)10質量部及びグリセリンオレイン酸モノエステル(エマルジーOL−100:理研ビタミン社製、グリセリン飽和脂肪酸モノエステル:15質量%、グリセリン不飽和脂肪酸モノエステル:85質量%)25質量部を加えて加熱溶融し、−20℃の雰囲気下に噴霧して粉末を得た。
【0037】<実施例3>ヨウ素価24の綿実微水添油とグリセリンとをエステル化率30%でエステル交換反応を行い、得られた反応物から未反応グリセリンを減圧留去して得られた綿実微水添油反応モノグリセライド(グリセリン飽和脂肪酸モノエステル:39質量%、グリセリン不飽和脂肪酸モノエステル:15質量%、グリセリン脂肪酸ジエステル:40質量%、グリセリン脂肪酸トリエステル:6質量%)100質量部にジグリセリンオレイン酸モノエステル(ポエムDO−100)15質量部を加えて加熱溶融し、−20℃の雰囲気下に噴霧し粉末を得た。
【0038】<実施例4>パーム極度硬化油とグリセリンとをエステル化率30%でエステル交換反応を行い、得られた反応物から未反応グリセリンを減圧留去して得られたパーム極度硬化油反応モノグリセライド(グリセリン飽和脂肪酸モノエステル:53質量%、グリセリン脂肪酸ジエステル:40質量%、グリセリン脂肪酸トリエステル:7質量%)100質量部に無水コハク酸15質量部を加え、85℃にて反応させ、パーム極度硬化油反応モノグリセライドのコハク酸エステルを得た。これにジグリセリンオレイン酸モノエステル(ポエムDO−100)10質量部、グリセリンオレイン酸モノエステル(エマルジーOL−100)10質量部を加えて加熱溶融し、−20℃の雰囲気下に噴霧し粉末を得た。
【0039】<実施例5>パーム極度硬化油とグリセリンとをエステル化率30%でエステル交換反応を行い、得られた反応物から未反応のグリセリンを減圧留去した後、分子蒸留法により蒸留濃縮して得られた高純度のパーム極度硬化油蒸留モノグリセライド(グリセリン飽和脂肪酸モノエステル:98質量%、グリセリン脂肪酸ジエステル:2質量%)100質量部に無水コハク酸25質量部を加えて85℃で反応させパーム硬化油蒸留モノグリセライドのコハク酸エステルを得た。このパーム極度硬化油蒸留モノグリセライドのコハク酸エステル50質量部、実施例4と同様にして得られたパーム極度硬化油反応モノグリセライド50質量部、グリセリンオレイン酸モノエステル(エマルジーOL−100)10質量部及びジグリセリンオレイン酸モノエステル(ポエムDO−100)10質量部を加えて加熱溶融し、−20℃の雰囲気下に噴霧し粉末を得た。
【0040】<比較例1>ヨウ素価25の大豆微水添油とグリセリンとをエステル化率30%でエステル交換反応を行い得られた反応物から未反応のグリセリンを減圧留去した後、分子蒸留を行い高純度の大豆微水添油蒸留モノグリセライド(グリセリン飽和脂肪酸モノエステル:71質量%、グリセリン不飽和脂肪酸モノエステル:27質量%、グリセリン脂肪酸ジエステル:2質量%)を得た。これを溶融して−20℃の雰囲気下で噴霧し粉末を得た。
【0041】<比較例2>実施例1で調整したヨウ素価25の大豆微水添油反応モノグリセライドを溶融して−20℃の雰囲気下に噴霧して粉末を得た。
【0042】<比較例3>比較例1で調製した大豆微水添油蒸留蒸留モノグリセライド100質量部にジグリセリンオレイン酸モノエステル(ポエムDO−100)10質量部を加えて溶融し、―20℃の雰囲気下にて噴霧し粉末を得た。
【0043】<比較例4>実施例5で調整したパーム極度硬化油蒸留モノグリセライド100質量部に無水コハク酸15質量部を加えて85℃で反応しパーム極度硬化油蒸留モノグリセライドのコハク酸エステルを得た。これにグリセリンオレイン酸モノエステル(エマルジーOL−100)20質量部を加えて加熱溶融し、−20℃の雰囲気下で噴霧し粉末を得た。
【0044】以上に記載した実施例及び比較例の試料のエステル組成を表−1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】《製パン試験》実施例及び比較例の試料の品質評価試験は以下に示す70%中種法食パンにて行った。
【0047】
《配合》
(中種) (本捏)
強力粉 70質量部 強力粉 30質量部イースト 2.3 上白糖 5イーストフード 0.1 食塩 2実施例/比較例試料 0.3 脱脂粉乳 2水 41.5 ショートニング 5 水 26【0048】
《工程》
(中種):混合時間 低速3分中速1分 (関東混合機社製:SS−71型混合機使用)
捏上温度 24℃ 醗酵条件 27℃ 4時間(本捏):混合条件 低速3分中速2分高速1分(油脂投入)低速2分高速6分 捏上温度 27℃(フロアー) 20分(分割) 分割機 (オシキリ社製DQE―2型使用)
(丸め) 丸め機 (オシキリ社製RQ型使用)
(分割重量) ワンローフ:450g(型/生地比容積=3.3)
プルマン :250g×6個 (型/生地比容積=4.2)
(丸め) ラウンダー (オシキリ社製RQ型使用)
(ベンチ) 20分(成型) モルダー (オシキリ社製WF型使用)
(ホイロ) 38℃ 85%RH ワンローフ:型上1.5cmでホイロ出し プルマン :型の85%でホイロ出し(焼成) 上火:200℃/下火:210℃ ワンローフ:25分 プルマン :35分【0049】《パンの容積測定》焼成したワンローフパンの容積(ml)を菜種置換法にて測定した。
【0050】《パンの老化度測定》焼成した後、室温に3日間保存したプルマンパンを2cm厚×5cm×5cm角にカットしてテストピースを作成し、レオメータにて50%圧縮した時の応力を測定した。
【0051】《製パン試験−1》実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2及び比較例3の試料について比較試験を行った。評価結果を表−2に示した。
【0052】
【表2】

【0053】比較例1及び3においてはパンの風味において後味に苦味が残り、比較例2においては風味は良好であるも機械耐性、パンの容積、内相において劣る結果であった。これに対して実施例1、2及び3においては総合的に比較例に優れる結果が得られた。
【0054】次に、上記の実施例1、比較例1及び比較例3のワンローフパンを使用してパネラー16名によりそれぞれのパンについての風味の良し悪しについて官能検査を実施し、結果をクレーマーの順位検定表より有意性を解析した。結果を表−3に示した。
【0055】
【表3】

【0056】点数25以下(風味が良い)、39以上(風味が悪い)の場合危険率5%で有意であり、実施例1は比較例1及び比較例3に比べて有意に風味が良い結果が得られた。
【0057】《製パン試験−2》製パン試験−1と同様にして、実施例4、実施例5及び比較例4の試料について比較試験を行った。結果を表−4に示した。
【0058】
【表4】

【0059】実施例4及び実施例5は比較例4に比較してパンの品質及び風味の点で優れた結果が得られた。上記実施例4と比較例4の試験区のパンについて、パネラー13名による三点識別法による官能検査を実施した。結果を表−5に示した。
【0060】
【表5】

【0061】実施例4と比較例4の間には風味について有意に差があり、実施例4のパンの風味が良好であることが示された。
【0062】
【発明の効果】本発明の組成物を使用することにより、従来使用されてきた製パン用乳化剤組成物に比較して、作業工程での生地物性が良好で風味の優れたパン製品が得ることが可能になる。
【出願人】 【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
【出願日】 平成12年10月10日(2000.10.10)
【代理人】 【識別番号】100063484
【弁理士】
【氏名又は名称】箕浦 清
【公開番号】 特開2002−112692(P2002−112692A)
【公開日】 平成14年4月16日(2002.4.16)
【出願番号】 特願2000−308933(P2000−308933)