トップ :: A 生活必需品 :: A21 ベイキング;生地製造または加工の機械あるいは設備;ベイキングの生地

【発明の名称】 製パン方法
【発明者】 【氏名】山縣 峰雄

【氏名】足立 好司

【氏名】服部 秀樹

【要約】 【課題】冷凍板生地を使用した焼きたてパン供給の店舗焼成において、熟練した技術を要する丸め工程を省略して、解凍から焼成まで簡便且つ容易に行い、高品質で且つ焼きたての食パン及び大型パン等を必要に応じて供給すること。

【解決手段】玉状冷凍パン生地を用いる製パン方法であって、解凍後の発酵工程において、解凍前の玉状冷凍パン生地に対する発酵後の玉状パン生地の比容積が1.2乃至4.0、好ましくは1.3乃至3.0の範囲となるように発酵させることを特徴とする、前記方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 玉状冷凍パン生地を用いる製パン方法であって、解凍後の発酵工程において解凍前の玉状冷凍パン生地に対する発酵後の玉状パン生地の比容積が1.2乃至4.0の範囲となるように発酵させることを特徴とする、前記製パン方法。
【請求項2】 解凍後に、丸め工程を経ることなく直ちに成形工程を行うことを特徴とする、請求項1記載の製パン方法。
【請求項3】 玉状冷凍パン生地の形状が、厚みが5mm以上で50mm以下の扁平状であることを特徴とする、請求項1又は2記載の製パン方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定の条件下で解凍後に発酵を行うことを特徴とする、玉状冷凍パン生地を用いる製パン方法に関する。ここで、「玉状冷凍パン生地」とは、成形されていない冷凍パン生地を意味し、該冷凍パン生地の形状は特に限定されるものではなく、成形前の玉状又は板状のパン生地を含むものである。
【0002】
【従来の技術】パン類の冷凍生地の製造としては、所定の重量に分割した後板状または玉状にして冷凍したパン生地(玉状冷凍パン生地)、未発酵成型冷凍生地、最終発酵させた後に冷凍するホイロ後冷凍生地、半焼成冷凍、及び焼成冷凍とが有り、いずれも近年酵母の冷凍耐性の向上、生地改良剤の検討が進み、現在では品質的にも向上が認められるようになっている。
【0003】中でもパン生地を分割、丸めた後に所定の重量に分割した後、急速冷凍した玉状冷凍パン生地は必要時に解凍・成形した後、最終発酵させて焼成することにより食パン及び大型フランスパン等を製造できるため便利に使用されている。該製パン方法によれば、種々の生地を冷凍しておいて必要に応じ、必要量のパンを焼成出来る為、大変便利であり且つ品質の優れたパンを製造することが可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の玉状冷凍パン生地を使用する製パン方法においては、解凍した後、丸め工程を経て、ベンチタイムを取ったのち再度成形して型詰めをする必要がある。
【0005】解凍の後に通常おこなわれているこれらの丸め工程、ベンチタイム、成型、型詰めは操作が煩雑で且つ熟練を要するものであり、近年要望される焼きたてパン供給の店舗焼成においては、店舗で熟練者が製造に携わる必要があった。
【0006】特に、丸め工程は、発酵風味を与えるために解凍の後も発酵させて必要発酵程度を得ること、それにより生地の張りが失われ丸めにより弾力を回復させる必要があること及びほとんどのパンで成形工程が玉状生地から出発していること等の理由から、均一で高品質のパンを焼くために必要な工程である。
【0007】しかしながら、丸め工程には熟練した技術を要し、未熟練者にはこの丸め行程は困難を伴うものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は研究の結果、玉状冷凍パン生地の解凍後の発酵工程における発酵の程度を特定の範囲に限定することによって、上記課題を解決することが可能となった。
【0009】即ち、本発明は、玉状冷凍パン生地を用いる製パン方法であって、解凍後の発酵工程において、解凍前の玉状冷凍パン生地に対する発酵後の玉状パン生地の比容積(以下、単に「解凍パン生地比容積」という)が1.2乃至4.0、好ましくは1.3乃至3.0の範囲となるように発酵させることを特徴とする、前記製パン方法に係る。
【0010】本発明によれば、解凍した玉状冷凍パン生地を特定の解凍パン生地比容積となるように発酵処理することにより、その後の丸めの工程を経ることなく均一で良質の成型生地を得ることが可能となった。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明において、解凍パン生地比容積は、具体的には以下のようにして測定する。
【0012】即ち、解凍パン生地の比容積を計算するに必要な重量と容積に関して、重量はプラスチック又は金属製の平板上に生地を置き、全体の重量を測定した後、平板自体の重量を差し引くことで測定することが出来る。
【0013】一方、通常パンの容積測定に使用される菜種法(円筒形の測定管に測定するパンを入れ、菜種を管一杯に充填し、その後、測定パンを取り除いたときに当該菜種量の容積が測定管全容積より減少することから割り出す方法)では、解凍パン生地が極めて柔らかい為につぶれてしまい測定することができない。そこで、本発明においては、レーザー光の反射を二ヶ所のカメラレンズで捉えてコンピューターで物体の投影図形を擬似作成し、これを微小体積に分断したものをコンピューター積算して、解凍パン生地の容積を求める。
【0014】具合的には、レーザー体積測定装置であるSELNACイメージ計測器を使用して解凍パン生地の容積を測定することが出来る。最後に、容積を重量で割り、比容積を求めることが出来る。その測定は影があるとやや高めに出る傾向があるが、その誤差は小さく、実用上無視でき、問題のない範囲である。
【0015】玉状冷凍パン生地の配合には様々のものがあり、例えば、油脂類及び糖類等の添加割合の高い、食パン及びホテルパン、又は、フランスパンやドイツパン系のパン生地のようにそれらの添加割合の低いもの等があり、夫々の玉状冷凍パン生地の種類に応じて、発酵時間と発酵温度を適当に調節することによって、本発明における解凍パン生地比容積を得ることが出来る。
【0016】更に、発酵温度は、成形後に行われる最終発酵(ホイロ)工程及び焼成工程の各条件を考慮して当業者が適宜設定することが可能である。
【0017】尚、本発明で使用する玉状冷凍パン生地は、従来公知の方法で製造することが出来る。例えば、前処理、混涅、醗酵等を施した後に、更に分割、丸め、ねかし、整形等の各処理を経て、ブラストフリーザー等を用いて凍結させ、適当な温度で冷凍庫等で凍結保存する。
【0018】玉状冷凍パン生地の形状は限定されることはないが、その厚みが5mm以上で50mm以下の扁平状にすることにより、特に食パンにおいては目の細かい良好な内相が得られるため好ましい。
【0019】パンの発酵風味を確保する中で本発明の製パン方法に適した玉状冷凍パン生地を得るには中種又は発酵液種を適当割合で添加するのが良い。これにより風味を維持しつつ、成形工程前の醗酵工程における解凍パン生地比容積の特定な範囲をより容易に確保することができる。
【0020】本発明の製パン方法において、玉状冷凍パン生地の解凍方法・条件等に関して特に制限はなく、従来公知の方法に準じて当業者が適宜設定することが可能である。更に、成形工程、最終発酵(ホイロ)工程及び焼成工程等も従来公知の任意の方法で行うことが出来る。例えば、成形工程は二本ロールまたはモルダーを使用して行うことが出来る。
【0021】尚、解凍・発酵後に所定の解凍パン生地比容積を有するパン生地を得たら、それらを数枚合わせて成形したり、又は、逆に、パン生地を適当な部分に分割(例えば、2分割又は3分割)した後成形することも出来る。
【0022】一例として、予め5〜−5゜Cにて解凍した冷凍生地を昇温、発酵させてこれを逐次取り出して処理することより、本発明における特定の解凍パン生地比容積を容易に得ることができる。又、これにより昇温時間が短縮され、一日当たり数回の繰り返しが可能となり、焼きたてパンの提供が可能となる。
【0023】
【実施例】以下実施例をあげて具体的に説明するが、これら実施例は本発明の技術的範囲を何等限定するものではない。
【0024】
【実施例1】以下の配合割合で食パン用冷凍生地を製造した。
【0025】
【表1】

【0026】上記配合のうち中種部を縦型ミキサーで低速3分、中速3分ミキシングし、こね上げ温度25Cとした。27C、80%湿度にて3時間予備発酵させた。ついでこの中種と残余の成分を縦型ミキサーで低速3分、中速3分ミキシング高速1分混捏し、生地温を21℃とした。フロアータイム20分後、1コ200gに分割した。簡単に丸め、モルダーに通し扁平状に成型した。この生地をアルミ型冷却板に並べ、−40℃で25分急速凍結し、食パン冷凍生地を得た。得られた食パン冷凍生地の大きさは、縦105〜115mm、横85〜100mm、厚み20〜24mmであった。この冷凍生地をポリ袋に密封し、−20℃冷凍庫で2週間保存した。
【0027】
【実施例2】以下の配合割合でホテルパン冷凍生地を製造した。
【0028】
【表2】

【0029】上記配合のうち中種部を縦型ミキサーで低速3分、中速3分ミキシングし、こね上げ温度25Cとした。27C、80%湿度にて3時間予備発酵させた。ついでこの中種と残余の成分を縦型ミキサーで低速3分、中速3分ミキシング高速1分混捏し、生地温を21℃とした。フロアータイム20分後、1コ200gに分割した。簡単に丸め、モルダーに通し扁平状に成型した。この生地をアルミ型冷却板に並べ、−40℃で25分急速凍結し、ホテルパン冷凍生地を得た。得られたホテルパン冷凍生地の大きさは、縦100〜110mm、横85〜95mm、厚み18〜22mmであった。この冷凍生地をポリ袋に密封し、−20℃冷凍庫で2週間保存した。
【0030】
【実施例3】以上の各冷凍生地を用いて、以下の条件でパンを製造した。
解凍温度:0℃、時間:15時間発酵温度:30℃、湿度:80%、時間:25分、45分、1時間、1時間半、2時間成形食パン生地:生地に手粉をふり、そのままモルダーで成形した。
ホテルパン生地:生地に手粉をふった後、かるく手で押さえ三つ折りした後、モルダーで成形した。モルダーの条件は以下の表に示す。尚、食型として2斤型を使用し、成形生地を4個/型で詰めた。
ホイロ(最終発酵
温度:35℃、時間:40分焼成食パン生地:上火220℃、下火220℃、35分(ふた付き)−プルマン型ホテルパン生地:上火180℃、下火230℃、30分(ふたなし)−山型食パン【0031】以下に、夫々の解凍パン生地比容積となるように発酵させた後に、丸め工程を経た場合と該工程を省略した場合とで、製造された各パンの品質を比較した。それらの結果を表3及び表4に示す。解凍パン生地の容積はレーザー体積測定装置であるSELNACイメージ計測器を使用して測定した。尚、各表中、「◎」、「○」、「△」及び「×」は、夫々、「非常に良好」、「良好」、「普通」及び「悪い」を示す。
【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】表3及び表4に示された結果から明らかなように,本発明において特定の解凍パン生地比容積となるような条件下で解凍後の発酵工程を行うことにより、従来方法では必要とされていたその後の丸め工程を経なくても、高品質のパンを製造することが出来た。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、解凍した玉状冷凍パン生地を特定の解凍パン生地比容積となるように発酵処理することにより、その後の丸めの工程を経ることなく均一で良質の成形生地を得ることが出来、焼成後のパン内相の目が細かく良好であった。
【0036】従って、焼きたてパン供給の店舗焼成においては、店舗で熟練した技術を必要とせずに、冷凍板生地を使用して解凍から焼成までを簡便且つ容易に行い、高品質で且つ焼きたての食パン及び大型パン等を必要に応じて供給することができる。
【出願人】 【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
【識別番号】599152670
【氏名又は名称】味の素フローズンベーカリー株式会社
【出願日】 平成12年7月4日(2000.7.4)
【代理人】 【識別番号】100100181
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 正博
【公開番号】 特開2002−17239(P2002−17239A)
【公開日】 平成14年1月22日(2002.1.22)
【出願番号】 特願2000−202474(P2000−202474)