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【発明の名称】 立木の切口塗布用組成物および立木の切口保護方法
【発明者】 【氏名】輿水 才宗

【要約】 【課題】(1)立木の切口の腐食・乾燥を防止し、かつ、癒傷組織の形成を阻害することがない立木の切口塗布用組成物、および、(2)立木の切口塗布用組成物を用いた立木の切口保護方法を提供すること。

【解決手段】第1発明は、殺菌・消毒用アルコール成分および被膜形成剤成分を有効成分とする立木の切口塗布用組成物を要旨とし、第2発明は、殺菌・消毒用アルコール成分および被膜形成剤成分の有効成分を、液状に分散させた立木の切口塗布用組成物を、立木の幹または枝の切口に塗布する立木の切口保護方法を要旨とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 殺菌・消毒用アルコール成分および被膜形成剤成分を有効成分とすることを特徴とする、立木の切口塗布用組成物。
【請求項2】 被膜形成剤が、天然樹脂、合成樹脂、ロウ、糊剤、展着剤よりなる群から選ばれた1種以上である、請求項1に記載の立木の切口塗布用組成物。
【請求項3】 合成樹脂が、アクリル樹脂、石油樹脂よりなる群から選ばれた1種以上である、請求項2に記載の立木の切口塗布用組成物。
【請求項4】 ロウが、蜜ロウ、木ロウ、カルナウバロウ、パラフィンロウ、マイクロクリスタリンワックス、モンタンロウよりなる群から選ばれた1種以上である、請求項2または請求項3に記載の立木の切口塗布用組成物。
【請求項5】 糊剤が、膠、カゼイン、水ガラスよりなる群から選ばれた1種以上である、請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の立木の切口塗布用組成物。
【請求項6】 展着剤が、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・イソプレンブロック共重合体、スチレン・エチレンブチレンブロック共重合体、ポリブテン、アクリル系共重合体よりなる群から選ばれた1種以上である、請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の立木の切口塗布用組成物。
【請求項7】 立木の切口を保護するにあたり、殺菌・消毒用アルコール成分および被膜形成剤成分を有効成分とする立木の切口塗布用組成物を液状媒体に分散させ、立木の幹または枝の切口に塗布することを特徴とする、立木の切口保護方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、立木の切口塗布用組成物および立木の切口保護方法に関する。さらに詳しくは、公園の樹木や植木、道路沿いの街路樹、庭園の樹木や植木の幹または枝の切口(切断面)の保護に用いられる立木の切口塗布用組成物、および、この組成物を用いた立木の切口保護方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、美観上、実用上、生理上などの目的で、主に立木の枝の剪定が行われている。この枝の剪定の後には、立木の枝の切口が露出することとなり、この切口をそのまま放置すると雨水、病原菌、腐食菌などが浸入してこの切口が腐食し、この腐食が立木全体に経時的に伝播して立木が朽ちて倒れてしまうことがあった。また、露出した切口を放置するとこの切口が乾燥し、根から供給された水分や栄養分が蒸散して立木の正常な成長が妨げられることがあった。
【0003】従来、上記切口の腐食を防ぐため、切口にボルドー液や石灰硫黄合剤などの消毒、殺菌剤を塗布したり、クレオソート油などの防腐剤を塗布したりする、いわゆる防腐処理が行われている。しかし、上記消毒、殺菌剤や防腐剤を塗布するのみでは雨水の侵入を阻止できず防腐効果が半減するため、上記消毒・殺菌剤や防腐剤に代えて、またはこれら消毒・殺菌剤や防腐剤と併せて、切口にアスファルト、ロウ、セメントペーストなどの防水剤を塗布して防腐効果を高めると同時に、切口の乾燥を防止することが多かった。
【0004】しかし、上記防水剤は塗布後に乾燥して硬化するため、切口が被覆されて通気性が悪くなる上に、立木の切口の形成層から樹液が十分に滲み出ず、癒傷組織(カルス)の形成が阻害されるという欠点があった。また、上記防水剤のひとつであるセメントペーストは乾燥して硬化すると収縮するため、上記塗布面に亀裂が生じ、雨水がその亀裂から浸入してしまうという欠点があった。このため、珪藻土とセメントと木粉とからなる立木用保護材が提案されている(特開平11−155396号公報参照)が、この立木用保護材によっても上記欠点は十分に解決されていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上記した状況に鑑み、立木の切口の腐食、乾燥を防止し、かつ、癒傷組織の形成を阻害することがない立木の切口の保護剤と、立木の切口の保護方法とを提供すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。本発明の目的は次の通りである。
1.立木の切口の乾燥や腐食を防止する、立木の切口塗布用組成物を提供すること。
2.癒傷組織の形成を阻害することがない、立木の切口塗布用組成物を提供すること。
3.上記立木の切口塗布用組成物を用いた立木の切口保護方法を提供すること。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明の第1発明では、殺菌・消毒用アルコール成分および被膜形成剤成分を有効成分とすることを特徴とする、立木の切口塗布用組成物を提供する。
【0007】また、本発明の第2発明では、立木の切口を保護するにあたり、殺菌・消毒用アルコール成分および被膜形成剤成分を有効成分とする立木の切口塗布用組成物を液状媒体に分散させ、立木の幹または枝の切口に塗布することを特徴とする、立木の切口保護方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の第1発明に係る立木の切口塗布用組成物の第一の有効成分である殺菌・消毒用アルコール成分は、立木の切口の腐食を防止するという機能を果たす。本発明において殺菌・消毒用アルコール成分とは、各種雑菌や微生物が成育できないような作用をするアルコール類を意味する。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコールのほか、エチルアルコールを高濃度で含有する日本酒、焼酎、ウイスキー、ウオッカなどが挙げられる。
【0009】立木の切口塗布用組成物の第二の有効成分である被膜形成剤は、立木の切口の木質部および皮部に被膜を形成するほか、これら木質部と皮部の間に浸透してこの切口の乾燥を防止し、かつ、雨水や病原菌、腐食菌が上記木質部、皮部および木質部と皮部の間に浸入するのを防止し、これらが朽ちるのを防ぐという機能を果たす。この被膜形成剤としては、上記機能を果たすものであればいかなるものでもよく、特に、切口に塗布して乾燥した後は水に溶解しない性質のものとするのが好ましい。
【0010】上記被膜形成剤としては、天然樹脂、合成樹脂、ロウ、糊剤、展着剤などが挙げられる。天然樹脂の具体例としては、ダンマル樹脂、マスチック樹脂、ベネチアテレビンバルサム、ロジン、漆などが挙げられる。合成樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、石油系樹脂、テルペン樹脂、合成ゴム(SBR、NBR、EPRなど)などが挙げられる。ロウの具体例としては、蜜ロウ、木ロウ、カルナウバロウ、パラフィンロウ、マイクロクリスタリンワックス、モンタンロウなどが挙げられる。糊剤の具体例としては、膠、カゼイン、水ガラス、澱粉、小麦粉などが挙げられる。展着剤の具体例としては、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・イソプレンブロック共重合体、スチレン・エチレンブチレンブロック共重合体、これらの水素添加物、ポリブテン、アクリル系共重合体(エチレン−アクリル酸類との共重合、エチレン−アクリル酸エステル類との共重合など)などが挙げられる。
【0011】被膜形成剤が常温で固体の場合には、この被膜形成剤を液状媒体に分散させる。液状媒体は、上記被膜形成剤の種類に応じて適宜決めることができる。例えば、被膜形成剤が膠、カゼイン、水ガラス、澱粉、小麦粉、エマルションタイプのアクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、合成ゴムなどである場合には、第一の有効成分であるアルコール成分をそのまま液状媒体とすることができるほか、水を液状媒体とすることができる。被膜形成剤がダンマル樹脂、マスチック樹脂、ベネチアテレビンバルサム、ロジン、溶剤タイプのアクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、石油系樹脂、合成ゴム、蜜ロウ、木ロウ、カルナウバロウ、パラフィンロウ、マイクロクリスタリンワックス、モンタンロウなどである場合には、第一の有効成分であるアルコール成分をそのまま液状媒体とすることができるほか、テレビン油、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの有機溶剤を液状媒体とすることができる。
【0012】殺菌・消毒用アルコール成分に対する上記被膜形成剤成分の混合割合は、被膜形成剤の種類によって適宜決めることができる。例えば、被膜形成剤が膠である場合には、殺菌・消毒用アルコール成分100gに対して膠成分を0.5g〜40gの範囲とすることができ、この中でも2〜10gの範囲とするのが好ましい。なお、被膜形成剤をこれら有機溶媒に分散させる際や、被膜形成剤を殺菌・消毒用アルコールと混合する際には、種々の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、分散性能に優れた親油性界面活性剤が好ましい。
【0013】立木の切口塗布用組成物には、上記二種類の有効成分、液状媒体、界面活性剤のほか、さらに必要に応じ、種々の補助成分を加えることができる。補助成分としては、着色用の顔料、防食用の顔料、湿潤剤、増量剤などを挙げることができる。着色用の顔料としては、カーボンブラック、ランプブラック、アニリンブラックなどの黒色顔料、弁柄、朱、鉛丹などの赤色顔料、ホワイティング、シリカなどの白色顔料などを挙げることができ、防食用の顔料としては、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、鉛丹、亜酸化鉛、塩基性クロム酸鉛、シアナミド鉛、鉛酸カルシウム、リン酸亜鉛などを挙げることができる。湿潤剤としてはグリセリン、プロピレングリコールなどを挙げることができる。
【0014】増量剤としては、牛乳や、粗骨粉、蒸製骨粉、骨灰などの骨粉のほか、砥の粉、炭酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト、バーミキュライトなどの粘土鉱物類を挙げることができる。なお、立木の切口塗布用組成物に、上に例示した増量剤の中の牛乳を加えると、この立木の切口塗布用組成物の切口の乾燥防止の効果が著しく向上するので好ましい。
【0015】本発明の第2発明に係る方法によって立木の切口を保護するには、殺菌・消毒用アルコール成分および被膜形成剤成分を有効成分とする立木の切口塗布用組成物を、液状媒体に分散させて容器に収納し、刷毛または噴霧器を用いて、所定の切口に塗布する。立木の切口塗布用組成物の塗布量や塗布後の乾燥時間は、立木の種類や切口の状態、この立木の切口塗布用組成物に含まれる有効成分の割合、これら有効成分同士の比率、液状媒体の種類によって異なってくる。
【0016】本発明に係る立木の切口塗布用組成物によって対応できる立木の種類には特に制限がなく、松、杉、檜などの針葉樹類や、夾竹桃、金木犀、楠、山茶花、椎などの常緑広葉樹類や、銀杏、梅、桜、欅などの落葉広葉樹類などが挙げられる。また、立木は、公園の樹木や植木、道路沿いの街路樹、庭園の樹木や植木など、生えている場所も制約されるものではない。
【0017】
【実施例】以下、本発明を試験例に基づいて説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0018】[立木の切口塗布用組成物I、IIの調製]まず、焼酎200g(アルコール含有率40重量%)に、市販の墨汁50g(膠含有量4%)を混合して、立木の切口塗布用組成物Iを250gを調製した。また、この立木の切口塗布用組成物Iに、さらに、砥の粉20g、牛乳200g、および小麦粉50gを混合して、立木の切口塗布用組成物IIを520gを調製した。さらに、この立木の切口塗布用組成物I、IIとは別に、焼酎200gと、クレオソート油200gを準備した。
【0019】[立木の切口塗布用組成物の評価]次いで、樹齢が80年の欅から外径約20cmの枝を2本選び、鋸によってこれらの枝を切断し、刷毛を用いて、一方の枝の切口に上記工程により調製した立木の切口塗布用組成物I(試験例1)を塗布し、別の枝の切口には切口塗布用組成物II(試験例2)を塗布し、さらに別の枝の切口には準備した焼酎のみ(試験例3)を塗布し、またさらに別の枝の切口にはクレオソート油(試験例4)を塗布し、これらそれぞれの枝の切口を塗布後12ケ月間放置して目視観察した。この目視観察の結果、試験例1および試験例2のものは、12ケ月経過した時点でも、切口には過剰な乾燥も腐食も発生しなかったのに対し、試験例3および試験例4のものは、12ケ月経過した時点で切口の過剰な乾燥によって、コルク組織に多数の深いひび割れが発生していた。
【0020】
【発明の効果】本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明の第1発明に係る立木の切口塗布用組成物は、殺菌・消毒用アルコール成分を有効成分とするので、この立木の切口塗布用組成物を立木の切口に塗布することによって、その切口の腐食を防止することができる。
2.本発明の第1発明に係る立木の切口塗布用組成物は、被膜形成剤成分を有効成分とするので、この立木の切口塗布用組成物を立木の切口に塗布することによって、その切口の乾燥を防止し、かつ、雨水や病原菌、腐食菌がこの切口の木質部、皮部および木質部と皮部の間に浸入するのを防止し、これらが朽ちるのを防ぐことができる。
3.本発明の第1発明に係る立木の切口塗布用組成物は、殺菌・消毒用アルコール成分および被膜形成剤成分を有効成分とするので、この立木の切口塗布用組成物を立木の切口に塗布した際に、その切口の形成層から樹液が滲み出るのを阻害することがなく、従って癒傷組織の形成を阻害することがない。
4.本発明の第2発明に係る立木の切口保護方法によれば、殺菌・消毒用アルコール成分および被膜形成剤成分を有効成分とする立木の切口塗布用組成物を、液状に分散させ立木の切口に塗布するので、立木の腐食および乾燥を防止することができ、かつ、癒傷組織の形成を阻害することがない。
5.本発明の第2発明に係る立木の切口保護方法によれば、液状の立木の切口塗布用組成物を用いるので、切断の仕方によって凹凸が生じた切口にもこの立木の切口塗布用組成物を容易に塗布することができ、あらゆる切口を保護することができる。
【出願人】 【識別番号】599141847
【氏名又は名称】輿水 才宗
【出願日】 平成13年3月21日(2001.3.21)
【代理人】 【識別番号】100084320
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 重光
【公開番号】 特開2002−275003(P2002−275003A)
【公開日】 平成14年9月25日(2002.9.25)
【出願番号】 特願2001−80349(P2001−80349)