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【発明の名称】 揮散体
【発明者】 【氏名】斎藤 秀直

【氏名】谷口 晃一

【氏名】築田 憲明

【要約】 【課題】揮散性薬剤の揮散速度をほぼ一定に保ち、移行ロスを減らすと共に、揮散性薬剤を、容易に成形しうる収納体に収納した揮散体を得ることを目的とする。

【解決手段】揮散性薬剤を担体に担持させた薬剤組成物2を、厚さ0.1〜1mmのプラスチック成形容器3に収納し、その開口部に揮散性薬剤透過性シート4を貼り合わせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 揮散性薬剤を担体に担持させた薬剤組成物を、厚さ0.1〜1mmのプラスチック成形容器に収納し、その開口部に揮散性薬剤透過性シートを貼り合わせた揮散体。
【請求項2】 上記揮散性薬剤が防虫剤、芳香剤、消臭剤又は抗菌剤である請求項1に記載の揮散体。
【請求項3】 上記プラスチック成形容器を構成する材料は、上記揮散性薬剤に対して非透過性のプラスチックである請求項1又は2に記載の揮散体。
【請求項4】 上記プラスチック成形容器がポリプロピレン製又は脂肪族ポリエステル製の成形容器である請求項1乃至3のいずれかに記載の揮散体。
【請求項5】 上記プラスチック成形容器が真空成形、圧空成形又は真空圧空成形のいずれかによって成形された容器である請求項1乃至4のいずれかに記載の揮散体。
【請求項6】 上記担体が、多孔質物質である請求項1乃至5のいずれかに記載の揮散体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、揮散性薬剤の揮散速度が一定に保たれる揮散体に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、防虫剤等の揮散性薬剤は、袋や成形容器に収納されて使用されている。袋に防虫剤等を収納した例としては、特開平11−139903号公報や実用新案登録公報2601805号に記載されているような、穴を開けたフィルムやポリプロピレン、ポリエステル等の合成繊維を単独あるいは組み合わせた不織布や織布に防虫剤等を収納したものが知られている。また、防虫剤等を収納する上記成形容器としては、ポリプロピレン製又はポリエステル製容器が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の袋に収納した防虫剤等を用いるとき、例えば、これを箪笥内の衣類の上に置く場合、この防虫剤等収納袋からの防虫剤等の揮散は十分であるが、これを衣類の間に置いた場合、その上にある衣類の圧力によって揮散が抑制される。このため、防虫剤等の揮散速度が使用条件によって変わり、防虫剤等の効果を十分に発揮できない場合が生じる。
【0004】これに対し、上記の成形容器に防虫剤等を収納する場合は、衣類等の圧力によって防虫剤等自体が圧力を受けることはなく、上記のような揮散の抑制は生じない。しかし、成形容器の材料として上記のポリプロピレンを使用する場合、この容器の厚みが増大するにつれ、防虫剤等の容器への移行量が増大する。また、移行された防虫剤等は再放出され難いため、防虫剤等のロスを生じる。
【0005】また、成形容器の材料として上記のポリエステルを使用する場合、防虫剤等の移行量が少ないため、ロスは抑制することができるが、中でも一般的に使用されるポリエチレンテレフタレートのような芳香族ポリエステルは、その軟化点が約260℃と高く、成形性に欠ける。また、上記芳香族ポリエステルは、ヒートシール性に欠けるため、揮散性薬剤透過性シートを一般的に用いられるヒートシールでは貼り合わせることができない。
【0006】そこで、この発明は、揮散性薬剤の揮散速度をほぼ一定に保ち、移行ロスを減らすと共に、揮散性薬剤を、容易に成形しうる収納体に収納した揮散体を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、揮散性薬剤を担体に担持させた薬剤組成物を、厚さ0.1〜1mmのプラスチック成形容器に収納し、その開口部に揮散性薬剤透過性シートを貼り合わせることにより、上記の課題を解決したものである。
【0008】揮散性薬剤を担体に担持させると共に、プラスチック成形容器に収納したので、揮散性薬剤に圧力がかかることを防止でき、揮散性薬剤の揮散速度を一定に保つことができる。特に、プラスチック成形容器を構成する材料として非透過性、すなわち揮散性薬剤のガスが浸透し難いプラスチックを用いると、揮散性薬剤の揮散が揮散性薬剤透過性シートに限定されるので、揮散性薬剤の揮散速度を一定に安定させることができると共に、開口部の面積や揮散性薬剤透過性シートの種類を変えることで、揮散性薬剤の揮散速度を調整することができる。また、プラスチック成形容器の厚みを所定の範囲としたので、成形容器に移行する揮散性薬剤の移行量を少なくすることができ、揮散性薬剤の移行ロスを減少させることができる。さらに、プラスチック成形容器の材料としてポリプロピレン又は脂肪族ポリエステルを用いる場合、それらの軟化点がそれぞれ約75℃、約50〜60℃と低いため、成形が容易となる。また、それらのプラスチック成形容器はヒートシール性を有しているため、揮散性薬剤透過性シートをヒートシールによって貼り合わせることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0010】この発明にかかる揮散体1は、図1(a)(b)に示すように、揮散性薬剤を担体に担持させた薬剤組成物2を、所定厚さのプラスチック成形容器3に収納し、その開口部に揮散性薬剤透過性シート4を貼り合わせたものである。
【0011】上記薬剤組成物2は、揮散性薬剤を担体に担持させたものである。この揮散性薬剤は、常温で揮散性を有する薬剤をいい、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防虫剤等があげられる。上記芳香剤としては、天然香料、合成香料等があげられ、上記消臭剤としては、竹エキス、ヨモギエキス等があげられる。また、上記抗菌剤としては、アリルイソチオシアネート、オイゲノール、ヒノキチオール等があげられ、上記防虫剤としては、エンペンスリン、ベンフルスリン、フェンフルスリン等のピレスロイド系防虫剤や、ユーカリ油、ターピネオール油、ハッカ油等があげられる。
【0012】上記揮散性薬剤は、そのまま上記担体に含浸させて担持させることができるが、混練用基材と混練して担持させることもできる。この混練用基材は、上記の揮散性薬剤と混練可能であれば特に限定されないが、揮散性薬剤の揮散を抑制しないものが好ましい。このような混練用基材の例として、ステアリルアルコール、ステアリン酸アミド等があげられ、これらは、単独で使用することができ、また、2種以上を混合して使用することができる。
【0013】上記揮散性薬剤と混練用基材との混練物中における揮散性薬剤の混合割合は、混練物100重量部に対して10〜70重量部がよく、15〜50重量部が好ましい。10重量部より少ないと、混練物が多量となるため多くの担体を必要とし、一方、70重量部より多いと、揮散性薬剤が混練物から染み出してしまう。
【0014】この混練物には、上記の揮散性薬剤及び混練用基材以外に、この発明の効果に影響を与えない限り、安定剤や紫外線吸収剤等の公知の添加物、インジケータ機能を付与するために、油溶性染料やpH指示薬等を加えてもよい。
【0015】この混練物は、上記混練用基材を溶融し、この後に揮散性薬剤を添加し、均一に混合することで得ることができる。
【0016】上記担体は、上記の揮散性薬剤を担持することができ、かつ、揮散性薬剤との反応性が乏しいものであれば、特に限定されるものではない。このような例として、合成高分子、セルロース誘導体、無機物質等の多孔性物質の粒状物、シート、マット、不織布等のシート状物等があげられる。上記合成高分子多孔質物質の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等を多孔化したもの等があげられる。上記セルロース誘導体多孔質物質の具体例としては、多孔性セルロースビーズや、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース等を多孔化したものがあげられる。上記無機多孔質物質等の具体例としては、ケイ酸塩やアルミナ、シリカゲル、ゼオライト等の造粒物等があげられる。
【0017】上記薬剤組成物2の担体に対する揮散性薬剤の担持量は、特に限定されるものではないが、薬効の持続の点からより多くの揮散性薬剤が担持されるのが好ましく、担体1gに対して0.05g以上で、担体の飽和担持量以下がより好ましい。
【0018】上記プラスチック成形容器3は、その形状が保持できる程度の強度を有すれば、形状や材料は、特に限定されるものではないが、その材料としては、上記揮散性薬剤に対して非透過性のプラスチックがより好ましい。この非透過性のプラスチックを用いることにより、上記揮散性薬剤の揮散が揮散性薬剤透過性シートに限定されるので、揮散性薬剤の揮散速度を一定に安定させることができる。さらに、開口部の面積や揮散性薬剤透過性シートの種類を変えることで、揮散性薬剤の揮散速度を調整することが可能となる。上記の揮散性薬剤として防虫剤を使用する場合、非透過性のプラスチックの中でも、成形性やヒートシール性の面からポリプロピレン又は脂肪族ポリエステル等が好ましい。
【0019】上記脂肪族ポリエステルとしては、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリテトラメチレンアジペート等、あるいはそれらの誘導体や共重合体があげられる。上記の脂肪族ポリエステルは単独で使用することができ、また、2種以上の混合物として使用することができる。
【0020】上記ポリプロピレン又は脂肪族ポリエステルを用いて成形する場合、上記揮散性薬剤のプラスチック成形容器3への移行が問題となる。この揮散性薬剤の移行量を減らすには、上記プラスチック成形容器3の厚みを薄くするのがよいが、あまり薄くしすぎると、このプラスチック成形容器3の強度が低下して好ましくない。これらから、プラスチック成形容器3の厚みは、0.1〜1mmが好ましい。
【0021】上記プラスチック成形容器3は、原料のプラスチック等をシート状に一次成形した後、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等で二次成形することにより得られる。このようなプラスチック成形容器3の例としては、ブリスター容器があげられる。
【0022】上記揮散性薬剤透過性シート4は、上記プラスチック成形容器3の開口部を覆うものとなるもので、上記揮散性薬剤の透過性を有すれば特に限定されるものではない。
【0023】上記揮散性薬剤透過性シート4は揮散性薬剤の種類と揮散体の使用条件に応じて選択され、その例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等からなるフィルム、割布、織布又は不織布、レーヨン、パルプ、プラスチック繊維にヒートシール性繊維を混抄した不織布、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等からなるフィルムにポリエチレン又はポリプロピレンをラミネートした積層フィルムに熱針やレーザー等で孔を開けたもの等があげられる。プラスチック成形容器3と揮散性薬剤透過性シート4との接着方法としては、ヒートシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール、接着剤等があげられる。
【0024】
【実施例】以下にこの発明を実施例を用いてより詳細に説明する。まず、以下に、評価方法を示す。
【0025】[揮散速度の測定]
■タオルの上に揮散体を置いた場合の揮散速度15リットル収納ケースにタオルを一枚敷き、その上に実施例又は比較例で得られた揮散体を置き、蓋をする。そして、この収納ケースを40℃で保管し、一定期間毎に担体中の揮散性薬剤残存量をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。これにより、揮散速度を求めた。
■タオルの間に揮散体を置いた場合の揮散速度15リットル収納ケースにタオルを二枚敷き、その間に実施例又は比較例で得られた揮散体を置いた以外は、上記と同様にして、一定期間毎に担体中の揮散性薬剤残存量を測定し、揮散速度を求めた。
【0026】[揮散性薬剤移行量の測定]実施例又は比較例で得られた揮散体を薬剤非透過性フィルムで包装し、これを、40℃、4週間の条件下で保管した後、プラスチック成形容器中の揮散性薬剤の量をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0027】(実施例1〜7、比較例1)表1に記載の揮散性薬剤、又は揮散性薬剤の混練物を表1に記載の担体に担持させて薬剤組成物を調製した。この混練物は、混練用基材が溶融する温度まで加熱し、揮散性薬剤を混ぜ合わせたものである。さらに、担体への担持方法は、揮散性薬剤、又は上記の混練物を溶融させ、これに担体を浸漬する方法で行った。この薬剤組成物を表1に記載の厚みを有する材質のブリスター容器に入れ、表1に示す揮散性薬剤透過性シートを蓋材として、上記ブリスター容器を封じ、揮散体を得た。得られた揮散体を用いて上記の方法にしたがって揮散速度及び揮散性薬剤の移行量を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1において、エンペンスリンは住友化学社製:商品名 ベーパースリン、芳香剤は高砂香料社製:商品名 シトラス、セルロースビーズはレンゴー社製:商品名 ビスコパール、シートは不織布である。
【0028】(比較例2)表1に記載の揮散性薬剤透過性シートで分包を形成し、その中に表1に記載の薬剤組成物を入れて、揮散体を得た。得られた揮散体を用いて上記の方法にしたがって揮散速度及び揮散性薬剤の移行量を測定した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【発明の効果】この発明によれば、プラスチック成形容器に収納したので、揮散性薬剤に衣類の圧力がかかることを防止でき、揮散性薬剤の揮散速度を一定に保つことができる。
【0031】さらに、プラスチック成形容器の構成する材料として非透過性のプラスチックを用いると、揮散性薬剤の揮散が揮散性薬剤透過性シートに限定されるので、揮散性薬剤の揮散速度を一定に安定させることができると共に、開口部の面積や揮散性薬剤透過性シートの種類を変えることで、揮散性薬剤の揮散速度を調整することができる。
【0032】また、プラスチック成形容器の厚みを所定の範囲としたので、成形容器に移行する揮散性薬剤の移行量を少なくすることができ、揮散性薬剤の移行ロスを減少させることができる。
【0033】さらに、プラスチック成形容器の材料としてポリプロピレンや脂肪族ポリエステルを用いる場合、ヒートシール性があり、成形も容易となる。
【出願人】 【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
【出願日】 平成13年12月6日(2001.12.6)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
【公開番号】 特開2002−284603(P2002−284603A)
【公開日】 平成14年10月3日(2002.10.3)
【出願番号】 特願2001−372693(P2001−372693)