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【発明の名称】 シュー皮、シュー菓子、及びその製造方法
【発明者】 【氏名】水口 建治

【氏名】尾林 伴和

【氏名】塚田 博幸

【要約】 【課題】新規な外観、並びに新規な風味及び食感を有し、製品の形態を一定にすることが可能なシュー皮及びシュー菓子、並びにその製造方法を提供する。

【解決手段】シュー生地の表面にパン生地を巻き付けて焼成することにより、シュー生地の膨張を安定化させて、製品の形態を一定にすることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部に空洞部を有するシュー皮本体の表面に、パンが一体焼成されていることを特徴とするシュー皮。
【請求項2】 パン生地の形状が渦巻き状である請求項1に記載のシュー皮。
【請求項3】 パン生地がブリオッシュ生地である請求項1又は請求項2に記載のシュー皮。
【請求項4】 シュー生地とパン生地の重量比が、シュー生地:パン生地=80:20〜65:35である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のシュー皮。
【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のシュー皮に具材を詰めてなることを特徴とするシュー菓子。
【請求項6】 シュー生地をシューの形に成形し、絞り出し袋に詰めた一次発酵済みのパン生地を該シュー生地の表面に絞り出し、二次発酵させ、焼成してシュー皮となし、シュー皮内に具材を詰めることを特徴とするシュー菓子の製造方法。
【請求項7】 焼成が、200℃以上230℃以下の温度で、25分乃至35分間加熱して行われることを特徴とする請求項6に記載のシュー菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シュー生地とパン生地を組み合わせて焼成してなるシュー皮と、該シュー皮に具材を詰めてなるシュー菓子、及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、シュー皮本体の表面に、パンが一体焼成されていることにより、新規な外観を有し、今までにない風味及び食感を有するシュー菓子とその製造方法に関するものである。本明細書において百分率は、特に断りのない限り重量による表示である。
【0002】
【従来の技術】シュー生地のお菓子は、ふんわりと膨らんで焼き上がり、中央に空洞ができることが特徴であるケーキ生地のお菓子で、香ばしく口当たりの軽い、親しみやすいものである。フランスのポン・ヌフ(pont-neuf)は、シュー生地の表面にパイ生地を十文字にかけて焼き上げ、上面をフランボワーズジャムと粉糖で飾ったシュー菓子の一つとして有名である(洋菓子百科事典、同朋舎出版、第46乃至47頁、1990年)。
【0003】近年、このシュー菓子にパイ生地を組み合わせることにより、今までにない新規な外観や風味及び食感を有するお菓子が提案されている。例えば、特開平6−327408号公報において、シュー生地を上からパイ生地で覆って完全に被覆するようにしたものが提案されている(以下、従来技術1として記載する)。また、特開平10−66502号公報において、天板の上へシュー生地を絞り出し、シュー生地の上にパイ生地を載置して焼成するようにしたものが提案されている(以下、従来技術2として記載する)。さらに、特開2000−157150号公報において、シュー皮の下部と下部以外の表面にパイ皮断片が複数散在して成形された複合菓子が提案されている(以下、従来技術3として記載する)。
【0004】しかしながら、外観や風味及び食感を改良する目的で、シュー生地とパン生地とを組み合わせたシュー菓子は今までに知られていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術1乃至3のようなパイとシューの複合菓子は、焼成の段階でシュー生地が全体に大きく膨れ、パイ生地の部分にも亀裂を生じるという恐れがあり、製品の形態を一定にするには、パイ生地とシュー生地の比率や、焼成条件を細かく設定する必要が伴っていた。また、シュー皮の全体をパイ皮で覆ってしまうために、複合菓子でありながら、シュー皮はパイ皮の欠点を補うためだけになってしまい、シュー皮の特徴である香ばしさやふわふわとした食感が直接伝わってこないという問題点も挙げられる。
【0006】さらに、前記従来技術1乃至3に限らない問題として、一般的に、シュー菓子やパイ菓子、及びパンなどは、オーブンを使って焼成する際、天板の中心部と縁ではオーブンの加熱具合が異なるため、天板上の設置位置の違いにより、焼成具合に差が生じ、同天板の焼成品の中で規格外の焼成品が発生するため、歩留まりの減少が問題になっている。
【0007】本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を進めていたところ、シュー生地と組み合わせる生地に、イーストを使用した発酵パン生地を用いて、シュー生地の上に渦巻き状に絞り出し、焼成することにより、シュー生地及びパン生地ともに亀裂が生じずに焼きあがることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】さらに、シュー皮の空洞部に様々な具材を詰めることによりシュー菓子のバリエーションを増やすことが可能な製品を提供するとともに、パンをシュー皮の表面に巻き付けることで、焼成の際のシュー生地の膨張を安定化させて、製品の形態を一定にするようにしたシュー皮、シュー菓子及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するための本発明の第一の発明は、内部に空洞部を有するシュー皮本体の表面に、パンが一体焼成されていることを特徴とするシュー皮である。ここで、パン生地の形状は渦巻き状であること(以下、態様1と記載する。)、パン生地はブリオッシュ生地であること(以下、態様2と記載する。)、及びシュー生地とパン生地の重量比がシュー生地:パン生地=80:20〜65:35であること(以下、態様3と記載する。)を望ましい態様としてもいる。
【0010】前記の課題を解決するための本発明の第二の発明は、前記第一の発明のシュー皮に具材を詰めてなることを特徴とするシュー菓子である。
【0011】前記の課題を解決するための本発明の第三の発明は、シュー生地をシューの形に成形し、絞り出し袋に詰めた一次発酵済みのパン生地を該シュー生地の表面に絞り出し、二次発酵させ、焼成してシュー皮となし、シュー皮内に具材を詰めることを特徴とするシュー菓子の製造方法である。ここで、焼成が、200℃以上230℃以下の温度で、25分乃至35分間加熱して行われること(以下、態様4と記載する。)を望ましい態様としてもいる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の第一の発明は、内部に空洞部を有するシュー皮本体の表面に、パンが一体焼成されていることを特徴とするシュー皮である。該シュー皮は、シュークリームやエクレアが有する特徴である香ばしさやふわふわとした食感が充分に生かされている。尚、一体焼成とは、シュー生地の表面にパン生地を接合した状態で焼成することを意味し、使用するパン生地は、イーストを使用した発酵パン生地が望ましく、バターと牛乳を混合したパン生地、卵を混合したパン生地、バターと卵を混合したブリオッシュ生地等を例示することができる。その中で、ブリオッシュ生地を使用して組み合わせることによって、今までのシュー菓子には無い新しい風味や食感を生み出し、シュー生地とブリオッシュ生地の焼色の違いを利用することでシュー皮の外観に装飾を施すことが可能である。
【0013】また接合する形状としては、パン生地をシュー生地の上部に絞り出し、シュー生地の側面にはパン生地が付かないように残すことが望ましい。シュー生地の上に絞り出すパン生地の形状は、円盤状、リング状、同心円状、十字架状等を例示することが可能であるが、焼成の段階で均等に膨張させるために渦巻き状にすることが望ましく、さらにクローバーの葉形を縁取ったような形状にすることも望ましい。パン生地の形状を、前記、渦巻き状及びクローバーの葉形を縁取った形状にすることにより、焼成の際に、パン生地に対する膨張に伴う力が放射状に均等に分散される。さらにパン生地はシュー生地より膨張が少ないために、絞り出したパン生地によってシュー生地が横方向へ膨張することが抑えられ、シュー生地は縦方向に良く膨張する。これによって、焼成品の形状は一定となり、製品の歩留まりは飛躍的に向上する。さらに、シュー生地とパン生地の重量比は、シュー生地:パン生地=80:20〜65:35であることが望ましい。このような重量比にすることにより、焼成時に亀裂が生じずに形態が安定し、シューとパンの両方を味わえる新規な食感が得られることになる。
【0014】本発明の第二の発明は、シュー皮に具材を詰めてなることを特徴とするシュー菓子であり、焼成されたシュー皮の空洞内に充填する具材は、カスタードクリームの他に、生クリーム、チョコレートクリーム、コーヒークリーム、アイスクリーム、マロンペースト、小豆あん及びジャム類などを例示することができる。
【0015】本発明の第三の発明は、シュー生地をシューの形に成形し、絞り出し袋に詰めた一次発酵済みのパン生地を該シュー生地の表面に絞り出し、二次発酵させ、焼成してシュー皮となし、シュー皮内に具材を詰めることを特徴とするシュー菓子の製造方法である。
【0016】このような製造方法は、工業的には、連続的に行うことが可能であり、例えば、移動可能な天板上でシュー生地を成形し、パン生地を絞り出し、発酵させ、コンベアーに天板を置いて加熱される形態に設置しておけば、発酵及び焼成を連続的に行うことが可能である。焼成温度は、オーブンの仕様により、下火のみ、又は上火及び下火の両方を備えたオーブンにも適用することが可能であり、例えば、200℃乃至230℃が望ましい。また、焼成時間においても、使用するオーブンごとに、適宜、設定することが可能であり、例えば、25分乃至35分が望ましい。焼成後のシュー菓子は、その外観を最大限生かすために、さらに直接装飾を施すことが可能であり、粉糖を塗したり、生クリーム、チョコレートクリーム、コーヒークリーム及びジャムを塗布したり、又は棒状のチョコレートを付加することができる。
【0017】次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0018】
【実施例】実施例1本願発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本願発明の一実施例のシュー皮の斜視図である。図2は、図1のシュー皮の縦断面図である。この実施例におけるシュー皮は、図1に示すように、シュー皮(2)と、該シュー皮(2)の表面に一体焼成されている渦巻き状のパン(1)から構成されるようにしたものである。なお、図2に示すように、図1のシュー皮(2)の内部は空洞部(3)が形成されている。
【0019】実施例2図3は、本願発明の他の実施例のシュー皮の斜視図である。図3においては、内部に空洞部を有するシュー皮(2)本体の表面に一体焼成されているクローバーの葉形を縁取った形状のパン(4)から構成されているようにしたものである。
【0020】実施例3(シュー菓子の製造)
1.シュー皮の製造(1)パン(ブリオッシュ)生地作成強力粉(東京製粉社製)250g、インスタント・ドライ・イースト(低糖用、日仏商事社製)7g、グラニュー糖(大日本明治精糖社製)12g、塩5gをミキサーボール(愛工舎社製)に入れてフックを使用して混ぜ合わせ、30℃に温めた全卵200gと水40gを加えて25乃至27℃で保温しながら3分間攪拌した。さらに、軟らかくしたバターを加えて、生地温度を約27℃に保ちながら4分間攪拌した。以上のように配合したブリオッシュ生地を30乃至35℃の温浴中に浸して一次発酵させた。
【0021】(2)シュー生地作成無塩バター(森永乳業社製)200g、水500g、塩5gを鍋に入れて沸騰させ、火を止めて、薄力粉(東京製粉社製)300gを鍋に一度に加えて木ベラで切るようにこねて混ぜ、良く火を通した。次に、これをミキサーに移し替え、ビーターで攪拌し、生地粘度を調整しながら数回に分けて全卵を加えて混ぜ合わせた。
【0022】(3)成形天板にベーキングシート(遠藤孝商店社製、品番012B−4)、又はシルパット(遠藤孝商店社製、品番062B−2)を敷き、その上に直径50乃至60mm、厚み8乃至12mmの円盤状にシュー生地を80個絞った。次に一次発酵させたパン生地を、直径5mmの口金を入れた絞り出し袋(遠藤孝商店社製、品番048B−4)に詰めて、シュー生地とパン生地の重量比がシュー生地:パン生地=70:30となるように前記シュー生地の上に渦巻き状に絞り出した。次に、絞り出したパン生地が乾かないように、全体に霧を吹きつけてから、天板に蓋をして、25℃で保温しながら、50分間二次発酵させた。
【0023】(4)焼成天板の蓋を外し、オーブンに入れて温度を200乃至230℃に設定して30乃至40分焼成し、シュー皮を80個製造した。
【0024】2.エスカルゴ・シュークリームの製造(1)具材(カスタードクリーム)の作成牛乳(森永乳業製)1600g、バニラビーンズ(池伝社製)1本、卵黄224g、グラニュー糖(大日本明治精糖社製)256g、薄力粉(東京製粉社製)96gを混ぜ合わせて煮込み、冷却し、ミキサーに入れて攪拌し、さらにフレッシュヘビー(森永乳業社製)384gを加えて良く混ぜ合わせてカスタードクリームを作成した。
【0025】(2)仕上げ実施例2で製造したシュー皮の側面を少し切り落とし、前記カスタードクリーム35gを絞り入れ、切り落としたシュー生地を裏返して元の位置に蓋をして、蓋の部分を下にしてケーキトレーに置き、該シュー皮の側面にナイフで切れ目を入れて巻チョコ(森永商事社製)2本を差し込んでエスカルゴ・シュークリームを80個完成させた。
【0026】図4は、本願発明のシュー菓子として製造したエスカルゴ・シュークリームの斜視図である。図4においては、内部に空洞部を有するシュー皮(2)及び該シュー皮(2)の表面に一体焼成されている渦巻き状のパン(1)、並びに該シュー皮の側面に差し込まれた巻チョコ(5)から構成されているようにしたものである。
【0027】3.官能的検査完成したエスカルゴ・シュークリーム、及びシュークリーム(市販品)について、20代から40代の男女各20名からなるパネラーにより、食感及び風味について官能的検査を行った。検査の評価は、食感及び風味ともに、かなり良好(3点)、やや良(2点)、どちらとも言えない(1点)、不良(0点)の4段階に評価した。評価点の平均値から、2.5点以上を良、1.5点以上2.5点未満をやや良、0.5点以上1.5点未満を並、及び2.5点以上3.0点未満を不良と判定した。
【0028】この結果は、表1に示すとおりである。食感および風味ともに、市販のシュークリームよりもエスカルゴ・シュークリームの方が高い評価であった。
【0029】
【表1】

【0030】
【発明の効果】以上詳述したとおり、本発明は内部に空洞部を有するシュー皮本体の表面に、パンが一体焼成されていることを特徴とするシュー皮、該シュー皮に具材を詰めてなることを特徴とするシュー菓子、及びその製造方法に関するものであり、本発明により奏される効果は次のとおりである。
1)シュー生地とパン生地を組み合わせて焼成することにより、今までにない新規な風味及び食感を有する。
2)シュー生地とパン生地の焼色の違いにより、シュー生地の表面にパン生地を接合させて外観に装飾を施すことで、シュー菓子のバリエーションを増やすことが可能である。
3)シュー生地の表面にパン生地を巻き付けることで、焼成の際のシュー皮の膨張を安定化させて、製品の形態を一定にすることができ、歩留まりを向上させることが可能である。
【出願人】 【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
【出願日】 平成12年8月9日(2000.8.9)
【代理人】 【識別番号】300019386
【氏名又は名称】重兼 彰夫
【公開番号】 特開2002−51691(P2002−51691A)
【公開日】 平成14年2月19日(2002.2.19)
【出願番号】 特願2000−241268(P2000−241268)