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【発明の名称】 新規な殺菌剤およびその製法
【発明者】 【氏名】金 哲史

【氏名】堀池 道郎

【氏名】手林 慎一

【氏名】園村 嘉伸

【要約】 【課題】天然由来の物質を用いた強い抗菌活性を有し、従来使用されてきたパラベンなどの合成品を置換・代替できる新規な殺菌剤を提供する。

【解決手段】(1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−エテニル−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−ドデカヒドロ−1,4a,7−トリメチル−1−フェナントレンカルボキシリックアシッドを有効成分として含有するか、あるいはさらにエント−カウル−16−エン−19−オイックアシッドを有効成分として含有する殺菌剤を用いる。ウド(学名:Araliacordata)からPAやKAを容易に効率よく抽出できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−エテニル−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−ドデカヒドロ−1,4a,7−トリメチル−1−フェナントレンカルボキシリックアシッドを有効成分として含有することを特徴とする新規な殺菌剤。
【請求項2】 さらにエント−カウル−16−エン−19−オイックアシッドを有効成分として含有することを特徴とする請求項1記載の殺菌剤。
【請求項3】 下記の工程(1)〜(6)により製造することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の殺菌剤の製法。
工程(1)ウドの茎部以外の部分を細断及び/又は粉砕、乾燥してウドの乾燥断片及び/又は粉末を作る工程工程(2)ウドの乾燥断片及び/又は粉末を水により煮出す工程工程(3)水により煮出したウドの断片及び/又は粉末から有機溶媒により有効成分を抽出する工程工程(4)抽出物から常法にしたがって(1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−エテニル−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−ドデカヒドロ−1,4a,7−トリメチル−1−フェナントレンカルボキシリックアシッドおよびエント−カウル−16−エン−19−オイックアシッドを単離する工程工程(5)単離された(1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−エテニル−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−ドデカヒドロ−1,4a,7−トリメチル−1−フェナントレンカルボキシリックアシッドを有効成分として配合して請求項1記載の殺菌剤を調製する工程、あるいは、工程(6)単離された(1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−エテニル−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−ドデカヒドロ−1,4a,7−トリメチル−1−フェナントレンカルボキシリックアシッドおよびエント−カウル−16−エン−19−オイックアシッドを有効成分として配合して請求項2記載の殺菌剤を調製する工程。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な殺菌剤およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、(1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−エテニル−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−ドデカヒドロ−1,4a,7−トリメチル−1−フェナントレンカルボキシリックアシッド[(1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−ethenyl−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−dodecahydro−1,4a,7−trimethyl−1−phenanthrenecarboxylicacid(以下、PAと称すことがある)]およびエント−カウル−16−エン−19−オイックアシッド[ent−kaur−16−en−19−oic acid(以下、KAと称すことがある)]は、鎮痛効果、低体温効果、ペントバルビトールによる麻酔作用の持続効果、メタムフェタミンによる歩行性運動失調症の抑制効果があることが知られている[Emi Okuyama et. Chem.Pharm.Bull.39(2)405〜407(1991)]。
【0003】また、KAは殺菌作用を有することが知られている[P.D.Bremneret.S.Afr.J.Bot.2000,66(2):115〜117.L.Mendoza et.Journal of Ethnophaamacology58(1997)85〜88.]。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来PAが殺菌作用を有することは全く知られていなかった。本発明の第1の目的は、従来使用されてきたパラベンなどの合成品を置換できるような、天然由来の物質を有効成分として含有する強い殺菌活性を有する新規な殺菌剤を提供することであり、本発明の第2の目的は、そのような殺菌剤を効率的に容易に製造する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は課題を解決するために鋭意研究した結果、PAが優れた殺菌作用を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】本発明の請求項1は、(1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−エテニル−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−ドデカヒドロ−1,4a,7−トリメチル−1−フェナントレンカルボキシリックアシッドを有効成分として含有することを特徴とする新規な殺菌剤である。
【0007】本発明の請求項2は、請求項1記載の殺菌剤において、さらにエント−カウル−16−エン−19−オイックアシッドを有効成分として含有することを特徴とする。
【0008】本発明の請求項3は、下記の工程(1)〜(6)により製造することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の殺菌剤の製法である。
工程(1)ウドの茎部以外の部分を細断及び/又は粉砕、乾燥してウドの乾燥断片及び/又は粉末を作る工程工程(2)ウドの乾燥断片及び/又は粉末を水により煮出す工程工程(3)水により煮出したウドの断片及び/又は粉末から有機溶媒により有効成分を抽出する工程工程(4)抽出物から常法にしたがって(1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−エテニル−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−ドデカヒドロ−1,4a,7−トリメチル−1−フェナントレンカルボキシリックアシッドおよびエント−カウル−16−エン−19−オイックアシッドを単離する工程工程(5)単離された(1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−エテニル−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−ドデカヒドロ−1,4a,7−トリメチル−1−フェナントレンカルボキシリックアシッドを有効成分として配合して請求項1記載の殺菌剤を調製する工程、あるいは、工程(6)単離された(1S,4aR,4bS,7S,10aR)−7−エテニル−1,2,3,4,4a,4b,5,6,7,9,10,10a−ドデカヒドロ−1,4a,7−トリメチル−1−フェナントレンカルボキシリックアシッドおよびエント−カウル−16−エン−19−オイックアシッドを有効成分として配合して請求項2記載の殺菌剤を調製する工程。
【0009】本発明の殺菌剤は、ウドなどの天然由来のPAを有効成分として含有する新規な殺菌剤であり、また本発明の殺菌剤は、天然由来のPAとKAを有効成分として含有する新規な殺菌剤であり、優れた強い殺菌活性を有し従来使用されてきたパラベンなどの合成品を置換できる。本発明の製法により本発明の殺菌剤を効率的に容易に製造することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】次に本発明を詳細に説明する。本発明の殺菌剤は、PAを有効成分として含有する殺菌剤である。また、本発明の他の殺菌剤は、PAおよびKAを有効成分として含有する殺菌剤である。本発明の殺菌剤は、枯草菌などには殺菌活性がないが悪性の黄色ブドウ状球菌や大腸菌等の微生物を死滅させたり、その繁殖を防止したりすることができるものであり、消毒薬、防腐剤、防かび剤などとしての用途に使用されるものも包含するものである。
【0011】本発明に係わるPAは、次の式(1)で表される分子構造を有する有機化合物である。本発明に係わるKAは、次の式(2)で表される分子構造を有する有機化合物である。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】PAおよびKAは前記のように公知の有機化合物であるが、PA単独や、PAおよびKAを組み合わせたものが殺菌剤の有効成分として有用であることは全く知られていなかった。
【0015】本発明に係わるPAおよびKAは、水溶性と脂溶性を合わせ持っている。したがって、本発明の殺菌剤は例えば人の皮膚などの殺菌対象物に付着し易く、かつ水で流出し難いので効果が長期にわたり持続する。
【0016】本発明の殺菌剤中のPAやKAの含有量は目的とする微生物の種類や状況によっても異なるので、使用目的や状況に対応して適宜選定して決められるものであり、特に限定されるものではない。
【0017】本発明の殺菌剤の剤型も、例えば、水や有機溶媒などの溶媒や分散媒などの中に溶解させたり、分散させたり、乳化させたり、あるいは一部溶解させ他を懸濁させた液状のものでも、また粉末、粒状、くん蒸剤などの形態でも、あるいはこれらの組み合わせでもよく、特に限定されない。
【0018】本発明の殺菌剤の適用・添加方法も、特に限定されず、洗浄剤、石けん、化粧料などの殺菌対象物に直接配合・添加してもよく、あるいは植物や動物など、壁、床、家具、寝具、衣類などの殺菌対象物に部分的にあるいは全体に散布、スプレーするなどして適用したりしてもよく、あるいは殺菌対象物の空中、土壌などの環境に適用・施用したり配置・設置するなどして間接的に殺菌対象物に殺菌効果を発揮させるようにしても、あるいはこれらの組み合わせでもよく、特に限定されない。
【0019】本発明の殺菌剤には、目的に応じて通常の殺菌剤に添加される公知の各種添加剤を1種以上本発明の主旨を逸脱しない範囲において添加することができる。添加剤としては、具体的には、例えば、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性もしくは両性の界面活性剤、固着剤、増粘剤、粘度調整剤、沈殿防止剤、中和剤、防腐剤、抗菌剤、合成系殺菌剤および防ばい剤、顔料、色素、香料、乳化剤、酸化安定剤、充填剤、消泡剤、緩衝剤等を挙げることができる。
【0020】本発明において使用される界面活性剤としては、例えばアルキルスルホコハク酸塩、縮合リン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル酢酸エステル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤が挙げられ、その塩としてアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
【0021】さらに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキジプロピレングリコール等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。また、必要に応じてカチオン系、両イオン系界面活性剤を用いてもよい。
【0022】本発明において使用される固着剤としては、例えばD−ソルビット、パラフィン、カゼイン石灰、シリコーン、デンプン類、樹脂粉末、水膨潤性高分子物質などが挙げられる。
【0023】本発明において使用される増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、コロイド状シリカ、α化デンプンなどの水溶性高分子化合物、高純度ベントナイト、親水性シリカなどが挙げられる。
【0024】本発明において使用される沈殿防止剤としては、例えばアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性湿潤・分散剤、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのノニオン性湿潤・分散剤などが挙げられる。
【0025】本発明において使用される中和剤としては、例えば硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0026】本発明において使用される増量剤としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、酸性白土、活性白土、アタパルガスクレーなどの粉末担体、バーミキュライト、パーライト、軽石などの粒状担体、ホワイトカーボン、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、粉末セルロース、デンプン、デキストリン、糖類、米糠、油粕、コーンフィード、ふすまなどが挙げられる。
【0027】また本発明においては、シリコーン等の消泡剤、エチレングリコール、プロピレングリコール等の凍結防止剤を添加することもできる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0028】本発明の殺菌剤はアルカリ性〜中性〜酸性のいずれの範囲においても効果を発揮するので、特に限定されない。しかし、アルカリ性の場合より中性〜酸性の場合の方が抗菌性が高いので好ましく、さらに酸性物質を添加してpH4〜5の範囲に調整するとさらに抗菌性が高いので特に好ましい。
【0029】本発明で用いる酸性物質は安全性の高いものであれば有機酸でも塩酸のような無機酸でもよく特に限定されるものではない。中でも、ビタミンCなどのビタミンや、グルコノデルタラクトン、食用として認められている食用酸は好ましく使用できる。食用有機酸としては、具体的には例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸、アスコルビン酸あるいはこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。
【0030】なお、下記の実施例においてはウド根部を原料として用いるが、ウド根部に特に限定されず、原料はPAやKAを含有する動植物であればなんでも原料とすることができる。
【0031】また本発明者はウドの各部から抽出した抽出物について抗菌性に差異があることを見出した。それによると、ウドの茎部からの抽出物よりも根部、葉部、小枝部、花部等からの抽出物の方が抗菌性が優れていることが判明した。したがって、本発明においてウドの茎部以外の部分は原料として好ましく使用できる。
【0032】古来食用、漢方薬として用いられてきた本発明における代表的原料であるウドおよびウド根部について述べる。ウドの根部とは根系全般であって、地上部以外の全ての部分を含む。周知のように、ウドは日本全土の山地で自生し畑で栽培もされる多年草であり、茎は太く円柱形で高さは1.5m内外、葉は柄があり互生で毛があり、夏に茎の上部に円錐形の散形花序をなし、淡緑色の小花をつける。本発明では、天然物でも、栽培物でも、これらの混合物でもいずれも用いることができる。ウドは栽培による多量生産が可能であり、2〜3年肥培管理した根系を用いることが好ましい。更に、株分けした根株を春から秋まで畑で肥培管理し、充実した根系を用いることもできる。
【0033】次に、PA、KAを単離する工程について述べる。本発明においては、先ず、工程(1)において、ウドの茎部以外の部分を細断及び/又は粉砕、乾燥してウドの乾燥断片及び/又は粉末を作り、次いで、工程(2)において、ウドの乾燥断片及び/又は粉末を水により煮出す。
【0034】ウドの茎部以外の乾燥断片、粉末を水により煮出す条件は、グルコース、アミノ酸、蛋白質、炭水化物等の水溶性栄養成分を水中に抽出して除去できるような条件であれば特に限定されないが、約80〜100℃で約30分〜2時間程度処理することにより、これらの水溶性栄養成分をほぼ完全に水中に抽出して除去することができる。
【0035】そして、工程(3)において、水により煮出したウドの断片及び/又は粉末から有機溶媒により有効成分を抽出する。
【0036】本発明で用いる有機溶媒は水により煮出したウドの断片及び/又は粉末から有効成分を抽出できるようなもので、毒性がなく安全性の高いものであればよく特に限定されるものではない。具体的には、例えば、アセトン、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエーテル類、エーテル類を含む水溶液、エーテル類を含む酸性水溶液、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール等の毒性がなく安全性の高い炭素数2〜10程度の低級アルコールや、これらを含む水溶液(例えば、低級アルコール80%の水溶液)あるいは混合液を挙げることができる。上記水溶液は中性でも、酸性でも、アルカリ性でもよいが、中でも酸性水溶液は本発明において好ましく使用できる。
【0037】そして、工程(4)において、この抽出物から常法にしたがってPAおよびKAを単離する。
【0038】次に、抽出物からPAおよびKAを単離する方法の具体例について述べるが、抽出物からPAおよびKAを単離する方法はこれらの具体例に限定されるものではない。
(第1例)
(イ)工程(3)で得られた抽出物を減圧下濃縮乾固し、粗抽出物を得る。
(ロ)この粗抽出物を水に懸濁後、常法にしたがってエーテルを用いて酸性区分を抽出する。
(ハ)得られた酸性区分をシリカゲルカラムにチャージした後、酢酸エチル含有ヘキサン(例えば、3質量%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出させて酢酸エチル含有ヘキサン画分を得る。
(ニ)得られた酢酸エチル含有ヘキサン画分から再結晶によりPAを単離する。
(ホ)PAを単離した後の母液を硝酸銀を含むシリカゲルカラム(例えば、5質量%硝酸銀含有シリカゲルカラム)にチャージした後、酢酸エチル含有ヘキサン(例えば、5質量%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出させて酢酸エチル含有ヘキサン画分を得る。
(ヘ)そして得られた酢酸エチル含有ヘキサン画分から再結晶によりKAを単離する。
【0039】(第2例)
(イ)工程(3)で得られた抽出物を減圧下濃縮乾固し、粗抽出物を得る。
(ロ)得られた粗抽出物をシリカゲルカラムにチャージした後、酢酸エチル含有ヘキサン(例えば、3質量%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出させて酢酸エチル含有ヘキサン画分を得る。
(ハ)この酢酸エチル含有ヘキサン画分から常法にしたがってエーテルを用いて酸性区分を抽出する。
(ニ)得られた酢酸エチル含有ヘキサン画分から再結晶によりPAを単離する。
(ホ)PAを単離した後の母液を硝酸銀を含むシリカゲルカラム(例えば、5質量%硝酸銀含有シリカゲルカラム)にチャージした後、酢酸エチル含有ヘキサン(例えば、5質量%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出させて酢酸エチル含有ヘキサン画分を得る。
(ヘ)そして得られた酢酸エチル含有ヘキサン画分から再結晶によりKAを単離する。
【0040】(第3例)
(イ)工程(3)で得られた抽出物を減圧下濃縮乾固し、粗抽出物を得る。
(ロ)この粗抽出物を水に懸濁後、常法にしたがってエーテルを用いて酸性区分を抽出する。
(ハ)得られた酸性区分をシリカゲルカラムにチャージした後、酢酸エチル含有ヘキサン(例えば、3質量%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出させて酢酸エチル含有ヘキサン画分を得る。
(ニ)得られた酢酸エチル含有ヘキサン画分を硝酸銀を含むシリカゲルカラム(例えば、5質量%硝酸銀含有シリカゲルカラム)にチャージし、流出液を再結晶してPAを単離した後、(ホ)硝酸銀を含むシリカゲルカラムから酢酸エチル含有ヘキサン(例えば、5質量%酢酸エチル/ヘキサン)を用いて溶出させて酢酸エチル含有ヘキサン画分を得る。
(ヘ)そして得られた酢酸エチル含有ヘキサン画分から再結晶によりKAを単離する。
【0041】(第4例)
(イ)工程(3)で得られた抽出物を減圧下濃縮乾固し、粗抽出物を得る。
(ロ)得られた粗抽出物から高速液体クロマトグラフイーによりPAおよびKAを単離する。
【0042】
【実施例】次に、実施例および比較例によって本発明を説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例)本発明で有効成分として用いるPAおよびKAをウド(学名:Araliacordata)から抽出する方法の1例について述べる。ウド根部乾燥物1kgを蒸留水で1時間煮沸後、煮汁を捨てる。残さをガラス蒸留器に移し、エタノール2Lを加え2時間加熱還流する。このエタノール抽出液を取り出し、再度エタノール2Lを加え2時間加熱還流する。そしてこのエタノール抽出液を先のエタノール抽出液と合わせて、これを減圧下濃縮乾固し、粗抽出物41.76gを得た。次いでこの粗抽出物を分画する。この粗抽出物を水に懸濁後、エーテルにより常法に従い、酸性画分、中性画分、塩基性画分、水溶性画分に分画する。
【0043】次いでこの酸性画分、中性画分、塩基性画分、水溶性画分について抗菌性の有無を試験した。
抗菌試験:(カップ法)シャーレ(70mmφ)上にステンレス製円筒(外径8mm、内径6mm、長さ10mm)を7個立て、試験菌体(Staphylococcus aureus)を含むLB培地15mLを流し込み、固化させた後円筒を除き、できた穴に被試験液(ウド根部乾燥物10g相当量/mLの80%エタノール溶液を滅菌水で適当に希釈した被試験液)0.1mLを入れ、30℃で24時間培養し、阻止円形成の有無を観察した。この方法は活性成分のスクリーニングの段階で用いた。
【0044】抗菌試験の結果、酸性画分に抗菌活性(++)が見られた。しかし、中性画分、塩基性画分、水溶性画分についてはいずれも抗菌活性(−)が見られなかった。ただし、++は×100倍希釈まで阻止円を形成したことを示し、+は×10倍希釈まで阻止円を形成したことを示し、−は阻止円を形成しないことを示す。
【0045】強い抗菌活性があった酸性画分をシリカゲルオープカラムにチャージし、ヘキサン/酢酸エチル系溶媒を用いて溶出させ、100%ヘキサン画分、3%酢酸エチル/ヘキサン画分、5%酢酸エチル/ヘキサン画分、10%酢酸エチル/ヘキサン画分、30%酢酸エチル/ヘキサン画分、100%酢酸エチル画分、100%メタノール画分に分画した。
【0046】そして上記のカップ法により各画分の抗菌活性を試験したところ、100%ヘキサン画分(−)、3%酢酸エチル/ヘキサン画分(++)、5%酢酸エチル/ヘキサン画分(−)、10%酢酸エチル/ヘキサン画分(−)、30%酢酸エチル/ヘキサン画分(+)、100%酢酸エチル画分(+)、100%メタノール画分(−)という結果が得られた。
【0047】次いで、前記酸性画分と同等の(++)という強い抗菌活性の結果が得られた3%酢酸エチル/ヘキサン画分中の成分を結晶化法により結晶化させて、結晶性の化合物1(2.43g)を分離・精製した。
【0048】その母液を5%硝酸銀含有シリカゲルオープカラムにチャージし、5%酢酸エチル/ヘキサンを用いて溶出させ得られた画分21〜25(5%酢酸エチル/ヘキサン画分)を再度、ヘキサン/酢酸エチル中で再結晶化させることを繰り返すことにより化合物2(0.098g)を分離・精製した。
【0049】得られた化合物1および化合物2について1HNMRおよび13CNMRによる分析を行った結果を、化合物1についてはそれぞれ表1および表2に、化合物2についてはそれぞれ表3および表4に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】表1〜表4から、化合物1はPAであり、化合物2はKAであると同定された。
【0055】得られた化合物1(PA)および化合物2(KA)について次の抗菌試験を行った。
抗菌試験:(比濁法)化合物1(PA)および化合物2(KA)の各濃度のDMSO溶液を調製し、上記試験菌体を含むLB液体培地1mLに添加し、24時間振とう培養した後、分光光度計で600nmの値(濁度)を測定した。溶媒のDMSOのみの場合についても同様にして濁度を測定して比較した。測定した濁度(OD600)を表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】表5から、化合物1(PA)および化合物2(KA)はいずれも強い抗菌活性を有していることが判る。そして、最小阻止濃度(MIC)を測定した結果、化合物1(PA)および化合物2(KA)はいずれも6.25μg/mLであり、6.25μg/mLの濃度まで完全に菌の生育を阻止した。
【0058】(PAあるいはPAとKAを100μg/mL含有する本発明の殺菌剤の黄色ブドウ状球菌、大腸菌等の細菌に対する抗菌性を試験した結果を次に示す。
(抗菌性試験1)本発明の殺菌剤1mLに大腸菌(Escherichia coli K12及びEscherichia coli B)を約104個添加し、室温で30分〜24時間放置した。放置した菌体液をLB倍地に植菌したところ、個体・液体倍地ともに大腸菌の増殖は全く認められなかった。
【0059】(抗菌性試験2)本発明の殺菌剤1mLに黄色ブドウ状球菌(Staphylococcusaureus)を約106個添加し、すぐに菌体液を20μlLB倍地に植菌したところ、個体・液体倍地ともに黄色ブドウ状球菌の増殖は全く認められなかった。
【0060】(抗菌性試験3)本発明の殺菌剤を更に水で5〜10質量倍希釈し、黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)を約106個添加し、室温で30分〜24時間放置した。放置した菌体液をLB倍地に植菌したところ、個体・液体倍地ともに黄色ブドウ状球菌の増殖は全く認められなかった。
【0061】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の殺菌剤は、従来の化学物質を主成分とする殺菌剤と異なり、天然由来の物質PAを有効成分として含有する新規な殺菌剤であり、枯草菌などの有用な菌に対しては殺菌活性がないが、黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)や(Escherichia colK12及びEscherichia coli B)などの悪性菌に対して選択的に強い殺菌活性を示すという顕著な効果を奏する。
【0062】本発明の請求項1記載の殺菌剤は、従来使用されてきたパラベンなどの合成品を置換・代替できるという顕著な効果を奏する。
【0063】本発明の請求項2記載の殺菌剤は、PAの他にさらに天然由来の物質KAを有効成分として含有するので、請求項1記載の殺菌剤と同じ効果を奏するとともに、相乗効果によりさらに強い殺菌活性を示すという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0064】本発明の請求項1記載の殺菌剤中のPAおよび請求項1記載のKAは、水溶性=脂溶性を合わせ持っているので、例えば人の皮膚などの殺菌対象物に付着し易く、かつ水で流出し難いので効果が長期にわたり持続するという顕著な効果を奏する。
【0065】本発明の請求項3記載の殺菌剤の製法により、ウドの茎部以外の部分からPAおよびKAを抽出でき、それを用いて本発明の殺菌剤を効率的に容易に製造できるという顕著な効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】500030758
【氏名又は名称】株式会社マグノール
【出願日】 平成13年5月22日(2001.5.22)
【代理人】 【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
【公開番号】 特開2002−338408(P2002−338408A)
【公開日】 平成14年11月27日(2002.11.27)
【出願番号】 特願2001−152791(P2001−152791)