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【発明の名称】 浮力調整剤及びこれを用いた浮力調整成形体
【発明者】 【氏名】佐賀 博士

【氏名】斎藤 秀直

【要約】 【課題】製造容易で、沈降速度を容易に調整でき、主として農薬錠剤の水中への沈む速度を調整するのに用いられる浮力調整剤を提供する。

【解決手段】親水性の多孔質体又は中空粒子を疎水性物質で被覆した浮力調整剤。親水性の多孔質体又は中空粒子とは、親水性素材を多孔化したもの、又は中空としたものであって、親水性素材としてはセルロース、セルロース誘導体もしくはポリビニルアルコールの水不溶性の親水性高分子、又は珪酸カルシウム、アルミナもしくは、シリカゲルの無機物質を用いる。この水不溶性の親水性高分子や無機物質を用いることにより、使用中は被覆体である疎水性物質が剥がれず、内部の多孔質又は中空粒子の内部に水が浸入するのを抑制でき、浮力を維持できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 親水性の多孔質体又は中空粒子を疎水性物質で被覆した浮力調整剤。
【請求項2】 カサ密度が0.1〜0.7g/cm3である請求項1に記載の浮力調整剤。
【請求項3】 上記疎水性物質が、ロジン系樹脂、ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、セラック、シュガーエステル又はセルロース誘導体から選ばれる請求項1又は2に記載の浮力調整剤。
【請求項4】 上記の多孔質体又は中空粒子が、セルロース、セルロース誘導体又はポリビニルアルコールの架橋体から選ばれる水不溶性の親水性高分子、又は、珪酸カルシウム、アルミナ、シリカゲルから選ばれる無機物質である請求項1乃至3のいずれかに記載の浮力調整剤。
【請求項5】 固形材料に請求項1乃至4のいずれかに記載の浮力調整剤を混合、成形した浮力調整成形体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、浮力調整剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】一般に、農薬類は、水中に沈むように錠剤化やペレット化がされている。しかし、この錠剤やペレットの沈降速度は大きく、農地の底にたまりやすい。このため、農薬が農地の底に蓄積し、農薬の効果が十分に稲等に働かない場合がある。
【0003】これに対し、特開平5−345701号公報に、農薬錠剤に中空部や凹部を設け、水溶性フィルムや水溶紙等でコーティングすることによって、沈降速度を調整する方法が開示されている。
【0004】しかしながら、上記の方法では、沈降速度を調整することができるものの、コーティング処理が煩雑であるという問題点を有する。また、上記の方法で得られる錠剤は、コーティング材が溶解すると沈む。このため、この溶解までの時間は、コーティング材の溶解速度に依存し、沈降速度の調整が難しくなる。
【0005】そこで、この発明は、容易に製造できかつ、沈降速度を容易に調整できる浮力調整剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、親水性の多孔質体又は中空粒子を疎水性物質で被覆することにより上記課題を解決したのである。
【0007】多孔質体又は中空粒子を用いるので、浮力調整剤のカサ密度を小さくすることができ、農薬等の固形物に混合して成形することにより、得られる成形体に浮力を与えることができる。このため、上記成形体の沈降速度を低減させることができる。
【0008】また、上記成形体内に混合する浮力調整剤の量を調整することにより、上記成形体の沈降速度を調整することができる。
【0009】さらに、上記疎水性物質で被覆するので、浮力調整剤が水と接触しても、水が親水性の多孔質体又は中空粒子と接触するのが抑制され、浮力調整剤が持つ孔や中空部分に水が浸入して浮力がなくなるのを緩和できる。このため、長期にわたり、浮力調整効果を発揮できる。
【0010】さらにまた、親水性の多孔質体又は中空粒子の外周に疎水性物質で被覆するのみなので、製造が容易となる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態を説明する。この発明にかかる浮力調整剤は、親水性の多孔質体又は中空粒子を疎水性物質で被覆したものである。
【0012】上記の親水性の多孔質体又は中空粒子とは、親水性素材を多孔化したもの、又は中空としたものをいう。上記親水性素材としては、セルロース、セルロース誘導体又はポリビニルアルコールの架橋体から選ばれる水不溶性の親水性高分子、又は珪酸カルシウム、アルミナ、シリカゲルから選ばれる無機物質があげられる。上記の水不溶性の親水性高分子や無機物質を用いることにより、使用中は被覆体である疎水性物質が剥がれず、内部の多孔質体又は中空粒子の内部に水が浸入するのを抑制でき、浮力を維持できる。また、使用後は上記疎水性物質が剥がれやすくなり、内部の多孔質体又は中空粒子の内部に水が浸入して沈降する。その後、無機物質は土に同化し、親水性高分子は水中で徐々に生分解するので、環境への負荷が小さいという特徴を有する。
【0013】上記親水性素材を多孔化又は中空とするのは、得られる浮力調整剤のカサ密度を小さくして、水や海水等の水系媒体中に入れたときに浮力を生じさせるためである。この浮力は、浮力調整剤のカサ密度と水系媒体の密度との関係によって決まる。しかしながら、十分な浮力を得るためには、浮力調整剤のカサ密度として、0.1〜0.7g/cm3がよく、0.2〜0.5g/cm3が好ましい。0.1g/cm3より小さいと、この親水性の多孔質体又は中空粒子において孔や中空などの空間部分が占める割合が大きくなり、強度が弱くなる。一方、0.7g/cm3より大きいと、浮力が小さくなる。特に、上記無機物質は、真比重が大きいので、多孔性を有するもの、又は中空なものが好ましい。これにより、得られる浮力調整剤のカサ密度を低下させることができる。
【0014】上記疎水性物質は、上記親水性の多孔質体又は中空粒子を被覆することにより、この親水性の多孔質体又は中空粒子が水と接触するのを抑制するものである。この疎水性物質としては、水中で放置された後、生分解や加水分解等の分解性を有するものが好ましく、例として、ロジン系樹脂、ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、セラック、シュガーエステル、セルロース誘導体等があげられる。
【0015】上記浮力調整剤は、次に記載の方法で製造することができる。まず、上記の水不溶性の親水性高分子の場合は、その液状物又は前駆体の液状物を粒子化させながら固形化させる。次に、上記の無機物質の場合は、バインダーを加えて成形したり、水溶液からゲル化させる等、様々な方法で固形化させる。このとき、各種の方法で多孔化又は中空化させる。
【0016】次に、上記疎水性物質で上記親水性の多孔質体又は中空粒子の表面を被覆する。被覆方法としては、塗布、噴霧、浸漬等、任意の方法を使用できる。
【0017】このようにして得られた浮力調整剤は、農薬等の沈降速度を調整したい固形材料に混合し、ペレット化等、成形する。得られた浮力調整成形体を目的とする水に投入すると、この浮力調整成形体の沈降速度が小さくなり、水中に漂う時間が長くなる。このため、農薬等の成形体が沈降するまでの間に、農薬等が水に徐々に溶け出し、一箇所に集中することなく、広範囲に効果を及ぼすことができる。
【0018】上記浮力調整成形体に含まれる浮力調整剤の量を増減することにより、この浮力調整成形体の沈降速度を調整することができる。この浮力調整成形体100重量部中に含まれる浮力調整剤の量は、0.1〜80重量部が好ましく、0.5〜50重量部がより好ましい。0.1重量部より少ないと、浮力調整の効果が発揮できず農薬等の沈降速度を調整することができない場合がある。一方、80重量部より多いと、浮力調整成形体に占められる農薬等の割合が小さくなり、効果が薄くなる。さらに、浮力調整成形体が水に浮いて、沈降しなくなる場合がある。
【0019】このようにして得られた浮力調整成形体は、使用する固形材料の用途に合わせて使用される。例えば、固形材料として農薬を使用する場合は、農地等に投入される。このとき、この浮力調整成形体はすぐに底に沈降せず、沈降するまでに時間を要する。この間に農薬が徐々に溶解し、農薬としての効果を発揮させることができると共に、効果がなくなった後は、土に同化又は生分解するため、環境への負荷を小さくすることができる。
【0020】
【実施例】(製造例)セロハン製造用のビスコース(セルロース濃度9.5重量%、塩化アンモニウム価6、アルカリ濃度6重量%、粘度5,500cP)91.3重量%に炭酸カルシウム(NS#2500、日東粉化工業(株)製)8.7重量%を混合したものを円筒状の容器に供給し、その容器を回転させて94.5Gの重力加速度を働かせて、容器に空いた直径0.4mmの小孔からビスコース分散液の液滴を吐出して、2N塩酸で凝固再生した。その後、脱硫、漂白、水洗の処理を行い、乾燥することで多孔性球状セルロース微粒子を得た。
【0021】(実施例1)加熱溶融したパラフィンワックス(HNP−9 日本精蝋(株)製)中に上記の多孔性球状セルロース微粒子(カサ密度0.17g/cm3、粒径700μm)を投入して混合し、パラフィンワックスを25重量%含有する浮力調整剤を得た。この浮力調整剤のカサ密度は0.20g/cm3であった。次に、機能剤としてのチアベンダゾール(和光純薬(株)製)30重量%に補助剤としてベントナイト(関東化学(株)製)23重量%及びタルク(ナカライテスク(株)製)30重量%、水16重量%を加え、上記浮力調整剤1重量%を混合し、均一になるように撹拌して、直径1cm、高さ1.5cmのペレット状に成形した。このペレットを水面に静かに置いた時、水面から30cm沈降する時間を測定し、沈降速度(m/秒)を求めた。その結果を表1に示す。
【0022】(実施例2)実施例1で用いたパラフィンワックスの代わりに、ロジンエステル(RE 荒川化学工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして浮力調整剤を得た。得られた浮力調整剤のカサ密度は0.21g/cm3であった。この浮力調整剤を用いて、上記の方法にしたがってペレットを成形し、沈降速度を測定した。その結果を表1に示す。
【0023】(実施例3)実施例1で用いた多孔性球状セルロース微粒子の代わりに、多孔性のケイ酸カルシウム(フローライト (株)トクヤマ製、カサ密度0.20g/cm3、粒径4mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして浮力調整剤を得た。得られた浮力調整剤のカサ密度は0.23g/cm3であった。この浮力調整剤を用いて、上記の方法にしたがってペレットを成形し、沈降速度を測定した。その結果を表1に示す。
【0024】(比較例1)浮力調整剤を用いない以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法でペレットを成形し、沈降速度を測定した。その結果を表1に示す。
【0025】(比較例2)実施例1で用いた多孔性球状セルロース微粒子の代わりに、炭酸カルシウムを用いずに作製した非多孔性の球状セルロース微粒子(カサ密度1.0g/cm3、粒径200μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして浮力調整剤を得た。得られた浮力調整剤のカサ密度は1.0g/cm3であった。この浮力調整剤を用いて、上記の方法にしたがってペレットを成形し、沈降速度を測定した。その結果を表1に示す。
【0026】(比較例3)実施例3で用いたパラフィンワックスを用いない以外は、実施例3と同様にして浮力調整剤を得た。得られた浮力調整剤のカサ密度は0.20g/cm3であった。この浮力調整剤を用いて、上記の方法にしたがってペレットを成形し、沈降速度を測定した。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【発明の効果】この発明によると、多孔質体又は中空粒子を用いるので、浮力調整剤のカサ密度を小さくすることができ、農薬等の固形材料に混合して成形することにより、得られる成形体に浮力を与えることができる。このため、上記成形体の沈降速度を低減させることができる。
【0029】また、上記成形体内に混合する浮力調整剤の量を調整することにより、上記成形体の沈降速度を調整することができる。
【0030】さらに、上記疎水性物質で被覆するので、浮力調整剤が水と接触しても、水が親水性の多孔質体又は中空粒子と接触するのが抑制され、浮力調整剤が持つ孔や中空部分に水が浸入して浮力がなくなるのを緩和できる。このため、長期にわたり、浮力調整効果を発揮できる。
【出願人】 【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
【出願日】 平成13年5月21日(2001.5.21)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
【公開番号】 特開2002−338405(P2002−338405A)
【公開日】 平成14年11月27日(2002.11.27)
【出願番号】 特願2001−150474(P2001−150474)