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【発明の名称】 抗微生物活性剤
【発明者】 【氏名】吉田 靖弘

【要約】 【課題】オリーブを主原料とする天然由来の新たな抗微生物活性剤の提供を図る。

【解決手段】オリーブの葉部からの抽出物を含む培地にて、微生物を培養してその代謝産物を得る生物変換処理を施すことにより、抗微生物活性剤を得る。この抗微生物活性剤は、化粧品の防腐剤等として利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】オリーブを微生物により生物変換処理して得られた抗微生物活性剤。
【請求項2】生物変換処理が、微生物を培養してその代謝産物を得る処理であることを特徴とする請求項1記載の抗微生物活性剤。
【請求項3】微生物がアスペルギルス属(Aspergillus)およびサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物から選択された少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2記載の抗微生物活性剤。
【請求項4】抗微生物活性剤が、防腐剤であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の抗微生物活性剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、抗微生物活性剤及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】オリーブはモクセイ科の常緑小喬木で、初夏、芳香ある淡緑白花を咲かせる。秋以降に果実が収穫され、ピクルスやオリーブオイルとして利用される。ピクルスやオリーブオイルは、動脈硬化の予防によいと言われている。その理由の一つに、上記食品に含まれるオレウロペインなどの微量生理活性物質が挙げられる。オレウロペインは、オリーブオイル中の代表的な生理活性物質であり、抗酸化活性能を有することで知られている。オレウロペインはいわゆるポリフェノールの一種であり、オリーブに含まれるポリフェノールには他にヒドロキシチロソールなどが知られている。
【0003】他方、毎日使用しているものに化粧品がある。化粧品を安全に使用するためには、微生物の汚染を防ぐということが重要な課題の一つとなっている。現在、身の回りの防腐剤として代表的なものにパラオキシ安息香酸エステル、いわゆるパラベンがある。パラベンは、幅広い抗菌スペクトルを持つ汎用的な防腐剤である。しかし、パラベンに対しアレルギー反応を持つ消費者もおり、イメージの悪い物質となっている。
【0004】本願出願人にあっては、オリーブ園を保有し、オリーブ果実をオイル用や浅漬け用に収穫しているが、オリーブ葉は廃棄処分となっている。そのオリーブ葉を有効利用するために、オリーブ葉に含まれる生理活性物質を探索することにした。オリーブ葉の有効利用に関しては抗酸化物質としての利用が報告されており(特開平11−335233、特開平8−119825)、また、水、親水性有機溶媒またはこれらの混合溶媒を抽出溶媒とする抽出によりオリーブの枝葉部より得られた抽出物を含有することを特徴とする皮膚化粧料が提案されているが(特開平12−128765)、抗微生物活性という観点からの特許は存在しなかった。また抽出物そのものを利用する発明であり、オリーブ葉を処理することにより新しい生理活性物質を調製するという研究はなされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は、オリーブを主原料とする天然由来の新たな抗微生物活性剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】しかして、本願の請求項1の発明は、オリーブを微生物により生物変換処理して得られた抗微生物活性剤を提供する。本願の請求項3の発明は、上記請求項1記載の抗微生物活性剤において、生物変換処理が、微生物を培養してその代謝産物を得る処理であることを特徴とするものを提供する。本願の請求項3の発明は、上記請求項1又は2記載の抗微生物活性剤において、微生物がアスペルギルス属(Aspergillus)およびサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する微生物から選択された少なくとも一種であることを特徴とするものを提供する。本願の請求項4の発明は、上記請求項1〜3の何れかに記載の抗微生物活性剤において、抗微生物活性剤が防腐剤であることを特徴とするものを提供する。
【0007】植物は種々の二次代謝産物を生産し、その中には少しの構造変化で生理活性を示す化合物が含まれていることがある。本願発明者は、この点に着目し、オリーブを微生物による生物変換処理して抗微生物活性のある抽出物を調製することを考えた。
【0008】本願発明において、モクセイ科の常緑樹オリーブ(Olea europaeaL.)であり、その枝葉部(枝または/および葉)を好適に用いることができるが、花、果実の部分等、他の部位を用いてもよい。
【0009】生物変換処理の対象としては、オリーブの枝葉等をそのまま処理してもよいが、これらの抽出物に対して、生物変換処理を行うことが望ましい。
【0010】オリーブの枝葉部等から処理対象物を抽出するには、各種の親水性有機溶媒、水、またはこれらの混合物を使用することができるが、特に好ましい抽出溶媒はメタノール、エタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、水、またはこれらの混合物である。
【0011】抽出処理に付するオリーブは、生でも乾燥物でも差し支えない。抽出原料は、あらかじめヘキサン等の非極性溶媒を用いて脂質を抽出しておいてもよい。
【0012】抽出条件および抽出に用いる装置は特に限定されないが、好適には重量比で5〜15倍量の抽出溶媒にオリーブの枝葉部等を浸漬し、常温ないし100℃程度の加熱下に、必要に応じて撹拌しながら、可溶性成分を溶出させる。濾過または遠心分離して得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、さらに乾燥すれば、固形の抽出物が得られるが、固形の抽出物である必要はなく、上記抽出液またはその濃縮液の状態のものであってもよい。その形態は、後述の培養方法に好適な形態を採用すればよい。尚、生物変換処理に支障が生じないことを条件に、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、液−液向流分配等の方法により精製してもよい。
【0013】次に、オリーブ、特にその抽出物に対して、生物変換処理を施す。生物変換処理としては、微生物を培養してその代謝産物を得る処理を例示し得る。より具体的には、オリーブ抽出物を培地に加え、この培地で微生物培養を行う。培養条件は、菌種に応じた常法にしたがって行えばよく、例えば、アスペルギルス属(Aspergillus)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)の場合には、暗黒下、常温にて、所定日時間、放置あるいは必要に応じて振盪する。
【0014】生物変換処理に用いる微生物としては、オリーブあるいはその抽出物に対して培養可能であり、代謝産物を得ることのできるものであればよく、アスペルギルス属(Aspergillus)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)が適するが、他の微生物を用いることもでき、これらの微生物に適した培養条件を与えて培養し、その代謝産物を得る。
【0015】生物変換処理済みのオリーブ由来物は、培養上清並びに菌体等の培養物をそのまま利用することもできるが、抽出処理を施すことが望ましい。また、培養上清と菌体とを、分離して利用してもよいが、分離せずに利用してもよい。抽出に際しては、各種の親水性有機溶媒、水、またはこれらの混合物を使用することができるが、特に好ましい抽出溶媒はアセトン、メタノール、エタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、水、またはこれらの混合物である。抽出条件および抽出に用いる装置は、前述のオリーブからの抽出と同様に行えば良い。
【0016】得られた抗微生物活性剤は、種々の用途に使用できるが、特に、防腐剤として、化粧品、医薬部外品を含む医薬品類、食品等に配合することができる。化粧品、医薬品類については、皮膚外用剤としての化粧品、医薬品類の他、頭髪剤用、内服剤用等、種々の化粧品、医薬品類への使用が可能である。また、食品についても、その具体的形態は問わず、人が食しあるいは飲用する種々の食品に使用できる。
【0017】
【実施例】以下、本願発明の理解を高めるために実施例を示すが、本願発明はこの実施例に限定して理解されるべきではない。
【0018】オリーブ葉抽出物の抗微生物活性の確認まずオリーブ葉抽出物に抗微生物活性があるかどうかを調べた。オリーブ葉メタノール抽出物はオリーブの生葉(5g)を10倍量のメタノール(室温、1日)で抽出し、オリーブ葉水抽出物はオリーブの生葉(5g)を10倍量の熱水(90℃、1時間)で抽出した。抗微生物試験は、液体培地希釈法を用い、27℃、暗黒下静置培養し、24時間後に評価した。試験菌は、化粧品の防腐効果を調べる試験(チャレンジテスト)を参考に、クロカビ(Aspergillus niger)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と決定した。抗菌試験はNBSY培地(表1及び表2参照)、抗真菌試験は胞子発芽用培地(表3参照)を用いた。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【0022】以上の結果を表4及び表5に示すが、メタノール抽出物も水抽出物も1000μg/mlでは抗微生物活性がなかった。したがって、オリーブ葉抽出物には、強い抗微生物活性はないことがわかった。
【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】生物変換に使用する微生物植物は種々の二次代謝産物を生産し、その中には少しの構造変化で生理活性を示す化合物が含まれていることがある。したがって、オリーブ葉を処理して抗微生物活性のある抽出物を調製することを考えた。化学的処理は、抽出物に残存する酸やアルカリの後処理が煩雑である。そのため、食品の製造に使用している安全性の高い微生物により生物変換を行い、オリーブ葉を微生物変換することにより天然由来の抗微生物活性剤を調製した。
【0026】微生物としては、味噌の製造に使用されるコウジカビ(Aspergillus oryzae)、ビールの製造に使用されるビール酵母(Saccharomyces cerevisiae)を使用して研究を進めた。
コウジカビ:Aspergillus oryzae (Ahlburg) Cohn IFO 5239ビール酵母:Saccharomyces cerevisiae Meyen ex Hansen IFO 0233【0027】オリーブ葉の微生物変換処理および抽出物の調製オリーブ葉の微生物変換処理を行うにあたっては、固体培養と液体培養の何れの方法でも実施し得る。但し、液体培養の方が、生物変換を行う微生物の生育がよく、培養日数が短期間で終了するという利点がある。そこで、以下液体培養による微生物変換処理を中心に説明を行う。まず、添加したオリーブ葉の一定量あたりの抗微生物活性を比較するために、各抽出物を一定量の溶媒に溶解させ、それを試験に供した。生物変換に用いた培地は、NB培地(OXOID製、5ml)を基本培地とする以下の培地(表6に示すメタノール抽出物培地、表7に示す水抽出物培地)を調製した。生物変換が進みやすいように、植物(オリーブ葉)中にある二次代謝産物を予め抽出物として取り出して培地に加えることにした。
【0028】
【表6】

【0029】
【表7】

【0030】次に、下記の表8に示すスキームに従ってオリーブ葉由来の物質を生物変換させ、抽出物を調製した。即ち、コウジカビ、ビール酵母を液体培地に1白金耳を植菌し27℃、暗黒下、7日間振盪培養した。得られた培養液を、綿濾過または遠心分離(5000rpm,20分間)し培養上清と菌体とに分離する。培養上清に酢酸エチルを加えた酢酸エチル相を、濃縮乾固した後、メタノールを加えた。菌体については、アセトン−メタノールにより抽出し、アセトン−メタノール相を濃縮乾固した後、メタノールを加えた。
【0031】
【表8】

【0032】得られた抽出物の試料番号を表9のように付け、抗微生物試験を行った。その結果を表10に示す。
【0033】
【表9】

【0034】
【表10】

【0035】表10に記載した実施例及び対照区は、下記の通りである。
実施例1:メタノール抽出物添加培地培養上清の抽出物(コウジカビ)
実施例2:水抽出物添加培地培養上清の抽出物(コウジカビ)
実施例3:メタノール抽出物添加培地培養上清の抽出物(ビール酵母)
実施例4:メタノール抽出物添加培地培養菌体の抽出物(コウジカビ)
対照区1:メタノール抽出物添加培地培養上清の抽出物(未植菌)
対照区2:水抽出物添加培地培養上清の抽出物(未植菌)
尚、表には記載していなが、コウジカビ、ビール酵母をNB培地のみで培養した場合、2500μg/mlで活性は確認できなかった。
【0036】抗微生物試験の結果E.coliP.aeruginosaS.aureusA.nigerに抗微生物活性のある画分、実施例3、が存在した。そのMICは2500μg/mlであった。また、S.aureusに対してのみMICが60μg/ml以下あったオリーブ葉メタノール抽出物添加培地の固形物抽出物(コウジカビ)は、得られた試料中では、最も抗菌力が強いものであった。これらの抽出物は対照区と比較して抗菌活性が強くなっているため、コウジカビやビール酵母による微生物変換により抗菌活性のある物質が生産されたことが考えられた。
【0037】生物変換処理後抽出物とパラベン類の抗微生物活性の比較先に得られた抽出物(実施例3)の比較として汎用的な防腐剤であるパラベンの抗微生物活性を調べ、その結果を表11に示す。
【0038】
【表11】

【0039】オリーブ葉メタノール抽出物添加培地培養上清抽出物(実施例3)とメチルパラベンの抗菌力を比較した結果を表12に示す。
【0040】
【表12】

【0041】パラベンの中でも最も汎用的に使用されているメチル体が、最も抗微生物活性が弱くMIC1000〜2000μg/mlであった。ブチル体が最も活性が強く、メチル体の8倍の強さがあった。生物変換して得られた実施例3とメチルパラベンのMICを比較したところ、実施例3は試験菌全てに対して2500μg/mlであり、メチルパラベンは、細菌:2000μg/ml、真菌:1000μg/mlであり、抗菌力はほぼ同等であり、幅広い抗菌スペクトルを持っていた。
【0042】以上、オリーブ葉の抽出物には1000μg/mlで効くほどの強い抗微生物活性はなかった。他方、オリーブ葉メタノール抽出物添加培地において、コウジカビの生物変換により、抗菌活性が42倍上昇した(実施例4)。また、ビール酵母の生物変換により、新たに抗菌活性が現れた(実施例1〜3)。このことにより、生物変換により、抗微生物活性のある物質が生産されたと考えられる。生物変換して得られた実施例3とメチルパラベンのMICを比較したところ、実施例3は試験菌全てに対して2500μg/mlであり、メチルパラベンは、細菌:2000μg/ml、真菌:1000μg/mlであり、抗菌力はほぼ同等であり、幅広い抗菌スペクトルを有していた。これらの試験菌は、化粧品の防腐効果試験に使用される標準菌であり、その標準菌に対してパラベンと同等の効果を発揮していることから、実施例3は、メチルパラベンとほぼ同等の抗菌活性、抗菌スペクトルをもった天然の防腐剤であることが考えられた。また真菌に対する活性は、メチルパラベンと比較して約半分程度の効果ではあるものの、天然の防腐剤として応用が可能であり消費者が望んでいる商品の提供に貢献できると考えられる。従って実施例3は、パラベンの代替品として非常に有力な抽出物であることが確認された。パラベンでもっとも汎用的に使用されているのがメチル体であるが、本願発明の抽出物は、パラベンの代替品となることにより、消費者により好まれる化粧品の提供が可能となる。
【0043】
【発明の効果】本願発明は、オリーブを主原料とする天然由来の新たな抗微生物活性剤を提供することができたものであり、この抗微生物活性剤天然は、防腐剤としての利用等、種々の分野に利用され得るものである。
【出願人】 【識別番号】591081664
【氏名又は名称】日本オリーブ株式会社
【出願日】 平成13年5月11日(2001.5.11)
【代理人】 【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
【公開番号】 特開2002−332204(P2002−332204A)
【公開日】 平成14年11月22日(2002.11.22)
【出願番号】 特願2001−141916(P2001−141916)