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【発明の名称】 ドーナツ及びその製造方法
【発明者】 【氏名】安藤 正康

【氏名】佐藤 信良

【要約】 【課題】

【解決手段】超高糖域で高い発酵力を有し、高い耐糖性を有する酵母を使用して、ドーナツを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ドーナツの配合において、超耐糖性酵母を使用してなるドーナツ。
【請求項2】ドーナツの配合において、超耐糖性酵母を使用して生地膨張させてなるドーナツの製造方法。
【請求項3】該超耐糖性酵母がサッカロミセス・セレビシエP−712(FERM P−17271)であることを特徴とする請求項1ないし2のいずれか1項に記載の酵母。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新しい風味と食感を有する新規なドーナツ及びその製造方法に関する。
【0002】詳しくは、超高糖域で高い発酵力を有し、耐糖性を有する超耐糖性酵母を使用することで、従来のイーストドーナツ及びケーキドーナツの何れにもない優れた特性を有する新規なドーナツを提供する。
【0003】
【従来の技術】一般に、ドーナツを大別すると、強力粉を主原料とし、酵母を使用して生地を膨らませるイーストドーナツと、薄力粉を主原料とし、ベーキングパウダーによって生地を膨らませるケーキドーナツの二種類がある。前者のイーストドーナツはパンに近い引きのある食感と発酵による風味を有するが、発酵工程をとるので製造に長時間を要すると共に発酵室等の設備が必要である。また原料配合が比較的リーンであるため老化が早いという欠点がある。一方、後者のケーキドーナツは発酵工程をとらないため短時間に製造でき、また原料配合がリッチであるため老化は遅いという利点を有するが、イーストドーナツに比較して風味に欠け、食感もややソフトさに欠け、ボソついたりすることがあると共に、芯ができ易く、大きなものを作る場合フライ時の火通りが悪いという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を解決すべく、超高糖域で優れた高い発酵力を有し、かつ高い耐糖性をも有する酵母を使用してなるドーナツを提供する。詳細には、小麦粉100重量部に対し、砂糖40重量部を使用する生地において、1.22重量部の酵母(水分含量67.3%)を含む生地40gあたり、30℃、2時間で110ml以上のCO2を発生させる耐糖性を有する超耐糖性酵母を使用して新規なドーナツを提供することを目的とする。
【0005】日本人の嗜好として糖量の多い甘さの強い菓子やパンが好まれている現状に鑑み、糖量が、小麦粉100重量部に対し、糖30〜40重量部以上の超高糖生地でも、油脂や卵の多い配合でも浸透圧の影響を受けにくく、発酵力が低下しにくい、従来の酵母にはない高い耐糖性を有する酵母(超耐糖性酵母)を使用する新規なドーナツを提供する課題でなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究に努めた結果、ドーナツの配合において、高い耐糖性を有する新規有用酵母を使用することで、特徴のある風味と食感などを有するドーナツが提供可能であることを見出し、知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】本発明は、ドーナツの配合において、超耐糖性酵母を、混捏して、ドーナツの製造の常法によって分割、整形、フライを行うことを特徴とするドーナツの製造法をも提供するものである。
【0008】小麦粉100重量部に対し、砂糖40重量部を使用する生地において、1.22重量部の生酵母(水分含量67.3%)を含む生地40gあたり、30℃、2時間で110ml以上のCO2を発生させる耐糖性を有する超耐糖性酵母をドーナツに使用する。高い耐糖性を有する酵母は、例えば、サッカロミセス・セレビシエP−712(FERM P−17271)であり、該酵母を使用することを特徴とする新規なドーナツに関する。
【0009】本発明に係る超耐糖性酵母は、超高糖域でも優れた高い発酵力を有し、かつ高い耐糖性をも有する酵母である。その具体的な特徴は、次のとおりである。■小麦粉100重量部に対し、糖5〜25重量部を添加する食パン〜菓子パン(低糖〜高糖)配合生地において、ストレート製法および中種製法で汎用の普通酵母(例えば、市販品:レギュラー酵母(オリエンタル酵母工業(株)製品))と同等の発酵力を有し、ボリューム感のある品質の安定したパンができる。■小麦粉100重量部に対し、糖30〜50重量部を含むような非常に高い糖濃度の生地で発酵できる耐糖性を有している。
【0010】本発明に係る超耐糖性酵母を得るには、各種の方法が採用できるが、例えば交雑法によって目的とする菌株を効率よく取得することができる。それには、先ず、当社パン酵母保存菌株の中から発酵力が強く、耐糖性を高める形質を備えた菌株を選抜し、それぞれの菌株を常法に従い胞子形成培地に塗沫して、胞子を形成させた後、胞子の性質を調べ、古典的な交雑法により育種した菌株から、通常のパン酵母と同様の製パン性能をもち、かつ小麦粉100重量部に対し、40重量部の糖配合の生地での発酵が強い株をスクリーニングすればよい。もちろん、突然変異処理して目的とする菌株を創製することができる。なお、突然変異処理としては、γ線、紫外線、温度差等物理的処理のほか、エチジウムブロマイド、ナイトロジェンマスタード、ジエポキシブタン、コルヒチン、パーオキサイド、プリン誘導体等変異誘導剤処理といった常法が広く利用できる。このようにして得た新菌株は、限定されるわけではないが、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)P−712と命名され、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−17271として寄託されている。その菌学的性質は次のとおりである。
【0011】
P−712株の菌学的性質1.生育状態 YM液体培地で生育良好 細胞の形状 球形〜卵形 3〜7×4〜8μ MM寒天培地 生育良好 コロニー(白色 光沢 平滑)
2.子のう胞子 酢酸カリ培地で形成、子のう胞子形状 球形3.各生理的性質 ■至適生育条件 温度28〜32℃ pH4.5〜6.5 ■生育の範囲 温度 5〜40℃ pH2.5〜8.0 ■硝酸塩の同化 なし ■脂肪分解 なし ■カロチノイド生成 なし ■顕著な有機酸生成 なし ■ビタミン要求性 ビオチン及びパントテン酸 ■耐糖性 小麦粉100重量部に対し、糖30〜40重量部を超える糖配合の生地において充分な発酵力を発揮する4.炭素源の発酵性と資化性 発酵性 資化性 D−グルコース + + D−ガラクトース + + 麦芽糖 + + ショ糖 + +【0012】本菌株は、上記のような菌学的性質を有し、サッカロマイセス・セレビシエに属するものと認められるが、超高糖域で高い発酵力を有し、しかも低糖〜中糖域でも高い発酵力を有するという特徴をもっている。このような菌株は従来既知の菌株には見当らず、新菌株と認定した。本発明においては、本菌株のみをその権利として包含するものではなく、上記した特性を有する菌株すべてを包含し、人工的に作出したもの、自然界から分離したものを問わず、すべて包含するものである。
【0013】本発明に係る菌株は、次のようにして選択、育種することができる。先ず、耐糖性を有する酵母については、小麦粉100重量部に対し、40重量部の糖を使用する培地において、1.22重量部の酵母(水分含量67.3%)を含む生地40gあたり、30℃、2時間で110ml以上のCO2を発生する菌株を分離すればよい。
【0014】本発明で使用する超耐糖性酵母は、超高糖域で高い発酵力を有し、冷凍耐性を有する点で極めて特徴的であり、ケーキドーナツにおける高浸透圧領域でも発酵力を有しているので、従来用いられていたベーキングパウダーに置き換えて該超耐糖性酵母が用いられるばかりか、ベーキングパウダーでは得られなかった新しい風味と食感がケーキドーナツに付与できる点で特徴的である。一方、イーストドーナツにおいても該超耐糖性酵母の使用が可能であり、該超耐糖性酵母を用いたイーストドーナツは、菓子でもないパンでもない従来にない新しい風味と食感を有するという点でも特徴的である。
【0015】本発明において、ドーナツの配合としては、例えば、小麦粉等の穀粉、澱粉、ポテトフラワー、糖類、食塩、粉乳、油脂、卵粉、膨張剤、還元剤、モルトフラワー、イーストフード等を適宜組合せて配合したものが通常に使用され、特に限定されない。これらは、例えば、イーストドーナツ用配合でも、ケーキドーナツ用配合でもよい。
【0016】本発明はドーナツの配合において、超耐糖性酵母を使用してドーナツを得ることを特徴として、本穀粉100重量部に対し、2.0〜8.0重量部の酵母量、より好ましくは、2.5〜5.0重量部の酵母量の超耐糖性酵母を使用する。
【0017】例えば、イーストドーナツ配合の場合、イーストドーナツの製造に一般に使用されている配合に、超耐糖性酵母を使用するもので、小麦粉としては強力粉を主体とするものを使用するが好ましい。好ましい配合例としては、特に限定されないが、小麦粉100重量部、小麦粉以外の穀粉0〜30重量部、澱粉0〜10重量部、ポテトフラワー0〜10重量部、超耐糖性酵母2〜4重量部、糖類3〜20重量部、食塩1〜2重量部、粉乳0〜10重量部、シヨートニング1〜20重量部およびビタミンC、膨張剤、イーストフード、香味等を若干量含むものが挙げられる。
【0018】イーストドーナツの製造方法に関しては、イーストドーナツ配合に水又は/及び卵を入れて混捏して、分割、整形、フライすることによって製造されるが、本発明においては、原料として超耐糖性酵母を加えること、製造工程において発酵工程を加えること以外は、通常のイーストドーナツの製造法に従って行われる。すなわち、イーストドーナツ配合に、超耐糖性酵母2〜4重量部、更に必要により卵(全卵)を加えて混捏して、10〜20分間ねかせを行った後、常法に従って分割、整形し、190〜200℃付近の温度で油揚げ(フライ)すれば本発明のドーナツが得られる。
【0019】また、ケーキドーナツの配合は、ケーキドーナツの製造に一般に使用されている配合に超耐糖性酵母を使用したものをいい、例えば、小麦粉等の穀粉、澱粉、ポテトフラワー、超耐糖性酵母、糖類、食塩、粉乳、油脂、卵粉、膨張剤等を適宜組合せたものが使用される。この際使用する小麦粉としては、薄力粉を主体としたものを使用するのが好ましい。配合の好ましい例としては、限定されないが、小麦粉100重量部、小麦粉以外の穀粉0〜10重量部、澱粉0〜20重量部、大豆粉0〜5重量部、糖類15〜50重量部、粉乳0〜10重量部、食塩0〜1重量部、油脂0〜10重量部、膨張剤2〜5重量部、卵粉0〜10重量部、植物蛋白0〜5重量等を配合したものが挙げられる。
【0020】ケーキドーナツの製造方法に関しては、ケーキドーナツ配合に水又は/及び卵を入れて混捏して、分割、整形、フライすることによって製造されるが、本発明においては、原料として超耐糖性酵母を加えること、製造工程において発酵工程を加えること以外は、通常のケーキドーナツの製造法に従って行われる。すなわち、ケーキドーナツ配合に、超耐糖性酵母を3〜5重量部、更に必要により卵(全卵)を加えて混捏して、10〜20分間発酵させた後、常法に従って分割、整形し、190〜200℃付近の温度で油揚げ(フライ)すれば本発明のドーナツが得られる。
【0021】以下、実施例によってさらに本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を制限するものではない。当業者は、本明細書に記載に基づいて容易に本発明に修飾、変更を加えることができ、それらは本発明の技術分野に含まれる。
【0022】
【実施例1】下記条件にて、本発明に係る超耐糖性酵母(FERM P−17271)を30Lジャーファーメンターにより、定法に従いアルコール制御を行いながら流下培養した。培養の終了した酵母を吸引濾過により、水分含量を67±3になるように脱水した。
【0023】
(種培養) 糖量(ブドウ糖換算) 1035.0g 尿素 103.0g リン酸1ナトリウム 20.7g 2水和物 種酵母量(湿量) 20.0g*1【0024】
(30Lジャー本培養) 糖量(ブドウ糖換算) 1400.0g 尿素 140.0g リン酸1ナトリウム2水和物 28.0g 種酵母量(湿量) 420.0g*2) メーカー:オリエンタルバイオサービスK.K.
名 称:FERMENTER CONTROL SYSTEM MC-10 容 量:30L 攪拌子回転数:600rpm 通気量:16L/min*1):250mlのYPD培地/1L容坂口フラスコに1白金耳植菌し、30℃で2日間培養したのち、4本分全量をそのまま種酵母として用いた。
【0025】*2):種培養で得られた菌体を遠心分離操作によって分離し、脱イオン水により洗滌した後、その一部を使用した。
【0026】
【実施例2】日本イースト工業会で定める酵母のガス発生量の測定法に準じて、各酵母の耐糖性を測定した。すなわち、実施例1において製造した超耐糖性酵母、市販のレギュラー酵母(オリエンタル酵母工業(株)製品)2菌株の比較試験を、下記の配合及び工程条件により30℃、120分間のガス発生量をファーモグラフにより測定した。得られた結果を図1に示した。
【0027】以下の実施例において、超耐糖性酵母とは、実施例1で製造した酵母を用いた。
(配合割合:対小麦粉重量部)

【0028】
(工程)
ミキサー : ホバートミキサー ミキシング : 低速3分 捏上温度 : 30℃ 発酵温度 : 30℃ 測定 : ファーモグラフ((株)アトー製)、生地量40g、30℃、2時間のtotalガス量測定【0029】図1の結果から明らかなように、小麦粉100重量部に対し、糖を30〜50重量部含むような非常に高い糖濃度の生地でも、本発明に係る超耐糖性酵母は、これを充分に発酵できる耐糖性を有していることが確認された。
【0030】以下、実施例の配合割合は、対小麦粉重量部で示す。
【0031】
【実施例3】超耐糖性酵母を用いて、下記する配合及び工程によりケーキドーナツを製造した。コントロールとしてベーキングパウダーを用いて行った。
(配合割合:対小麦粉重量部)

【0032】(工程)
発酵(フロア) 28℃( 85%RH)
発酵(フロア)時間 60分分割重量 40g油揚時間 15分油揚温度 190℃注)但し、コントロール分については、発酵(フロア)を取らない。
【0033】ベーキングパウダーを使用したコントロールのケーキドーナツは、フライ中の加熱で生地膨張の作用があり、揚げあがり時に最大のボリュームになるが、酵母を使用する場合は油揚げ前の発酵により気泡が大きくなっているため、フライ中にボリュームが変わらない。気泡が大きい分、食感はソフトで、口当たり、口溶けは良くなる。ベーキングパウダー等の化学膨張剤を使わないケーキドーナツ作りが可能となった。従来のケーキドーナツにない、新しい風味のケーキドーナツが得られた。
【0034】
【実施例4】超耐糖性酵母を用いて、下記する配合及び工程によりイーストドーナツを製造した。比較試験として市販のレギュラー酵母(オリエンタル酵母工業(株)製品)を用いて行った。
(配合割合:対小麦粉重量部)

【0035】(工程)
捏ね上げ温度 24℃発酵(フロア) 28℃(85%RH)
発酵(フロア)時間 30分又は60分分割重量 50g油揚時間 10分油揚温度 190℃【0036】(結果)

【0037】本実施例の超耐糖性酵母を使用するイーストドーナツは、発酵(フロア)時間を長く取れば、ボリュームが増し、素材の風味を消さない程度の好ましい発酵臭を有していた。レギュラー酵母は耐糖性が弱いためか、発酵時間(フロア)を長くすると、死滅酵母のにおいが強くなる傾向にあった。
【0038】本実施例で製造したお菓子的な生地は、甘くて、ふっくらとして、且つ生地がしっとりしていて、ケーキでもないパンでもないの中間的な新しい食感であった。
【0039】通常の生地は小麦粉100重量部に対し、糖20重量部程度の菓子パン配合生地で製造する。上述の配合は小麦粉100重量部に対し、40重量部もの高い糖濃度であるが、超耐糖性酵母の発酵力を利用することが可能となった。汎用の他の酵母ではほとんど発酵しない、パンの糖濃度を超える洋菓子的な生地の甘さにも利用可能であることが示された。
【0040】
【発明の効果】超高糖域で発酵力及び高い耐糖性を有する酵母、つまり超耐糖性酵母を使用するドーナツに関し、ケーキドーナツにおいては、ベーキングパウダーを用いることなく、風味、食感に優れた特性を有する新しいタイプのドーナツを提供することが可能となった。また、イーストドーナツにおいても、ケーキとパンの中間的な食感で、新規な風味のドーナツを提供することが可能となった。
【出願人】 【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
【出願日】 平成12年8月25日(2000.8.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−65146(P2002−65146A)
【公開日】 平成14年3月5日(2002.3.5)
【出願番号】 特願2000−256163(P2000−256163)