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【発明の名称】 土壌燻蒸方法および土壌燻蒸剤
【発明者】 【氏名】河野 進

【氏名】剣持 有希

【要約】 【課題】土壌燻蒸処理後に播種し幼生植物を育成できる土壌燻蒸方法および土壌燻蒸剤を提供する。

【解決手段】アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担体に担持した粒状物を水溶性バインダーで粒状物の集合体とした土壌燻蒸剤、および該土壌燻蒸剤を土壌の中に混合し、該土壌をマルチフィルムで覆い、次いで該土壌中に注水するもの土壌燻蒸方法である。該土壌燻蒸剤の有効成分は、水分によって分解を開始するため、土壌への注水して土壌燻蒸処理を行うと、燻蒸処理後に直に播種しまたは幼生植物を育成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを0.5〜30質量%含有する土壌燻蒸剤を土壌の中に混合し、該土壌をマルチフィルムで覆い、次いで該土壌中に注水するものである、土壌燻蒸方法。
【請求項2】 該マルチフィルムで覆った後に、該注水の前および/または後に該土壌を加熱するものである、請求項1記載の土壌燻蒸方法。
【請求項3】 該土壌の加熱方法が、該土壌に石灰窒素と有機物を添加するものである、請求項2に記載の土壌燻蒸方法。
【請求項4】 該土壌の加熱方法が、太陽熱による加温である、請求項2に記載の土壌燻蒸方法。
【請求項5】 該土壌の加熱方法が、該土壌に石灰窒素と有機物を添加し、かつ太陽熱による加温である、請求項2に記載の土壌燻蒸方法。
【請求項6】 該土壌の加熱方法が、予め土壌中に埋設した配管にスチームまたは加熱ガスを導入するものである、請求項2に記載の土壌燻蒸方法。
【請求項7】 該土壌燻蒸剤が、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担体に担持した粒状物である、請求項1〜6のいずれかに記載の土壌燻蒸方法。
【請求項8】 該土壌燻蒸剤が、該粒状物を水溶性バインダーで粒状物の集合体としたものである、請求項7に記載の土壌燻蒸方法。
【請求項9】 該土壌燻蒸剤が、該集合体をポリビニルアルコール、水溶性セルロースで被覆したものである、請求項8記載の土壌燻蒸方法。
【請求項10】 アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担体に担持した粒状物である、土壌燻蒸剤。
【請求項11】 アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担体に担持した粒状物を水溶性バインダーで粒状物の集合体とした土壌燻蒸剤。
【請求項12】 該土壌燻蒸剤が、該粒状物または該集合体を更にポリビニルアルコール、水溶性セルロースで被覆したものである、請求項10または11記載の土壌燻蒸剤。
【請求項13】 該集合体が、該粒状物に加えて更に崩壊剤を含有するものである、請求項11または12に記載の土壌燻蒸剤。
【請求項14】 該崩壊剤が、水溶性ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項13に記載の土壌燻蒸剤。
【請求項15】 該アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートの含有量が、0.5〜30質量%である、請求項10〜14のいずれかに記載の土壌燻蒸剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを用いた土壌燻蒸方法及び土壌燻蒸剤に関し、より詳細には、土壌中での有効成分の分解性と病原体防除効果とのバランスに優れるアリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを用いた、土壌燻蒸方法および該アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを含む土壌燻蒸剤に関する。
【0002】
【従来の技術】土壌中の伝染性病原微生物や病害虫を殺して育種を容易にする方法として、従来から焼土、蒸気消毒、電熱消毒、火炎放射消毒などの熱による方法と、クロロピクリンやホルマリンなどの薬剤による方法とがある。特に薬剤による燻蒸は、常温で防菌性・防虫性の蒸気を揮散させ、これによって土壌病原体を殺すものであって、広範囲に防菌できるため簡便な方法として知られている。例えば、燻蒸剤の一つである臭化メチルは、土壌病害の防除に効果対象が広く処理が簡便でかつ処理時間が短いなどの利点があるため多用されている化合物である。
【0003】しかしながら、臭化メチルは、地球温暖化の問題から生産量削減および使用制限の動きがある。このため、代替品の開発が急がれているのが現状である。
【0004】このような代替品として燻蒸用クロロピクリン含有製剤があり、クロロピクリン自体が火気に対して安全なため、米穀などの倉庫燻蒸剤として大量に用いられている。例えば、特開平7−247202号公報には、有機高分子化合物をクロロピクリンと混合させた後、噴霧乾燥して瞬間的に有機高分子化合物で被覆して得た粉末化クロロピクリンが開示されている。クロロピクリンは常温で液体であるため、そのままで使用すると防菌性、殺線虫性が高いため揮散性、刺激性、催涙性を奏し、人体にとって悪影響を及ぼすからである。該粉末化体は、乾燥状態でその揮発が抑えられており、土壌への散布後に土壌の水分を吸収して速やかに被膜が破壊され、病原体防除効果が発揮される、というものである。なお、クロロピクリンおよびその分解物は、病原体防除有効濃度で植物に有害であり、土壌燻蒸に用いた場合には時間をかけて該成分を揮散した後でなければ、土壌に播種し、または幼生植物を植生することはできないことも公知である。
【0005】また、その他の土壌燻蒸剤として、ダゾメット剤、カーバム剤、DD剤などの利用が検討されているが、いまだ満足の行くものではない。というのも、例えばダゾメット剤は、対象となる病害や病原体の種類が限られており、他剤の併用が必要となる場合があり、また、処理時間が長く、効果を有する病原体微生物にも限界があるからである。
【0006】一方、アリルイソチオシアネートは、わさびの香気成分を有効成分とする天然の抗菌化合物であり、カビ類から細菌類までの広範囲の抗菌スペクトルを示すと共に、極微量の香気成分含有量で強力な制菌、抗菌効果を奏することが、特開2000−86414号公報に開示されている。このため、例えば特開平10−287516号公報では、アリルイソチオシアネートを有効成分とする殺虫剤成分を固体状の担体中に含有保持させてなる固形状殺虫剤を開示している。このアリルイソチオシアネートは、常温状態で揮発性の液体であり、該固形状殺虫剤この揮発気体が衣類害虫に対して殺虫効力を発揮することを利用したものである。このため、例えば略密閉状態の収納ケースに使用する場合には、その収納ケースの閉止状態が継続的に6ケ月間以上の長期に亘るような場合にも、その収納した衣類について衣類害虫による食害を十分に防止することができる、とする。しかしながら、臭化メチルに比較して蒸気圧が低いため、これを土壌に散布しても土壌表面にしか効果が発揮されないため、土壌処理用には利用されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の土壌燻蒸剤の欠点としては、(1)アリルイソチオシアネートのように、蒸気圧が低いため土壌中に有効成分が拡散しにくく、十分な処理ができないこと、(2)クロロピクリンやアリルイソチオシアネートのように常温で液体であるため、取り扱い時に処理者に刺激を与える場合があること、(3)クロロピクリンのように、それ自体またはその分解物が植物に有害であるが、有害物質の除去が容易でないこと、(4)有害物質の十分な除去のために長期間のガス抜きを要し、結果燻蒸処理作業に要する時間が長いこと、(5)対象病害が限られていること、などが挙げられる。
【0008】しかしながら、従来から、粉末化などによって揮散性を制御し作業時の安全性を確保する方法はあっても、本来土壌燻蒸は、殺菌的、殺生物的効果を奏するものであるため、土壌燻蒸後に植物を育成するには、燻蒸剤の揮散等による除去段階が必要であり、燻蒸処理後に直に播種し、または幼生植物を育成できる土壌燻蒸方法や土壌燻蒸剤は存在しない。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、土壌燻蒸剤効果のある化合物の特定について詳細に検討した結果、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを特定量で含有する土壌燻蒸剤を用いて土壌処理したところ、操作性に優れ、外気温が異なる環境であっても一定の防菌効果が得られ、かつ該物質が水分の存在によって分解を開始し、この分解速度と病原体防除効果とのバランスが優れるために、土壌処理後短時間の内に播種しても植物の発育を阻害しないことを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の(1)〜(15)を提供することを目的とする。
【0010】(1) アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを0.5〜30質量%含有する土壌燻蒸剤を土壌の中に混合し、該土壌をマルチフィルムで覆い、次いで該土壌中に注水するものである、土壌燻蒸方法。
【0011】(2) 該マルチフィルムで覆った後に、該注水の前および/または後に該土壌を加熱するものである、上記(1)記載の土壌燻蒸方法。
【0012】(3) 該土壌の加熱方法が、該土壌に石灰窒素と有機物を添加するものである、上記(2)に記載の土壌燻蒸方法。
【0013】(4) 該土壌の加熱方法が、太陽熱による加温である、上記(2)に記載の土壌燻蒸方法。
【0014】(5) 該土壌の加熱方法が、該土壌に石灰窒素と有機物を添加し、かつ太陽熱による加温である、上記(2)に記載の土壌燻蒸方法。
【0015】(6) 該土壌の加熱方法が、予め土壌中に埋設した配管にスチームまたは加熱ガスを導入するものである、上記(2)に記載の土壌燻蒸方法。
【0016】(7) 該土壌燻蒸剤が、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担体に担持した粒状物である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の土壌燻蒸方法。
【0017】(8) 該土壌燻蒸剤が、該粒状物を水溶性バインダーで粒状物の集合体としたものである、上記(7)に記載の土壌燻蒸方法。
【0018】(9) 該土壌燻蒸剤が、該集合体をポリビニルアルコール、水溶性セルロースで被覆したものである、上記(8)記載の土壌燻蒸方法。
【0019】(10) アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担体に担持した粒状物である、土壌燻蒸剤。
【0020】(11) アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担体に担持した粒状物を水溶性バインダーで粒状物の集合体とした土壌燻蒸剤。
【0021】(12) 該土壌燻蒸剤が、該粒状物または該集合体を更にポリビニルアルコール、水溶性セルロースで被覆したものである、上記(10)または(11)記載の土壌燻蒸剤。
【0022】(13) 該集合体が、該粒状物に加えて更に崩壊剤を含有するものである、上記(11)または(12)に記載の土壌燻蒸剤。
【0023】(14) 該崩壊剤が、水溶性ヒドロキシプロピルセルロースである、上記(13)に記載の土壌燻蒸剤。
【0024】(15) 該アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートの含有量が、0.5〜30質量%である、上記(10)〜(14)のいずれかに記載の土壌燻蒸剤。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】本発明第一は、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担体に担持した粒状物またはその粒状物を水溶性バインダーで粒状物の集合体とした土壌燻蒸剤である。
【0026】土壌燻蒸剤としては、広範囲の病原体に対して、土壌防菌効果や土壌防虫効果等に優れることが求められるが、燻蒸後の土壌は、播種しまたは幼生植物を生育するものであるため、これらの発育を阻害するほどの毒性を残存させないことが必要である。本発明で使用するアリルイソチオシアネートおよびメチルイソチオシアネートは水分または熱によって分解し始め、該分解物は植物に対する有害性が無く、かつ該分解経過中に十分に土壌病原体に対する防菌効果や防虫効果が得られることが判明した。特に、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担持した粒状物を、水溶性バインダーで集合させるか、表面をコーティングした製剤は、土壌の水分の添加によって該バインダーまたは該コーティング剤が溶解し、アリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートが土壌に放出されるために即効性があり、同時に土壌中の水分によって該有効成分が直に分解を開始するため薬剤の土壌中の残留量が少ない。しかも、有効成分が担体に担持してあるため、粒状物もしくはその集合体である固形物として取り扱うことができ、土壌への投与が容易である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担持させる担体としては、土壌中において植物に対する有害性が無ければ特に制限はない。このため、ケイ酸化合物、活性炭、ゼオライト、珪藻土、セラミクス、その他の多孔質、おがくず、粒状に処理したパルプ、その他の生分解性物質などが例示できる。
【0028】たとえば、ケイ酸化合物としては、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸カリウム、無水ケイ酸などがある。
【0029】活性炭はガスの精製、脱臭剤、脱色剤などに用いられる多孔質の炭素であり、1000万分の数センチメートルの微細な孔がたくさんある。このため、物質を吸着する性質が極めて強い。木材、鋸くず、椰子の実の殻、リグニンなどの植物を原料とするものや、ウシの骨、鶏糞、血炭等の動物を原料とするもの、更に亜炭、かっ炭、でい炭、石炭等を炭化したのち活性化し精製したものがあり、いずれも使用でできる。
【0030】また、ゼオライトは、アルミニウムを含むケイ酸塩(アルミノケイ酸塩)の一種で、沸石ともいわれ、微細な孔で占められた構造が特徴である。本発明では、天然品でもよく、合成ゼオライトを使用することもできる。微細な孔には、その径に見合った分子が吸・脱着するためこれを利用する。具体的には、触媒化成社製の商品名ZCP−50、ZCE−50、東洋曹達工業製の商品名TSZ−300、TSZ−500、TSZ−600、TSZ−700、ユニオン昭和製の商品名LZ−Y52、LZ−Y62、SK−500等がある。
【0031】また、ケイソウ土は、単細胞藻類であるケイソウの遺骸からなるケイ質の堆積物であり、土壌処理に用いた後に生分解性を有するために好ましく使用することができる担体である。また、セラミクスは、通常、非重金属無機材料を熱加工して得られるものの総称であり、耐熱性・耐蝕性にすぐれるため、好ましく使用できる。なお、これらに限られず、天然砂や多孔の溶岩を更に微細に粉砕した多孔質の砂や岩石等を担体として使用することもできる。
【0032】また、その他の生分解性物質としては、粒状に成形した生分解性樹脂がある。具体的には、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリ−γ−ブチロラクトン、ポリ−δ−バレロラクトン、ポリ−ε−カプロラクトン等のポリラクトン類、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシビリレート等のポリヒドロキシアルカノエート類、キチン、キトサン、ポリ−p−ジオキサノン、トリメリレンカボネート重合体、ポリリンゴ酸、酸無水物重合体、ポリアルキルシアノアクリレート、アミロース、澱粉、デキストラン等の多糖類及びこれらの共重合体等が挙げられる。この他にポリグリコール酸/ポリアルキレンブロック共重合体、(特開昭59−100130号)、ウレタンポリマー(特開昭63−278924号)、β−マロラクトン重合体(特開昭56−26929号)、ポリエーテルグリコール系重合体(特開平1−195862号)、ポリペプチド(公表特許昭63−502039号)、ポリイミノカーボネート(Macromolecules,22巻5号,P.2029)、ポリデプシペプチド(特公平1−211574号)、ポリエチレングリコールサクシネート(特開昭50−47492号)、リグニン類似重合体(特公昭54−8502号)等、多種多岐にわたる重合体が知られている。
【0033】これらの担体の粒子径は特に制限ないが、一般には平均粒径が0.1〜20mm、特に好ましくは0.3〜8mmである。0.1mmより小さい場合には、粉立ちが多く作業性が劣る場合がある。その一方、20mmを超えるとその後にこれを集合体とした場合に即効性が劣る場合がある。なお、本明細書における粒状物は、平均粒子径が上記範囲にあればよく、その名称が粉体、顆粒または細粒等と称されるかは問わない。
【0034】上記担体にアリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担持させるには、これらの薬剤を溶媒に濃度10〜80質量%、より好ましくは30〜50質量%で溶解し、含浸などによって担持させ、その後に真空乾燥して含まれる溶媒を除去すればよい。
【0035】なお、使用する溶媒としては、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを溶解できかつ真空で容易に揮散するものであることが好ましく、メチレンクロライド、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール、エーテル、アセトン、キシレン、メチルアルコールとメチレンクロライドの混合液等を好ましく使用することができる。これによって、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを担体に担持させた粒状物が得られる。
【0036】また、本発明の土壌燻蒸剤は、上記粒状物か、さらにこれに水溶性バインダーで該粒状物の集合体とするものである。該土壌燻蒸剤を土壌に処理すると、土壌中の水分によって、または土壌に添加した水によって該水溶性バインダーまたはコーティング剤が溶解し、使用している担体は一般に水分吸着力が強いので水分を吸着し、水分中のアリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートは担体から土壌中へ移動し、土壌中に放出されることによってアリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートが土壌にある細菌や病害虫を防菌または防虫する。特に、常温で液体のアリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートの取り扱い性を向上させる観点からは、使用する水溶性バインダーは、有機ガスのバリアー性を有することが好ましい。
【0037】具体的には、使用する水溶性バインダーとしては、植物系及び動物系の天然水溶性高分子、半合成水溶性高分子、合成水溶性高分子等が例示できる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル等のエチレンビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースやメチルセルロールやヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、可溶性デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルデンプン、デキストリン等のデンプン系天然物、マンナン、キトサン、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、グルコース、スクロース等の糖類、グリシン、ゼラチン、セリンなどのアミノ酸またはその誘導体、ポリ乳酸、アルギン酸ナトリウム、カゼイン等の天然物質等が挙げられるが、これらに限定するものではない。本発明においては上記水溶性バンダーから選ばれた一種以上のものであってもよい。
【0038】本発明では、上記水溶性バインダーの中でも有機溶媒の透過性の低いポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性セルロースを使用することが好ましい。これらは、水溶性に優れるため10〜70℃の土壌温度において土壌中の水分で容易に内容物を放出して、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートによる速やかな土壌病原体防除効果を得ることができる。さらにこの水分によってこれら有効成分の分解を開始させ、防菌・防虫後には該化合物の残留量を低減させることができる。従来、クロロピクリンなどを土壌燻蒸用に使用すると、有効成分またはその分解物が植物に有害であるため、該成分を除去するために長時間を必要とし、このため燻蒸処理後の播種などを迅速に行うことはできなかった。しかしながら、本発明では、高温下かつ水存在下で処理するため、有効成分を積極的に分解させ、これによって土壌中の残存有効成分量を低減させ、燻蒸処理後に迅速に播種し、または幼生植物を植生することができるようになった。
【0039】また、本発明では、該集合体が、崩壊剤を含有することが好ましい。崩壊剤の添加によって集合体の分散が容易となり、有効成分の放出が促進されるからである。
【0040】本発明では、崩壊剤として、特に水溶性ヒドロキシプロピルセルロースを使用することが好ましい。該化合物は、水の存在下で水素結合が解離し、立体構造が変化するため土壌中の水分によって容易に集合体を元の粒状物に分散させることができるからである。特に、本発明では、有効成分の取り扱い性向上の観点から、比較的大きな担体を使用するか、細かい担体の集合体とするものであり、該土壌燻蒸剤から有効成分を土壌中で効果的に放散させるために、該集合体の場合は水溶性ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤を添加し、該燻蒸剤の土壌中への投入、混合後、水の添加によって直ちに土壌燻蒸剤を崩壊させ、有効成分ガスの拡散を早めるのである。
【0041】本発明では更に、有効成分の溶出コントロール機能が損なわれない範囲でフィラーや、界面活性剤等の添加物を使用できる。本発明で使用されるフィラーとしての粉体は、難水溶性または不水溶性の粉体である。これらのフィラーは集合体に均一に分散されるが、分散性不良のものは界面活性剤等で分散し易くする等の分散性改良処理が必要である。これらフィラーの好ましい材料としては、タルク、炭酸カルシウム、クレイ、ケイソウ土、シリカ及びその塩等が挙げられる。これらを使用した場合、使用量が増えると何れの粉体を使用した場合であっても集合体の被膜強度が低下する傾向がある。
【0042】本発明に使用し得る界面活性剤は陽イオン性のもの、陰イオン性のもの、両性のもの、非イオン性のもの何れも使用し得るが、界面活性剤の親水性疎水性のバランスが重要である。親水性が強すぎる場合は集合体内に均一に分散せずに凝集して被膜欠陥生成の原因になる。親油性の強いものは被膜への影響はないが、溶出促進効果がやや劣る傾向がある。これら界面活性剤のHLBは15以下、好ましくは11から13の範囲にある。
【0043】更に、本発明の土壌燻蒸剤は、上記粒状物もしくはその集合体を、更にポリビニルアルコールや水溶性セルロースで被覆したものであってもよい。このように、粒状物やその集合体の外周を被覆すると、土壌処理の際の取り扱いが容易となり、かつ被覆層の厚さを調整することでアリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートの分解速度を制御することができる。特に、夏場の作業環境では、高温のために土壌燻蒸剤の土壌への混合中に外気のアリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートの濃度が高くなる場合がある。季節を問わずに簡便に使用でき、かつ土壌中に混合したりマルチフィルムで被覆する作業中にアリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートの濃度を上昇させない方法を検討した結果、該集合体の表面をポリビニルアルコール等の水溶性高分子でコーティングすると、該有効成分の濃度を上昇させずに、かつ水を添加した後や加熱処理によって該土壌燻蒸剤の表面の被覆層が溶解し、土壌中のガス濃度を上昇させ、目的とする処理ができることが判明した。
【0044】本発明の粒状物もしくはその集合体を更に被覆する方法としては公知の方法を適用することができる。例えば、噴流被覆法や噴流被覆法と同様に有機溶剤もしくは水に水溶性バインダーを溶解後、該溶液を回転パン、回転ドラム等で運動している集合体に添加しつつ、熱風を吹き付け同時に乾燥させて被膜を形成・成長させる方法でもよい。このようにして得た本発明の粒状物やその集合体である土壌燻蒸剤の平均粒径は、0.1〜20mm、より好ましくは0.1〜10mm、特に好ましくは0.3〜8mmである。0.1mmを下回ると土壌への混合が困難となり、その一方、20mmを超えると分解速度が低下する場合があるからである。
【0045】このようにして得られた土壌燻蒸剤中のアリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートの含有量は、土壌燻蒸剤の全質量に対して0.5〜30質量%であることが好ましく、特に好ましくは10〜20質量%である。0.5質量%を下回ると土壌燻蒸効果が十分に発揮されず、その一方、30質量%を越えると、製造中または土壌燻蒸処理中のロスが増大する。なお、本発明の土壌燻蒸剤は、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートのいずれかのみを含むものでもよく、これらを併用するものであってもよい。
【0046】本発明の土壌燻蒸剤の使用量は、対象とする細菌や害虫の種類などによって異なるものの、土壌10aに対して、1〜50kg使用することが好ましい。
【0047】本発明の第二は、アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネートを0.5〜30質量%含有する土壌燻蒸剤を土壌の中に混合し、該土壌をマルチフィルムで覆い、次いで該土壌中に注水する、土壌燻蒸方法である。
【0048】アリルイソチオシアネートまたはメチルイソチオシアネート自体は、常温で液体であり、かつそれぞれの蒸気圧が10mmHg、40mmHgと低いため、これを土壌に投与しても土壌全体の十分な処理が行うことができない。しかしながら、これを0.5〜30質量%含有する土壌燻蒸剤として使用すると、作業中の濃度を上げることなく土壌に容易に混合することができ、このため土壌表面のみならず土壌中を広範囲に防菌しおよび防虫することができるのである。この際、使用する土壌燻蒸剤としては、例えば本発明の土壌燻蒸剤が好ましい。この燻蒸剤によれば、アリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートを含んだ土壌燻蒸剤を耕運機など既存の農業機械で土壌中に投入混合して加熱することにより1〜20日間という短期間で地中の望ましい深さまで処理できることが判明したのである。
【0049】また、本発明の方法における特徴は、土壌表面をマルチフィルムで覆うことである。これにより処理終了前に有効成分が外気中へ拡散してしまう現象を防ぎ、十分な処理がなされうる。また、有効成分の土壌中における十分な拡散及び分解の促進目的で土壌を加熱する際に保温材としての機能も果たす。
【0050】また、本発明の方法では、該土壌燻蒸剤を土壌中に混合した後に注水することを特徴とする。水の投与によってアリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートが分解を開始するが土壌燻蒸処理中には、大部分の有効成分が分解されず、土壌が防菌・防虫された後に該有効成分の分解が終了するため、土壌処理後に播種や幼生植物の植生を速やかに行えることが判明したからである。アリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートのこのような特質は従来全く知られていなかった。なお、本発明における注水とは、上記目的からアリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートの放出と分解を促進するに足る水分量が土壌中に含まれることを意味し、注水による土壌水分量としては、10〜80質量%であることが好ましい。従って、土壌燻蒸剤の添加前の土壌が上記範囲の水分を保持している場合には、注水しなくても該燻蒸剤の分解が開始される。しかしながら、十分な燻蒸効果を得る前に有効成分が分解してしまう。従って、土壌燻蒸効果を十分に確保するには、土壌燻蒸剤の土壌への混合し、マルチフィルムで被覆した後に注水することが好ましい。
【0051】具体的には、該土壌燻蒸剤を土壌に混合して水と接触させると、病原体防除速度より遅く、しかし十分な速度である水添加後3〜10日でアリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートを、植物に対する有害性をなくす程度にまで分解させることができる。従来は、土壌燻蒸処理に関しては土壌中に燻蒸ガスの有効量を投与し、これによる防菌性や防虫性にのみ着目したため、土壌燻蒸の目的で土壌に注水するという概念は存在しなかった。しかしながら、本発明では、アリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートを土壌燻蒸用の有効成分として使用し、該化合物の水による分解性に着目した結果、病原体防除効果と水分による分解速度との関係が、土壌燻蒸後の育種に実際的に調和していることを見出した。このため、単に、「注水」という工程を加えることで、極めて実用的な土壌燻蒸方法を完成するに至ったのである。
【0052】本発明では、該マルチフィルムで覆った後に、該注水の前および/または後に該土壌を加熱することが好ましい。アリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートの沸点は臭化メチルなどに比較して高いため、加熱によって燻蒸作用を促進させるためである。このような土壌の加熱方法としては、太陽熱による加温であってもよいが、季節によってはこのような加温効果が得られない場合がある。このため、例えば、予め土壌中に埋設した配管にスチームまたは加熱ガスを導入したり、該土壌に石灰窒素と有機物を添加して発酵熱や水分との接触による発熱作用を利用した加温方法であってもよい。特に、夏場は太陽熱を利用することが経済的であり、石灰窒素と有機物とを混合する方法は、石灰窒素と有機物の堆肥化による土壌の改良効果も期待できる点で好ましい。
【0053】該加温は、有効成分であるアリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートの燻蒸を助けるものであればよいため、土壌温度を20〜70℃、特に好ましくは40〜60℃に加温することができればよい。
【0054】より具体的には、夏場の圃場表面をマルチフィルムで覆い太陽熱処理等で十分に土壌温度を上昇させると共に、土壌中の水分で水溶性バインダーを溶解させて土壌中に投入混合したアリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネート含有土壌燻蒸剤を活性化させて病原体を防除し、その後有効成分分解後マルチフィルムを除去すると、安全な病原体防除処理を行うことができる。
【0055】なお、この土壌の温度を上昇させることは処理速度を上げるだけでなく、処理後アリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートの分解を促進させることに役立つ。この有効成分を目的の処理操作と分解処理を同時に進行させると言う一見矛盾する方法を可能にしたのは目的の処理速度は40℃で5〜10時間であるのに対し、分解速度は半減期が20時間程度であり、目的の処理時間中は平均して初期の80%以上の濃度を維持でき、処理の最終段階では温度をできる限り高温例えば50℃以上にして48時間程度で濃度を著しく低下させると安全に作業ができるという事実の発見による。従って、本発明によれば地中15〜30cmの深さの土壌処理が可能であり、処理後はアリルイソチオシアネートやメチルイソチオシアネートの雰囲気濃度は農作業に差し支えない程度に下がるため、処理後に播種が可能となる。
【0056】本発明の土壌燻蒸剤は、上記のごとく優れた土壌病原体防除効果を示す。
【0057】適用できる害虫としては、例えば、サツマイモネコブセンチュウ、土壌センチュウ、メセンチュウ、ネグサレセンチュウ、マツノザイセンチュウ等の線虫類;コクゾウ虫等の長ゾウ虫類の害虫;シロイチモジヨトウ、コブノメイガ、ハスモンヨトウ、カブラヤガ、ヨトウガ、タマナギンウワバ、ニカメイガ、サンカメイガ、ナシオオシンクイ、ハイマダラメイガ、マメノメイガ、イネツトムシ、ワタアカミムシ、ジャガイモガ、モンシロチョウ、ノシメマダラメイガ、チャノコカクモンハマキ、キンモンホソガ、ミカンハモグリガ、ブドウホソハマキ、ナシヒメシンクイ、マメシンクイガ、モモシンクイガ、ブドウスカシバ、チャノホソガ、コナガ、イガ等の鱗し目の害虫;タバココナジラミ、オンシツコナジラミ、ミカントゲコナジラミ、ワタアブラムシ、ユキヤナギアブラムシ、リンゴワタムシ、モモアカアブラムシ、ダイコンアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、マメアブラムシ、コミカンアブラムシ、ミカンクロアブラムシ、ブドウネアブラムシ、ムギミドリアブラムシ、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、チャノミドリヒメヨコバイ、フタテンヒメヨコバイ、ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ、ツマグロヨコバイ、タイワンツマグロヨコバイ、シロオオヨコバイ、ルビーロウムシ、オリーブカタカイガラムシ、サンホーゼカイガラムシ、リンゴカキカイガラムシ、アカマルカイガラムシ、アカホシマルカイガラムシ、ヤノネカイガラムシ、クワコナカイガラムシ、ミカンコナカイガラムシ、イセリアカイガラムシ、リンゴキジラミ、ミナミアオカメムシ、ホソヘリカメムシ、ナシグンバイ等の半し目害虫;イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、キスジノミハムシ、コロラドハムシ、テンサイトビハムシ、コクゾウムシ、クリヤケシキスイ、ニジュウヤホシテントウ、インゲンマメゾウムシ、アズキゾウムシ、ヨツモンマメゾウムシ、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ、マメコガネ、ゴマダラカミキリ、タバコシバンムシ、ヒメマルカツオブシムシ、コクヌストモドキ、ヒラタキクイムシ等の鞘し目害虫;アカイエカ、チカイエカ、シナハマダラカ、ヒトスジシマカ、イネハモグリバエ、ダイズサヤタマバエ、イネカラバエ、イネミギワバエ、イエバエ、クロキンバエ、タマネギバエ、ウリミバエ、ミカンコミバエ等の双し目害虫;ネギアザミウマ、カキクダアザミウマ、ミナミキロアザミウマ、イネアザミウマ、チャノキイロアザミウマ等のアザミウマ目昆虫;クロゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、チャバネゴキブリ、コバネイナゴ、トノサマバッタ等の直し目害虫;カブラハバチ等の膜し目害虫;ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ、チャノホコリダニ、ミカンサビダニ、ニセナシサビダニ、イエダニ、ツツガムシ類、ケナガコナダニ等のダニ目害虫;その他、イヌノミ、アタマジラミ、ヤマトシロアリ、ヤケヤスデ、ゲジ等が例示できる。
【0058】本発明の土壌燻蒸剤の有効病害対象としては、サツマイモの立枯れ病、つる割れ病、紫紋羽病、黒あざ病;ジャガイモのそうか病、黒あざ病;ウリ類の苗立枯れ病、つる割れ病、疫病;メロンの黒点根腐れ病;ナスの半身萎凋病、青枯れ病;トマトの白絹病、萎凋病、半身萎凋病、青枯れ病;イチゴの疫病、萎黄病;ホウレンソウの立枯れ病、萎凋病、根腐れ病;アブラナ科野菜の根こぶ病、根くびれ病、萎黄病、黄化病;ニンジンの根腐れ病、乾腐病;エンドウの根腐れ病;インゲンの白絹病;セルリーの萎黄病、黄化病;パセリの萎凋病;タバコの立枯れ病、疫病、黒根病、矮化病;カーネーションの立枯れ病、萎凋病等の糸状菌、細菌によって起こる病害があり、さらには各種のウィルス病、センチュウ類、ハリガネムシ、ネキリムシ、ケラ等がある。
【0059】また、本発明の土壌燻蒸剤が有効な除草の対象として、シロツメ草等のマメ科の雑草、イネ科、カヤツリグサ科雑草、及び広葉雑草等がある。
【0060】
【実施例】以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0061】アリルイソチオシアネートの水中での分解性と抗菌効果の減少度の経過を比較した。(図1)
(参考例1:アリルイソチオシアネートの水中における分解性)まず、アリルイソチオシアネート(AIT)5.025gをエタノール100mlに希釈して基質原液を調整した。次いで、精製水20mlを入れたテフロン(登録商標)被覆した100mlの密栓ガラスビンに、該基質原液から0.6mlを正確に秤って入れ、複数の処理液を調整した。各処理液の入ったガラス瓶の蓋をしっかり閉めて、40℃および60℃で50時間まで撹拌した。
【0062】該処理液について、50時間まで5時間ごとにアリルイソチオシアネート量を測定した。所定時間を経過した処理液にエタノール80mlを添加して測定用試料とした。各時のアリルイソチオシアネート残存量を0時間時のアリルイソチオシアネートに対する百分率で表示した。なお、該試料のアリルイソチオシアネートは、下記の条件で、測定した。
【0063】GCグラフ操作条件:機種:(GC―14B(株)島津製作所)
検出器:FIDカラム:DB−WAX(J&W SCIENTIFIC)
温度:試料注入口及び検出器 220℃(参考例2:アリルイソチオシアネートの病原菌処理効率)
病原菌として、Fusarium oxysporumを用いた。
【0064】上記菌株を、ブリックス寒天培地上で37℃、24時間培養した。該培養菌を用いて、105cfu/mlの菌懸濁液100μlを平板培地に塗布した。
【0065】シャーレの蓋の内側にコーンオイルで種々の濃度に希釈したアリルイソチオシアネート溶液100μlを添加したろ紙を置き、上記平板培地に、該シャーレで蓋をした。これを、バリア性のあるプラスチックフィルムの袋の中に入れて密封し、37℃で3日間培養して最小生育阻止濃度(MIC)を測定した。
【0066】コーンオイルでMIC量に希釈したアリルイソチオシアネート溶液100μlをシャーレの蓋の内側に添加し、上記と同じ方法で調整した平板培地に該シャーレで蓋をした。これを、バリア性のあるプラスチックフィルムの袋の中に入れて密封し、温度40℃または60℃で50時間培養した。
【0067】5時間ごとにシャーレ中の菌数を測定した。5時間ごとに開封した試料に50mlの滅菌生理食塩水を入れ、ストマッカー(グンゼ産業株式会社製)で2分間処理した後、開いた晩混釈法によって菌数を測定した。シャーレ中の菌数について、各時の菌数量を0時間時の菌数量に対する百分率で表示した。なお、気相中のアリルイソチオシアネート蒸気は、DEGSカラムを装着したGC(島津製作所、GC―14A、検出器FID)で測定した。
【0068】(実施例1)アリルイソチオシアネートの40%メチレンクロライド溶液40質量部に、無水珪酸20質量部とメタケイ酸アルミン酸マグネシウム40質量部を混合した【0069】温度20〜25℃の真空乾燥で含まれる溶剤を除去してアリルイソチオシアネート吸着粉末を得た。次いで、該アリルイソチオシアネート吸着粉末40質量部、炭酸カルシウム35質量部、ポリビニルアルコール(信越化学製:PVA C−05(顆粒))15質量部、水溶性ヒドロキシプロピルセルロース(五徳薬品社製:商品名ECG)6質量部、ステアリン酸マグネシウム2質量部、タルク2質量部をV型混合機で混合し、畑鉄工製打錠機で直径9mmの土壌燻蒸剤を製造した。このサンプルAのアリルイソチオシアネート量は、8.2質量%であった。
【0070】上記土壌燻蒸剤の表面に6質量%のポリビニルアルコール水溶液をコーティングして、サンプルBとした。このサンプルBのアリルイソチオシアネート量は、6.7質量%であった【0071】(実施例2)実施例1で得たサンプルAとサンプルBとを用いて、平均外気温25〜32℃の夏場にポットで試験をした。ポットは発泡ポリスチレン製50×100cm、深さ50cmのものを使用した。保温のために周囲に保温剤を4mm巻いて使用した。また、容器にアリルイソチオシアネートが吸収されないように、容器の内面にポリ塩化ビニリデンフィルムを内帳した。次いで、土壌を45cmの深さに入れた後、下記の条件でサンプルを投入し、25cmの深さまでの土壌と混合した。試験例1〜7および比較例1では、石灰窒素1.0kgと籾殻10kgを投入し深さ25cmまで混合した。また、試験例8〜13では、石灰窒素と籾殻の投入を行わずに深さ25cmまで混合した。
【0072】上記処理後に透明性のマルチフィルムで土壌表面を覆い、太陽光下に放置して表1に示す決められた時間に水を添加し、表1に示す評価日に土壌サンプルを採取して防菌の効果を測定した。なお、土壌のサンプリングは、土壌表面から30cmの深さ迄を採取した。また、サンプル採取時に臭気の有無も記録した。結果を表1に示す。表1における効果の基準は、病害抑制効果すなわち発病抑制率における10段階評価による。
【0073】結果:太陽光の強いシーズンでは石灰窒素、有機物の添加処理をせずサンプルA、またはサンプルBの処理だけで処理末期の12日後には25cm深さの土壌で12日後には地温は40℃になり、十分な病害防除効果を得る事ができた。臭気は散水後6日後経過したものは殆どしなかった。水を加えない例では12日後でもやや臭気を感じた。
【0074】
【表1】

【0075】(実施例3)実施例2と同様にして、平均外気温8〜20℃の4月にポットで試験をした。その結果を第2表に示す。
【0076】結果:太陽熱が弱いシーズンには有機物と石灰窒素の添加効果が大きかった。
【0077】
【表2】

【0078】(実施例4)メチルイソシアネート40質量%を含有メチレンクロライド溶液40質量部に無水珪酸(水澤化学製ミズカシル)60質量部を混合した。温度10〜20℃の低温真空で溶剤を除去してメチルイソシアネート吸着粉末を得た。次いで、メチルイソシアネート吸着粉末50質量部、ポリビニルアルコール(信越化学製:PVA SMR−10M)を37質量部、ステアリン酸マグネシウム3質量部、リン酸カルシウム10質量を混合し、押出機によって直径2〜3mmの顆粒に造粒した【0079】この顆粒2kgを5質量%のメチレンクロライド:メタノール(1:1)溶液1リットルで35℃でパンコーティングした。これをサンプルCとする。サンプルCには、8.9質量%のメチルイソシアネートが含まれていた。
【0080】(実施例5)メチルイソシアネートに代えてアリルイソチオシアネートを使用した以外は、実施例4と同様に操作して、アリルイソチオシアネートを含有する土壌燻蒸剤を得た。該土壌燻蒸剤をサンプルDとする。このサンプルDには、アリルイソチオシアネートが9.4質量%含まれていた。
【0081】(実施例6)以下の方法に従って、平均気温8〜20℃の4月に、癌種発生率を評価した。
【0082】2.2m×1.8m(3.96m2)の面積に、ワラ100kg/アールと石灰窒素10kg/アール、およびサンプルC30kg/アールを混合した。これをE区とする。また、サンプルCにかえてサンプルDを同量用いたものをF区とした。また、ワラ100kg/アールと石灰窒素10kg/アールとを混合したが、いずれのサンプルも混合しない区画をG区とした。更に、ワラおよび石灰の添加もしない区画をコントロール区画、H区とした。
【0083】土壌に上記条件によってサンプルを処理した後に土壌表面を透明なマルチフィルムで覆った。その2日後に注水した。更にその8日後に、マルチフィルムを除去し放置した。マルチフィルム除去後5日目に各画分にメロン苗を5株づつ定植した。3ヶ月後に全株を掘り起こして癌種形成度を測定して、癌種の発生率を算出した。結果を表3に示す。
【0084】太陽熱の弱い4月でも、石灰窒素とアリルイソチオシアネート剤またはメチルイソチオシアネート剤を処理すると、癌種病が防除できた。
【0085】
【表3】

【0086】
【発明の効果】本発明の土壌燻蒸剤に使用する有効成分は、水分によって分解を開始するため、土壌へ注水して土壌燻蒸処理を行うと、燻蒸処理後に直に播種しまたは幼生植物を育成することができる。
【出願人】 【識別番号】000227652
【氏名又は名称】日宝化学株式会社
【識別番号】000165376
【氏名又は名称】兼松株式会社
【識別番号】501103114
【氏名又は名称】兼松化成品株式会社
【出願日】 平成13年3月14日(2001.3.14)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄 (外4名)
【公開番号】 特開2002−275009(P2002−275009A)
【公開日】 平成14年9月25日(2002.9.25)
【出願番号】 特願2001−72648(P2001−72648)