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【発明の名称】 ゴキブリ誘引剤
【発明者】 【氏名】福間 美穂

【氏名】杉浦 正昭

【要約】 【課題】ゴキブリの寄り付きを早めると共に、喫食性を高く、安価で安定した品質のゴキブリ誘引剤とする。

【解決手段】味噌、醤油などの米類、麦類、豆類の原材料を醗酵した熟成物を誘引物質として含有し、グリセリンなどの保湿剤を配合したゴキブリ誘引剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 米類、麦類および豆類の原材料を醗酵した熟成物を誘引物質として含有することを特徴とするゴキブリ誘引剤。
【請求項2】 前記熟成物が、味噌である請求項1記載のゴキブリ誘引剤。
【請求項3】 保湿剤を配合する請求項1又は2記載のゴキブリ誘引剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として、容器内にゴキブリを誘引するために用いるゴキブリ誘引剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来からゴキブリの駆除に関しては、種々の研究がなされており、この内、ゴキブリが自ら駆除手段に近づくようにする駆除方法として、食毒剤や、粘着剤が設けられた容器を利用するものが代表的に知られている。
【0003】食毒剤は、殺虫剤を混合したゴキブリが好んで食べる食餌で、ゴキブリの出入りする場所に置き、これをゴキブリが食べることによって、ゴキブリを死滅させるものである。この食毒剤は容器に入れて用いることもある。
【0004】粘着剤が設けられた容器は、ゴキブリの出入りする場所に置き、この容器内に進入したゴキブリを粘着剤で捕捉して容器外に逃げられないようにすることで、ゴキブリを捕獲するものである。
【0005】前述の食毒剤にゴキブリ誘引剤を配合することで、ゴキブリが食毒剤に誘引され、ゴキブリが食べる機会が多くなることが知られている。また、前述の容器内にゴキブリ誘引剤を設けることで、ゴキブリが容器内に進入し易くなることが知られている。
【0006】前述のゴキブリ誘引剤は、ゴキブリが好み、誘引されるような誘引物質を含むものである。この誘引物質としては、食餌にもなる次のようなものが知られている。ビスケット末、クラッカー末、魚粉、サナギ粉、キナ粉、小麦粉、トウモロコシ粉、砂糖など(特開昭55−94302号公報参照)。さつまいも、さといも、コーンスターチなどの澱粉類、小麦粉、そば粉、米粉などの粉類、米糠、フスマなどの粕糖類、大豆粕、綿実粕などの油粕類、粉粕、ビール粕などの製造粕類、魚粉、肉粉、血粉などの副産物、大豆、かぼちゃ、にんじんなど(特開昭60−54303号公報参照)。ミルク、チーズ、オキアミ粉、粉末昆虫飼料、フスマ、小麦粉、木粉或るいはこれらの混合物(特開昭62−278930号公報参照)。ゴマ油(特開昭53−91140号公報参照)などの多くが知られている。
【0007】前記の誘引物質としては次のようなものも知られている。炭素数4ないし10の脂肪酸と多価アルコールよりなる脂肪酸エステル(特開昭48−58126号公報参照)。芳香を有する芳香族化合物で、アルデヒド、ケトン、フェノール、アルコール、アミン、カルボン酸またはそのエステル(特開昭50−42053号公報参照)、木タール、木酢酸から刺激成分を除去した残さ(特開昭50−46842号公報)、非還元性澱粉中間加水分解物(特開昭50−88235号公報参照)。マントール及び/又はエチルマントール(特開昭52−38024号公報参照)。メープル、フエヌグリーク、白樺、それらの精製物、酵母抽出物及びカラメル(特開昭52−82728号公報)。アロエ植物及び/又はアロエ植物の抽出物(特開昭61−291505号公報参照)。カキツバタ種子油、アヤメ種子油、ノハナショウブ種子油、ダルマヒオウギ種子油(特開昭62−135403号公報参照)などが知られている。更に、ゴキブリ害虫の分泌物、糞、その抽出物又は死骸や殻などの害虫自体が同じ仲間を集合的に誘引することも提案されている(特開昭50−95432号公報、特開平4−342511号公報、特開平5−4904号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の食餌にもなる誘引物質を含むゴキブリ誘引剤は、実際に食毒剤や、粘着剤が設けられた容器に用いると、誘引効果が弱かったり、食べ物であるが故に変質が避けられず、ゴキブリの喫食性が低下し、そのため誘引力が低下することが避けられなかった。また、品質のバラツキが避けられないというような問題もある。
【0009】一方、後述した誘引物質(段落番号0007で述べた誘引物質)は原料供給が不安定であったり、製造の難しさから、その誘引物質を含むゴキブリ誘引剤はコスト高になる傾向にあり、実用性において満足のいくものではなかった。
【0010】本発明は、上記のような問題点を解消するゴキブリ誘引剤を提供することを目的とする。すなわち、より具体的には本発明は、材料的観点からは、安定的に比較的に安価に供給し得、食毒剤として、または粘着剤が設けられた容器に使用された場合には、ゴキブリの寄り付きを早めると共に、品質のバラツキが少なく、しかも変質の少ないゴキブリ誘引剤を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明によれば、次のような手段によって前記課題が解決される。
(1)米類、麦類及び豆類を原材料とし、これらを醗酵した熟成物を誘引物質として含有するゴキブリ誘引剤。
(2)この熟成物が味噌である前記(1)記載のゴキブリ誘引剤。
(3)保湿剤を配合した前記(1)、又は(2)記載のゴキブリ誘引剤。
【0012】
【作 用】(1)前述の(1)記載のゴキブリ誘引剤によれば、ゴキブリの寄り付きを早めると共に、喫食量を高めることができる。
(2)前述の(2)記載のゴキブリ誘引剤によれば、安価で、安定した品質とすることができる。
(3)前述の(3)記載のゴキブリ誘引剤によれば、長期間に亘って高い誘引性を持続することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明者らの研究によれば、ゴキブリによる被害場所の殆どが食生活の中心的役割を果たしている台所である事実から、食材に注目し検討したところ、特に醗酵系の調味料に高い誘引効果があることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0014】本発明のゴキブリ誘引剤に含まれる誘引物質は、米類、麦類及び豆類の原材料を醗酵した熟成物で、味噌、醤油が挙げられる。その中でも味噌が好ましい。
【0015】前記味噌は、大豆、澱粉質(米及び麦)と食塩を原材料として使用し、原料の蒸煮、製麺、混合(仕込)、熟成(醗酵)の概略製造工程で製造される。本発明に使用される味噌は、例えば、よく知られている味噌として、米味噌(例えば、西京みそ、江戸みそ、さくらみそ、仙台みそ、信州みそ、讃岐みそ、府中みそ、相白みそ、佐渡みそ、越後味噌など)、豆味噌(例えば、八丁みそ、溜めみそなど)、麦味噌(例えば、田舎みそ、米代用のみそなど)、なめみそ(例えば、ひしほみそ、経山寺みそ、タイみそ、ユズみそなど)が挙げられる。また、これら知られた味噌に限定はされず、各地域の特産味噌、または普通の味噌、或いは自家製の味噌や調合味噌なども使用できる。
【0016】また、味噌の高い誘引効果を長時間に渡って持続させるには、保湿剤の配合が有効である。
【0017】前記保湿剤は、味噌など誘引物質の乾燥を抑制する物質であれば、特に限定はされず、例えば、グリセリン、合成グリセリン、ポリグリセリンなどが挙げられる。
【0018】また、保湿剤の配合割合としては、味噌の種類や有効期間の設定などによって適宜決めれば良いが、通常、味噌100部に対して保湿剤が5〜50部の範囲が好ましい。配合範囲の下限が5部以下であると、誘引物質(味噌)の乾燥が抑えられず、誘引効果の持続が得られない。また、上限が50部以上であると、誘引物質(味噌)の誘引性が抑圧されたり、製剤化の取扱いが難しいなどが生じる。
【0019】一方、醤油は大豆、小麦、食塩、空気を原材料として使用し、加圧蒸煮法などの原料処理、製麹、もろみ(仕込→撹拌→もろみの熟成→圧搾→火入れ)の概略製造工程で製造される。本発明に使用される醤油としては、例えば、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油などのキッコーマン製、ヤマサ製、、ヒゲタ製、ヒガシマル製、マルキン製などが挙げられる。また、圧搾後に残る醤油粕も使用することができる。
【0020】前記醤油は、液状のまま使用することができるが、こぼし汚す恐れがあることから、例えば、食餌物質や含浸材などに含有させて用いることも可能である。
【0021】本発明に用いる誘引物質は、単独で、または他の誘引性のある物質と混合したり、含浸材に含有したり、或いは殺虫剤などを添加して、前記の食毒剤や粘着材が設けられた容器などに用い、ゴキブリの駆除効果を更に高めることができる。また、ゴキブリ誘引剤の使用剤型としては、粉剤、顆粒、錠剤、ペースト、ダンゴなどに製剤化したり、紙材、不織布、樹脂などの含浸材に含有させ加工したりなどして使用することができる。
【0022】前記他の誘引性のある物質は、既存の物質が使用でき、例えば、植物性・動物性蛋白質としては、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモなどのデンプン粉、小麦粉、米粉、大豆粉、落花生粉、ゴマ粉、フスマなど、或いはサナギ、魚粉、エビ、ミルク、チーズ、飼料用酵母などの粉体など、炭水化物としては果糖、ブドウ糖、黒砂糖、赤砂糖、三温糖、グラニュー糖、ハチミツ、サトウキビ、果汁など、脂質としてはゴマ油、ヌカ油、ヤシ油、コーン油、落花生油、オリーブ油などの植物性油、バター脂、鯨油、卵油などの動物性油、その他酒や酒粕、または食品フレーバーなどが挙げられ、これらの物質と混合し使用することができる。
【0023】また、本発明に用いる誘引物質と前記他の誘引性のある物質とを混合したゴキブリ誘引剤としては、酒粕との配合で顕著な誘引効果を得た。その配合割合は、味噌100部に対して、酒粕を1〜99部の範囲が好ましい。
【0024】さらに、前記他の誘引性のある物質の他に、殺虫剤、保存剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、増量剤、誤食防止剤、増粘剤、色素など、または増粘剤を本発明のゴキブリ誘引剤に悪影響を及ぼさない範囲内で使用することができる。
【0025】防除の対象となるゴキブリ害虫としては、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、ヤマトゴキブリ、トビイロゴキブリなどが挙げられる。
【0026】実施例本発明を具体例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0027】試験例1(誘引性に関する基礎試験)
水(10g)、木製シェルター(縦8cm、横4cmの板2枚を十字に組み合わせたもの)を中央部に設置し、供試虫(クロゴキブリ成虫、10個体)を放し飼いしたプラスチック製衣装ケース(60cm×32cm、高さ15cm)の内部に、ゴキブリ進入口(5cm×8cm)を設けた大型ポリカップ(直径13cm、高さ9cm)の内部底面に表1に示す各種供試剤(約1g、固形物はそのまま使用、液状物は不織布に含浸させ使用)を設置したサンプルを3ヶ所のコーナー部に配置した。また、残りのコーナー部に無処理のポリカップのブランクを置いた。その後、暗室(照度1〜10ルクス)とし、30分間供試虫の行動を連続的に観察し、ゴキブリのポリカップ内に出入りする数をカウントした。その結果を表1に示す。なお、試験は3反復とし、表中のゴキブリの出入り数(ブランク内に出入りするゴキブリ数に対するサンプル内に出入りするゴキブリ数の多少数)は、3回合計数を示す。
【0028】
【表1】

【0029】表1の結果より、クロゴキブリに対して、調味料の内、味噌及び醤油が他の調味料や食材などに比べて、強い誘引効果を示した。また、味噌との混合物中、酒粕との混合物(実施例No10,11)が優れた誘引効果を示した。
【0030】試験例2(誘引持続性に関する基礎試験)
水(10g)、固形飼料(種類;実験動物用3g)、木製シェルター(縦8cm、横4cmの板2枚を十字に組み合わせたもの)を片側端中央部に設置し、供試虫(チャバネゴキブリ成虫、50個体)を放し飼いしたプラスチック製衣装ケース(60cm×32cm、高さ15cm)5個を準備し、各ケース内にゴキブリ進入口(5cm×8cm)を設けた大型ポリカップ(直径13cm、高さ9cm)の内部底面に表2に示す供試剤(1g)を単独及び供試剤にグリセリンの配合量を変化させ、混合した混合剤を設置した2サンプルをシェルターなどの設置側と対向する側の両コーナー部に配置した。その後、床面照度1〜10ルクス下で1週間にわたって、供試虫の行動を連続的に観察し、1日単位で所定時間帯の30分間における両サンプルのゴキブリのポリカップ内に出入りする数をカウントした。その結果を表2に示す。なお、試験は3反復とし、表中のゴキブリ数は3回試験の合計数を示す。
【0031】
【表2】

【0032】表2の結果より、味噌に保湿剤としてグリセリンを配合することにより、ゴキブリの誘引効果を長く持続することを示した。また、グリセリンの配合割合については、味噌100部に対して5〜50部の範囲で誘引効果が持続されることを示した。
【0033】試験例3(粘着式捕獲器による準実施試験)
蛍光灯(20W2灯)を点灯した8畳の試験室内に、1m×1mの試験フィールドを作成、準備し、試験例2と同様に水、固形飼料、木製シェルターを設置して、供試虫(クロゴキブリ成虫、100個体)を放し飼いした。そして、試験フィールド内に粘着剤を備えた紙製捕獲器(70mm×100mm、高さ15mm、前後を開放した箱形の容器)5個を用意し、容器内の粘着剤上の中央位置に表3に示す誘引剤を置き、約12cmの間隔で並べて配置し、24時間後のそれぞれの捕獲器内の捕獲ゴキブリ数を調べた。その結果を表3に示す。なお、試験は3反復とし、表中のゴキブリ数は3回試験の合計数を示す。
【0034】
【表3】

【0035】表3の結果より、駆除方法の1つである粘着剤を使用した容器内に誘い込み、粘着剤で捕獲する粘着式捕獲器について、実施例は比較例に比べて捕獲数が多く、実用的な効果があることを示した。
【0036】試験例4(粘着式捕獲器による実施試験)
ゴキブリ苦情のあった民家(5件)を選び、市販の粘着式紙製捕獲器(70mm×100mm、高さ15mm)を使い、誘引剤として実施例No19及び比較例No21を使い、粘着剤上の中央に設置した捕獲器2個を手渡し、台所等で約1〜2週間使用してもらい、比較試験をしてもらった。その結果を表4に示す。なお、表中のゴキブリ数は成虫、幼虫、若齢幼虫の合計数を示す。
【0037】
【表4】

【0038】表4の結果より、捕獲されたゴキブリの種類は全ての民家でチャバネゴキブリであった。また、本発明の誘引剤は、市販捕獲に使用されている誘引剤と同等かそれ以上の捕獲結果を得た。更に、誘引剤味噌の匂いについては、全民家で全く気にならないというアンケート結果を得、高い商品評価も得た。
【0039】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、ゴキブリの寄り付きを早めると共に、喫食量を高めることができる。請求項2に係る発明によれば、安価で、安定した品質のゴキブリ誘引剤が提供される。請求項3に係る発明によれば、長期間に亘って高い誘引性を持続するゴキブリ誘引剤が提供される。
【出願人】 【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
【出願日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【代理人】 【識別番号】100073818
【弁理士】
【氏名又は名称】浜本 忠 (外2名)
【公開番号】 特開2002−316908(P2002−316908A)
【公開日】 平成14年10月31日(2002.10.31)
【出願番号】 特願2001−122094(P2001−122094)