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【発明の名称】 殺菌用組成物及びその使用方法
【発明者】 【氏名】錦織 浩治

【要約】 【課題】高い殺菌作用を有すると共に、人体に対して無害であり、持続性があり安全性も高い新規な殺菌用組成物を提供すること。より具体的には、飲食物や収穫後の農作物に対して直接添加しても安全であり、かつ、食器類、厨房用具や、トイレまわりの洗浄用などにも安全に使用することが出来る殺菌用組成物を提供すること。更に、この安全でかつ人体に対して無害な新規殺菌用組成物を、病原性微生物の感染を予防するために使用すること、および食中毒の原因菌に対する殺菌剤または洗浄剤もしくは清浄剤として使用する使用方法を提供すること。

【解決手段】プロタミンとポリリジンと柑橘系植物の種子抽出成分とを含む殺菌用組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 プロタミンとポリリジンと柑橘系植物の種子抽出成分とを含む殺菌用組成物。
【請求項2】 請求項1記載の殺菌用組成物を用いる収穫後の農作物の殺菌方法。
【請求項3】 請求項1記載の殺菌用組成物を用いる食品、厨房、厨房用具、食器、布巾、又は皮膚の殺菌方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食用でかつ不揮発な成分のみからなる新規殺菌用組成物及びその使用方法に関し、更に詳細には、制菌(静菌)作用を有する食用でかつ不揮発な成分である物質を混合することにより作成され、持続的な殺菌作用を示す新規殺菌用組成物であって、収穫後の農作物の消毒・殺菌などに直接使用しても安全であるばかりでなく、食品や厨房、厨房用具、食器類、布巾類、手指、皮膚等の殺菌、消毒・洗浄用にも安心して使用することができる新規殺菌用組成物及びその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】収穫後の農作物や食品の変質・劣化は、主に微生物がその中に増殖して変性させたり腐敗させたりすることが原因となっている。腐敗等の変質は、収穫後の農作物や食品の外観及び官能上に好ましくない変化を起こすのみならず、その変質をもたらす微生物のなかに病原性微生物が含まれる場合には、食中毒や感染症などの病気を引き起こすこともある。
【0003】かかる腐敗菌や病原性微生物の感染を予防するには、その微生物の生育を抑制すること、あるいは殺菌することが必要である。これには種々の方法があり、例えば、煮沸、高温、あるいは高圧による物理的手段、ならびに、殺菌剤や化学療法剤等での化学的手段が挙げられる。しかしながら、これらの殺菌方法は、その対象物によっては利用できない場合が多く、特に人体に直接接触し、または口から直接的または間接的に人体に入るもの等には適用できないこともある。
【0004】現在食物の腐敗や食中毒の予防に用いられている合成殺菌料(保存料)としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、ソルビン酸(塩)、安息香酸(塩)、デヒドロ酢酸(塩)、パラオキシ安息香酸エステル、プロピオン酸(塩)、グリシン等が使用されている。しかしながら、これらの化学合成品ないし半合成品の成分からなる殺菌剤や化学療法剤は、人体への安全性や環境への負荷の点から、使用する場合には様々な制約が課せられている。従って、収穫後の農作物や食品に対して使用される殺菌剤は厳しい制約を受けるので、その種類も極めて限られたものにならざるを得ないのが現状である。
【0005】また、収穫後の農作物や食品を保存する場合には、腐敗を含めた劣化・変質を防ぐために腐敗菌等の微生物の増殖を抑制することが必要である。腐敗菌等の微生物の増殖は、その保存環境における温度条件に大きく依存しており、通常、低温に保存することでその微生物の増殖を抑制し、腐敗を防止することができる。しかしながら、低温での保存には限界がある。また、腐敗菌等の微生物の増殖を抑制する物質が開発され既に製品化されているが、これら制菌(静菌)剤は、一般に病原性微生物や腐敗菌等を殺菌する作用は、有していたとしても弱いものでしかない。従って、これら制菌(静菌)剤を用いて収穫後の農作物や食品を保存したとしても、その保存条件や保存期間によっては混入する微生物により腐敗や品質の劣化を引き起こす可能性がある。
【0006】かかる制菌(静菌)あるいは殺菌作用を有するもののうち、収穫後の農作物や食品にも添加して使用できるのは、人類がこれまで食習慣のある動植物から抽出したものが好ましいが、人間に対する毒性がなく、食品の味、香りや食感等の官能上の変化をもたらさないものでなくてはならない。
【0007】現在、収穫後の農作物や飲食品などに直接使用することができて、腐敗を防止すると共に、病原性細菌の感染をも予防する目的で、多く用いられているものに、エタノール製剤及び次亜塩素酸ナトリウム製剤がある。しかしながら、エタノール製剤及び次亜塩素酸ナトリウム製剤は両者とも、主成分であるエタノール及び次亜塩素酸の揮発性が高いことが致命的な欠陥となっている。即ち、(1)主成分が揮発してしまうので、作用が一時的であり持続しない、(2)揮発に伴い、臭いを発散するので食品の官能上の変化をもたらす、(3)次亜塩素酸の場合、揮発による人体や環境への悪影響がある、及び(4)エタノールの場合には引火の危険性もある、等の問題点である。
【0008】エタノール及び次亜塩素酸ナトリウム以外に、現在、厚生省が認可している「化学的合成品以外の食品添加物リスト」に記載されている天然物起源の制菌(静菌)作用を有するものは8品目があり、この他に「日持ち向上剤」に分類される数種の天然物がある。かかる「化学的合成品以外の食品添加物リスト」に記載されている天然物起源の制菌あるいは静菌作用を有するものとして、最も多く使用されているものの一つとしてプロタミンがある。
【0009】プロタミンは、雄魚の生殖腺である精巣いわゆる「しらこ」中で成熟した精子のDNAと結合している強塩基性の単純タンパク質である。プロタミンはタンパク質としては比較的低分子であり、加熱により変成や凝固はしない。食品添加物して使用されるプロタミンは、主にサケやニシンの「しらこ」から得られるもので、水溶液はアルカリ性を呈し、等電点は約pH10〜12である。プロタミンは,耐熱性細菌や乳酸菌に対して抗菌作用を示す(野崎一彦、月刊フードケミカル、No.8,50−57(1999))が、その殺菌効果はそれほど強くはない。
【0010】この他に製品化されている物質として、ポリリジンと呼ばれる物質が知られている。ポリリジンは、食品添加物としてその工業的製造法が確立されている。ポリリジンは、天然に見いだされたアミノ酸ポリマーであって、必須アミノ酸の一つであるL−リジンのε位のアミノ基とカルボキシル基とがペプチド結合をして、直鎖状に結合したポリアミノ酸である。このε−ポリリジンを構成するアミノ酸は、L−リジンのみであり、重合度は25〜35で分子量は約5、000である。このL−ポリリジンは、ストレプトマイセス属に属する微生物を好気的に培養することによって得ることができる(平木純、J.Antibact.Antifung.Agents,Vol.23,No.6.pp.349−354,1996)。
【0011】ポリリジンは、細菌類においてはグラム陽性及び陰性を含む種々の細菌に対して比較的低濃度で増殖を抑制すると共に、酵母に対しても比較的高い増殖抑止効果が認められる。その上、ポリリジンは、ある程度の菌の不活性化効果を有していると言われているが、その不活性化効果は、殺菌作用といえる程度のものとは認められない。
【0012】他方、グレープフルーツなどの柑橘類の種子から抽出した柑橘類種子抽出成分が食品添加剤として承認されている。この柑橘類種子抽出物は、加工食品に添加してその保存性を向上すると共に、原材料を浸漬処理することによってその原材料の保有菌の増殖を抑制をすることができるとされている。また、かかる柑橘類種子抽出物は、天然抗菌剤として広く利用することが可能で、抗菌繊維、抗菌紙などとしても応用されている。しかしながら、この柑橘類種子抽出物の抗菌作用は、強い殺菌力を有しているとは認められない。
【0013】このように、収穫後の農作物や食品などに直接使用することができて、その適用したものの腐敗を防止すると共に、病原性細菌の感染をも予防できる殺菌力を有する製品を開発することは、食品衛生上から極めて有用であり、かかる製品の開発が永らく要請されていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記要請に応えるべく、特に、病原性微生物の感染を予防するために高い殺菌作用を有すると共に、人体に対して無害であり、持続性があり安全性も高い新規な殺菌用組成物を提供することを課題とする。また、より具体的には、収穫後の農作物に直接使用することができると共に、食品や食器類、厨房用具、厨房、トイレまわり、等の殺菌及び洗浄/清浄用にも安全に使用することができる、高い殺菌作用を有する新規な殺菌用組成物を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決する手段】前述した目的を達成するために鋭意研究努力した結果、本発明者らは、食品添加物として認められている天然物起源の物質で、不揮発性で制菌作用ないし弱い殺菌作用しか認められていない物質を組み合わせた結果、驚くべきことに、ある特定の物質の組み合わせにより極めて高い殺菌作用を有する殺菌用組成物が得られることを見出して、この発明を完成するに至った。
【0016】前記目的を達成するために、本発明は、食用でありかつ不揮発性の、プロタミン、ポリリジン、及び柑橘系植物の種子抽出成分とからなることを特徴とする殺菌用組成物を提供する。更に、上記殺菌用組成物を、特に、病原性微生物の感染を防止するために使用することによって、本発明の目的を達成することができる。具体的には、上記殺菌用組成物を、収穫後の農作物に直接使用すると共に、食品や食器類、厨房用具、厨房、トイレまわり、等の殺菌及び洗浄浄用にも使用することで、上記目的を達成することができる。
【0017】即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)プロタミンとポリリジンと柑橘系植物の種子抽出成分とを含む殺菌用組成物。
(2)前記(1)記載の殺菌用組成物を用いる収穫後の農作物の殺菌方法。
(3)前記(1)記載の殺菌用組成物を用いる食品、厨房、厨房用具、食器、布巾、又は皮膚の殺菌方法。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明による殺菌用組成物は、プロタミンとポリリジンと柑橋系植物の種子抽出成分とを含有する。本発明に使用することができるプロタミンとしては、各種の雄魚の「しらこ」タンパクから得たものであるが、特に、サケやニシンの「しらこ」から得られる食品保存料として使用できるものが望ましい。
【0019】本発明に使用するポリリジンとしては、リジンがペプチド結合によって重合したポリアミノ酸であればいずれも使用可能であり、特に天然に見出されたアミノ酸ポリマーであり、かつ、L−リジンのε位のアミノ基とカルボキシル基とがペプチト結合によって直鎖状に結合したε−ポリリジンであって、天然系食品保存料として使用できるものが好ましい。本発明で使用する柑橘系植物としては、グレープフルーツ、夏蜜柑、レモン、カボス、スダチ、蜜柑、イヨカン、オレンシ、マンダリン、ハッサク、ネーブル、ポンカン等が挙げられるが、グレープフルーツが特に好ましい。
【0020】かかる柑橘系植物の果実の種子からの抽出成分としては、脂肪酸とフラボノイドを主成分とした抽出物が好ましく、特に、グレープフルーツの果実の種子から抽出した脂肪酸とフラボノイドを主成分とした天然成分であり、かつ、天然系食品添加物として認められるグレードのものが好ましい。
【0021】本発明において使用する柑橘系植物の種子抽出成分は、上記柑橘系植物の種子から従来の方法によって抽出することができる。この方法として、例えば、圧搾や溶媒抽出等の方法が挙げられる。圧搾の方法では、一般の圧搾機を用いて柑橘系植物の種子からエキスを絞り出し、市販のデカンター等で分離して上記天然成分を取り出すことができる。また、溶媒抽出して得られるエキスは、柑橘系植物の種子をボールミルやホモジナイザー等の粉砕機によって粉砕した後、水やエタノール等の人体に対して無害でかつ安全な溶剤を用いて混合し、抽出や濾別などの方怯によって分離製造することができる。また、添加した水分やアルコール分は蒸発等によって取り除き、溶剤をほとんど除去して濃縮エキス(抽出成分含量60重量%以上)とし、その濃縮エキスの状態で使用することもできる。
【0022】本発明による殺菌用組成物は、天然系食品保存料もしくは添加剤として使用することができる成分で、かつ不揮発性のものから構成されていることから、人体に対して一切無害であり、かつ長期使用しても効果の低下が少なく安全であることから、病原性微生物を含む各種細菌からの感染を予防する目的であればいかなる分野においても使用することができる。従って、上記殺菌用組成物は、収穫後の農作物や食品など人体に口から直接摂取されるものに対しても使用することができる。その他、トイレまわり等の各種用具に対して使用可能であることは勿論のこと、食器類、厨房用具等の口に直接的あるいは間接的に接触する各種用具にも使用可能であり、さらには手指等の皮膚表面の殺菌、消毒及び洗浄等の目的で用いることもできる。本発明による上記殺菌用組成物は、殺菌剤としての他に洗浄剤、除菌剤、消毒剤、抗カビ剤、防カビ剤等として種々の形態で使用可能であり、その使用対象によって異なる形態で使用することができる。更に、本発明による上記殺菌用組成物は、上記に加えて、広く一般工業用天然抗菌剤として、工業用途全般の抗菌コートとして各種抗菌処理にも使用することができる。
【0023】また、本発明による上記殺菌用組成物を収穫後の農作物等や食品等に直接使用する場合には、溶液や懸濁液等の液体の形状で使用するのが一般的であるが、使用対象によっては固体の形状で使用することもできる。本発明による上記殺菌用組成物は、収穫後の農作物や食品等の使用対象に応じた適切な形態で、使用対象に一切制約されることなく使用することができ、例えば殺菌、消毒しようとする対象物に本発明の殺菌用組成物を散布、塗布することにより、又は該対象物を本発明の殺菌用組成物に浸漬する等の方法により使用することができる。溶液の形状で使用する場合、溶媒としては純水等の水、生理食塩水、各種緩衝液、及びそれらに適当な濃度のエタノール若しくはイソプロピルアルコール等を含んだもの等が挙げられる。
【0024】本発明による殺菌用組成物における上記プロタミン、ポリリジン、及び柑橘系植物の種子抽出成分の量も、上記殺菌用組成物の使用対象あるいは形態等によって異なり、特に限定されるものではない。例えば、上記殺菌用組成物を液体状で収穫後の農作物や食品等に使用する場合には、上記プロタミン、ポリリジン、及び柑橘系植物の種子抽出成分の殺菌用組成物中の量は、それぞれ、以下に示す通りである。プロタミンの量は、一般的には、約0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.5重量%、更に好ましくは0.0l〜0.1重量%である。ポリリジンの量は、一般的には、約0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは0.l〜1重量%であり、柑橘系植物の種子抽出成分の量は、濃縮エキスとして、上記殺菌用組成物に対して、一般的には約0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.5重量%、更に好ましくは0.01〜0.4重量%である。更に、これら、プロタミン、ポリリジン、及び柑橘系植物の種子抽出成分との相対的な量にしても、特に限定されるものではなく、使用形態、使用対象等によって適宜変えることができる。
【0025】本発明による殺菌用組成物には、その使用目的などによって、種々の添加剤を更に含んでいてもよく、例えば、pHを調節するのが望ましい場合には、酸やアルカリでpHを適宜調節することができる。実際には、プロタミン、ポリリジン、及び柑橘系植物の果実種子抽出成分は、中性ないしアルカリ性を示すので、pHを調節する目的では専ら酸を用いることになる。この場合にも、本発明の目的である、高い殺菌作用を有すると共に人体に対して無害であり、持続性があり安全性も高い新規な殺菌用組成物を提供することに合致するべく、酸としては各種有機酸を用いることが望ましい。特に好ましくは、クエン酸を用いることが望ましい。高浸透圧を調節するのが望ましい場合には、浸透圧調節剤で浸透圧を適宜調節することもできる。この場合にも、本発明の目的に合致するように、食塩やショ糖を用いることが特に望ましい。
【0026】
【実施例】本発明について、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)(殺菌・抗菌試験)
下の表1に示すように、下記成分をそれぞれ所定量秤量し、混合して所定量の水で希釈して殺菌用組成物を得た。
【0027】
【表1】

【0028】上記組成からなる殺菌用組成物について、主に食中毒の原因菌である大腸菌(O-157)、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、及びリステリア菌、並びに伝染性病原菌であるコレラ菌に対する抗菌・抗菌作用を試験した。使用した菌は、大腸菌[Escherichia coli O-157:H45(ベロ毒素非産生株)]、黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus (AO型毒素産生株)]、サルモネラ菌[Salmonella enterotidis]、腸炎ビブリオ菌[Vibrio parahaemolyticus]、リステリア菌[Listeria monocytogenes]、コレラ菌[Vibrio cholerae]である。これらの各培養菌液を滅菌生理食塩水で希釈して、菌数2 x 104/mlとしたものを試験用菌液とした。上記殺菌用組成物5mlと各試験用菌液5mlとを混合し、30℃の恒温水槽中に静置した。静置後5分、30分、60分後に1mlづつシャーレにとり、標準寒天培地で37℃で48時間培養し、菌数を測定した。
【0029】対照としては、滅菌生理食塩水5mlに各試験用菌液5mlを混合したものを用いて同様に操作した。その結果は、以下の表2に示す通りであった。ここで示した組成からなる殺菌用組成物は、食中毒の原因菌である大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ及びビブリオ菌に対して、迅速かつ強力な殺菌作用を示した。
【0030】
【表2】

【0031】(実施例2)(殺菌・抗菌作用の持続性試験)
更に、実施例1で示した殺菌用組成物の殺菌作用についてその持続作用について検討した。市販のタオル地の布巾(10 x 10 cmに切ったもの)を加熱滅菌し、各布巾に雑菌培養液(菌数1.7 x 104/ml)を1 mlずつ添加した。雑菌を付加した各布巾をそれぞれ以下のように処理した。
【0032】実施例1で示した殺菌用組成物中に雑菌を付加した布巾を5分間浸し、軽く絞った後、直後、24及び48時間後の布巾中に付着している菌数を測定した。対照例として、滅菌水、市販次亜塩素酸製剤、及び70%エタノールをそれぞれ用い、各対照液の中に雑菌を付加した布巾を5分間浸し、以後は同様の操作を行い、布巾中の菌数を測定した。
【0033】その結果は、以下の表3に示す通りであった。実施例1で示した組成からなる殺菌用組成物は、布巾に付着した雑菌を迅速に減らし、その効果は24ないし48時間後まで持続した。一方、市販次亜塩素酸製剤及び70%エタノールでの処理は、一時的には布巾に付着した菌数を減らすことができたが、24時間後及び48時間後には出発菌数以上の菌数が残存することになった。この原因は、次亜塩素やエタノールは揮発してしまい効力が失われるが、本発明の殺菌用組成物では、成分の揮発はなく効力が持続するものと思われる。
【0034】
【表3】

【0035】(実施例3)(抗カビ作用)
これらの殺菌作用に加えて、本発明の殺菌用組成物の、カビに対する抗カビ作用を検討した。本組成物の抗カビ作用を調べるために、カビに対する最小発育阻止濃度(MIC)を調べた。供試カビとして、クロコウジカビ(Aspergillus nigerFERM S-1)と、クロカワカビ(Claudosporium claudosporides FERM S-8)を用いて、実施例1で示した組成物のMICを、MIC測定法(24ウェル寒天法)によって測定した。つまり、本組成物を所定希釈度に希釈して、その希釈液をポテトデキストロース寒天培地に接種し、25±1℃の温度で5日間培養して、明確な阻止を示したウエルをMICと判定した。対照としては滅菌生理食塩水を用いた。その結果を表4(クロコウジカビ)と表5(クロカワカビ)に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】表4及び表5の結果から、本発明による組成物は、カビに対しても抗カビ作用を有し、クロコウジカビとクロカワカビに対する最小発育阻止濃度(MIC)は、それぞれ1/8倍と1/2倍希釈濃度であることが判明した。以上の結果より、本発明による組成物は、種々の細菌ばかりでなく、カビに対しても有効であることが判明した。
【0039】(実施例4)(収穫後の農作物に対する殺菌・抗菌および抗カビ作用)
次に、実施例1で示した殺菌用組成物について、実際の収穫後の農作物に対する殺菌・抗菌および抗カビ作用を検討した。
(収穫したイチゴでの作用)収穫したイチゴを1群40個ずつ、2群(群I及び群II)に群分けをした。群Iのイチゴは何も処理をしないで、群IIのいちごは実施例1の殺菌用組成物溶液中に5分間浸漬した後、いずれも室温に放置し、処理直後、3時間後、6時間後、および24時間後にそれぞれ10個ずつのイチゴを採取し、同量の滅菌生理食塩水を加えてホモジナイズした。このようにして処理を行った各試料中の一般生菌数および大腸菌群数を、それぞれ、標準寒天培地およびデオキシコーレイト寒天培地上で37℃、24時間培養することによりコロニー法により測定した。その結果を以下の表6に示す。本発明の殺菌組成物は、イチゴに付着している一般細菌および大腸菌群を、迅速かつ長時間にわたり抑制することが可能であった。
【0040】
【表6】

【0041】(収穫したマンゴーでの作用)収穫したマンゴーを1群30個ずつ、合計で約5Kgになるようにして4群に群分けした。各群のマンゴーを以下の表7に示すように処理し、処理後12日間室温にて保存し、炭そ病および柄末の腐れの有無を観察し、発現の割合を%で表示した。炭そ病および柄末の腐れは、カビ類であるColletorichum属あるいはDiplodia属の菌類によって惹き起こされると考えられている。
【0042】
【表7】

【0043】その結果を以下の表8に示す。本発明の殺菌用組成物は、収穫後のマンゴーに対して、発生する炭そ病および柄末の腐れを有意に抑制することが可能であった。この作用は、現在用いられている既存の農薬の作用に比較しても同等あるいはそれ以上であった。
【0044】
【表8】

【0045】ここで示した結果は、高い抗菌・殺菌作用および抗カビ作用を有し、人体に対して無害であり、持続性があり安全性も高い新規な殺菌用組成物により、収穫後の農作物に対して直接添加できることを示している。これは、既存農薬の環境や人体に与える悪影響が問題になっている現在、環境や人体に与える負荷の少ない本発明の殺菌用組成物が、収穫後の農作物の処理に極めて有用であることを示している。
【0046】
【発明の効果】本発明による殺菌用組成物は、上述のように、プロタミンとポリリジンと柑橘系植物の種子抽出成分とを含み、これらの成分はいずれも天然食品添加物として認められているものであり、人体にとっては無害でありかつ安全であることは勿論、口から人体中に入ったとしても無害でありかつ安全であるという極めて大きな利点がある。
【0047】また、上記各成分はいずれも不揮発性であり、従来用いられているエタノール製剤や次亜塩素酸製剤のもつ重大な欠陥を克服して、安全で作用が持続するという大きな利点がある。更には、本発明による殺菌用組成物は、食中毒の原因菌として特に問題となる諸細菌に対して殺菌作用があることも別の極めて大きな利点である.また、この発明による殺菌用組成物は、上記成分を単に混合するだけでよく、製造上も極めて簡単であるという利点もある。
【出願人】 【識別番号】501164713
【氏名又は名称】錦織 浩治
【識別番号】501164724
【氏名又は名称】株式会社 メディコム ブレーン
【出願日】 平成13年4月23日(2001.4.23)
【代理人】 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔 (外2名)
【公開番号】 特開2002−322009(P2002−322009A)
【公開日】 平成14年11月8日(2002.11.8)
【出願番号】 特願2001−124351(P2001−124351)