トップ :: A 生活必需品 :: A21 ベイキング;生地製造または加工の機械あるいは設備;ベイキングの生地

【発明の名称】 低蛋白調整小麦粉及び低蛋白パンの製造方法
【発明者】 【氏名】弘中 泰雅

【要約】 【課題】腎臓病などの患者用低蛋白パン等の高度蛋白制限食に使用し得る低蛋白食品及び、これらに用いられる調整小麦粉の製造法。糖尿病性腎症用治療食として減塩低蛋白カロリー制限パンの製造法【解決手段】 製パン能に影響を与える、小麦粉中の澱粉のうち、良好な製パン特性を持つ大粒澱粉を多く含む小麦澱粉をパン用強力小麦粉に対して略70%以上加えて、調整小麦粉を作り、これらから低蛋白パンなどの低蛋白小麦加工食品を得る。調整小麦粉にL−アラビノースをくわえて、減塩低蛋白パンをつくりスークラーゼを特異的に阻害し、砂糖分解に伴う血糖値の上昇を防ぐ。

【解決手段】製パン能に影響を与える、小麦粉中の澱粉のうち、良好な製パン特性を持つ大粒澱粉を多く含む小麦澱粉をパン用強力小麦粉に対して略70%以上加えて、調整小麦粉を作り、これらから低蛋白パンなどの低蛋白小麦加工食品を得る。調整小麦粉にL−アラビノースをくわえて、減塩低蛋白パンをつくりスークラーゼを特異的に阻害し、砂糖分解に伴う血糖値の上昇を防ぐ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 調整小麦粉において、強力小麦粉に粒径10μm〜35μmの大粒澱粉を略90%以上含む小麦澱粉を少なくとも混合した低蛋白調整小麦粉。
【請求項2】 請求項1の低蛋白調整小麦粉、もしくは強力小麦粉と粒径10μm〜35μmの大粒澱粉を略90%以上含む小麦澱粉に対して、イースト、水、その他の製パン製菓材料を加えて作られた低蛋白パン等の低蛋白小麦加工食品。
【請求項3】 請求項2のパンで低蛋白調整小麦粉に相当する物に対して、食塩の添加量を1%以下にして作られた減塩低蛋白パン等の減塩低蛋白小麦加工食品。
【請求項4】 請求項1,2,3の低蛋白調整小麦粉、低蛋白パン等の低蛋白小麦加工食品で、少なくとも添加された砂糖などの糖類に対して1%以上のL−アラビノースとD−キシロースの少なくとも一つが加えられた調整小麦粉、低蛋白パン等の低蛋白低カロリー小麦加工食品。
【請求項5】 請求項4の調整小麦粉、低蛋白パン等の低蛋白小麦加工食品において、加えられる油脂の量が調整小麦粉相当量に対して2%未満の減油脂含量のもの。
【請求項6】 請求項1,2,3,4,5の調整小麦粉、低蛋白パン等の低蛋白加工食品で、小麦澱粉の一部をパン用小麦以外の澱粉もしくは穀粉で置き換えたもの。
【請求項7】 請求項1記載の強力小麦粉と少なくとも粒径10μm〜35μmの大粒澱粉を略90%以上含む小麦澱粉とを混合して得られる低蛋白調整小麦粉の製造方法【請求項8】 強力小麦粉に代えて請求項1の調整小麦粉,もしくは強力小麦粉と粒径10μm以上の大粒澱粉を略90%以上含む小麦澱粉に対して、イースト、水、その他の製パン製菓材料を加えて作られることを特徴とする、請求項2,3,4,5または6記載の低蛋白パン等低蛋白小麦加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本考案は、腎臓病、糖尿病性腎症患者、その他低蛋白食を必要とする人用の低蛋白パン、減塩低蛋白パン、糖代謝抑制低蛋白パン及び低蛋白スポンジケーキなどの製造に用いられる調整小麦粉、並びに低蛋白パン、減塩低蛋白パン、糖代謝抑制減塩低蛋白パン及びスポンジケーキなどの低蛋白小麦加工食品等の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】食パン、ロールパンなどの製造に用いられるパン用小麦粉は、通常、蛋白含量が11.5%〜12.5%の強力小麦粉であり、強力小麦粉を原料に製造されたパンの蛋白含量は8.0〜9.0%になる。
【0003】従来、低蛋白パンは、低蛋白小麦粉(薄力小麦粉)、パン用強力小麦粉に澱粉を配合した組成物(特開平5−7448)、あるいは55〜80重量%の低蛋白小麦粉を含む小麦粉組成物(特開平9−168362)により製造されていた。
【0004】低蛋白小麦粉(薄力小麦粉)を用いると、機械耐性が低く製パン生産性が悪く、パンの容積が低下し、内相、外相とも荒れ、パンの風味が良好でなく、しかも老化が早いなどパンの品質上の問題があった。澱粉配合小麦組成物(特開平5−7448)の澱粉量は穀分総量の45%以下が推奨されており、蛋白含量は6.5〜7.5%で、通常のパン用強力小麦粉蛋白含量の50〜60%以上であり、従来の澱粉配合小麦組成物は蛋白質20g(7単位)の厳しい蛋白制限食には使い辛い問題があった。低蛋白小麦粉を含む小麦粉組成物(特開平9−168362)においても、いわゆる低蛋白小麦粉の蛋白含量が約5.5%であることから、低蛋白小麦粉を80%含む小麦組成物の計算上の最小蛋白含量は6.7%になり、強力小麦粉に対する蛋白量は50%以上で、卵や乳製品などの付加材料の蛋白量を差し引いた、この組成物から作られたパンの蛋白量の減少分は50%にも満たないため、同様に高度の蛋白制限食に用いるには不向きであった。
【0005】糖尿病はインスリン依存型とインスリン非依存型の2つのタイプがあり、日本人の糖尿病のほとんど(約95%)は非依存性の糖尿病である、このタイプの糖尿病は糖尿病になりやすい体質の人に、食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレス,加齢などのインスリンの作用を妨害するような引き金が加わって発症する。糖尿病は進行すると合併症を併発し、糖尿病発症5〜10年で約20%が顕性腎症に陥る、現在わが国では新規血液透析導入者の約30%が糖尿病性腎症である。従来、低蛋白パンは慢性腎不全などの腎臓病を対象に作られていたために、表2の例にみられる様に減塩低蛋白であるが、脂肪、糖類を通常の食パンの数倍含む、高カロリー食であった。ところが糖尿病性腎症は食べ過ぎなどのエネルギー過多が原因の一つであるので、糖尿病性腎症にたいする治療食は塩分、蛋白の制限のほか、脂肪や糖類などのエネルギー源についても制限しなければならない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の腎臓病の治療食などに用いられる低蛋白パンの製造方法及び低蛋白パンに用いる小麦粉組成物の製造法は、澱粉及び低蛋白小麦粉を小麦粉のいわば希釈剤として用いることを主眼として考えられており、これらいわゆる希釈剤の製パン特性については積極的に検討が加えられていない。
【0007】製パン材料としての小麦粉に関して、小麦粉の蛋白質(グルテン)と製パン性の関係において、良質なパンは良質のグルテンを多く含む小麦粉から作られることは良く知られている。しかし粉にして食用として利用される小麦胚乳の成分の約70%は澱粉であり、蛋白質の約12%に比較して含有率が高いので製パンにおいて、澱粉はパンの形状や食感を作り出す上で重要な役割を果たしている。この発明は従来技術の問題点を解決し、製パン特性のすぐれた低蛋白調整小麦粉及び従来品より蛋白含量の少ない低蛋白パン、減塩低蛋白パンなどを提供することを課題とする。
【0008】従来の腎臓病患者用治療食のパンは、減塩低蛋白高カロリー食であったが、糖尿病性腎症の治療食は減塩低蛋白低カロリーが基本的に求められるので、減塩低蛋白低カロリーパンなどの低蛋白低カロリー小麦加工食品の提供を課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】小麦の澱粉粒は円形または楕円形をしている。粒径が10〜35μmの比較的大粒で楕円形または円形の澱粉粒(「A粒」という)と、1〜10μmの小粒で円形の澱粉粒(「B粒」という)とが混在しており、中間の大きさのものはない。小麦の品質や生育条件によってA粒とB粒の構成比は変わると考えられている。
【0010】小麦澱粉は小麦粉に水を加えて混錬した生地を、小麦グルテンを採取する過程で洗浄機により澱粉を取りだしたものを、高速遠心篩→ノズル型遠心機→連続遠心分離機→脱水機あるいはノズル型遠心機と脱水機→乾燥機→シフター→充填包装されて製品となる。 したがって小麦澱粉は原料である小麦の品種、製造法により、粗蛋白量、灰分、水分などの成分だけでなく、澱粉粒の構成比率にも差ができる。市販の高級小麦澱粉の1例である、グリコ栄養食品の小麦澱粉マルカマは粗蛋白0.2%以下、灰分は0.15%以下、水分は14%以下で表1に記する澱粉粒径分布を持つ。
【0011】
【表1】

【0012】パン中でのグルテンと澱粉は、建築における鉄筋とコンクリートのような関係に例えることができる。焼成中に澱粉は温度上昇と共に水分を吸収して糊化し、しなやかになって気泡を包み、グルテンの間を埋めるようになり、澱粉はパンの内相を形作るのに重要な役割を果たしているので、ベーキング中の澱粉種類の違いによる糊化温度の差、粒径の差、粒の形状によって小麦澱粉以外の澱粉は製パンにむいていない、小麦澱粉はコンクリート中の砂利に相当するので澱粉粒径分布の違いによる製パン性に対する影響は大きい。強力小麦粉と製パン性能の優れた請求項1に記載の粒度分布を持つ小麦澱粉を撹拌混合して低蛋白調整小麦粉は製造される。低蛋白調整小麦粉及びこれに相当する混合物に所定の製パン製菓材料を加えて低蛋白パン等の低蛋白小麦加工食品及び減塩低蛋白パン等の減塩低蛋白小麦加工食品は製造される。
【0013】植物細胞壁のヘミセルロースの主成分の一つであるL−アラビノースの甘味度は砂糖の約半分であるが、味質は砂糖に非常に類似しているので少量添加しても判別することは困難である、砂糖の過剰摂取による糖尿病を予防する効果についても報告(檜作進、J.Appl.,Glycosci.46,159−165(1999))されている。L−アラビノースを砂糖に添加することにより30〜60%の砂糖が消化吸収を免れて大腸に達し、食物繊維用の作用を発揮するものと考えられている。特に砂糖を20%以上含む菓子パン、スポンジケーキなどの砂糖高含有小麦加工食品に対してこの効果は大きく、カロリー源である砂糖の吸収の抑制に有効である。木糖とも言われ木材などに多量に存在するD−キシロースもシュクラーゼの阻害作用は大きいが、L−アラビノースの効果のほうが大きい。
【0014】低蛋白パンは蛋白含量が少ないため、吸水量が少なくなる傾向にあり、やや乾いた食感になる場合がある、必要に応じてパン用小麦以外の澱粉、あるいは穀粉を加える。澱粉の性状は植物の種類、品種,生育条件,加工条件などによって異なり、水分の存在下で糊化する場合、糊化温度や糊化速度が異なり加工条件によって保水力も異なる。したがって澱粉の性状の異差を利用してパンなどの食品の水分含量が変わり、種々の食品にあった食味を変えることが出来る。食味の改善の為にタピオカ、コーン、ワキシーコーン、ジャガイモ、もち小麦,その他の澱粉あるいは穀粉を製パン特性が低下しない程度に数%加えて食味を改善する。
【0015】
【発明の実施の形態】パン用強力粉に対して、少なくとも粒径10μm以上の大粒澱粉を略90%以上含む小麦粉澱粉を略80%以上混合した調整小麦粉は、従来推奨されている穀粉総量の澱粉量の45%以下を超えているが、より低蛋白のパンを目指してパン用強力小麦粉110gに対して小麦粉澱粉マルカマ190gの割合にて混合希釈した低蛋白調整小麦粉を調整し、表2の配合表にしたがって表3に示す製パン条件を持つ家庭用製パン器で低蛋白パンを製造した。 パン用強力小麦粉110gに対して小麦粉澱粉マルカマ190gの割合にて希釈した作った調整小麦粉は、調整小麦粉中の粗蛋白量は4.2%となり通常のパン用強力小麦粉の粗蛋白含量に対して略35%となり、低蛋白食材としての価値が認められる。この調整小麦粉で作った減塩低蛋白パンは、比容積が略4.3でパンとして好ましいボリュームと食感を持っており、且つ市販パンに比較して粗蛋白含量は略2.6%で略30%の蛋白含量であり、減塩低蛋白パンとしてもナトリウム含量も略30%であった。
【0016】
【表2】

【0017】
【表3】

【0018】糖尿病性腎症用の治療食としてのパンは従来の減塩低蛋白パンに比較してショートニングなどの油脂類を減じ、表4に示すように小腸の砂糖分解酵素(スークラーゼ)を特異的に阻害し、砂糖摂取に伴う血糖値の上昇や、インスリンの分泌を著しく抑制する作用を持つL−アラビノースを添加して作った。
【0019】
【表4】

【0020】
【発明の効果】強力小麦粉と請求項1記載の粒径分布を持つ小麦澱粉を総量の63%混合して得られる低蛋白調整小麦粉は、強力小麦粉の蛋白量11.5から12.5%に比較して蛋白含量略4.2%であって強力小麦粉の35%程度の蛋白量であるが充分な製パン性能をもっている。該低蛋白調整小麦粉から作られた低蛋白パンは比容積4.4で蛋白質含量は略2.6%で従来の低蛋白パンの5.8%と比較してかなり低蛋白であった。通常製パンにおいて食塩の生地の物性に与える影響は大きいとされているが、本発明において、対小麦粉換算で0.6%の食塩含量で上記のとうり好ましいボリュームのパンが出来ており、ナトリウム含量も通常食パン比で略30%となりナトリウム制限食としての減塩パンとしての価値が確認された。
【0021】蛋白制限食は1日蛋白質20gの厳しい制限のものまであるが、本発明の減塩低蛋白パンは100gあたり略2.6gとなり高度の蛋白制限食に有効である。
【0022】減塩低蛋白パンに対し、32名の健常な人によって構成されるパネルによる、官能検査において85%以上の人が5段階評価で3以上の評価を与え、治療食として味覚の面からも支持された。 したがって慢性腎不全等の減塩、低蛋白の治療食を要求される疾病に対して、本考案の調整小麦粉、低蛋白パン及び減塩低蛋白パンは栄養学及び食味の上からも極めて有益なものとなる。
【0023】医師あるいは栄養士等の指導により、患者症状に合わせ小麦澱粉の混合率、塩分量、油脂量、糖量、L−アラビノース等の量は調整され、症状に適合する蛋白量、塩分量、エネルギー量に調整した配合にてパン及び低蛋白小麦加工食品を製造することにより重度の糖尿病性腎症の治療食としてのカロリー抑制効果が発揮される。
【出願人】 【識別番号】598090704
【氏名又は名称】弘中 泰雅
【出願日】 平成12年6月16日(2000.6.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−169(P2002−169A)
【公開日】 平成14年1月8日(2002.1.8)
【出願番号】 特願2000−221505(P2000−221505)