トップ :: A 生活必需品 :: A21 ベイキング;生地製造または加工の機械あるいは設備;ベイキングの生地

【発明の名称】 パン類のクラムフレーバー組成物
【発明者】 【氏名】前田 竜郎

【氏名】竹谷 光司

【氏名】山田 昌治

【要約】 【課題】パンのクラム香を有するフレーバー組成物を提供することを目的とする。

【解決手段】発酵乳酸含有物質と酢類、味噌、醤油およびウスターソースから選ばれた少なくとも1種の発酵調味料とを含有する、パン類のクラムフレーバー組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 発酵乳酸含有物質と、酢類、味噌、醤油およびウスターソースから選ばれた少なくとも1種の発酵調味料とを含有することを特徴とする、パン類のクラムフレーバー組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パン類のクラムフレーバー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】代表的な製パン法としては、中種製パン法とストレート製パン法が挙げられる。国内の製パン業界では、製パン工程の安定性、得られたパンの老化耐性、品質の安定性などの点から中種製パン法が広く採用されている。この中種製パン法による場合は発酵時間を約4〜6時間要するため製パン材料の仕込みを行って実際にパンが焼き上げられて店頭に並ぶまでには通常6〜8時間が必要とされていた。近年製パン業界では焼き立てのパンを消費者にタイムリーに供給するために、深夜労働や早朝労働が常態となっている。そこで製パン工程を短縮することによってこれらの問題を改善することが望まれている。しかしながらスクラッチ製品において発酵時間を短くすればするほど香り、味に乏しいものとなり、パンの風味、特に発酵を主としたパンクラム香が落ち商品価値を著しく損なってしまう欠点があった。
【0003】また近年冷凍パン生地は欧米はもとより、我が国でも需要が増大している。冷凍生地はまとめて製造してストックしておくことができ、多品種、少量生産に向いているなど数多くの利点がある。冷凍生地の製造においては、通常の中種製パン法のように発酵時間を充分にとった場合、イースト活性の低下、焼き上がったパンの容積の減少やフィッシュアイなどにより外観が悪くなり、商品価値がないパンしか製造できない。そこで冷凍生地の製造工程においては、低温で生地を作り、一次発酵をほとんどとらない直捏法(速成法)が採用されている。しかし発酵時間が極端に短いために、スクラッチ製品に比べて容積が小さく、パンの風味である発酵を主とした発酵香が少なく、このため焼成したパンは風味、香りのよくないものしか得られなかった。
【0004】このような欠点を改良する方法として、液種法による風味の付与が試みれているが、この製法の欠点として、パンの風味、特に発酵を主としたパンクラム香がイースト臭、薬品臭、フルーツ臭など好ましくない独特の香りと交じり合い、本来の発酵によるパンクラム香を出すことができない。
【0005】その他の製パン法として小麦粉を主成分とするパン類の生地に、酢酸及び/又は食酢中の酢酸が、小麦粉に対して0.003重量%以上0.06重量%以下の量を添加して冷凍する冷凍生地の製造方法(特開平5−68469号公報参照)、パン生地に味噌を含ませて製することを特徴とする味噌入りパンの製法(特公昭62−181732号公報参照)、サンフランシス・サワー種の乳酸菌を小麦粉含有培地に培養して得られる培養物を生地に加えてパンを製造する方法(特公昭59−15604号公報参照)、醸造醤油を小麦粉その他のパン原料と共に混捏後常法により発酵、焼成する、パン類の製造法(特公平10−11258号公報参照)等が知られている。
【0006】これらの方法は冷凍障害を防いで製品の体積の低下を防止したり、添加物の有する風味を付与する目的で開発されたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はパンのクラム香を有するフレーバーを得るべく種々の物質について検討を加えた結果本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、発酵乳酸含有物質と酢類、味噌、醤油およびウスターソースから選ばれた少なくとも1種の発酵調味料とを含有することを特徴とする、パン類のクラムフレーバー組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】次に本発明をさらに詳細に説明する。本発明のクラムフレーバー組成物の原料として用いられる発酵乳酸含有物質としては、ヨーグルト(発酵乳)、乳酸菌飲料等の乳酸飲料、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等のチーズ類が挙げられる。
【0010】酢類としては米酢、酒粕酢、麦芽酢、果実酢、ワイン酢、各種穀物酢等が挙げられる。
【0011】味噌類としては白味噌、西京味噌、讃岐味噌、江戸甘味噌、相白味噌、御膳味噌、白辛味噌、信州味噌、赤味噌、津軽味噌、仙台味噌、越後味噌、佐渡味噌等の米味噌類、甘口麦味噌、辛口麦味噌等の麦味噌類、豆味噌、八丁味噌、三州味噌等の豆味噌類が挙げられる。
【0012】醤油類としては、濃口醤油、淡口醤油、溜醤油、再仕込み醤油、白醤油、魚醤油等が挙げられる。
【0013】ウスターソースとしてはアミノ酸をベースにして香辛料、酢などを加えて調製したものが挙げられる。例えば野菜類、香辛料を細かく砕いた後圧力釜に入れ適当量の水を加えて蒸し、配合槽に移し、これにアミノ酸液、カラメルなどを加えて攪拌し、温度が下がったところで食酢を加える。これを1カ月程放置して熟成させることによってウスターソースを得ることができる。このようにして得られたウスターソースは薄口ソースあるいは濃口ソースのいずれも本発明において使用することができる。
【0014】本発明のクラムフレーバー組成物を構成する各原料の配合割合は発酵乳酸含有物質と酢類、味噌、醤油およびウスターソースから選ばれた少なくとも1種の発酵調味料との重量比が1:0.01〜100、好ましくは1:0.04〜25、特に好ましくは1:0.05〜10の範囲である。
【0015】発酵乳酸含有物質が酢類、味噌、醤油およびウスターソースに対し100倍を超えると酸臭が強くなり香気バランスが保てなくなる。一方、味噌、醤油およびウスターソースが発酵乳酸含有物質に対し100倍を超えると香気バランスが保てなくなる。
【0016】本発明のクラムフレーバー組成物の使用量は製パン法あるいは調製するパンの種類によっても異なるが通常小麦粉に対し0.01〜15重量%、特に0.05〜10重量%の範囲が好ましい。
【0017】本発明のクラムフレーバー組成物の使用方法は特に制限を受けるものではないが、例えば製パン工程においてミキシング時に添加する方法、パン生地の焼成の直前に生地表面に噴霧等をする方法、パンを焼成した後クーリングラインの中で二流体ノズル等を使用して噴霧する方法等種々の手段が採用できる。
【0018】本発明において製パン時に用いる穀粉類としては、通常の製パンで用いられる穀粉類のいずれもが使用できる。例えば小麦粉、全粒粉、ライ麦粉、オーツ粉、コーンフラワー、未α化澱粉、食物繊維、それらの混合粉などを使用することができ、目的とするパンの種類などに応じてパン用穀粉類を適宜選択して使用すればよい。一般的にはパン用小麦粉が最も好ましく用いられる。パン用小麦粉を使用する場合は、通常のパン用小麦粉のいずれもが使用でき、特に制限されるものではない。パン用小麦粉としては、例えばカナダ産硬質春小麦(例えばカナダ・ダークノーザン・スプリング・ウィートなど)から得られる小麦粉を挙げることができる。また空気分級、篩分けによって特定の粒度範囲の小麦粉を調製して蛋白質含量を増加させたパン用小麦粉なども使用でき、さらにはバイタルグルテンなどを添加したパン用小麦粉も使用できる。
【0019】本発明のクラムフレーバー組成物は、油脂類や糖類等の配合の少ないリーンな配合のパン類、油脂類や糖類等の配合の多いリッチな配合のパン類のいずれのパン類の製造に対しても使用でき、いずれの場合も香り、食味に優れたパン類を得ることができる。
【0020】例えばワンローフ、角型食パン、プルマンブレッド、バゲット、グリッシーニ、フランスパン、アルチザンブレッド、ライブレッドなどのブレッド類、またハードロール、カイザーロール、ウインナーロール、プレーチヒエンなどのハードロール類、また、ソフトロール、ブリオッシュ、クロワッサン、クレセントロール、バターロール、スイートロールなどのソフトロール類、コーヒーケーキ、アップルロール、シュトーレンなどのスイートドウ類、バンズ類、マフィン類、アンパン、クリームパン、チョコレートパン、メロンパンなどの菓子パン類、カレーパン、イーストドーナッツなどの揚げパン、中華饅頭やその他の蒸しパン類などを製造することができるが、特にサワー系のパン類に適している。
【0021】
【実施例】次に本発明をさらに詳細に説明するために実施例を掲げるが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0022】実施例1小麦粉(「ミリオン」日清製粉株式会社製商品名)100重量部、生イースト(「オリエンタルイースト」オリエンタル酵母工業株式会社製商品名)2重量部、イーストフード(「c−オリエンタルフード」オリエンタル酵母工業株式会社製商品名)0.02重量部、食塩2重量部、砂糖6重量部、脱脂粉乳2重量部、ショートニング5重量部および水70重量部を用い、これにヨーグルト2重量部、米酢0.2重量部、米味噌0.5重量部からなるクラムフレーバー組成物を添加して表1に記載した製パン工程に従って山型食パンを製造した。得られた山型食パンを10名のパネラーにより表2に示す評価基準により官能評価を行った。その結果クラムの風味4.4、外観4.5、内相4.2および食感4.2の値が得られた。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】実施例2実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えてヨーグルト2.0重量部ワインビネガー0.2重量部および淡口醤油1.5重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果クラムの風味4.5、外観4.4、内相4.3および食感4.2の値が得られた。
【0026】実施例3実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えて乳酸菌飲料2.0重量部、リンゴ酢0.2重量部およびウスターソース1.0重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った結果、クラムの風味4.3、外観4.5、内相4.2および食感4.1の値が得られた。
【0027】実施例4実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えてヨーグルト3.0重量部および白醤油1.5重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った結果、クラムの風味4.2、外観3.7、内相3.9および食感3.7の値が得られた。
【0028】実施例5実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えて乳酸菌飲料3.0重量部および淡口醤油3.0重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った結果、クラムの風味4.3、外観3.8、内相4.1および食感3.9の値が得られた。
【0029】実施例6実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えてヨーグルト3.0重量部および薄口ソース2.0重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った結果、クラムの風味4.2、外観3.8、内相3.9および食感3.7の値が得られた。
【0030】実施例7実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えて乳酸菌飲料1.5重量部および豆味噌0.5重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った結果、クラムの風味4.2、外観3.9、内相4.1および食感4.0の値が得られた。
【0031】実施例8実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えてヨーグルト1.5重量部および淡口醤油1.5重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った結果、クラムの風味4.3、外観4.0、内相4.0および食感4.1の値が得られた。
【0032】実施例9実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えてヨーグルト1.5重量部および薄口ソース1.0重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った結果、クラムの風味4.3、外観3.8、内相4.0および食感4.1の値が得られた。
【0033】実施例10実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えてヨーグルト0.5重量部および甘口麦味噌0.3重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った結果、クラムの風味4.0、外観3.8、内相3.6および食感3.7の値が得られた。
【0034】実施例11実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えてヨーグルト0.5重量部および白醤油1.0重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った結果、クラムの風味4.1、外観3.8、内相3.8および食感3.8の値が得られた。
【0035】実施例12実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えて乳酸菌飲料0.5重量部および薄口ソース0.5重量部からなるクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った結果、クラムの風味3.9、外観3.6、内相3.5および食感3.6の値が得られた。
【0036】比較例1〜5実施例1において用いたクラムフレーバー組成物に代えて表3に示したクラムフレーバー組成物を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたパンを実施例1と同様に官能評価を行った。試験結果を示せば表3のとおりである。
【0037】
【表3】

【0038】
【発明の効果】本発明のクラムフレーバー組成物は直捏法や中種法のいずれの製パン法にも使用することができ、特に短時間発酵法においてクラム香を付与し、天然の香りの不足する部分を補強し、即存の香りの印象を補って香味や芳香を増強したり、変化させたり、改良したりすることができる。また本発明のクラムフレーバー組成物は油脂類、糖類等の配合の少ないリーンな配合のパン類や、油脂、糖類等の配合の多いリッチな配合のパン類のいずれのパン類の製造に対しても使用できる。
【出願人】 【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
【出願日】 平成12年9月5日(2000.9.5)
【代理人】 【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸 (外4名)
【公開番号】 特開2002−78444(P2002−78444A)
【公開日】 平成14年3月19日(2002.3.19)
【出願番号】 特願2000−267934(P2000−267934)