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【発明の名称】 ゴキブリ誘引剤、及びゴキブリ誘引方法
【発明者】 【氏名】黒澤 聰樹

【氏名】富岡 康浩

【氏名】柴山 淳

【要約】 【課題】効果が高いゴキブリ誘引剤を提供する。

【解決手段】ゴキブリの集合フェロモン(1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、及びトリエチルアミン、並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物)、及び食餌誘引物質(3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン、3−ヒドロキシ−2−エチル−4−ピロン、及び2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、並びにこれらの誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物)を含むゴキブリ誘引剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゴキブリの集合フェロモン、及びゴキブリの食餌誘引物質を含むゴキブリ誘引剤。
【請求項2】 前記のゴキブリの食餌誘引物質が、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン、3−ヒドロキシ−2−エチル−4−ピロン、及び2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、並びにこれらの誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のゴキブリ誘引剤。
【請求項3】 前記のゴキブリの集合フェロモンが、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、及びトリエチルアミン、並びにこれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴキブリ誘引剤。
【請求項4】 ゴキブリの集合フェロモンを散布する工程と、ゴキブリの食餌誘引物質を散布する工程を含むことを特徴とするゴキブリ誘引方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴキブリの誘引剤、及びゴキブリの誘引方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ゴキブリを誘引して捕獲するために、従来より種々の天然物質や合成物質が食餌誘引物質として使用されている。具体的には、米糠、野菜、動物飼育用飼料、及びそれらの抽出物が用いられている。また特開平9−77615号公報には、ピロン系及びシクロペンテノロン系の化合物を主成分とするゴキブリ誘引剤を含有するゴキブリ駆除剤が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの食餌誘引物質やゴキブリ誘引剤によるゴキブリの誘引効果は、必ずしも満足のゆくものではなかった。結果としてゴキブリの捕獲・駆除には限界があったため、従来のゴキブリ誘引剤よりも効果が顕著に高いゴキブリ誘引剤、及びゴキブリ誘引方法が望まれている。本発明は、斯かる課題を解決するためになされたものであり、ゴキブリ誘引物質を含む従来のゴキブリ誘引剤よりもその誘引効果が顕著に高いものを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、ゴキブリの集合フェロモン、及び食餌誘引物質を含むゴキブリ誘引剤には、ゴキブリの集合フェロモン又は食餌誘引物質を単独で使用した時のゴキブリ誘引効果よりも顕著に高いゴキブリ誘引効果が存在することを見いだし、本願発明を完成するに至った。
【0005】即ち本願発明のゴキブリ誘引剤は、ゴキブリの集合フェロモン及びゴキブリの食餌誘引物質を含むことを特徴とし、本願発明のゴキブリ誘引方法は、ゴキブリの集合フェロモンを含むゴキブリ誘引剤、及びゴキブリの食餌誘引物質を含むゴキブリ誘引剤を同時に使用することを含み、又はゴキブリの集合フェロモンを散布する工程と、ゴキブリの食餌誘引物質を散布する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0006】本願発明のゴキブリ誘引剤及びゴキブリ誘引方法において使用する食餌誘引物質としては、食物由来の成分と合成化合物とがある。食物由来の成分としては、脂肪酸、そのエステル、その関連アルコール類を挙げることができる。具体的には脂肪酸では、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、n-カプリル酸、エステルではメチルミリステート、エチルミリステート、エチルパルミテート、関連アルコールでは、オレイルアルコール、グリセロール等を挙げることができる。合成化合物では、3−ヒドロキシ−2−アルキル−4−ピロン、メチルシクロペンテノロン、及びこれらの誘導体を挙げることができる。誘導体としては、メチルシクロペンテノロンブチレート、メチルシクロペンテノロン−3,4−ジオキシ−5−メトキシ−イソプロピルベンゼン等の化合物を挙げることができる。これらの食餌誘引物質の群より選択した1種又は2種以上の物質を、有効成分として使用することができる。一方、本願発明のゴキブリ誘引剤及びゴキブリ誘引方法において使用するゴキブリ集合フェロモンとしては、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、及びトリエチルアミン、並びにこれらの塩からなる群より選択した1種又は2種以上の物質を使用することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】本願において「ゴキブリ」という用語は、分類学上の昆虫綱ゴキブリ目に属する種類を意味し、例えばチャバネゴキブリ(Blattella germanica)、ワモンゴキブリ(Peripalaneta americana)、クロゴキブリ(Periplaneta japanna)、ヤマトゴキブリ(Periplaneta suzukii)等が含まれるが、これらには限定されない。
【0008】また本願において「集合フェロモン」という用語は、雌雄、及び成虫又は幼虫の区別に関わらず同種の他の個体を寄り集まらせる効果のある、ゴキブリの体内で生産される揮発性の化学物質を意味し、その利用に当たっては、天然のもの及び合成によるものを両方を含む。集合フェロモンの具体例としては、本願発明において使用される1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、及びトリエチルアミン、並びにこれらの塩を挙げることができる。集合フェロモンの塩としては、集合フェロモンの安定性や機能に影響を与えないものであれば特に限定されず、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩を挙げることができる。
【0009】更に本願において「食餌誘引物質」という用語は、食物中に含まれる成分、及び食物の匂い成分、並びにこれらに類似する、芳香性の合成化合物であり、ゴキブリが、食物の存在の有無、及び食物の位置や方向を認知する際に、手がかりとして用いる揮発性の化学物質を意味する。食餌誘引物質の具体的な例としては、動物又は植物由来の、蛋白質、アミノ酸、脂質、若しくは炭水化物、又はその抽出物、あるいはこれらの組合せを挙げることができるが、更に具体的には、動物性の蛋白質(アミノ酸)及びそれに由来する加工食品(例えばかつお節等)の抽出物、体脂やバター等の脂質、植物由来の油脂(例えばヤシ油等)等を挙げることができる。具体的には、食物中に含まれる食餌誘引物質の中で誘引活性の高いものとしては、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、n-カプリル酸等の脂肪酸、メチルミリステート、エチルミリステート、エチルパルミテート等のエステル、オレイルアルコール、グリセロール等である。
【0010】更に食餌誘引物質としては、種々の動物又は植物起源の物質を、油脂等の油性溶媒等と加熱処理することにより抽出したり、又は合成した香味成分(フレーバー成分)を挙げることができる。このようなフレーバー成分として例えば、シクロペンテノン系化合物が挙げられ、このシクロペンテノン系化合物には、本願発明において使用される2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン等が含まれる。
【0011】食餌誘引物質は、上記の種々の動物又は植物起源の物質等を、適宜、有機溶媒等の溶媒とともに加熱することにより、溶液として調製することができ、またこの溶液を減圧下に濃縮すること等により、濃縮抽出物として調製することができる。更にこれらの溶液から溶媒除去することにより、食餌誘引物質を液状又は固形状で得ることができる。本願発明の好ましい態様において使用される食餌誘引物質は、市販の、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン、3−ヒドロキシ−2−エチル−4−ピロン、及び2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オンを使用することができる(特開平9−77615号公報)。
【0012】本願発明の好ましい態様において使用される集合フェロモンは、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、及びトリエチルアミンの場合には、種々の会社より製造販売されているものを使用することができる。一方、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノールを集合フェロモンとして使用する場合には、この化合物は以下のようにして合成することができる。出発物質として、アセトンシアノヒドリンを使用する。これを、Co2+の存在下、常温で、メタノール中においてNaBH4と混合し、塩酸を添加してHCNガスを排気し、これに水酸化カリウムを添加して塩基性にし、次いでこれをろ過して1−アミノ−2−メチル−2−プロパノールを得る。次にこれにホルムアルデヒドとギ酸を添加し還流した後、減圧下で濃縮してギ酸とホルムアルデヒドを除去する。次にこれに水酸化カリウム水溶液を添加して塩基性にし、エーテルで1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノールを抽出する。
【0013】本発明のゴキブリ誘引剤は、使用する食餌誘引物質及び集合フェロモンの性質・状態や、ゴキブリ誘引剤を適用する場所及び適用する方法に応じて、適宜、種々の形態をとらせることができる。例えば、液剤、固形剤、ペースト、エアロゾル等とすることができる。
【0014】本発明のゴキブリ誘引剤には、その形態に応じて、種々の添加剤を配合することができ、それらは、ゴキブリ誘引剤の効果に悪影響を与えない範囲及び量においてゴキブリ誘引剤中へ配合することができる。例えば殺虫剤、殺菌剤、防腐剤、着香料、着色料、誤飲防止剤、塗膜形成剤、乳化剤、分散剤、湿潤剤、安定剤、噴射剤等が挙げられる。
【0015】本発明のゴキブリ誘引剤は、集合フェロモンと食餌誘引物質を含むものであるが、当該誘引剤中における有効成分としての集合フェロモン及び食餌誘引物質の存在量は、その剤形や適用方法に応じて適宜、当業者が決定できるものである。
【0016】本発明は更に、本発明のゴキブリ誘引剤を使用することを含むゴキブリ誘引方法を提供するものであるが、当該方法においては、その適用場所等に応じて適宜、ゴキブリ誘引剤を散布、噴霧、若しくは塗布し、あるいはシート等に塗布したものを貼り付けることができる。
【0017】本発明のゴキブリ誘引方法においては、集合フェロモンと、食餌誘引物質とをあらかじめ別個に用意しておき、それぞれを別々の工程で独立に塗布することができる。後の工程は、先の工程による散布の効果が実質的に消失しないうちに行う限り、その工程間の間隔は特に限定されるものではない。したがって、食餌誘引物質を先に散布してから集合フェロモンを散布しても、又は集合フェロモンを先に散布してから食餌誘引物質を散布することも可能であり、また、最初の散布の効果を見て、その効果に応じて更に同じ物質の追加散布を行うか、又はもう一方の物質の散布を行うかを決定することも可能である。
【0018】
【実施例】(実施例1)以下に示す、集合フェロモンと食餌誘引物質との組合せを用いて、ゴキブリ誘引試験を行った。
1)1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール(以下、Dpと表す)と、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン(以下、Hmと表す)との混合物(混合比=1:3、1:1、及び3:1の3種類);
2)Dpと、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン及び2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オンの1:1の混合物(以下、Hm/Mcと表す)との混合物(混合比=1:3、1:1、及び3:1の3種類);
3)塩酸トリメチルアミン(以下、Taと表す)と、Hmとの混合物(混合比=1:3、1:1、3:1の3種類);
4)Taと、Hm/Mcとの混合物(混合比=1:3、1:1、3:1の3種類);
5)Dpのみ;
6)Taのみ;
7)Hmのみ;
8)Hm/Mcのみ。
合計で、16種類のものを使用した。
【0019】(試験方法)ゴキブリ誘引試験は、次のようにして行った。まず、底面が50cm×40cmであり、その内部に餌及び水が配置されたプラスチックコンテナのシェルターに、チャバネゴキブリの成虫30匹(オス:15匹、メス:15匹)を入れた。被試験ゴキブリ全部がシェルター内に潜伏したのを確認後、供試験誘引物質で処理した濾紙を含む箱形トラップ(試験区)、又は無処理の濾紙を含む箱形トラップ(対照区)を、シェルターから等距離で配置した。この箱形トラップは、13cm×6.5cm×1.5cm(高さ)の大きさを有し、内底面が粘着面となったものである。そしてその粘着面には、誘引物質で処理した濾紙又は無処理の濾紙が配置されている。ここで、誘引物質による濾紙の処理は、3cm×3cmの濾紙に、上記の誘引物質の組合せのいずれかの1%エタノール溶液を200μl(誘引物質2mg相当)滴下して行ったものである。箱形トラップをシェルター近傍に配置し、25°Cで14時間、暗条件下でその状態を保ち、その後、各箱形トラップ内のゴキブリ捕獲数を計測した。この試験は5又は6回行った。各試験につき、EPI=(試験区虫数−対照区虫数)/(試験区虫数+対照区虫数)
で与えられる余剰比係数(EPI)を求めた。全試験における平均値を表1に示す。ここで、EPI値が最大値である+1となるのは、全ゴキブリが試験区内に捕獲された場合であり、一方、EPI値が最小値である−1となるのは、全ゴキブリが対照区内に捕獲された場合を意味する。そして得られるEPI値は、−1〜+1の範囲内である。
【0020】
【表1】

【0021】表1においては、集合フェロモン単独、又は食餌誘引物質単独で誘引試験を行ったときの余剰比係数をそれぞれ、表の左欄(Dp:0.46、Ta:0.27)、及び上欄(Hm:0.39、Hm/Mc:0.46)に示してある。そして、集合フェロモン(2種類)と食餌誘引物質(2組)とを、1:3、1:1、又は3:1の比率で組み合わせた時の余剰比係数は、集合フェロモンと食餌誘引物質との混合比の下欄にそれぞれ記載した。例えば、集合フェロモンDpと食餌誘引物質Hmとを1:3の比率で混合した時の余剰比係数は、0.43である。表1に示されるとおり、集合フェロモンと食餌誘引物質とを組み合わせた場合のEPI値は概ね、集合フェロモン単独又は食餌誘引物質単独で使用した場合のEPI値よりも高かった。またこれらの結果は、本発明のゴキブリ誘引剤中に占める集合フェロモンの割合が高くなるにつれて、EPI値も大きくなる傾向にあることを示している。そしてこの傾向は、二種類の食餌誘引物質を、集合フェロモンと組み合わせて使用した場合には、顕著であることもわかる。
【0022】
【発明の効果】本発明のゴキブリ誘引剤は、食餌誘引物質に加えて集合フェロモンを含むものとなっているので、そのゴキブリ誘引効果は、従来のゴキブリ誘引剤のものよりも顕著に高いものとなっている。また、本発明のゴキブリ誘引方法によれば、従来のゴキブリ誘引方法に比べてその効果が顕著に上昇するのみならず、ゴキブリ誘引剤の各成分の適用量、及び適用順序をより柔軟に変更して行うことができるので、費用を節約することが可能であるといった効果がある。即ち、より調製費用のかからない物質を先に散布して、調製費用のより高価な物質を、先の散布結果を見てから散布することが可能になり、費用面における利益がある。
【出願人】 【識別番号】000101938
【氏名又は名称】イカリ消毒株式会社
【識別番号】591142389
【氏名又は名称】社団法人農林水産技術情報協会
【出願日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外6名)
【公開番号】 特開2002−284610(P2002−284610A)
【公開日】 平成14年10月3日(2002.10.3)
【出願番号】 特願2001−86265(P2001−86265)