トップ :: A 生活必需品 :: A21 ベイキング;生地製造または加工の機械あるいは設備;ベイキングの生地

【発明の名称】 パン類
【発明者】 【氏名】本間 悦子

【氏名】齋藤 裕彦

【氏名】金谷 規弘

【要約】 【課題】

【解決手段】主成分としてα化小麦でんぷんを含むパン類であって、β−アミラーゼ・プルラナーゼ法により測定時のα化度が53〜100%であることを特徴とするパン類。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 小麦でんぷんのα化度が焼成又は製造直後にβ−アミラーゼ・プルラナーゼ法で測定して53〜100%であることを特徴とするα化小麦でんぷんを主成分とするパン類。
【請求項2】 前記α化度は55〜80%の範囲である請求項1記載のパン類。
【請求項3】 前記α化度が55〜70%の範囲である請求項1記載のパン類。
【請求項4】 小麦でんぷんのα化度が焼成又は製造直後から1日経過後にβ−アミラーゼ・プルラナーゼ法で測定して44〜90%であることを特徴とするα化小麦でんぷんを主成分とするパン類。
【請求項5】 小麦でんぷんのα化度が焼成又は製造直後から3日経過後にβ−アミラーゼ・プルラナーゼ法で測定して31〜80%であることを特徴とするα化小麦でんぷんを主成分とするパン類。
【請求項6】 β−アミラーゼ・プルラナーゼ法で測定した、請求項1記載のα化度が53〜100%であることを特徴とするパン類。
【請求項7】 55〜80℃程度の温度の中麺に捏ね上げられた中麺から製造されてなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のパン類。
【請求項8】 食パン、菓子パン、ロールパン、中華饅頭又はイーストドーナツである請求項1〜7のいずれかに記載のパン類。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は小麦粉を主原料とする例えば、食パン、菓子パン、ロールパン、中華饅頭、イーストドーナツ等のパン類であって、特に、柔軟性と弾力性、しっとりとした粘り(モチモチ感)のある独特の食感と風味を有するとともに、通常の賞味期限での食感、旨味、風味が損なわれにくい耐老化性に優れたパン類に関する。
【0002】
【従来の技術】小麦粉を主原料とする各種発酵パン類の製造は、通常商業的には、全使用量の70重量%程度の小麦粉に対し、イーストの全量または一部とその他の基本的材料(水、イーストフード等)とを加えて、常温で混捏した中種に対して、中種発酵後残量の小麦粉と、各種材料とを加え、水とともに混捏してパン生地(本捏生地)に捏ね上げたのち、そのパン生地を発酵、焼成する中種法が主流となっている。
【0003】パン類の食味、食感、風味等の性状を改善するために、工場生産規模では通常小麦粉に対して各種添加剤が使用されることが多く、例えば食感をソフトにする乳化剤、保湿性を改善する増粘物質、老化防止剤がある。特に、パンの柔軟性、旨味、風味は製造直後から日を追って低下していくので、経時変化に伴うパンの老化防止のための添加剤が使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年の食材の多様化に伴って、パン類についても、形状、材料、製法などの点で多種多様であり、その好みは多様化しており、風味、旨み、食感に一層優れるとともに品質の劣化しにくい、既存のパンを超える新たなパン類の開発が望まれている。しかしながら、小麦粉に対しこのような性状改善のための添加剤を副材料以外に使用することは、小麦粉本来の風味や旨みを程度の差はあれ損なうことにつながり、さらには添加剤の種類、添加量によっては経済性を大きく損なう場合があり、あまり好ましいとはいえない。
【0005】ところで、おいしいパン類の条件とは通常、柔軟性と弾力性があり、しっとりした粘りやモチモチ感のある独特の食感と、小麦粉本来の旨味と風味を有することであると考えられるが、このような味覚に係る官能的性状は定性的、相対的なものであり、客観的に数値化することは困難である。そこで本発明者はパン類の旨味、食味などの官能性状をより科学的に判断するための尺度を追究した結果、パンの主成分である小麦でんぷんのα化度がパン独特の味覚性状と正の相関関係にあって、有効な指標であることを見出した。その上で、小麦でんぷんのα化度が或る数値以上のパンは従来存在または知られているパン類には見られず新規であり、味覚性状に優れるとともに、パン類の通常の賞味期限は焼上4日以内でも老化ないし劣化の度合いが少なく、たとえ老化してもそのα化度は焼上直後からの経過時間が同じ既存のパン類よりも高い数値を維持しうることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0006】従って本発明は小麦粉本来の風味や旨味を有し、柔軟性、弾力性としっとりした粘り(モチモチ感)のある独特の食感を有するとともにそのような味、食感が経時変化で損なわれにくい耐老化性を有する新規なパン類を提供することを目的とする。また製造方法を工夫することによって、そのような新規なパン類を提供することをも目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、α化小麦でんぷんを主成分とするパン類であって、前記α化小麦でんぷんはβアミラーゼ・プルラナーゼ法で測定したときのα化度が約53〜100%程度であることを特徴とするパン類である。すなわち、主成分として生の小麦粉からパン生地に混捏し、発酵または膨脹後、焼成または蒸気加熱により、生でんぷんからαでんぷんへの変化を経たものである。
【0008】そして、本発明は(1)小麦でんぷんのα化度が焼成又は製造直後にβ−アミラーゼ・プルラナーゼ法で測定して53〜100%であることを特徴とするα化小麦でんぷんを主成分とするパン類、(2)前記α化度は55〜80%の範囲である前記(1)記載のパン類、(3)前記α化度が55〜70%の範囲である前記(1)記載のパン類、(4)小麦でんぷんのα化度が焼成又は製造直後から1日経過後にβ−アミラーゼ・プルラナーゼ法で測定して44〜90%であることを特徴とするα化小麦でんぷんを主成分とするパン類、(5)小麦でんぷんのα化度が焼成又は製造直後から3日経過後にβ−アミラーゼ・プルラナーゼ法で測定して31〜80%であることを特徴とするα化小麦でんぷんを主成分とするパン類、(6)β−アミラーゼ・プルラナーゼ法で測定した、前記(1)記載のα化度が53〜100%であることを特徴とするパン類、(7)55〜80℃程度の温度の中麺に捏ね上げられた中麺から製造されてなる、前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のパン類、及び(8)食パン、菓子パン、ロールパン、中華饅頭又はイーストドーナツである前記(1)〜(7)のいずれかに記載のパン類、に関する。
【0009】本発明が提供するのは、焼成又は製造直後の前記α化度が通常は約53〜100%程度の範囲、より好ましくは約55〜80%程度、もっとも好ましくは約55〜70%程度の範囲であるパン類である。より詳しくいえば、前記α化度の値が製造直後は約53〜100%程度(より好適には約55〜100%程度)であり、焼成又は製造の1日後は約44〜90%程度であり、焼成又は製造の3日後は約31〜80%程度の範囲であるパン類である。
【0010】本発明の前記α化度約53〜100%程度を有するパン類としては例えば、特別な中麺法により製造されたパン類が挙げられる。すなわち通常の方法とは異なり、全使用量の約3〜40重量%程度の小麦粉と、イースト以外の副材料とを、熱湯とともに混捏することにより或いは常温の水とともに加熱した後混捏することにより約55〜80℃程度の温度の中麺に捏ね上げ、次いでその中麺に対して残量の小麦粉およびイーストを含む副材料を加えてパン生地に捏ね上げた後、常法により発酵、焼成させることにより製造したものである。
【0011】本発明においてパン類の上記官能的性状と耐老化性を表わす重要な指標であるパンの小麦でんぷんのα化度はβ−アミラーゼ・プルラナーゼ法により測定される。この方法の詳細は下記する。
【0012】パンの小麦でんぷん成分は、消化の悪い生でんぷんから、水分と加熱により糊化あるいはα化されて消化のよいα化でんぷんの形になったものであるが、α化でんぷんは焼成直後からすぐ経時変化により徐々に老化しβでんぷんに変化していく。本発明のパン類が従来のパン類にはない約53%以上という高α化度を有することは、たとえ老化が起こっても4日程度の通常の賞味期限内では従来のパンと本発明のパンのα化度を対比すると本発明のパンの方がα化度が高い。優れた柔軟性、弾力性、旨味、風味を保持することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的実施形態を説明する。本発明の焼成又は製造直後のα化度約53〜100%程度を有するパン類は例えば中麺法によって次の通り製造することができる。先ず通常の中麺法とは異なり、全量の約3〜40重量%程度の小麦粉と、イーストを除く各種副材料とを、熱湯とともに混捏するかまたは常温の水とともに加熱した後に混捏することにより、約55〜80℃程度の温度の中麺に捏ね上げられる。この場合、使用する熱湯または水の量は小麦粉100重量%に対して約50〜400重量%程度であり、また副材料の種類、量等は慣用のパン製造法で使用されるものと同様である。前記熱湯を使用する場合は、混捏して捏ね上げられた中麺が約55〜80℃程度になるようにできるだけ高温であることが小麦粉独特の風味、旨味を付与する上で好ましく、従って沸騰直後の熱湯が好ましい。
【0014】また常温の水を使用する場合は小麦粉と、イースト以外の各種副材料とともに電子レンジなどのマイクロ波による加熱後に混捏して中麺に捏ね上げられる。すなわち前記小麦粉およびイーストを除く各種副材料は水に十分分散させてから電子レンジ等により加熱し、混捏を続けると一部半固体状態からクリーム状になり約55〜80℃程度の温度の中麺に捏ね上げられる。
【0015】約55〜80℃程度の温度に捏ね上げられた中麺は、粗熱の除去後或いは4時間以上保存後、通常の方法に従って、残量の小麦粉と、イーストを含む副材料とを加え常温の水とともに混捏してパン生地に捏ね上げられる。中麺の保存は常温でもよいが、約−7℃〜+10℃程度の冷蔵保存あるいは−7℃以下の冷凍保存でもよい。或いは約4時間以上にわたる、前記冷蔵保存とその後の前記冷凍保存の併用でもよい。
【0016】捏ね上げられたパン生地は慣用のパン製造法に従い、発酵、焼成されて最終製品のパンに製造される。
【0017】〔α化度の測定方法〕
(1)パンをエタノールで脱水処理した後、粉砕して100メッシュのふるいを通過したものを試料とする。試料0.10gを採取し、水10mlを添加してガラス製ホモジナイザ−で磨砕する。次いで(2)4mlの磨砕物を採取して、0.8mol/Lの酢酸緩衝液(pH6.0)で50mlに定容する。これを試験管に4ml採取し、密栓をして40℃水浴中10分間放置した酵素液(下記注参照)1mlを添加して40℃、30分間酵素処理する。その後、沸騰水浴中、5分間加熱して、水15ml添加して検液(S)とする。注)上記酵素液は、β−アミラーゼ(ナガセ生化学工業製)0.0051g及びプルラナーゼ(クルード;林原生物科学研究所製)0.051gに0.8mol/L酢酸緩衝液(pH6.0)30mlを加えて10分間振とうし、濾過により不溶物を除去した液である。
(3)上記(1)によって得られる磨砕物の4mlを採取し、10ml/L水酸化ナトリウム水溶液0.4ml添加し、混合物を65℃水浴中で5分間加熱して糊化させた後水冷する。2mol/L酢酸2mlで中和し、0.8mol/L酢酸緩衝液(pH6.0)で50mlに定容する。これを4ml試験管内に採取し、密栓をして40℃水浴中10分間放置する。これに上記(2)の酵素液を1ml添加して、40℃3分間酵素処理する。そして、沸騰水浴中、5分間加熱した後、水15ml添加して検液(R)とする。なお、酵素液の代わりに上記酵素液を沸騰水浴中で10分間加熱した液を添加すること以外は検液(R)の調整方法と同様に操作したもの検液(Ro)をブランクとする。
(4)検液(S)、検液(R)及び検液(Ro)について下記のように、フェリシアンド法で還元糖量を測定する。25ml容試験管内に検液(S)、(R)又は(Ro)1mlを採取する。下記するフェリシアンド試液5mlを添加して、沸騰水浴中10分間加熱して、水冷した後、420nmにおける吸光度を測定する。なお、フェリシアンド試液は、赤血塩[KFe(CN)]0.37g及び炭酸ナトリウム(無水)20.0gを水に溶解して、1Lとすることにより製造するものである。
(5)α化度(%)の決定計算式
:フェリシアンド法による検液(S)の吸光度A:フェリシアンド法による検液(R)の吸光度B:フェリシアンド法によるブランク(Ro)の吸光度【0018】
【実施例】実施例1小麦粉全量100重量%のうち、先ず40重量%に対して、砂糖1重量%、食塩1重量%、脱脂粉乳1重量%を加え、20重量%の熱湯とともに混捏して中麺に捏ね上げた。ここで、熱湯は沸騰直後に素早く計量時98℃程度の温度であったが、混捏して捏ね上げ終了時には60℃程度の温度になっていた。中麺は常温下に8時間以上放置して保存した。次に、中麺に対し、残りの小麦粉60重量%および副材料として砂糖4重量%、食塩1重量%、脱脂粉乳2重量%、ショートニング4重量%、生イースト3重量%を添加して60重量%の常温の水とともに混捏して、パン生地とした。得られたパン生地を28℃の発酵室で60分間発酵させ、分割、成型後、38℃の発酵室(ホイロ)で約60分間発酵後、200℃で45分間焼成し、食パンを得た。このものはソフトでしっとりしたモチモチ感のある食感とともに小麦粉独特の風味と旨味を有していた。製造直後、1日後、3日後の常温(20℃)保存後のα化度を測定したところ、夫々70%、55%、45%である。独特の風味、食感が保たれていることが分かる。また3日後にトースターで再加熱すると焼きたての風味と食感に戻った。
【0019】実施例220重量%の小麦粉に、溶かしバター4重量%、砂糖8重量%を加え、50重量%の水に分散させた状態で、電子レンジで70℃程度に加熱したところ、一部半固体状になった。この半固体状の混合物をクリーム状になるまで混捏し、中麺にした。60℃程度になっていたこの中麺は粗熱が取れるまで常温に放置した後、小麦粉80重量%、脱脂粉乳3重量%、食塩2重量%、インスタントドライイースト1重量%を加えて、30重量%の水とともに混捏してパン生地とした。このパン生地を28℃の発酵室で60分間発酵させ、分割、成型後、35℃の発酵室(ホイロ)で約90分間発酵後、200℃で45分間焼成し、食パンを得た。このパンは風味、旨味、食感とも優れており、製造直後、1日後、3日後のα化度を測定したところ、夫々65%、53%、40%であった。
【0020】
【発明の効果】本発明のパン類が従来達成し得なかった極めて高いα化度を有していることは、小麦粉独特の風味と旨味、すぐれた食感を備えたパンであることを証しており、絶対値としてのα化度が大きいのでたとえ時間経過とともにα化度が低下しても賞味期間内では十分高い値を保持する特徴を備えている。そしてα化度が低下したパンは再びトースター、電子レンジ等で加熱すれば手軽に容易に元のおいしいパン類に回復させることができ、焼立て直後のおいしいパンに戻せる優れた特長をも有している。
【出願人】 【識別番号】591018534
【氏名又は名称】奥本製粉株式会社
【出願日】 平成12年7月19日(2000.7.19)
【代理人】 【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
【公開番号】 特開2002−34438(P2002−34438A)
【公開日】 平成14年2月5日(2002.2.5)
【出願番号】 特願2000−218786(P2000−218786)