| 【発明の名称】 |
いもち病防除剤組成物及び製剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】小林 達也
【氏名】鶴岡 敏夫
【氏名】近藤 貞夫
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| 【要約】 |
【課題】葉いもち病及び稲いもち病に有効な殺菌剤の治療及び予防効果を飛躍的に増大させ、防除剤の投与が菌の侵入直後でなくても、いもち病の治療効果を発揮する適用期間の長い防除剤組成物及び製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】いもち病予防効果を有する予防殺菌剤と、中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有するいもち病防除剤組成物及び製剤。いもち病治療効果を有する治療殺菌剤と、中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有するいもち病防除剤組成物及び製剤。いもち病予防効果を有する予防殺菌剤と、いもち病治療効果を有する治療殺菌剤と、中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有するいもち病防除剤組成物及び製剤。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 いもち病予防効果を有する予防殺菌剤と、中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有することを特徴とするいもち病防除剤組成物。 【請求項2】 いもち病治療効果を有する治療殺菌剤と、中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有することを特徴とするいもち病防除剤組成物。 【請求項3】 いもち病予防効果を有する予防殺菌剤と、いもち病治療効果を有する治療殺菌剤と、中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有することを特徴とするいもち病防除剤組成物。 【請求項4】 前記予防殺菌剤がフサライド、トリシクラゾール、カルプロパミド、及びジクロメットよりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は3に記載のいもち病防除剤組成物。 【請求項5】 前記治療殺菌剤がベンゾイミダゾール系化合物、メトキシアクリレート化合物、抗生物質、有機リン系化合物、フェリムゾン、及びイソプロチオランよりなる群から選択することができる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2又は3に記載のいもち病防除剤組成物。 【請求項6】 前記ベンゾイミダゾール系化合物がベノミル、チオファネートメチル、及びチアベンダゾールよりなる群から選択される少なくとも一種であり、前記メトキシアクリレート系化合物がアゾキシストロビン及びクレソキシムメチルよりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする前記請求項5に記載のいもち病防除剤組成物。 【請求項7】 前記中鎖脂肪酸トリグリセライドが、炭素数8のカプリル酸トリグリセライド及び/又は炭素数10のカプリン酸トリグリセライドであることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれか一項に記載のいもち病防除剤組成物。 【請求項8】 前記請求項1〜7のいずれか一項に記載のいもち病防除剤組成物を含有することを特徴とする製剤。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、いもち病防除剤組成物及び製剤に関し、さらに詳しくは、葉いもち病及び穂いもち病のいずれにも優れた予防効果及び治療効果を持続的に発揮することができ、したがって少ない散布回数で長期間にわたっていもち病罹患を防止することのできるいもち病防除剤組成物及び製剤に関する。 【0002】 【従来の技術】水稲の最重要病害にいもち病がある。いもち病はピリキュラリア オリゼという糸状菌が原因であり、糸状菌の胞子が飛散して稲の葉や穂に付着すると、稲の中に侵入し、菌糸を伸ばして毒を出し、ついには稲の細胞を殺してしまう。罹病した稲は生育が遅れたり、上米率が低下したり、茶米や死米が増加する。いもち病の防除時期は、葉いもち病対象の生育期中期と、穂いもち病対象の生育期後期に二分されている。現状としては育苗時に防除剤を施用することにより、葉いもち病を防除することができるが、穂いもち病までは防除することができない。したがって、穂いもち病を防除するために本田施用剤を散布している。 【0003】本田施用剤として用いるいもち病の防除剤は、さまざまな分類方法があるが、その効果から、予防的効果を持つ殺菌剤と治療的効果を持つ殺菌剤とに分類することができる。予防的効果を持つ殺菌剤は、例えば作物体の表面に付着して病原菌が作物体内へ侵入することを防ぎ、治療的効果を持つ殺菌剤は、例えば病原菌が感染した後でも直接的な接触によって菌を殺滅する。従来の予防的効果を持つ殺菌剤は、その有効期間が短いので散布を繰り返す必要があり、できるだけ予防効果の長い防除剤が望まれている。また治療的効果を有する殺菌剤が効果的に作用するのは菌の侵入直後に限られており、散布時期が遅れると本来の治療的効果が得られないので、菌が侵入直後でなくとも治療効果のある防除剤が望まれている。現状においては、予防的効果を持つ殺菌剤と治療的効果を持つ殺菌剤と混合させて、少なくともいずれかの殺菌剤を有効に作用させることが主流となっている。しかし、治療的効果を持つ殺菌剤には、散布時期が遅れると本来の治療的効果が得られないという欠点があり、いもち病の発生状況にもよるが、いもち病の防除を確実に行うために穂孕期から穂揃期にかけて時期をずらして2度3度と頻繁に防除剤を散布するのが標準となっている。 【0004】このため、従来の防除剤は、稲作者の都合により防除剤散布の時期を遅らせることができないという欠点や防除剤の散布回数がかさみ、稲作者にとって散布の負担が大きいという欠点がある。また繰り返して防除剤を散布するので、防除剤の費用も余計にかかるという問題があった。さらに、繰り返し農薬を散布することにより環境へ与える負荷も大きくなる。したがって、できるだけ少ない散布回数で済み、いもち病に対する高い治療効果及び殺菌効果が発揮される防除剤の開発が望まれる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は上記課題を解決することを目的とする。すなわち本発明は、葉いもち病及び穂いもち病のいずれに対しても従来よりも優れた予防効果を持つ防除剤及び製剤を提供することを目的とする。また本発明は、葉いもち病及び穂いもち病のいずれに対しても従来よりも優れた治療効果を持つ防除剤及び製剤を提供することを目的とする。また本発明は、葉いもち病及び穂いもち病のいずれの予防効果及び治療効果も高く、防除剤の投与が菌の侵入直後でなくても、いもち病の治療効果を発揮する適用期間の長い防除剤組成物及び製剤を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための手段である本発明は、(1)いもち病予防効果を有する予防殺菌剤と、中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有することを特徴とするいもち病防除剤組成物であり、(2)いもち病治療効果を有する治療殺菌剤と、中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有することを特徴とするいもち病防除剤組成物であり、(3)いもち病予防効果を有する予防殺菌剤と、いもち病治療効果を有する治療殺菌剤と、中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有することを特徴とするいもち病防除剤組成物であり、(4)(1)又は(3)のいもち病防除剤組成物において、前記予防殺菌剤がフサライド、トリシクラゾール、カルプロパミド、及びジクロメットよりなる群から選択される少なくとも一種であり、(5)(2)又は(3)のいもち病防除剤組成物において、前記治療殺菌剤がベンゾイミダゾール系化合物、メトキシアクリレート化合物、抗生物質、有機リン系化合物、フェリムゾン、及びイソプロチオランよりなる群から選択することができる少なくとも一つであり、(6)(5)のいもち病防除剤組成物において、前記ベンゾイミダゾール系化合物がベノミル、チオファネートメチル、及びチアベンダゾールよりなる群から選択される少なくとも一種であり、前記メトキシアクリレート系化合物がアゾキシストロビン及びクレソキシムメチルよりなる群から選択される少なくとも一種であり、(7)(1)〜(6)のいもち病防除剤組成物において、前記中鎖脂肪酸トリグリセライドが、炭素数8のカプリル酸トリグリセライド及び/又は炭素数10のカプリン酸トリグリセライドであり、(8)(1)〜(7)のいずれか一項に記載のいもち病防除剤組成物を含有することを特徴とする製剤である。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明に係るいもち病防除剤組成物は、予防的効果を有する殺菌剤(予防殺菌剤と称する。)と中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有する。また他のいもち病防除剤組成物は、治療的効果を有する殺菌剤(治療殺菌剤と称する。)と中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有する。さらに別のいもち病防除剤組成物は、予防効果を有する殺菌剤(予防殺菌剤と称する。)と治療効果を有する殺菌剤(治療殺菌剤と称する。)と中鎖脂肪酸トリグリセライドとを含有する。予防殺菌剤だけでは、防除が充分ではなく、また治療殺菌剤だけでは病原菌の感染から投与までの適用期間が短い。予防殺菌剤と治療殺菌剤とを混合してなる混合殺菌剤は予防殺菌剤と治療殺菌剤との相加効果を発揮するだけであり、いもち病の病原菌がいつ稲に感染するか予測がつかないのであるから、いもち病対策として頻繁に上記混合殺菌剤を稲に投与しなければならない状況に変わりがない。 【0008】本発明において、予防殺菌剤と中鎖脂肪酸トリグリセライドとを混合することにより、従来の予防殺菌剤よりも予防効果が向上した。また、治療殺菌剤と中鎖脂肪酸トリグリセライドとを混合することにより、従来の治療殺菌剤よりも治療効果の発揮される日数が延び、治療効果の向上が認められた。さらに本発明におけるように予防殺菌剤及び治療殺菌剤に中鎖脂肪酸トリグリセライドを組み合わせると、予防効果がより一層長く持続され、病原菌の感染から投与までの適用期間が延長され、しかも治療効果が向上する。したがって、本発明においては、単に予防殺菌剤及び治療殺菌剤を混用したときよりも遙かに大きな相乗効果が奏される。本発明のいもち病防除剤組成物によると、少ない投与回数で、稲がいもち病に罹患するのを長期間にわたって防止することができる。 【0009】前記予防殺菌剤としては、例えば、メラニン合成阻害剤であるフラサイド、トリシクラゾール、カルプロパミド、及びジクロメットを挙げることができる。 【0010】前記治療殺菌剤としては、例えば、ベンゾイミダゾール系化合物、メトキシアクリレート系化合物、抗生物質、有機リン系化合物、フェリムゾン、及びイソプロチオランを挙げることができる。 【0011】前記ベンゾイミダゾール系化合物としては、例えばベノミル、チオファネートメチル、及びチオアベンダゾールを例示することができる。 【0012】前記メトキシアクリレート系化合物としては、例えばアゾキストロビン及びクレソキシムメチルを例示することができる。 【0013】前記抗生物質としては、例えば、カスガマイシン、プラストサイジンSを挙げることができる。 【0014】前記有機リン系化合物としては、例えば、EDDP、IBPを挙げることができる。 【0015】前記予防殺菌剤及び治療殺菌剤は、それぞれを単独で使用することもできるし、いずれかを混合して使用することもできる。 【0016】前記予防殺菌剤はその一種を単独で使用することもできるし、またその二種以上を併用することもできる。前記治療殺菌剤はその一種を単独で使用することもできるし、またその二種以上を併用することもできる。上記殺菌剤の剤型は例えば、水和剤、フロアブル剤、ドライフロアブル剤、乳剤、及び液剤で用いることができる。使用する予防殺菌剤及び治療殺菌剤の有効成分量及び濃度について特に制限はなく、各殺菌剤ごとに適宜に選択することができるのであるが、通常、予防殺菌剤については、その濃度が25〜200ppmとなるように、好ましくは100〜200ppmとなるように、いもち病防除剤中の含有量が決定される。また治療殺菌剤についても、その濃度が50〜300ppmとなるように、好ましくは100〜300ppmとなるように、いもち病防除剤中の含有量が決定される。 【0017】前記中鎖脂肪酸トリグリセライドは、植物油より直接精製して得られる天然物と、ヤシ油やパーム油より抽出された脂肪酸より工業的に合成された合成物とがある。食品油脂、医療用製品、化粧品の添加剤として広く利用されている。またその化学構造中に2重結合を有していないので一般の植物油に比べて酸化しにくい特長を有する。一般に広く使用されている中鎖脂肪酸トリグリセライドはグリセリン1分子に炭素数7〜11の中鎖脂肪酸3分子とが結合した次式の構造を有する。 【化1】
ここで、nは4〜8の整数であり、化1として示される式中の3個のnは同一であっても相違していても良い。 【0018】好適な中鎖脂肪酸トリグリセライドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が8のカプリル酸トリグリセライド及び脂肪酸の炭素数が10のカプリン酸トリグリセライドを挙げることができる。これらの中鎖脂肪酸トリグリセライドは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。中鎖脂肪酸トリグリセライドは、前記予防殺菌剤及び治療殺菌剤それぞれ、又はそれらの混合物に水和剤、フロアブル剤、ドライフロアブル剤、乳剤、及び液剤の形で加用することができる。防除剤組成物中に含有される中鎖脂肪酸トリグリセライドの量について特に制限はないが、その濃度が250〜1000ppmの範囲内、さらには500〜1000ppmの範囲内になるように、適宜に決定される。前記範囲にあると優れた防除効果が得られる。 【0019】本発明のいもち病防除剤組成物は、その製造方法に特に限定があるわけではなく、前記予防殺菌剤及び中鎖脂肪酸トリグリセライドを適当な混合装置を用いて、また、前記治療殺菌剤及び中鎖脂肪酸トリグリセライドを適当な混合装置を用いて、さらに前記予防殺菌剤、治療殺菌剤、及び中鎖脂肪酸トリグリセライドを適当な混合装置を用いて、混合することによって得ることができる。また、このいもち病防除剤組成物は、噴霧等の適宜の方法により、稲に投与することができる。 【0020】 【実施例】試験1 いもち病に対する治療効果(1) (実施例1〜11、比較例1〜2) 供試薬剤の調製表1に示す各薬剤それぞれを所定の濃度に調製して供試薬剤とした。また、実施例では、薬剤単独の場合と、薬剤と脂肪酸トリグリセライドとを加用した場合とを示してある。脂肪酸トリグリセライドとして、カプリル酸トリグリセライドとカプリン酸トリグリセライドとの混合物であるサンクリスタル乳剤(商品名、カプリル酸トリグリセライド:カプリン酸トリグリセライド=3:7、90%)を用い、薬液全体量に対して500ppmとなるように加用した。フェリムゾン水和剤及びサンクリスタル乳剤は、原体より試作し、それ以外の薬剤は市販の製剤を用いた。 【0021】試験体として200mlポリカップに50粒播種した3葉期のコシヒカリ幼苗を用いた。罹病稲より採取した分生胞子懸濁液(胞子数:1.0×104個/ml)を試験体に噴霧接種し、20℃で48時間、湿室状態に保った。湿室から取り出して風乾させた試験体に、前記供試薬剤をそれぞれ散布し、20〜25℃のガラスハウスで5日間栽培した後、試験体の最上位展開葉の病斑数を調査した。 【0022】比較例1、2として、サンクリスタル乳剤500ppmのみを含む供試薬剤、供試薬剤を散布しない場合について前記実施例と同様に試験を行った。 【0023】尚、表1における防除価は、以下の式により求めた。 【数1】
また作物に対する薬害の程度は下記の基準にて判断した。 −:症状なし±:軽微な症状がみられる。 +:明らかな症状がみられる。 ++:激しい症状がみられる。 【0024】 【表1】
【0025】いもち病菌の接種から薬剤散布まで2日の間隔を設けたので、脂肪酸トリグリセライドを加用していない場合は、どれも治療効果が低くなった。一方、脂肪酸トリグリセライドを加用した場合は、治療効果の増強が認められた。中でも、ベノミル、アゾキシストロビン、フェリムゾン、チオファネートメチル、及びクレソキシムメチルにおいて顕著な治療効果の増強が認められた。また、チアベンダゾール、カスガマイシン、ブラストサイジンS、EDDP、IBP、及びイソプロチオランにおいても、治療効果の増強が認められた。このことから、治療殺菌剤に脂肪酸トリグリセライド加用することによって、いもち病の治療効果が発揮される適用期間が、従来の菌の侵入直後から2日に延長された。 【0026】試験2 いもち病に対する治療効果(2) (実施例12〜14、比較例3〜5) 供試薬剤の調製表2に示す通りに各供試薬剤を調製した。ここで、チオファネートメチル水和剤は、有効成分70%の市販のものを用い、サンクリスタルは、有効成分90%の試作の乳剤を用いた。比較例3として、チオファネートメチル水和剤350ppmのみを、比較例4として、サンクリスタル乳剤1000ppmのみを用意した。 【0027】試験体として200mlポリカップに50粒播種した3葉期のコシヒカリ幼苗を用いた。罹病稲より採取した分生胞子懸濁液(胞子数:1.0×104個/ml)を試験体に噴霧接種し、20℃で24時間湿室状態に保った。接種終了から上記薬剤の散布までの期間を当日〜3日後まで変化させて治療効果の比較を実施した。接種終了後、20〜25℃のガラスハウスで10日間栽培した後、試験体の次葉(接種時最上位展開葉)の病斑数を調査した。また比較例5として、薬剤を散布しない場合について上記実施例と同様に試験を行った。尚、表2における防除価及び薬害の程度の判断はいもち病に対する治療効果試験(1)と同様に行った。 【0028】 【表2】
【0029】いもち病菌の接種から治療薬剤散布までの間隔を0〜3日間の範囲で変化させたが、脂肪酸トリグリセライドを加用していない場合は、いもち病菌の接種から治療薬剤散布までの日数が長くなるに従い、急激に治療効果が低下した。一方、各種治療殺菌剤に脂肪酸トリグリセライドを加用した場合は、いもち病菌の接種から治療薬剤散布までの間隔が長くなっても、高い治療効果が持続することが確認された。特にサンクリスタル500ppm以上加用する場合においては、接種後3日後に薬剤散布したものであっても高い治療効果が持続された。治療殺菌剤に脂肪酸トリグリセライド加用することによって、いもち病の治療効果が発揮される適用期間が、従来の菌の侵入直後から3日に延長された。 【0030】試験3 いもち病に対する予防効果(実施例15〜18、比較例6〜7) 供試薬剤の調製表3に示す各薬剤をそれぞれ調製した。また、参考例については、前記各製剤に脂肪酸トリグリセライドを加用した供試薬剤を調製した。脂肪酸トリグリセライドとして、サンクリスタル乳剤を薬液全体量に対して500ppmとなるように加用した。 【0031】試験体として200mlポリカップに50粒播種した3葉期のコシヒカリ幼苗を用いた。試験体に表3に示す供試薬剤を散布し、20〜25℃のガラスハウスで24時間栽培した後に50mm/hの人工降雨処理を実施し、風乾させた試験体に罹病稲より採取した分生胞子懸濁液(胞子数:1.0×104個/ml)を噴霧接種し、20℃で48時間湿室状態に保った。このコシヒカリ幼苗を湿室からガラスハウスに移動し、更に5日間栽培後に最上位展開葉の病斑数を調査した。 【0032】比較例6として、サンクリスタルのみを散布した場合、比較例7として、薬剤を散布しない場合について上記実施例と同様に試験を行った。 【0033】ここで、カルプロパミド、及びジクロメットは供試品、サンクリスタルは原体より試作し、それ以外は市販の製剤を用いた。尚、表3における防除価及び薬害の程度の判断は試験1と同様に行った。 【0034】 【表3】
【0035】脂肪酸トリグリセライドを加用していない場合は、いもち病菌の接種から7日間経過後、どれも予防効果が低下した。一方、脂肪酸トリグリセライドを加用している場合は、いずれも高い予防効果が持続され、脂肪酸トリグリセライド加用による予防効果の増強が顕著に認められた。 【0036】試験4 いもち病に対する防除効果(1) (実施例19〜21、比較例8〜12) 供試薬剤の調製有効成分40%の市販のチオファートメチルフロアブル剤と、有効成分20%の市販のフサライドフロアブル剤と、有効成分90%の原体より試作したサンクリスタル乳剤とをそれぞれ表4に示す濃度となるように混合し、実施例19〜21の供試薬剤を得た。前記チオファートメチルフロアブル剤、フサライドフロアブル剤、サンクリスタル乳剤それぞれを単独で表4に示す濃度に調製し、比較例9〜11の供試薬剤とした。また前記チオファートメチルフロアブル剤と、フサライドフロアブル剤とを表4に示す濃度に調製し、比較例8の供試薬剤とした。 【0037】試験体としてポット栽培した出穂直後のコシヒカリを用いた。罹病稲より採取した分生胞子懸濁液(胞子数:1.0×104個/ml)を試料に噴霧接種し、20℃で48時間湿室状態に保った。湿室から取り出して風乾させた後に、表4に示す供試薬剤を試験体に散布し、20〜25℃のガラスハウスで5日間栽培した。その後、50mm/hの人工降雨処理を実施し、試験体を風乾させた後に、2回目の菌接種を前記と同様に行い、さらに12日間ガラスハウスで栽培した後に穂の発病度、防除価、薬害の有無を下記の基準にて調査した。また、薬液を散布しない無処理区についても同様に穂の発病度、防除価について調査した。尚、供試稲は、畑状態の1/5000ワグネルポットに20粒播種し、出穂時期を同調させるために1株1茎仕立てにし、1区3ポットずつ使用した。 【0038】尚、表4における発病度及び防除価は、以下の式により求めた。また作物に対する薬害の程度は試験1と同様の基準にて判断した。 【0039】
【数2】
【数3】
【0040】 【表4】
【0041】治療殺菌剤であるチオファネートメチルと、予防殺菌剤であるフサライドと、中鎖脂肪酸トリグリセライドであるサンクリスタルとの3種を加用することにより、比較例8に示すチオファネートメチルと、フサライドとを混合した場合に比べて長期間にわたって防除効果を有することが確認された。それぞれの単剤の場合には、治療予防効果が低く、3種の薬剤を組み合わせることにより高い相乗効果が得られることが認められた。中でも治療殺菌剤であるチオファネートメチルと、予防殺菌剤であるフサライドとの有効成分濃度が等しい場合に、特に優れた効果が認められた。 【0042】試験5 いもち病に対する防除効果(2) (実施例22、比較例13〜17) 供試薬剤の調製有効成分40%の市販のフェリムゾン水和剤と、有効成分20%の市販のトリシクラゾールフロアブル剤と、有効成分90%の原体より試作したサンクリスタル乳剤とをそれぞれ表5に示す濃度となるように混合し、実施例22の供試薬剤を得た。前記フェリムゾン水和剤、トリシクラゾールフロアブル剤、サンクリスタル乳剤それぞれを単独で表5に示す濃度に調製し、比較例15〜17の供試薬剤とした。またフェリムゾン水和剤と、トリシクラゾールフロアブル剤とを表5に示す濃度に調製し、比較例13の供試薬剤とした。上記供試薬剤を用いて、試験4と同様に試験を行い、穂の発病度、防除価、薬害の有無を調査した。 【表5】
【0043】治療殺菌剤であるフェリムゾンと、予防殺菌剤であるトリシクラゾールと、中鎖脂肪酸トリグリセライドであるサンクリスタルとの組み合わせにおいても3種を加用することにより、比較例13に示すフェリムゾンとトリシクラゾールとを混合した場合に比べて長期間にわたって防除効果を有することが確認された。それぞれの単剤の場合には、治療予防効果が低く、3種の薬剤を組み合わせることにより高い相乗効果が得られることが認められた。 【0044】試験6 いもち病に対する防除効果(3) (実施例23、比較例18〜22) 供試薬剤の調製有効成分20%の市販のアゾキシストロビンフロアブル剤と、有効成分7.5%の市販のジクロシメットフロアブル剤と、有効成分90%の原体より試作したサンクリスタル乳剤とをそれぞれ表6に示す濃度となるように混合し、実施例23の供試薬剤を得た。前記アゾキシストロビンフロアブル剤、ジクロシメットフロアブル剤、サンクリスタル乳剤それぞれを単独で表6に示す濃度に調製し、比較例19〜21の供試薬剤とした。またアゾキシストロビンフロアブル剤と、ジクロシメットフロアブル剤を表6に示す濃度に調製し、比較例18の供試薬剤とした。上記供試薬剤を用いて、試験4と同様に試験を行い、穂の発病度、防除価、薬害の有無を調査した。 【0045】 【表6】
【0046】治療殺菌剤であるアゾキシストロビンと、予防殺菌剤であるジクロシメットと、中鎖脂肪酸トリグリセライドであるサンクリスタルとの組み合わせにおいても、3種を加用することにより、比較例13に示すアゾキシストロビンとジクロシメットとを混合した場合に比べて長期間にわたって防除効果を有することが確認された。それぞれの単剤の場合には、治療予防効果が低く、3種の薬剤を組み合わせることにより高い相乗効果が得られることが認められた。 【0047】また、各試験ごとに条件が異なるので単純に比較することはできないが、試験1における実施例の治療殺菌剤と中鎖脂肪酸トリグリセライドと2成分を含む供試薬剤は、菌接種後5日間優れた治療効果を示し、一方試験4、5、6における実施例の治療殺菌剤と予防殺菌剤と中鎖脂肪酸トリグリセライドとの3成分を含む供試薬剤は第1回目の菌接種後17日間優れた治療効果を示しており、3成分を組み合わせることにより相乗的に治療効果が増強されていると思われる。同様に、試験3における実施例の予防殺菌剤と中鎖脂肪酸トリグリセライドと2成分を含む供試薬剤は、供試薬剤散布後7日間優れた予防効果を示し、一方試験4、5、6における実施例の治療殺菌剤と予防殺菌剤と中鎖脂肪酸トリグリセライドとの3成分を含む供試薬剤は第2回目の菌接種後12日間優れた予防効果を示しており、3成分を組み合わせることにより相乗的に予防効果が増強されていると思われる。 【0048】 【発明の効果】従来の防除剤に比べて葉いもち病及び稲いもち病に対する治療効果が増強された防除剤組成物及び製剤が提供される。また従来の防除剤に比べて葉いもち病及び稲いもち病に対する予防効果が増強された防除剤組成物及び製剤が提供される。さらに従来の防除剤に比べて治療効果及び予防効果が飛躍的に増強され,いもち病の防除効果を発揮する適用期間の長い防除剤組成物及び製剤が提供される。これにより、防除剤の散布時期の自由度が増すと共に散布回数の低減を図ることができ、稲作者の散布作業における負担の軽減が図られると共に農薬の散布が環境へ与える負荷も軽減することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】591049930 【氏名又は名称】サンケイ化学株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年4月10日(2001.4.10) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100087594 【弁理士】 【氏名又は名称】福村 直樹
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| 【公開番号】 |
特開2002−308701(P2002−308701A) |
| 【公開日】 |
平成14年10月23日(2002.10.23) |
| 【出願番号】 |
特願2001−111769(P2001−111769) |
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