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【発明の名称】 エアゾール組成物
【発明者】 【氏名】目加多 聡

【氏名】堺 正典

【要約】 【課題】火気に対する安全性が高く、しかも有効成分を効果的に付着させることができる、一液型水性エアゾール組成物を提供する。

【解決手段】灯油などの油成分30〜90重量%、ジエチレングリコールなどの多価アルコール5〜50重量%、水1〜40重量%、殺虫成分などの有効成分0.1〜20重量%からなり、1気圧において引火点を有さない原液10〜60重量%と、ジメチルエーテルからなる噴射剤90〜40重量%とからなり、均一相を形成するエアゾール組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 油成分30〜90重量%、多価アルコール5〜50重量%、水1〜40重量%、有効成分0.1〜20重量%からなり、1気圧において引火点を有さない原液10〜60重量%と、ジメチルエーテルからなる噴射剤90〜40重量%とからなり、全体として均一相を形成するエアゾール組成物。
【請求項2】 原液が多価アルコールおよび水からなる親水性液体と、有効成分および油成分からなる親油性液体とからなり、両者が互いに分離していることを特徴とする請求項1記載のエアゾール組成物。
【請求項3】 有効成分が殺虫成分である請求項1または2記載のエアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエアゾール組成物に関する。さらに詳しくは、殺虫剤に好適なエアゾール組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および解決しようとする課題】一般にエアゾール殺虫剤は、有効成分(殺虫成分など)を含む油性原液と噴射剤からなり、噴射剤として可燃性の液化石油ガスを用いることが多く、そのため、燃焼性や引火性が高い。そこで燃焼性や引火性など、火気に対する安全性を向上させるために、ケロシン溶液とジメチルエーテル、液化石油ガスを特定の割合で配合したエアゾール殺虫剤が出願されている(たとえば特開昭51−67732号、特開昭51−70826号など)。このものは火炎長および爆発濃度試験において、通産省告示557号(昭和40年10月15日)による燃焼性区分で弱燃性の条件(火炎長45cm以下、爆発下限濃度0.13g/l(リットル)以上)を満足させるものである。しかしながら、前記エアゾール殺虫剤を噴射すると、噴射剤は原液よりも速く気化するが、原液は空間で拡散しているため、原液自体が引火点を有する場合、火気に対する安全性が高いとは言い難い。近時、このような引火性および身体に対する毒性などの安全性を考慮して、水性のエアゾール殺虫剤が開発されている。
【0003】このような水性エアゾール殺虫剤は原液を水性とすることにより、火気に対する安全性は高くなったが、水を含むのでエアゾール殺虫剤に一般的に用いられているブリキ製エアゾール容器に対して腐食性がある。さらに水溶性の殺虫成分を選択する必要があるので、親油性の害虫の表面に殺虫成分を効果的に付着させることができず、効力の点で問題がある。また乾燥性が悪くなるなど使用感の点でも満足するものは得られていない。
【0004】これら問題点を解決する手段として、有効成分、ケロシンなどの親油性溶剤、乳化剤、液化石油ガスなどからなるW/O型エマルジョン型のエアゾール殺虫剤が提案されている(たとえば特公昭55−2401号公報、特許第2855736号など)。これはオイル相(ケロシン、LPG)中に水相が分散しているため、水と容器内面とが直接接することが少なく、それにより腐蝕を防ぐものである。しかしながらW/O型エマルジョン型のエアゾール製品は、エマルジョンの安定性に問題があり、しかも製造工程が複雑になる問題がある。
【0005】本発明は火気に対する安全性が高く、容器の腐蝕を防止することができ、さらに有効成分を親油性表面に効果的に付着させることができる、一液型エアゾール組成物を提供することを技術課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のエアゾール組成物は、油成分30〜90重量%、多価アルコール5〜50重量%、水1〜40重量%、有効成分0.1〜20重量%からなり、1気圧において引火点を有さない原液10〜60重量%と、ジメチルエーテルからなる噴射剤90〜40重量%とからなり、全体として均一相を形成することを特徴としている。このようなエアゾール組成物の原液としては、多価アルコールおよび水からなる親水性液体と、有効成分と油成分からなる親油性液体とからなり、両者が互いに分離しているものが好ましい。前記有効成分としては、殺虫成分を用いることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明のエアゾール組成物は、前記したように、油成分30〜90重量%、多価アルコール5〜50重量%、水1〜40重量%、有効成分0.1〜20重量%からなり、1気圧において引火点を有さない原液10〜60重量%と、ジメチルエーテルからなる噴射剤90〜40重量%とからなり、均一相を形成することを特徴としている。
【0008】このようなエアゾール組成物は、原液中に、油成分と多価アルコールおよび水を特定の割合で配合しているため、1気圧において原液が引火点を有さず、火気に対する安全性が高い。本願で言う「引火点を有さない」とは、「危険物の規制に関する政令第1条の6」で定める試験において、原液を常温から加熱して沸騰するまでの間に引火しなかった場合を指す。すなわち本発明の原液は、「消防法別表備考第十号」による引火性液体に該当しないので、危険物ではない。その結果、エアゾール製品としたときの保管や取り扱いなどで制限を受けることがない。
【0009】さらに前記原液は、多価アルコールと水の混合物(水性液体)と、有効成分と油成分からなる油性液体とが分離した状態であるにもかかわらず、ジメチルエーテルからなる噴射剤を90〜40重量%と多く配合しているため、エアゾール組成物としては均一相を形成する。水を若干配合したエアゾール組成物であっても、エアゾール組成物が均一相を形成する場合には、水が水滴状で分散したエアゾール組成物と比べて、組成物中の水の濃度が薄くなるため、容器への腐食が少なくなる。
【0010】また前記エアゾール組成物を噴射した際には水と油成分は再び分離するが、有効成分を油成分に溶解させているので、親油性の噴射対象面(害虫の表面)に対しても有効成分を効率よく付着させることができる。
【0011】前記油成分は、水に不溶な有効成分を溶解させる溶媒として用いられるだけでなく、噴射対象物(害虫の表面)に有効成分を効果的に付着させるための成分である。このような油成分としては、炭化水素、エステル油、シリコーン、油脂などが挙げられる。炭化水素としては、具体的にはヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、エイコサン、ペンタコサンなどのパラフィン系脂肪族炭化水素、2,2,3,3−テトラメチルブタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、2−メチルヘプタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、2,2−ジメチルヘプタン、3,3,4−トリメチルヘキサン、2−メチルオクタン、2−メチルノナン、2−メチルデカンなどのイソパラフィン系脂肪族炭化水素、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−エイコセン、1−ペンタコセンなどのオレフィン系脂肪族炭化水素、さらにベンゼン、オクチルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどの芳香族炭化水素、およびこれらの混合物、たとえばケロシン、パラフィン、流動パラフィン、アイソパーL(商品名)、アイソパーM(商品名)、IPソルベント2028(商品名)、IPソルベント2835(商品名)、サートレックス60(商品名)、日石アイソゾール400(商品名)、エクソンソルベントNo.7(商品名)、エクソールD80(商品名)、ネオチオゾール(商品名)、0号ソルベントM(商品名)、0号ソルベントH(商品名)などが挙げられる。
【0012】前記エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、酢酸ラノリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸−2−ヘキシルデシル、パルミチン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸−2−ヘキシルデシルなどが挙げられる。
【0013】前記シリコーンとしては、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられる。
【0014】前記油脂としては、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、ホホバ油、胚芽油、ヤシ油、パーム油、硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0015】これら油成分のうち、常温では液体であり、炭素数が10以上、引火点が60℃以上、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であるものが火気に対する安全性の点から好ましい。
【0016】また前記油成分は原液中30〜90重量%、好ましくは35〜90重量%用いられる。前記油成分が30重量%未満の場合では、噴射した際、有効成分を親油性の対象物表面に効果的に付着させることができず、有効成分の効力を充分に発揮できない。一方90重量%を超える場合では、原液に引火点が生じ、火気に対する安全性が低下する。
【0017】前記多価アルコールは、前記油成分と水をジメチルエーテルにて均一相とするのを補助するだけでなく、原液の引火点をなくし、火気に対する安全性を高めるための成分である。このような多価アルコールとしては、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの2価のアルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価のアルコール、ペンタエリストリールなどの4価のアルコール、キシリトールなどの5価のアルコール、ソルビトール、マンニトールなどの6価のアルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリンなどの多価アルコールの重合体、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのアルコールアルキルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのアルコールエーテルエステルなどが挙げられる。これら多価アルコールのうち、引火点が前記油成分の引火点よりも高いものが好ましく、具体的には90℃以上、さらには100℃以上が好ましい。
【0018】前記多価アルコールは原液中5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%用いられる。前記多価アルコールが原液中5重量%未満の場合は、均一なエアゾール組成物が得られず、一方、50重量%を超える場合は乾燥性が悪くなるなど、使用感が低下する。
【0019】前記水としては、精製水、イオン交換水、蒸留水などの他に、特公平7−68092号記載の安息香酸アンモニウム−水酸化ナトリウム緩衡液、安息香酸ナトリウム−安息香酸緩衡液、安息香酸アンモニウム−アンモニア緩衡液、安息香酸アンモニウム−安息香酸緩衡液、炭酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウム緩衡液などの緩衡液を用いてもよい。前記水は原液中1〜40重量%、好ましくは2〜30重量%用いられる。前記水が原液中1重量%未満の場合は原液に引火点が生じ、火気に対する安全性が低くなる。一方40重量%を超える場合は乾燥性が悪くなるだけでなく、有効成分を効果的に付着させることが困難になり、有効成分の効力が低下してしまう。さらに原液と噴射剤との溶解性が悪くなるため、均一なエアゾール組成物を確保することができない。
【0020】前記有効成分は原液中0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%用いられる。0.1%未満の場合は、エアゾール組成物中の有効成分濃度が低くなるため、必要量の有効成分を噴射するためには多量に噴射する必要がある。一方、20重量%を超える場合は有効成分濃度が高くなるため、人体への影響を考慮して、バルブ孔や噴射ボタンの孔径を小さくするなど噴射量を少なくする措置が必要となる。その結果、噴射した際にはエアゾール組成物を広範囲に拡散させることができず、効果的ではない。
【0021】前記有効成分としては、フタルスリン、イミプロトリン、アレスリン、ペルメトリン、シスメスリン、プロパルスリン、レスメトリン、d−フェノトリン、テフルスリン、ベンフルスリン、ネオピナミンフォルテ、クリスロンフォルテなどの殺虫成分、サイネピリン、ピペロニルブトキサイト、オクタクロロジプロピルエーテルなどの殺虫効力増強剤、N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミド、ジメチルフタレートなどの害虫忌避剤、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチルなどの消臭・防臭剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの殺菌剤、香料などが挙げられる。
【0022】本発明のエアゾール組成物には、前記必須成分以外に、低級アルコール、高級アルコール、界面活性剤、高級脂肪酸、ロウ、粉体などの各成分を、原液が引火点を有さない範囲で含有させても良い。
【0023】前記低級アルコールは、噴射したときの乾燥性を向上させ、親水性成分と親油性成分が分離している原液をジメチルエーテルを介して均一に溶解させるのに補助的に役立つ成分であって、炭素数2〜3の一価のアルコール、具体的にはエタノール、プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられる。
【0024】前記高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコールなどの直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分枝鎖アルコールなどがあげられる。
【0025】前記界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0026】前記高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などが挙げられる。
【0027】前記ロウとしては、ミツロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、カンデリラロウ、カウナウバロウ、鯨ロウ、モンタンロウなどが挙げられる。
【0028】前記粉体としては、タルク、カオリン、雲母、セリサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪藻土、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、ゼオライト、硫酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、窒化硼素、二硫化モリブデンなどの無機粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、セルロース粉末、シリコーン樹脂粉末などの有機粉末、二酸化チタン、酸化鉄、黄酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック、群青などの無機系顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダーなどの金属粉末顔料などが挙げられる。
【0029】前記噴射剤としてはジメチルエーテルが、エアゾール組成物中90〜40重量%、好ましくは80〜45重量%の範囲で用いられる。すなわち原液がエアゾール組成物中10〜60重量%、好ましくは20〜55重量%用いられる。ジメチルエーテルが全体の90%を超えると、必要とされる有効成分の配合量が少なくなり、実用的でない。また40%より少ない場合は、均一な組成物が得られず、また噴霧した粒子が大きくなりすぎ、好ましくない。
【0030】上記エアゾール組成物は、1秒当たり0.1〜2.0g、好ましくは0.1〜1.5g噴射されることが好ましい。1秒当たりの噴射量が0.1g未満の場合は、有効成分を必要量噴射するまでに長く噴射させる必要があり、その間に人体に吸引される恐れがある。一方1秒当たりの噴射量が2.0g以上の場合は、火炎長試験における火炎長が長くなり、火気に対する安全性が悪くなる。現在、日本では火炎長による燃焼性の区分は行われていないが、火炎長を弱燃性の条件であった45cm未満にすることが、安全上好ましい。
【0031】上記のエアゾール組成物は、たとえば図1に示す合成樹脂製のエアゾール容器Aに充填されてエアゾール製品となる。エアゾール容器Aは、有底筒状の容器本体1と、その上端開口部にガスケット2を介して取り付けられるバルブ3と、押しボタン5とを備えている。符号6はディップチューブである。
【0032】容器本体1はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアクリロニトリル(PA)、バレックスなどの、内容物に侵されにくく、成型が容易な熱可塑性樹脂から、たとえば射出成型、ブロー成型などにより製造される。バルブ3は合成樹脂製のバルブハウジング7と、その内部に上下動自在に収容されるステム8と、ステムを常時上向きに付勢するバネ9と、ステム8の周囲に嵌合され、バルブハウジング7上に固定されるステムラバー10と、それらをまとめて容器本体1に取り付けるためのマウンティングカップ(カバー)11とを備えている。バルブハウジング7およびステム8はナイロン、ジュラコンなどの熱可塑性樹脂製である。マウンティングカップ11は有底筒状に成形した金属薄板製のものであり、通常は下端を容器本体1の口部下方の段部12にクリンプすることにより、バルブ3を容器本体1に固着している。前記押しボタン5も合成樹脂製であり、前面には従来公知の噴霧用のノズル13が取り付けられている。
【0033】上記のエアゾール容器Aに対し、たとえばジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと精製水の混合物からなるA液と、殺虫成分などの有効成分を含んだ灯油からなるB液とを2液分注し、バルブ3を取り付け、さらにステム8からジメチルエーテルを充填し、最後に押しボタン5を取り付けることにより、エアゾール製品が得られる。
【0034】このものはエアゾール組成物14が触れている容器本体1の内面およびバルブ3が合成樹脂製であるので、エアゾール組成物中に水が含まれているにも関わらず、内容物によって侵されない。また有効成分によっても腐蝕されず、有効成分を安定して収容しておくことができる。
【0035】図2に示すエアゾール容器Bは、容器本体21と、その内部に重ねるように収容されたエアゾール組成物に対して耐食性を有する合成樹脂製の内袋(ライナー)22と、それらの上端開口部に取り付けられたバルブ3と、そのバルブに取り付けた押しボタン5とを備えている。
【0036】容器本体21はアルミニウムやブリキ、スチールなどの金属薄板を有底筒状に成形したもので構成しうる。その容器本体21自体は、エアゾール組成物に対する耐食性は不要であり、いずれの金属も使用することができ、また、合成樹脂製であってもよい。前記内袋22は原液と噴射剤とを容器内に分離して充填する二重エアゾール製品に使用するものと同じものでよいが、容器本体21との間に隙間を設ける必要がなく、エアゾール組成物を充填した後はその内圧で実質的に容器本体21の内面に密着する。
【0037】バルブ3は合成樹脂製のバルブハウジング7と、その内部に上下動自在に収容されるステム8と、ステムを常時上向きに付勢するバネ9と、ステム8の周囲に嵌合され、バルブハウジング7上に固定されるステムラバー10と、それらをまとめて容器本体21に取り付けるための合成樹脂製のマウンティングカップ24と金属薄板製のカバー25とを備えている。
【0038】前記内袋22を構成する合成樹脂は、たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(NY)などの単層、もしくは2層以上の積層体があげられる。たとえばLDPE/EVOH/LDPEの三相の積層フィルムを使用しうる。内袋22は通常はブロー成型により製造される。内袋22の厚さは通常0.1〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.0mm程度である。
【0039】容器本体21の上端近辺には、マウンティングカップ24を係合する段部26が設けられている。マウンティングカップ24はその段部26との間に内袋22の上端部を挟着する状態で容器本体21の上部開口内に挿入され、カバー25の下端を容器本体21の外側から段部26の下方にクリンプすることにより取り付けられる。
【0040】このものも図1の場合と同様にエアゾール組成物を充填することによりエアゾール製品となる。このものもエアゾール組成物は内袋22やバルブハウジング7およびマウンティングカップ24などのエアゾール組成物に対して耐食性を有するものとしか接触しないので、容器が腐蝕したり、エアゾール組成物が変質したりすることが防止される。
【0041】図3に示すエアゾール容器Cは、容器本体31と、その上端開口部に取り付けられるバルブ3と、そのバルブ3に取り付ける押しボタン5とを備えている。容器本体31はアルミニウムやブリキ、スチールなどの金属薄板と、容器の内面となる側に積層した合成樹脂フィルム32とからなるラミネート薄板材を有底筒状に成形し、絞り成型による肩部33およびカーリング成型によるビード部34を設けたものである。金属薄板は、エアゾール組成物に対する耐食性は不要であり、いずれの金属も使用することができ、また、合成樹脂製であってもよい。
【0042】合成樹脂フィルム32の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルなどがあげられる。合成樹脂フィルム32の厚さは、5〜300μm、とくに10〜100μmであるのが好ましい。
【0043】バルブ3は合成樹脂製のバルブハウジング7と、その内部に上下動自在に収容されるステム8と、ステムを常時上向きに付勢するバネ9と、ステム8の周囲に嵌合され、バルブハウジング7上に固定されるステムラバー10と、それらをまとめて容器本体1に取り付けるためのマウンティングカップ35とを備えている。マウンティングカップ35は容器本体31と同様な金属薄板と合成樹脂フィルム36のラミネート材であり、容器内部側に合成樹脂フィルム36がくるようにする。
【0044】マウンティングカップ35は中央部でバルブハウジング7を保持しており、周縁部に容器本体のビード部34に被せられる断面逆U字状のフランジ部37を備えている。上記のバルブ3は、ビード部とフランジ部の間に環状のゴム製のガスケット38を介在させ、マウンティングカップ35を容器本体31の上端開口部に嵌合させて、その立ち上がり壁39を容器本体の肩部33の内面にクリンプすることにより、容器本体31に固着する。
【0045】このものも図1の場合と同様にエアゾール組成物を充填することによりエアゾール製品となる。また容器本体の金属薄板は合成樹脂フィルムによって保護されているので、容器が腐蝕したり、内容物が変質したりすることが防止される。
【0046】なお、図3の合成樹脂フィルムに代えて、図4に示すように、容器本体41の内面に合成樹脂塗膜42を設けてもよい。その場合は、ブリキなどの金属薄板であらかじめ成形した容器本体41の内面側に、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を静電・粉体塗装するなどにより塗膜を形成しうる。塗膜の厚さは10〜100μm程度、塗料の粒子は25〜80μm程度が好ましい。なおマウンティングカップ43の内面に設けることもできる。
【0047】すなわち金属製の容器を使用する場合は、その内面に合成樹脂の内袋やフィルムあるいは塗膜を設けて通電値が0となるように金属板を保護することにより、水を含むエアゾール組成物でも安定して収容しうる。
【0048】
【実施例】つぎに具体的な実施例をあげて本発明のエアゾール組成物を説明する。
・火気に対する安全性1.原液の引火点測定危険物の規制に関する政令1条の6に基づき、表1に示す原液の引火点を常温から80℃の範囲はタグ密閉式引火点測定器により測定し、80℃までで引火点が測定出来なかった場合は、クリーブランド開放式引火点測定器にて測定した。結果を表2に示す。
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】2.火炎長試験表3に示したエアゾール組成物を、下記の材料仕様の容器に充填し、表4に示すバルブ、噴射ボタンを取り付けてエアゾール製品を製造した。得られた製品を25℃に保ち、距離15cmの位置にある火炎(長さ5cm)に向けて、火炎の上部1/3を通過するように噴射した。結果を表5に示す。原液1〜3を用いて実施例1〜3のエアゾール組成を作成し、原液4を用いて比較例4、5のエアゾール組成を作成した。
【表3】

【0051】<材料仕様>容器:ブリキ製耐圧容器(図4の容器内面にポリエステル樹脂を静電塗装したもの。膜厚50μm)
バルブ、噴射ボタン:表4【表4】

【0052】
【表5】

【0053】3.爆発性試験(爆発下限濃度の測定)
<試験装置>内容積50l(リットル)の横型円筒容器を用いた。該容器には一端に試料吹き込み口を、他端には容器内で生じた爆発の圧力で自由に開く蓋を、内部には吹き込まれたエアゾールを攪拌するファンと点火プラグを設けてある。
【0054】<試験方法>容器内の温度を25℃に保ち、ファンを回転させると共に点火用プラグのスィッチを入れ、試料を1秒噴射、2秒停止を交互に繰り返す。爆発するまでに要した試料重量を測定し、下記の式にて爆発下限濃度(Ec)を求めた。なお試料温度は25℃である。
【数1】

【0055】<試験試料>表3の実施例1〜3および比較例1、2のエアゾール組成【表6】

【0056】上記表2の試験結果より、本発明のエアゾール組成物に用いる原液1〜3は共に引火点がなく、灯油のみの原液4は94℃で引火点を有する。さらにこれらの原液をジメチルエーテルによりエアゾール化した製品(実施例1〜3)は、表5で示すように火炎長が20〜30cmであり、原液4をエアゾール化した製品(比較例1、2)と比較して火炎長は非常に短い。なお比較例1はバルブ孔径によっては、火炎長が45cmに達し、弱燃性の条件を満たすには、バルブ孔径を小さくする必要がある。また表6より、実施例1〜3の爆発下限濃度は0.14〜0.17(g/l)と大きく、通産省告示第557号(昭和40年10月15日)による燃焼性の区分で弱燃性に該当し、火気に対する安全性が高いことがわかる。
【0057】<処方例>表7〜10の原液組成について、前述と同じ方法で外観および引火性試験を行った。その結果を表11に示す。またそれらをジメチルエーテルと混合してエアゾール組成物を得た。
【表7】

【0058】
【表8】

【0059】
【表9】

【0060】
【表10】

【0061】上記のエアゾール組成物を下記の容器、バルブ、ボタンによりエアゾール製品とし、前述と同じ方法で火炎長試験および爆発性試験を行った。その結果を表11に示す。
<材料仕様>容 器:ブリキ製耐圧容器(図4の容器内面にポリエステル樹脂を静電塗装したもの。膜厚50μm)
バルブ:ステム孔0.4mm、ハウジング下孔0.8mm、横穴0.35mm、ボタン噴孔径:0.4mm【表11】

【0062】表11からわかるように、引火性試験ではいずれの原液も引火点を有さず、危険物に該当しないものである。さらに火炎長試験では、原液をジメチルエーテルによりエアゾール化した製品の火炎長は20〜35cm、爆発性試験では爆発下限濃度は0.14〜0.19であり、燃焼性区分にて弱燃性に該当し、火気に対する安全性が高いことが分かる。
【0063】4.経時試験前述の処方1〜10のエアゾール組成物を下記の材料仕様、製造方法にて充填し、エアゾール製品を得た。
【表12】

【0064】<製造方法>仕様1、2については、原液を容器に充填した後、バルブを取り付け、ステムからジメチルエーテルを充填し、エアゾール製品を製造した。仕様3、4については、原液を容器に充填した後、アンダーカップ充填にてジメチルエーテルを充填し、エアゾールバルブを取り付け、エアゾール製品を製造した。
【0065】<試験条件>仕様1については、エアゾール製品を35℃の条件下で8ヶ月間、仕様2、3、4については、エアゾール製品を45℃の条件下で3ヶ月間、正立および倒立の状態で保存した。その試験結果を表13、表14および表15に示す。
【0066】
【表13】

【表14】

【表15】

【0067】評価基準<原液性状>経時試験開始前の原液と試験品の回収原液との比較○:異常なし×:著しく変化<開缶評価>○:異常なし。
△:樹脂層でブリスターがみられるが、金属表面への腐食はない。
×:金属面への腐食有り。
【0068】表13〜15からわかるように、いずれのエアゾール製品も、正立、倒立保存品共に実用上問題なく、処方1〜10の組成物は容器に対して安定であることがわかる。
【0069】
【発明の効果】本発明のエアゾール組成物は、原液中に油成分、多価アルコールおよび水を特定の範囲で配合しているため、1気圧において引火点を有さず、火気に対する安全性が高い。さらにエアゾール組成物としては均一系を有するが、噴射後有効成分を含んだ親油性液体と親水性液体とに分離するため、噴射面において有効成分を効果的に付着させることができ、有効成分の効力を低下させることがない。
【出願人】 【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
【出願日】 平成12年7月10日(2000.7.10)
【代理人】 【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
【公開番号】 特開2002−308704(P2002−308704A)
【公開日】 平成14年10月23日(2002.10.23)
【出願番号】 特願2000−208980(P2000−208980)