| 【発明の名称】 |
新規植物内生細菌、並びにそれを用いた植物病害防除剤及び防除方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】塚本 浩史
【氏名】本田 実
|
| 【要約】 |
【課題】作物に影響を与えず、トマトの土壌病害の発生と蔓延を抑制する新規の植物内生細菌を用いた生物農薬を提供する。
【解決手段】トマトに内生する細菌であって、土壌病害に対して防除作用を示すBacillus megateriumに属する新規に単離された細菌 及びBacillus mycoidesに属する新規に単離された細菌。更に、これら新規単離細菌を有効成分として含有する植物病害防除剤及び植物病害防除方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トマトに内生する細菌であって、土壌病害に対して防除作用を示すBacillus megateriumに属する細菌。 【請求項2】 トマトに内生する細菌であって、土壌病害に対して防除作用を示すBacillus mycoidesに属する細菌。 【請求項3】 請求項1又は2記載の細菌を有効成分として含有する植物病害防除剤。 【請求項4】 請求項1又は2記載の細菌を用いる植物病害防除方法。 【請求項5】 植物病害がフザリウム病害である請求項3項記載の植物病害防除剤。 【請求項6】 植物病害がフザリウム病害である請求項4項記載の植物病害防除方法。 【請求項7】 Bacillus megateriumに属する細菌がFERM BP−7496である請求項1記載の細菌。 【請求項8】 Bacillus mycoidesに属する細菌がFERM BP−7497である請求項2記載の細菌。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、農作物の保護に係る発明に属する。特に、植物内生細菌を用いた植物病害の防除に係る発明に関する。 【0002】 【従来の技術】農産物を種々の病虫害から守り、安定して農産物を生産するためには、農耕地では農薬の使用が不可欠となってきている。農薬としては、戦後は主として、化学合成農薬が使われてきた。しかしながら、自然界に存在しない化学物質を含む化学合成農薬を長期間大量に農耕地に散布するため、人畜及び環境生物に与える影響等、様々な弊害が現れ、農薬の残留性、毒性の問題が指摘されるようになってきた。近年では、生物に対する化学合成農薬の選択毒性が飛躍的に向上してきたため、標的外生物に対する毒性は低減されてきたが、依然として化学合成農薬の潜在的な危険性は残っている。とりわけ、化学合成農薬に混入した毒性の高い副産物が標的外生物に影響を与える可能性が懸念されている。例えば、除草剤中に副産物として混入した微量の毒性物質ダイオキシンが河川汚泥中に蓄積され、さらに魚介類の体内に生物濃縮されているといわれている。又、耐性菌の出現も、化学合成農薬のみによる防除方法の限界を表している。 【0003】そこで、これらの問題を解決するために、化学合成農薬の使用を低減する環境保全型の作物保護方法の開発が試みられてきた。化学的な防除法以外にも、生物学的な防除法、生態学的な防除法、耕種的な防除法及び予防的な防除法等、種々の防除方法が開発されており、種々の方法を合理的に組み合わせる総合防除を行うことによって、化学合成農薬の使用量を低減することが注目されている。このなかで、特に、微生物資材を用いた生物学的防除法はその有効な手段と期待されている。 【0004】ところで、トマトの病害として、重要な病害に土壌病害であるフザリウム病(トマト萎凋病)があるが、その防除のための細菌を用いた薬剤として、Bacillussubtilisを有効成分として含有するSubtilex(The MicroBio Group Ltd.、米国)、Companion(Growth Products、米国)、Rhizo Plus(KFZB Biotechnik GmbH、ドイツ)及びHiStick N/T(The MicroBio Group Ltd.、英国)が上市されている。 【0005】特に植物内生菌を用いた防除方法は、植物と内生する微生物との相互作用により宿主抵抗性や内生菌の抗菌物質の産生等が誘導され、植物病害を防除できるものとして注目を集めている。フザリウム菌に対するワタの内生菌のBacillus pumilus菌を用いたワタ立枯れ病の防除については、「C. Chen, E. M. Bauske, G.Musson, R. Rodriguez-Kabana and J. W. Kloepper. Biological Control of Fusarium Wilt on Cotton by Use of Endophytic Bacteria. Biological Control 5, 83-91 (1995).」に説明されている。 【0006】また、トマトに、Pseudomonas fluorescens を処理することにより根腐萎凋病菌に対する抵抗性が向上することが「P. M'piga, R.R. Belanger, T.C. Paulitzand N.Benhamou. Increased resistance to Fusarium oxysporum f. sp. radicis-lycopersici in tomato plants treated with the endophytic bacterium Pseudomonas fluorescens strain 63-28. Physiological and Molecular PlantPathology, 301-320 (1997).」に記載され、更に、トマトの植物内生菌を用いることによりフザリウム病害を抑制できることが、「P. Nejad and P.A.Johnson.Endophytic Bacteria Induce Promotion and Wilt Disease Suppression in Oilseed Rape and Tomato. Biological Control 18, 208-215 (2000).」に記載されている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】従来からのトマトのフザリウム病防除法としては、 Pseudomonas fluorescensを用いた方法が知られているが、Pseudomonas fluorescensはグラム陰性菌で乾燥と熱に弱いため、保存性が劣った。また、トマトに内生する細菌を用いた土壌病害の防除方法は、当該細菌が同定されておらず、実用に供し得ないものであった。そこで、作物に影響を与えず、トマトの土壌病害の発生および蔓延を抑制する新規の植物内生細菌を用いた生物農薬を提供することが期待されていた。 【0008】 【課題を解決するための手段】トマトの土壌病害の発生および蔓延を抑制する新規の植物内生細菌を単離するために、概略次の様な手段が採用された。まず、日本全国各地から土壌を収集し、当該土壌でトマトを育成し、トマト組織に内生する細菌が単離された。こうして、単離されたトマト内生菌の中から、トマト萎凋病に対する防除活性を有する菌株を選抜し、選抜された細菌を同定した。こうして選抜された菌は、B. megaterium及びB. mycoidesであった。本件発明で初めて、トマトに、B. megateriumおよびB. mycoidesが内生すること、更に、単離された両菌が植物病害を抑制することが確認された。 【0009】 【発明の実施の形態】[実施例1]トマト内生細菌の分離土壌サンプル3 gを滅菌蒸留水15 mlに懸濁し、これを滅菌シャーレに入れた滅菌した脱脂綿にしみ込ませた。この上に表面殺菌したトマト種子(品種:大型福寿、サカタ種苗)を置き、25℃、暗所の条件で3日間生育発芽させた。 【0010】表面殺菌した種子を発芽させた後、ハイポネックス(商品名)培地(ハイポネックス3 ml、寒天15 g/L)に移植し、25℃、16時間明/8時間暗の条件下のグロースキャビネットで10日間生育させた。この植物体を表面殺菌した後、磨砕し、YNA(Yeast extract 5 g/L、NutrientAgar 23 g/L)および1/1000 YNA(Yeast extract 0.005 g/L、Nutrient Broth0.008 g/L + Agar 15 g/L)培地に表面塗布した。 【0011】このプレートを25℃、暗所の条件下で培養し、出現したコロニーを分離した。その結果、土壌サンプル21点から48菌株の細菌が分離された。土壌サンプルを加えず滅菌蒸留水だけをしみ込ませた脱脂綿上で発芽、生育させた対照植物からは、全くコロニーは出現しなかった。対照植物からは全く細菌が分離されなかったので、この方法で分離された細菌は、種子の発芽の過程において土壌サンプルから植物に内生したと考えられた。 【0012】[実施例2]液体混合培養によるトマト萎凋病菌の増殖を抑制する内生細菌の選抜トマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum IFO31213)と内生細菌をフラスコ液体混合培養し、トマト萎凋病菌の増殖を抑制する内生細菌を選抜した。PDA(グルコース加用ジャガイモ寒天培地)プレートで培養したトマト萎凋病菌の胞子懸濁液1 mlとYNAプレートで培養した実施例1で分離した内生細菌1白金耳を100 ml培地のCDBY培地(Czapek-Dox broth 3.5g/L, Yeast extract 1g/L)に接種し、500mlバッフル付き三角フラスコで25℃、200 rpm、暗所の条件下で培養した。この培養におけるトマト萎凋病菌の密度の経時変化を測定した。その結果、分離内在性細菌48菌株のうち10菌株にトマト萎凋病菌の増殖抑制効果が観察された。 【0013】[実施例3]病害防除試験による内生細菌の選抜フラスコ混合培養において、トマト萎凋病菌に対する増殖抑制効果が高かった内生細菌10菌株について、トマト萎凋病に対して防除効果のある菌株を選抜する温室試験を行った。トマト種子(品種:大型福寿)を表面殺菌した後、滅菌水を含んだ滅菌脱脂綿上に置き、25℃、暗所で48時間発芽させた。発芽した種子をYNA上に生育した細菌のコロニー上に置き、25℃、暗所で48時間植物体と細菌を接触させた後、ハイポネックス培地に移植し、25℃、16時間明所/8時間暗所の条件で12日間生育させた。 【0014】この植物を栽培上手1号(日本たばこ産業)を入れたポット(1/10,000アール)に移植した。移植2〜3週間後、PDAプレート上で、25℃、暗所の条件で培養したトマト萎凋病菌の菌叢を直径7 mmのコルクボーラーで打ち抜いた後、この菌叢断片5片を根に付着させた。この接種植物を昼25℃、夜20℃の温室で約1ヶ月間生育させた後、本葉第1葉から第5葉の萎凋もしくは黄化の程度を観察することによって、防除効果を評価した。その結果、表1に示すように、JT-1223およびJT-1224を処理した植物体において高い防除活性が認められた。 【0015】 【表1】
発病度;0,無病徴、1,葉面積の1-25%の部分が萎凋あるいは黄化した、2,葉面積の26-50%の部分が萎凋あるいは黄化した、3,葉面積の51-75%の部分が萎凋あるいは黄化した、4,葉面積の76-99%の部分が萎凋あるいは黄化した、5,葉面積の100%の部分が萎凋あるいは黄化した。 【0016】JT-1223およびJT-1224菌株は経済産業省産業技術総合研究所 生命工学工業技術研究所 特許微生物寄託センターに寄託した。寄託番号は、それぞれFERM BP-7496およびFERM BP-7497である。 【0017】[実施例4]内生細菌の同定本件で分離された微生物の同定をするために、文献1,2に従って、形態観察、生理的性状試験及び菌体内DNAのGC含量の測定を行った。その結果を表2にまとめた。 【0018】 【表2】
【0019】上記の検査結果から、本件菌株は次の様に同定された。 【0020】 【表3】
文献1.The Genus Bacillus (Agriculuture Handbook No. 427, R. E. Gordon, W. C. Haynes and C. H. Pang, 1973)文献2.Bergey's Manual of Systematic Bacteriology vol. 2 (1986) Williams and Wilkins (P. H. A. Sneath, N. S. Mair, M. E. Sharpe and J. G. Holt)【0021】 【発明の効果】本件発明は、トマトに容易に内生する細菌を用いたので、少ない菌体量でも、防除効果が高く、また、Bacillus属菌に属する菌を用いたので、熱及び乾燥に強く、保存性が高いという優れた効果を奏するものである。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000004569 【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成13年3月15日(2001.3.15) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091096 【弁理士】 【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2002−275013(P2002−275013A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月25日(2002.9.25) |
| 【出願番号】 |
特願2001−74765(P2001−74765) |
|