| 【発明の名称】 |
植物のカリウムイオン吸収促進剤及びそれを用いた植物のカリウムイオン吸収促進方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】大崎 満
【氏名】信濃 卓郎
【氏名】大竹 弘人
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| 【要約】 |
【課題】植物のカリウムイオンの吸収を促進するカリウムイオン吸収促進剤およびそれを用いる植物のカリウムイオン促進方法を提供する。
【解決手段】安息香酸及び/又は安息香酸誘導体を有効成分として含有する植物のカリウムイオン吸収促進剤。また液状であって、安息香酸及び/又はその誘導体として安息香酸塩もしくはエステルを全量に対し0.001〜1μMの濃度で含有する植物のカリウムイオン吸収促進剤。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 安息香酸及び/又は安息香酸誘導体を有効成分として含有する植物のカリウムイオン吸収促進剤。 【請求項2】 液状であり、安息香酸及び/又は安息香酸誘導体の総濃度がカリウムイオン吸収促進剤の全量に対して0.001μM以上1μM未満である請求項1記載のカリウムイオン吸収促進剤。 【請求項3】 前記安息光酸誘導体が、安息香酸塩及び/又は安息香酸エステルである請求項1又は2記載のカリウムイオン吸収促進剤。 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカリウムイオン吸収促進剤を植物に供給することを含む植物のカリウムイオン吸収促進方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、植物のカリウムイオン吸収促進剤及びそれを用いた植物のカリウムイオン吸収促進方法に関する。本発明は、有用植物の収穫部位の収量を高めたり根を活性化したりすることに有用であり、農業分野および家庭園芸分野で利用できる。 【0002】 【従来の技術】カリウムイオンは全ての高等植物に必須な唯一の一価カチオンであり、植物体中でのその含量が多い元素であるが、その特有な生理的役割については現在もなお不明な点が多い。カリウムは植物の必須元素であり、カリウムが欠乏すると、葉の先端や周縁が黄褐色に変色したり、茎の節間が縮まって草丈が伸びなかったり、果樹や果菜類などの肥大が悪くなることが知られている。作物や植物の栽培にあたっては、肥料として土壌に施用したり、水溶液にして葉に散布したりして、カリウムイオンを植物に大量に供給している。しかし、土壌中のカリウムは雨水などで流亡しやすく、施用した分量に見合った程の肥料効果が見られず、肥料の成分が無駄になっている場合が多い。そのため、通常は土壌のpHを矯正し流亡を防止したり、栽培期間中にカリウム肥料を追加することが対策として行われている。 【0003】近年、収量の増大を狙って、肥料の多量施用が一般的技術として定着している。しかし、カリウム肥料の施用及び土壌中のpHの矯正以外に特定の資材を用いることで、植物のカリウム吸収効率を高めたり、植物体中のカリウム含量を高めようという技術は見当たらない。 【0004】また、根の活性が低下することにより、生育終期における生育の減退及び収量の伸び悩みが起こる。植物の根の活性を高いレベルで維持するには、光合成産物の根への供給が必要であるが、養分供給の特徴はその作物とその生育ステージにより決まっており、これまでに養分供給の配分を調節する資材は知られていない。 【0005】安息香酸及び安息香酸誘導体は一般的に植物のカリウム吸収を阻害することが知られている。実際、Glass(1974b)やGeorge(1983)、Baziramakenga(1994b)らは安息香酸濃度1〜250μMでカリウム吸収の阻害を報告してはいるものの、植物のカリウム吸収を促進することは知られていない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、植物のカリウムイオンの吸収を促進するカリウムイオン吸収促進剤及びそれを用いた植物のカリウムイオン吸収促進方法を提供することである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題に関して鋭意検討した結果、安息香酸又は安息香酸誘導体を供給することで、植物のカリウムイオンの吸収が促進され、結果的に植物体中のカリウムイオンの含有量が増加することを見出した。植物体中におけるカリウムイオンの含有量の増加は当該植物における光合成産物の転流の促進を意味するから、結果的に安息香酸又は安息香酸誘導体の植物への供給は当該植物の光合成産物の根や収穫部位への移動を増加させることになる。 【0008】すなわち、本発明は、安息香酸及び/又は安息香酸誘導体を有効成分として含有する植物のカリウムイオン吸収促進剤を提供する。また、本発明は、当該本発明のカリウムイオン吸収促進剤を植物に供給することを含む植物のカリウムイオン吸収促進方法を提供する。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明において、植物のカリウムイオンの吸収を促進する組成物を供給する対象となる植物としては、どの様な植物でもかまわないが、一般に農園芸に供されている植物が好ましく、農園芸作物、花卉、果樹等が適している。 【0010】農園芸作物とは、具体的にはイネ、コムギ、トウモロコシ、大豆等の穀物、ダイコン、カブ等の根菜類、ジャガイモ、サツマイモ等の芋類、キュウリ、トマト、ナス、メロン、スイカ、カボチャ、イチゴ等の果実を収穫する作物が挙げられる。果樹としては具体的に柑橘類、リンゴ、ナシ、カキ、ビワ、クリ等が挙げられる。 【0011】上記の通り、本発明のカリウムイオン吸収促進剤は、安息香酸及び/又は安息香酸誘導体を有効成分として含有する。ここで、安息香酸誘導体とは、安息香酸骨格を有するものであればいずれのものでもよく、特に限定されない。好ましい安息香酸誘導体としては、ナトリウム塩やカリウム塩のようなアルカリ金属塩;アンモニウム塩のような安息香酸塩、アルキルエステル(好ましくはアルキル基の炭素数が1〜6の直鎖状又は分枝状アルキル基)のような安息香酸エステル;及び例えばp−ヒドロキシ安息香酸、p−メチル安息香酸のような、安息香酸又はその塩若しくはエステルのベンゼン環に1〜3個の水酸基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状アルキル基、ハロゲン等の置換基が置換した置換安息香酸並びにその塩及びエステル等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。 【0012】本発明のカリウムイオン吸収促進剤は安息香酸及び/又は安息香酸誘導体を含有する以外特に制限はないが、必要により他の成分を含有してもよい。他の成分としては、農薬、肥料等の主成分として知られている化合物、増量剤、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、保存料などが例示できる。また、アミノ酸発酵液等の他のカリウムイオン吸収促進剤を併用することも可能である。もっとも、本発明のカリウムイオン吸収促進剤は、アミノ酸発酵液等の他のカリウムイオン吸収促進剤と併用することなく単独でも高いカリウムイオン吸収促進効果を発揮するので、このような併用は特に必要ない。 【0013】本発明のカリウムイオン吸収促進剤は、錠剤、顆粒、粉末等の固体状、水溶液などの液体の形態にある。本発明のカリウムイオン吸収促進剤は、安息香酸及び/又は安息香酸誘導体と上記の他の成分を混合し、必要に応じて造粒等の農薬の製剤方法に準じて調製することができる。 【0014】以上のようにして得られたカリウムイオン吸収促進剤は必要により水などで希釈した後対象とした植物に供給される。 【0015】本発明において、植物に供給するとは、本願発明の組成物を植物体中に取り込ませることを意味し、組成物を対象植物が栽培される土壌等に施用したり、組成物を植物の葉、茎等の植物体に散布又は塗布することにより供給することができる。このような手段によりカリウムイオン吸収促進剤中の有効成分が植物体内に取り込まれ、所望の効力を発揮すると考えられる。 【0016】供給を液体散布で行なう場合は、散布液の安息香酸及び/又は安息香酸誘導体の総濃度を、カリウムイオン吸収促進剤組成物全体に対して1μM未満、好ましくは0.0001μM以上1μM未満、好ましくは0.01μM〜0.1μMとして散布する。1μM以上では、かえって障害を起こす可能性がある。供給を塗布又は土壌施用で行なう場合は、水溶液または徐放製剤が好ましく、徐放性があればその材料、機能は限定するものではない。農薬の徐放性製剤はこの分野において周知であり、徐放性に適した公知のいずれの方法をも採用することができる。なお、この場合、供給される有効成分の濃度が過剰(すなわち、液状の組成物を塗布する場合に換算して1μM以上)にならないよう、施用量又は徐放性製剤の吸着剤に吸着させる有効成分量を適宜調節する。適切な施用量又は徐放性製剤の吸着剤に吸着させる有効成分量は、徐放性製剤の種類等により異なるが、ルーチンな実験により容易に設定できる。 【0017】本発明のカリウムイオン吸収促進剤の植物への供給の時期は、植物の定植から収穫までのいずれの時期でも良いが、根の活性を生育終期まで維持するには、生殖生長の盛んになる時期、すなわち転流作用が旺盛になる時期から供給することが好ましい。供給回数は1回でも構わないが、回数を多くした方が効果的である。供給量はその植物体の大きさにより異なり、散布の場合は植物体の表面が十分に濡れる程度に散布するのが好ましい。しかし、あまり供給量が多すぎると、土中等に流れてしまい無駄になってしまうので、適宜生育ステージに合わせて、供給量を変えることが好ましい。 【0018】本発明のカリウムイオン吸収促進剤を植物に供給することにより、植物によるカリウムイオンの吸収が促進され、それによって植物の光合成産物の転流が促進され、その結果、収穫部位の収量の増大を達成されたり、生育期間全般にわたる根の活性が維持され、根の活着、根の生育が促進されるだけでなく、生育終期における生育の停滞を防止することができる。 【0019】 【実施例】以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。 【0020】実施例1シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana(品種: Columbia-0))を、室内の植物培養室で水耕栽培した。ロックウールにArabidopsis thalianaの種子を播種し、標準培養液(組成を下記表1に示す)を与えて散布処理まで培養した。発芽1週間後に1処理につき15個体を3リットル容器に移植して標準培養液で水耕栽培を開始した。培養液を二日毎に交換しながら開花まで約3週間栽培を行った。 【0021】 【表1】表1 【0022】次いで、脱塩水でそれぞれ0.02μMの濃度に希釈した、安息香酸水溶液、安息香酸ナトリウム水溶液、安息香酸アンモニウム水溶液及び安息香酸メチル水溶液、並びにコントロールとしての脱塩水を植物体に散布した。散布は発芽2週間後から開花までの約2週間にわたり毎日、植物体が十分に濡れる程度に行った。1処理につき3反復とし、1反復の植物体数を3個体とした。 【0023】開花後、植物体の地上部のカリウム含有率を測定した。測定は、次のように行った。地上部のみを採取し、80℃の通風乾燥機に2日間以上入れ、乾燥後粉砕したものを乾燥試料とした。乾燥試料を精密に秤量し、そのものから湿式灰化法により分析試料を調製した。炎光光度法により分析試料のカリウム含量を測定し、湿式灰化法に供した乾燥試料の量からカリウム含有率を算出した。結果を下記表2に示す。 【0024】 【表2】表2 *:3個体の平均値【0025】表2に示した通り、安息香酸水溶液、安息香酸塩水溶液又は安息香酸エステル水溶液の散布により地上部カリウム含有率が上昇し、含有量が増加し安息香酸及び安息香酸誘導体のカリウムイオン吸収促進効果が確認できた。 【0026】実施例2安息香酸水溶液をArabidopsis thalianaにスプレーで散布し、地上部のカリウム含有率を測定することによって吸収促進効果を確認した。栽培方法等は実施例1に準じた。 【0027】散布濃度は安息香酸として0.001、0.01、0.02、0.1、1μMとした。希釈には脱塩水を用いた。散布は発芽2週間後から開花までの約2週間にわたり毎日行った。1処理につき3反復とし、1反復の植物体数を3個体とした。 【0028】結果を下記表3に示す。表3に示した通り1μMで地上部カリウムイオンの吸収の増加は認められなかった。0.1μM以下では地上部カリウム含有率が上昇し、含有量が増加し、カリウムイオン吸収促進効果が確認できた。 【0029】 【表3】表3 【0030】 【発明の効果】本発明により、植物のカリウムイオンの吸収を促進する、新規なカリウムイオン吸収促進剤が提供された。本発明のカリウムイオン吸収促進剤を植物に供給することにより、植物によるカリウムイオンの吸収が促進され、その結果、植物の光合成産物の転流が促進され、その結果、収穫部位の収量の増大を達成されたり、生育期間全般にわたる根の活性が維持され、根の活着、根の生育が促進されるだけでなく、生育終期における生育の停滞を防止することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】501123547 【氏名又は名称】北海道三井化学株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年3月27日(2001.3.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100088546 【弁理士】 【氏名又は名称】谷川 英次郎
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| 【公開番号】 |
特開2002−284607(P2002−284607A) |
| 【公開日】 |
平成14年10月3日(2002.10.3) |
| 【出願番号】 |
特願2001−89533(P2001−89533) |
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