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【発明の名称】 製パン用組成物
【発明者】 【氏名】大森 俊一

【氏名】丹伊田 穰寿

【要約】 【課題】

【解決手段】果汁固形分量8.0重量%を基準としたときに、クエン酸酸度が0.01〜1.50重量%で、アスコルビン酸を0.001〜0.1重量%含む減酸レモン果汁を含有してなること、を特徴とする製パン用組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 果汁固形分量8.0重量%を基準としたときに、クエン酸度が0.01〜1.50重量%で、アスコルビン酸を0.001〜0.100重量%含むレモン果汁を含有してなること、を特徴とする製パン用組成物。
【請求項2】 レモン果汁が、ストレート果汁、濃縮果汁、粉末果汁、それらの希釈果汁の少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の組成物を使用すること、を特徴とするパンの製造方法。
【請求項4】 請求項3に記載の方法によって製造してなるパン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製パン用組成物に関するものであり、更に詳細には、パン類の製造に適したレモン果汁及びその利用に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、パン類を製造するにあたっては、イーストフードや乳化剤などの食品添加物とともに、酸化防止剤としてアスコルビン酸が使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、消費者の健康指向の高まりとともに、食品添加物を使用しないパンが望まれるようになり、その結果、イーストフードや乳化剤を使用しない製パン技術が開発され、一部は実用に供されている。そこで本発明者らは、アスコルビン酸についてもこれを使用しない製パンを試みたが、結局成功するには至らなかった。そこで、本発明者らは発想を転換して、アスコルビン酸を不使用とするのではなく、アスコルビン酸の代替物を新たに開発することとした。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、アスコルビン酸代替物を開発するという新規技術課題を設定し、本課題解決のために各方面から検討の結果、消費者の健康指向に鑑み、天然物に着目して鋭意スクリーニングした結果、レモン果汁に着目した。
【0005】しかしながら、アスコルビン酸代替目的でレモン果汁を添加してパン類を製造した場合、パン生地のpH低下が起こるため、十分な発酵状態を得ることができないうえ、酸味により製造したパン類の風味・食感を著しく損なってしまい、満足のできるものは得られていない。
【0006】そこで本発明者らは、その原因について研究の結果、その原因がレモン果汁に含まれるクエン酸であることに着目して更に研究を行い、レモン果汁からクエン酸の一部を除去する減酸処理を行なうことで、上記問題点が解決できるという有用新知見を得、本発明に至った。
【0007】すなわち本発明は、パン類の製造に使用したときに作業上問題がなく、風味・食感の良好なパンを得ることができる、パン類の製造に適したレモン果汁及びその利用に関する発明である。以下、本発明について詳述する。
【0008】本発明を実施するには、レモン果汁からクエン酸を除去する減酸処理を行うが、本発明において、減酸処理方法は、果実結実後の樹木にビタミンB群溶液を投与する等の処理で、果実中のクエン酸含量を減少させる方法と、果汁に炭酸カルシウムを添加し生じた沈澱物を除去する方法や、樹脂処理(たとえば陰イオン交換樹脂との接触)で吸着除去する方法がある。なお、本来の果汁中に含まれるクエン酸の量が少ない果汁にあっては、それを減酸処理することなくそのまま使用しても良いし、必要であればブレンドを行なっても良い。
【0009】減酸処理において、炭酸カルシウムのほか、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウムその他のカルシウム塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ剤が1種又は2種以上使用される。なお本発明においては、減酸処理により生成した沈殿物は、そのままにしてもよいが、風味や食感その他食品衛生上問題がある場合には、濾過や遠心分離等常法にしたがって除去するのがよい。
【0010】レモン果汁からはクエン酸はできる限り除去した方がよいが、コストや減酸処理操作等の工業的見地から、レモン果汁におけるクエン酸の残存量の製パン上許容される範囲を鋭意研究した結果、クエン酸含量はゼロにまで減酸せしめる必要はなく、果汁固形分量8.0重量%を基準としたときに、クエン酸酸度0.01〜1.50重量%であれば良いことをはじめて見出した。
【0011】本発明においてレモン果汁とは、ストレート果汁、濃縮果汁、粉末果汁、希釈果汁の少なくともひとつを指す。なお、レモン果汁には、レモン果汁の搾汁液のほか、レモン果実及び/又はレモン果皮からの抽出液、あるいはそれらを濃縮、精製、希釈等の処理をした処理物が包含される。
【0012】また、本発明において、レモン果汁はアスコルビン酸の代替物として使用するのであるから、当然のことながらアスコルビン酸含量は高くなければならず、可及的にその含量は高い方が良いが、果汁固形分量8.0重量%を基準としたときに0.001重量%以上であれば、本発明において充分に使用可能である。
【0013】すなわち本発明は、果汁固形分量8.0重量%を基準としたときに、クエン酸酸度が0.01〜1.50重量%でアスコルビン酸を0.001〜0.100重量%含むパン類の製造に適したレモン果汁(以下、減酸レモン果汁ということもある)を新たに創製し、これを用いて新規製パン用組成物を創製するものである。
【0014】減酸後のレモン果汁はpHが上昇しているため、果汁中のアスコルビン酸は経時的に不安定であり、直ちに凍結保存等を行なう必要があるが、保存性や取扱い性の便からは乾燥粉末化を行なうことが望ましい。
【0015】粉末化においては、スプレードライ、ドラムドライ、フリーズドライ、エアードライなど、既知の如何なる粉末化方法をも用いることが可能であり、また、保存あるいは加工上必要であれば、糖類、高分子安定剤等の賦形剤等を使用することも可能である。
【0016】本発明に係る製パン用組成物は、このようにして製造した新規減酸レモン果汁を含有してなるものであって、減酸レモン果汁のみから構成されてもよいし、各種成分を添加混合して組成物に製剤してもよい。その形態も液状、濃縮液、ペースト化物、乾燥物のいずれでもよい。
【0017】本組成物に他の成分を配合する場合、該成分としては、水、小麦粉、糖類、殿粉等のほか、食塩、ベーキングパウダー、油脂、卵、バター、乳製品その他製パンに使用される各種成分が適宜一種又は二種以上併用される。
【0018】本組成物は、生地混捏時に添加して充分に混捏すればよい。その添加量は、従来から行われているアスコルビン酸の場合と同量であり、減酸レモン果汁として、生地に対して0.01〜5%、好ましくは0.5〜2%程度である。製パン法としては、直捏法、中種法のいずれも使用可能であり、特に中種法にあっては、中種時と本捏時に本組成物を分割して添加してもよいし、いずれか一方に分離して添加してもよい。
【0019】かくして、本発明に係る減酸レモン果汁は、パン類の製造時にパン生地へ添加混捏しても生地のpH低下が起こらないため、作業上問題のない、風味・食感ともに良好なパン類ができる。
【0020】なお、パン類としては、食パン、菓子パン、特殊パン、調理パン等が挙げられ、食パンとしては白パン、黒パン、フランスパン、ロール、バンズ等、菓子パンとしてはジャムパン、あんぱん、クリームパン、レーズンパン、揚げパン、メロンパン、デニッシュペストリー等、特殊パンとしてはグリッシーニ、マフィン、ラスク等、調理パンとしてはホットドッグ、ハンバーガー、ピロシキ、ピザパイ、中華まん、等が例示できるが、これらに限定したものではない。以下、本発明の実施例について述べる。
【0021】
【実施例1】次のようにして減酸レモン果汁を製造した。
【0022】(1)レモンのストレート果汁5Lに炭酸カルシウム234.0gを添加混合し、生成した沈殿を濾過により除去して、減酸レモン果汁を製造した。処理前及び処理後における変化を下記表1に示した。
【0023】
(表1)
──────────────────────────────── 処理前 処理後──────────────────────────────── クエン酸(重量%) 6.00 0.82 アスコルビン酸(重量%) 0.055 0.050────────────────────────────────【0024】(2)陰イオン交換樹脂(商品名:MONO−77、ダウケミカル社製)を充填したカラム(4cm×40cm)にレモンストレート果汁2Lを通液して、減酸レモンを得た。処理前及び処理後における変化を下記表2に示した。
【0025】
(表2)
───────────────────────────────── 処理前 処理後───────────────────────────────── クエン酸(重量%) 6.28 1.05 アスコルビン酸(重量%) 0.056 0.047 ────────────────────────────────【0026】
【実施例2】実施例1(1)で得た減酸レモン果汁を製パン用組成物として用い、下記表3の配合、表4の工程にて食パンを直捏法にて製造した。
【0027】
(表3)
製パン基本配合(%)
(食パン)
────────────────────────────── 小麦粉(強力粉) 90 小麦粉(薄力粉) 10 砂糖 5 食塩 2 脱脂粉乳 1.5 ショートニング 6 生イースト 3 製パン用組成物 2 水 63──────────────────────────────【0028】
(表4)
製パン工程 (食パン)
───────────────────────────── ミキシング L3M4↓L3M4H1 捏上温度 28℃ 発酵時間 50分 ベンチタイム 30分 ホイロ温度/湿度 38℃/75% ホイロ時間 40分 焼成温度 220℃ 焼成時間 40分─────────────────────────────【0029】発酵は、すべて28℃、湿度75%で行い、ホイロは、38℃、湿度75%で行った。小麦粉は総量2kgとし、混捏は製パン用ミキサーを使用した。分割、丸めはマニュアル処理し、分割重量は、食パンで450gとした。焼成したパンについて、その効果を男女10名ずつによるパネルテストにより確認した。得られた結果を下記表5に示す。なお、対照1として従来から行われているアスコルビン酸を使用して製パンした結果、対照2として本組成物の代りに減酸処理をしないレモン果汁を使用して製パンした結果を示す。表中、◎、○、△、×は優、良、否、普通、劣るをそれぞれ示す。
【0030】

【0031】上記結果から明らかなように、本発明に係るパンは、従来法(対照1)と全くそん色がなく、特に風味はすぐれており、不快な酸味は感じられず、製パン工程もスムースに行われた。これに対して、減酸処理をしないレモン果汁を用いた場合は(対照2)、全般的に品質が低く、焼き色もやや悪く、すだちが生じ、特に風味に関しては不快な酸味を強く感じた。
【0032】
【発明の効果】本発明により、天然物由来によるアスコルビン酸代替がはじめて可能となった。本発明に係る減酸レモン果汁は、これを製パンに使用したとき、発酵もスムースに進行して、作業上問題がなく、しかも風味、食感のすぐれたパンを得ることができ、特に不快な酸味を感じることがないという著効が奏される。また、本発明は、レモン果汁にも新しい用途を拓くものであって、この点においてもすぐれている。
【出願人】 【識別番号】591134199
【氏名又は名称】株式会社ポッカコーポレーション
【出願日】 平成12年6月27日(2000.6.27)
【代理人】 【識別番号】100075775
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 親男
【公開番号】 特開2002−170(P2002−170A)
【公開日】 平成14年1月8日(2002.1.8)
【出願番号】 特願2000−193108(P2000−193108)