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【発明の名称】 小麦粉組成物およびこれを用いたベーカリー製品の製造法
【発明者】 【氏名】金子 敦

【氏名】古川 朋子

【要約】 【課題】ふすまのもつ独特の不快臭を抑えることで、好ましい穀物風味をもったベーカリー製品、特にパンを作るための小麦粉組成物を容易に得ること、及び好ましい穀物風味をもったベーカリー製品、特にパンを製造すること。

【解決手段】小麦粒の外皮部のうち最外部を除去した後に得られる小麦ふすまを配合することを特徴とする小麦粉組成物。小麦ふすまは、小麦粒の外皮部を小麦粒の重量に対し、最外皮から1.7重量%以上除去した後得られる小麦ふすまである。ベーカリー製品用小麦粉組成物である。小麦粉組成物を用いることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 小麦粒の外皮部のうち最外部を除去した後に得られる小麦ふすまを配合することを特徴とする小麦粉組成物。
【請求項2】 上記の小麦ふすまが、小麦粒の外皮部を小麦粒の重量に対し、最外皮から1.7重量%以上除去した後得られる小麦ふすまである請求項1の小麦粉組成物。
【請求項3】 ベーカリー製品用小麦粉組成物である請求項1または2の小麦粉組成物。
【請求項4】 請求項1、2または3の小麦粉組成物を用いることを特徴とするベーカリー製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業の属する技術分野】本発明は、小麦粉組成物およびこれを用いたベーカリー製品の製造方法に関する。詳しくは、小麦外皮部に特定の処理を行うことにより好ましい穀物風味を有するベーカリー製品を製造するための小麦粉組成物および好ましい穀物風味を有するベーカリー製品を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、各方面から健康の維持、増進のために食物繊維の摂取を積極的に行うことが推奨されている。これに対して食品に小麦の外皮部、すなわち小麦ふすまを添加し、食物繊維摂取量を増加させるための試みが提案されている。また一方で消費者には本格嗜好が高まっており、特にパンにおいては小麦粉本来の味や、好ましい穀物風味をもつパンが求められるようになってきている。これに対応する手段として小麦ふすまを配合したパン、全粒粉を用いたパンなどが製品化されている。このように栄養学的な面および消費者の嗜好動向の変化から小麦ふすまを用いたパンが注目されてきている。しかし、小麦ふすまを添加したパンにはふすまのもつ独特の不快臭が生じ、また小麦ふすまの粒度によってはこれを配合したパンの食感にざらつきを生じるといった欠点があるため、このようなパンは広く一般に受け入れられるものではなかった。
【0003】従来、小麦ふすまを積極的に小麦粉加工食品に用いるための技術が提案されている。特開平5−304915号公報では、小麦ふすまが熱変性を起こさない粉砕機で粉砕し、ふすまの存在を感じさせない食品を製造する方法が提案されている。また、粉状加工小麦ふすまと粒状加工小麦ふすまを組み合わせて配合することを特徴とする方法(特開平10−191873号公報)、小麦ふすまを脱脂した後焙焼し、次いで粉砕することを特徴とする方法(特開平11−103800号公報)などの技術により調製した小麦ふすまを配合する方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記の従来技術は、いずれも食感の改良を主目的としているものであり、小麦ふすまを添加したパンに生ずる独特の不快臭の改良については、不充分であった。さらに、ふすまの風味を改善するために微粉砕や加圧、脱脂、焙焼などの加工処理を行わなければならず、その操作が煩雑であるという欠点があった。そこで、本発明は、ふすまのもつ独特の不快臭を抑えることで、好ましい穀物風味をもったベーカリー製品、特にパンを作るための小麦粉組成物を容易に得ることを目的とする。また、本発明は、好ましい穀物風味をもったベーカリー製品、特にパンを製造する方法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は小麦粒の外皮を最外部より一定割合以上除去した後得られる小麦ふすまを配合することを特徴とするベーカリー製品、特にパン用小麦粉組成物およびこれを用いたベーカリー製品、特にパン類の製造方法に関するものである。本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、小麦粒の外皮の一部を除去した後得られた小麦ふすまを小麦粉に配合した組成物を用いて製造したベーカリー製品は、ふすまもつ独特の不快臭、いわゆるほこり臭、ぬか臭、枯れ草臭のような臭いがなく、好ましい穀物風味を有することを見いだし、本発明を完成させた。
【0006】すなわち、本発明は、小麦粒の外皮部のうち最外部を除去した後に得られる小麦ふすまを配合することを特徴とする小麦粉組成物を要旨としている。
【0007】上記の小麦ふすまが、小麦粒の外皮部を小麦粒の重量に対し、最外皮から1.7重量%以上除去した後得られる小麦ふすまであり、その場合、本発明は、小麦粒の外皮部のうち最外部を小麦粒の重量に対し、最外皮から1.7重量%以上除去した後に得られる小麦ふすまを配合することを特徴とする小麦粉組成物である。
【0008】小麦粉組成物がベーカリー製品用のものであり、その場合、本発明は、小麦粒の外皮部のうち最外部を除去した後に、好ましくは小麦粒の重量に対し、最外皮から1.7重量%以上除去した後に得られる小麦ふすまを配合することを特徴とするベーカリー製品用小麦粉組成物である。
【0009】また、本発明は、小麦粒の外皮部のうち最外部を除去した後に得られる小麦ふすま、好ましくは小麦粒の外皮部のうち最外部を小麦粒の重量に対し、最外皮から1.7重量%以上除去した後に得られる小麦ふすまを配合することを特徴とする小麦粉組成物を用いることを特徴とするベーカリー製品の製造方法を要旨としている。
【0010】
【発明の実施の形態】「小麦ふすま」とは、小麦粉の製造工程において小麦粒から胚乳部を除去した残りであり、必要に応じ胚芽を除去したものである。小麦粒に対するふすまの割合は小麦の品種や大きさにより異なるが、概ね20重量%前後である。本発明の小麦粉組成物に配合する小麦ふすまは、小麦粒の外皮部を最外部から一定割合以上除去した後に得られるものである。外皮部を最外部から除去する方法は特に規定されない。例として大麦、酒米用の搗精機などを用いることができる。
【0011】外皮部の除去割合は小麦粒全体の重量に対し、最外部から1.7重量%以上であることが望ましい。除去割合がこれより少ないとふすまのもつ不快臭が除去されず、風味の改善効果が発揮されない。また、外皮部の除去割合が20〜25%を超えると、小麦ふすま自体を得ることができなくなる。
【0012】本発明の小麦粉組成物に配合する小麦ふすまは、外皮部を一定割合以上除去した小麦粒から得られる。小麦ふすまを得るための方法に制限はなく、一般の小麦粉を工業的に製造する際に用いられているロール製粉の他、石臼製粉なども適宜選択できる。また、搗精などにより最外部のみを除去した後、さらにこれらの処理を継続して得ても良い。
【0013】最外皮を除去して得られた小麦ふすまを小麦粉に混合して小麦粉組成物を得る。ここで用いる小麦粉は通常に使用されている蛋白含量が11%〜15%のものであればよく、特に限定されない。また、ライ麦、大麦などの他の穀物粉を小麦粉組成物に配合しても構わない。
【0014】小麦粉と最外皮を除去した小麦ふすまの配合割合は特に規定されないが、パンに使用する場合は小麦粉100重量部に対して該小麦ふすまが1〜20重量部であることが望ましい。20重量部より小麦ふすまの配合量が多くなると製パン時の発酵が阻害される傾向がみられる。また、1重量部未満では好ましい穀物の風味が弱くなる。さらに最外皮の除去割合によって最外皮除去小麦ふすまを配合したベーカリー製品の好ましい穀物風味の強さは変化するため、目的とする製品の種類、製法によってこれらを適宜選択もしくは組み合わせて小麦粉に配合することができる。
【0015】最外皮を除去した小麦ふすまの粒度が大きい場合はさらに粉砕することが望ましい。この小麦ふすまを粉砕する方法は規定されず、一般的に用いられるハンマーミル、ピンミル、ジェットミルなどの粉砕機から目的に応じ適宜選択し、必要であればこれらを組み合わせても良い。粉砕された最外部を除去した小麦ふすまの粒度は目開き200μmのふるいを通過することが望ましい。この小麦ふすまの粒度がこれより大きい場合は食感にざらつきを生じやすくなる。ただし、粉砕した最外皮を除去した小麦ふすまのみを製パンに用いた場合、パン製品に小麦ふすまが添加してあることが視覚的に判り難くなるため、未粉砕の最外皮を除去した小麦ふすまと粉砕した最外皮を除去した小麦ふすまとを適宜組み合わせて配合してもよい。
【0016】本発明の小麦粉組成物を用い、イースト、砂糖、食塩などの副材料を適宜用いて定法により製造することによって、独特の不快臭がなく、好ましい穀物風味を有するベーカリー製品を得ることができる。本発明の小麦粉組成物を用いて製造されるベーカリー製品は特に限定されないが、パン類、クッキー、クラッカーなどの焼成食品がより好ましい。特に、食パン、フランスパンなどのパン類がより好適である。パンの製造方法は目的とするパンにより中種法、ストレート法、冷凍生地法などから適宜選択でき、何ら制限を受けない。
【0017】
【実施例】以下に実施例を示し発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例により何ら限定をされない。
【0018】[小麦粉組成物の調製]カナダ産強力春小麦を小型醸造精米器ニューオートマスターSDB7A型(佐竹製作所製)を用いて、処理前の小麦粉重量に対し77.4%の重量になるまで搗精した。搗精の途中で適宜試料を採取し、それぞれ小麦粒での部位が異なる画分を得た。得られた画分の搗精割合を表1に示した。
【0019】
【表1】
──────────────────────試料名 搗精の割合(%)
──────────────────────画分1 0〜 1.7画分2 1.7〜 3.5画分3 3.5〜 4.8画分4 4.8〜 7.0画分5 7.0〜 8.8画分6 8.8〜10.5画分7 10.5〜12.3画分8 12.3〜14.0画分9 14.0〜15.8画分10 15.8〜17.5画分11 17.5〜19.8画分12 19.8〜20.9画分13 20.9〜22.6画分14 0 〜22.6──────────────────────搗精割合(%)=100−搗精後の小麦粒の重量/搗精前の小麦粒の重量【0020】上記で得られたそれぞれの画分を以下の試験例に使用した。画分1〜14を各5重量%とパン用小麦粉(昭和産業製クオリテ)95重量%とを混合し、それぞれ小麦粉組成物1〜14を得た。
【0021】試験例前記小麦粉組成物1〜11を用いて以下の配合、工程で製パンし、角形食パンを得た。
《配合》
中種 小麦粉組成物 70重量部 イースト 2 イーストフード 0.1 水 40 本捏 小麦粉組成物 30重量部 砂糖 5 食塩 2 ショートニング 5 加水 28 中種 全量 《工程》
中種 ミキシング 低速3分、高速1分(関東混合機製10クォートミキサー)
捏上温度 24℃ 発酵条件 28℃、相対湿度80%、4時間 本捏 ミキシング ショートニング以外の材料を投入し、低速3分、中速2分後 ショートニングを投入し低速1分、中速2分、高速1分 (関東混合機製10クォートミキサー)
捏上温度 28℃ フロアタイム 20分 分割 220g 成型、型詰め モルダーでロール成型後、U字詰め ホイロ 38℃、相対湿度85%、45分 焼成 215℃、35分【0022】《評価》1〜14の小麦粉組成物を用いて調製したパンの風味を10名の専門パネラーによって、以下の基準に従い評価した。結果を表2に示した。
好ましい穀物風味の強さ++:はっきりと感じられる+:やや感じられる±:わずかに感じられる−:感じられない不快臭++:はっきりと感じられる+:やや感じられる±:わずかに感じられる−:感じられない総合評価++:非常に好ましい+:好ましい±:普通−:やや悪い−−:悪い【0023】
【表2】
──────────────────────────────── 試料名 好ましい穀物風味 不快臭 総合評価 ──────────────────────────────── 小麦粉組成物1 − ++ −− 小麦粉組成物2 + − + 小麦粉組成物3 ++ − ++ 小麦粉組成物4 ++ − ++ 小麦粉組成物5 ++ − ++ 小麦粉組成物6 ++ − ++ 小麦粉組成物7 ++ − ++ 小麦粉組成物8 ++ − ++ 小麦粉組成物9 + − + 小麦粉組成物10 + − + 小麦粉組成物11 ± − + 小麦粉組成物12 ± − + 小麦粉組成物13 − − ± 小麦粉組成物14 + + − ───────────────────────────────【0024】上記の通り、小麦ふすまの最外部(画分1)を除いた小麦ふすまを配合した小麦粉組成物を用いて製パンすることにより、好ましい穀物風味を有し、かつ不快臭のないパンを得られることが確認された。またその好ましい穀物風味の強さは小麦ふすまの外部からの搗精割合によって異なることが確認された。なお、この時の吸水量、作業性、パン製品の容積などは小麦ふすまを配合していない通常のパン用小麦粉と同等であり、全く問題がなかった。
【0025】ふすまを添加したパンの不快臭はふすまの最外部を含有することによって発生することが確認された。すなわち、小麦粉組成物1を用いたパンでは好ましい穀物風味はなく、不快臭が非常に強い。また小麦粉組成物14では好ましい穀物風味は確認できるものの、同時に不快臭が発生した。さらに小麦粉組成物13では、ふすま画分が少なくなるため不快臭は感じられないが、好ましい穀物風味も感じられなかった。
【0026】
【発明の効果】本発明の小麦粉組成物を用いることで、ふすまのもつ独特の不快臭がなく、好ましい穀物風味を有するベーカリー製品のための小麦粉組成物を得ることができる。またこの小麦粉組成物を用いることで独特の不快臭がなく、好ましい穀物風味を有するベーカリー製品を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
【出願日】 平成12年6月28日(2000.6.28)
【代理人】 【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
【公開番号】 特開2002−171(P2002−171A)
【公開日】 平成14年1月8日(2002.1.8)
【出願番号】 特願2000−193865(P2000−193865)