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【発明の名称】 成形冷凍パン生地の焼成前処理方法
【発明者】 【氏名】岩下 裕志

【氏名】加賀 千文

【氏名】白井 尚子

【要約】 【課題】成形冷凍パン生地の焼成前処理方法において、煩雑である焼成前作業を単純化すること、多種類のパン生地の焼成前作業を画一化し、多種類のパン生地を同時に焼成前処理すること、パン生地の焼成頻度をあげること、更に、最終発酵後の状態をより長時間に亘って良好に保持すること。

【解決手段】庫内温度17℃〜40℃及び庫内相対湿度50%〜75%に維持しながら、成形冷凍パン生地の解凍及び最終発酵工程を連続的に行い、最終発酵工程終了後、温度−30℃〜−21℃及び相対湿度80%以上の庫内にパン生地を移動させることによりパン生地の状態を維持することから成る、成形冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 庫内温度17℃〜40℃及び庫内相対湿度50%〜75%に維持しながら、成形冷凍パン生地の解凍及び最終発酵工程を連続的に行い、最終発酵工程終了後、温度−30℃〜−21℃及び相対湿度80%以上の庫内にパン生地を移動させることによりパン生地の状態を維持することから成る、成形冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項2】 庫内温度17℃〜40℃及び庫内相対湿度50%〜75%に維持しながら、成形冷凍パン生地の解凍及び最終発酵工程を連続的に行い、最終発酵工程終了後、庫内空気の露点温度と生地表面温度との差を20℃以下に維持しながら、庫内の温度を−30℃〜−21℃まで冷却することによりパン生地の状態を維持することから成る、成形冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項3】 庫内空気の露点温度と生地表面温度との差を20℃以下に維持しながら、昇温速度0.1℃〜2℃/分で庫内温度を17℃〜40℃に上昇させることによって、成形冷凍パン生地の解凍及び最終発酵工程を連続的に行い、最終発酵工程終了後、温度−30℃〜−21℃及び相対湿度80%以上の庫内にパン生地を移動させることによりパン生地の状態を維持することから成る、成形冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項4】 庫内空気の露点温度と生地表面温度との差を20℃以下に維持しながら、昇温速度0.1℃〜2℃/分で庫内温度を17℃〜40℃に上昇させることによって、成形冷凍パン生地の解凍及び最終発酵工程を連続的に行い、最終発酵工程終了後、庫内空気の露点温度と生地表面温度との差を20℃以下に維持しながら、庫内の温度を−30℃〜−21℃まで冷却することによりパン生地の状態を維持することから成る、成形冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項5】 庫内の昇温速度が0.3℃〜1℃/分で庫内温度を20℃〜40℃に上昇させることを特徴とする、請求項3又は4に記載の成形冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項6】 最高庫内温度が22℃〜35℃であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の成形冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項7】 最終発酵終了工程後の庫内を0.2℃/分以上の冷却速度で冷却することを特徴とする請求項2、4、5又は6に記載の成形冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項8】 −30℃〜−21℃までの冷却を複数段階の工程で行うことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成形冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成形冷凍パン生地の焼成前処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】成形冷凍パン生地の利用はスクラッチ法(ミキシングから焼成まで連続的に行う従来の製パン方法)に比べて、店舗内の作業を単純化し作業量を大幅に削減することが可能である。従って、職人と言われる高度な技術を有する人がいなくてもパンの製造は可能となっている。しかし、60種類から100種類にも及ぶパンを製造するような一般的な店舗においては、成形冷凍パン生地を利用しても1日1回から2回製造することが現状であり、常に焼き立てのパンを消費者に提供することは困難である。
【0003】この理由として、現状の解凍方法では解凍時間が長く複数回の解凍が困難であること、各品種毎に解凍時間、ホイロ時間が異なり各品種毎に個別に対応する必要があり、製造するパンの種類が増えるほど作業回数、作業頻度が増え、作業内容が煩雑になること、最終発酵が終了したパン生地は直ちに焼成する必要があり時間的なゆとりがないこと、等が挙げられる。
【0004】従って、作業の単純化の手段として、連続的に解凍から最終発酵を行うこと、更に、最終発酵後に得られる最終発酵済みパン生地を一定時間保持し、任意の時間に焼成が出来るようにすることが好ましい。
【0005】上記の問題点を解決すべく、煩雑である焼成前作業を単純化すること、多種類のパン生地の焼成前作業を画一化し、多種類のパン生地を同時に焼成前処理すること、及び、パン生地の焼成頻度をあげること等を目的とした成形冷凍パン生地の焼成前処理方法が、特開2000−157147号に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記特開2000−157147号に開示されている焼成前処理方法によれば、従来の方法と比較して、焼成前のパン生地表面の状態が良く、焼成後に得られたパンの品質も良好であった。
【0007】本発明者は、最終発酵後の状態をより長時間に亘って良好に保持すべく、上記焼成前処理方法を更に改良することを目的として研究した結果、本発明を完成した。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、庫内温度17℃〜40℃、好ましくは22℃〜35℃、及び庫内相対湿度50%〜75%、好ましくは60%〜65%に維持しながら、成形冷凍パン生地の解凍及び最終発酵工程を連続的に行い、最終発酵工程終了後、温度−30℃〜−21℃、好ましくは−26℃〜−22℃及び相対湿度80%以上の庫内にパン生地を移動させることによりパン生地の状態を維持することから成る、成形冷凍パン生地の焼成前処理方法に係る。
【0009】又、本発明は、庫内温度17℃〜40℃、好ましくは22℃〜35℃、及び庫内相対湿度50%〜75%、好ましくは60%〜65%に維持しながら、成形冷凍パン生地の解凍及び最終発酵工程を連続的に行い、最終発酵工程終了後、庫内空気の露点温度と生地表面温度との差を20℃以下、好ましくは15℃以下に維持しながら、庫内の温度を−30℃〜−21℃、好ましくは−26℃〜−22℃まで冷却することによりパン生地の状態を維持することから成る、成形冷凍パン生地の焼成前処理方法、に係わる。
【発明の実施の形態】
【0010】本発明方法において、庫内を好ましくは、0.2℃/分以上、より好ましくは0.4℃/分以上の冷却速度で冷却することが出来る。冷却速度は、冷却期間中、常に同じ値に維持する必要はなく、上記所定の範囲内において変動しても良い。従って、例えば、冷却速度を連続的又は段階的に変化させることも可能である。
【0011】更に、上記の方法において、最終発酵工程終了後に行う冷却を連続した、又は不連続な複数段階の工程で行うことも可能である。例えば、パン生地を先ず、−20℃〜15℃、好ましくは0℃〜10℃まで冷却し、一定温度の状態で適当な間、例えば、1〜5時間維持した後、更に、−30℃〜−21℃、好ましくは−26℃〜−22℃まで冷却する。この際に、各冷却工程の冷却速度は、上記範囲内で夫々独自に設定することが可能である。
【0012】本発明方法において、「庫内相対湿度」とは、庫内空気の相対湿度であり、約±10%の範囲で変動する平均値である。
【0013】又、庫内空気の露点温度と生地表面温度の差は平均値であり、約±10%の範囲で変動する。庫内空気の露点温度と生地表面温度は当業者に公知の方法で測定することができる。例えば、空気の露点温度は温度と湿度との関係図である「空気線図」より求められ、生地表面温度は周知の温度センサーを用いて実測することにより求めることが出来る。
【0014】尚、本発明方法において、成形冷凍パン生地の解凍及び最終発酵工程を連続的に行う際に、庫内の温度及び相対湿度は上記一定範囲内で維持されていれば良く、必ずしも一定値を維持する必要はない。
【0015】更に、本発明方法において、庫内空気の露点温度と生地表面温度との差を20℃以下、好ましくは15℃以下に維持しながら、昇温速度0.1℃〜2℃/分、好ましくは0.3℃〜1℃/分で庫内温度を17℃〜40℃、好ましくは22℃〜35℃に上昇させることによって、成形冷凍パン生地の解凍及び最終発酵工程を連続的に行うことも可能である。このような場合に、成形冷凍パン生地を入れる際には、特に、庫内の温度を17℃〜40℃に、又は庫内空気の露点温度と生地表面温度との差を20℃以下に維持する必要はなく、例えば、温度−30℃〜−21℃、庫内空気の露点温度と生地表面温度との差20℃より大の庫内に入れても良い。
【0016】尚、昇温速度は、昇温期間中、常に同じ値に維持する必要はなく、上記所定の範囲内において変動しても良い。従って、例えば、昇温速度を連続的又は段階的に変化させることも可能である。又、このような条件下で庫内温度を上昇させた後、庫内温度を上記範囲内に維持させて、発酵を継続させることも可能である。
【0017】本発明方法において、成形冷凍パン生地の解凍、最終発酵、発酵後冷却維持をおこなうための装置は、一般的には「ドウコンディショナー」と称するもので、加温、冷却、加湿、除湿が任意におこなえる装置である。特に、20Kgまでの冷凍パン生地仕込み量に対して、冷凍能力が400Wより大きく、好ましくは600W以上であり、且つ、ヒーター能力が600Wより大きく、好ましくは1KW以上のドウコンディショナーを使用することが望ましい。その他にも、当業者に公知の適当なタイプの庫も使用することができる。
【0018】これまでの高温での解凍は解凍中のパン生地表面の濡れ、パン生地表面と中心部との解凍ムラが問題視されていた。
【0019】しかしながら、本発明方法によれば、庫内の相対湿度を50%〜75%に維持すること、又は庫内空気の露点温度と生地表面温度との差を20℃以下に維持することにより、解凍中のパン生地表面の濡れを抑制することが可能であり、更に、急速昇温である為に、特に、成形冷凍パン生地が小型であるような場合には生地中心部の昇温も早く、生地表面部と中心部とのイーストの活性差が小さく解凍ムラの問題が小さくなり、良好なパン生地を得ることが可能である。
【0020】又、従来の成形済みのパン生地には、0℃〜15℃付近の温度帯に長時間維持することにより焼成後のパン表面にフィッシュアイと呼ばれる白い斑点が生じるという欠点があることが知られており、この現象は成形冷凍パン生地を解凍した場合にも多々認められた。
【0021】しかしながら、本発明方法によれば、数時間という極めて短時間で急速に解凍を行う為に、その様な現象は認められず良好な状態のパン表面を得ることが出来る。
【0022】更に、本発明方法は、最終発酵工程終了後、温度−30℃〜−21℃及び相対湿度80%以上の庫内にパン生地を移動させること、又は庫内空気の露点温度と生地表面温度との差を20℃以下に維持しながら、例えば、庫内の温度を0.2℃/分以上、好ましくは0.4℃/分以上という急速な冷却速度で、−30℃〜〜−21℃、好ましくは−26℃〜−22℃まで冷却することにより、生地中のイースト活性を急速に抑制し、その結果、冷却中の生地状態の変化、特に、体積変化を小さくすることが出来、最終発酵後の生地状態を表面が乾くことなく良好な状態で長時間維持することを可能ならしめたものである。
【0023】本発明方法に使用する成形冷凍パン生地の材料及びそれらの配合割合は特に限定されない。例えば、あんパン等の各種菓子パン、及びバターロール等の最終製品の種類に応じて当業者が適宜選択できる。但し、イースト菌は冷凍耐性を有するものを使用することが好ましい。このような冷凍耐性菌株は公知であり、例えば、特許第3070117号に記載されているような菌株を挙げることが出来る。
【0024】各材料を適宜配合して調製して得られた原料を、当業者には周知の各工程、例えば、前処理、混捏、発酵等を施したのち、更に、分割、丸め,ねかし、整形、成型等の仕上げ処理を経て、プラストフリーザーなどを用いて凍結させ、適当な温度で冷凍庫などで凍結保存する。
【0025】又、成形冷凍パン生地の形状も最終製品の種類に応じて当業者が適宜選択できる。
【0026】
【実施例】以下、実施例を参照しながら本発明を具体的に説明する。本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明の技術的範囲が実施例に限定されないことは当業者には明らかである。
【0027】尚、当業者には周知の事項であるが、以下の表における「ベーカーズ%」及び「%」は「重量部」を意味する。
【0028】
【実施例1】以下の仕様により成形冷凍パン生地を製造した。
【0029】
【表1】

【0030】この様にして得られた成形冷凍パン生地を冷凍庫から取り出して天板上に配置し、温度5℃、相対湿度90%に設定されたドウコンディショナーに収容した。ドウコンディショナーの庫内温度を平均昇温速度0.5℃/分で50分かけて30℃まで昇温させ、さらに100分間30℃で維持した。この間、相対湿度は65±10%で維持した。更に庫内温度を平均冷却速度0.7℃/分で35分かけ5℃まで冷却し60分間5℃で維持した。その後、本パン生地を−25℃の庫内に移して再冷凍した後、冷凍庫に保管した。以上の全ての工程において、庫内空気の加湿及び除湿等を行うことで庫内空気の露点温度と生地表面温度の差は15℃以下に維持した。2日後、本冷凍パン生地を天板上に配置し、オーブンにて焼成した。
【0031】
【実施例2】実施例1と同様にして成形冷凍パン生地を調整した。この様にして得られた成形冷凍パン生地を冷凍庫から取り出して天板上に配置し、温度30℃、相対湿度60%に設定されたドウコンディショナーに収容し、130分間維持した。更に庫内温度を平均冷却速度0.7℃/分で35分かけ5℃まで冷却し60分間5℃で維持した。その後、本パン生地を−25℃の庫内に移して再冷凍した後、冷凍庫に保管した。以上の全ての工程において、庫内空気の加湿及び除湿等を行うことで庫内空気の露点温度と生地表面温度の差は15℃以下に維持した。2日後、本冷凍パン生地を天板上に配置し、オーブンにて焼成した。
【0032】
【比較例1】実施例1と同様にして成形冷凍パン生地を調整した。この様にして得られた成形冷凍パン生地を冷凍庫から取り出して天板上に配置し、温度5℃、相対湿度90%に設定されたドウコンディショナーに収容した。ドウコンディショナーの庫内温度を平均昇温速度0.5℃/分で50分かけて30℃まで昇温させ、さらに100分間30℃で維持した。この間、相対湿度は65±10%で維持した。更に庫内温度を平均冷却速度0.7℃/分で35分かけ5℃まで冷却し24時間5℃で維持した。以上の全ての工程において、庫内空気の加湿及び除湿等を行うことで庫内空気の露点温度と生地表面温度の差は15℃以下に維持した。その後、本冷凍パン生地を天板上に配置し、オーブンにて焼成した。
【0033】
【比較例2】実施例1と同様にして成形冷凍パン生地を調整した。この様にして得られた成形冷凍パン生地を冷凍庫から取り出して天板上に配置し、温度30℃、相対湿度60%に設定されたドウコンディショナーに収容し、130分間維持した。更に庫内温度を平均冷却速度0.7℃/分で35分かけ5℃まで冷却し24時間5℃で維持した。以上の全ての工程において、庫内空気の加湿及び除湿等を行うことで庫内空気の露点温度と生地表面温度の差は15℃以下に維持した。その後、本冷凍パン生地を天板上に配置し、オーブンにて焼成した。
【0034】以上の実施例及び比較例で得られた結果を以下の表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】各比較例に比べ、各実施例で処理されたパン生地はいずれも焼成前の生地表面の状態が良く、焼成後に得られたパンの品質も良好であった。
【0037】
【発明の効果】このように本発明によれば、解凍及び最終発酵工程における所望の温度及び相対湿度に予め維持されている庫に成形冷凍パン生地を入れて、それ以後は、特に庫内の温度及び相対湿度を変化させることなく、解凍開始から約2時間ないし4時間で、解凍及び最終発酵工程を連続的に同一の庫内で行った後、焼成可能な状態のパン生地を得ることが出来る。
【0038】特に、本発明方法においては、パン生地を最終的に−30℃〜−21℃まで冷却することによって、焼成可能な状態で、その後1〜数日間良好な状態を維持することが可能になる。
【出願人】 【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
【出願日】 平成12年7月10日(2000.7.10)
【代理人】 【識別番号】100100181
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 正博
【公開番号】 特開2002−17238(P2002−17238A)
【公開日】 平成14年1月22日(2002.1.22)
【出願番号】 特願2000−208202(P2000−208202)