| 【発明の名称】 |
切り花前処理剤及び切り花前処理方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】鮫島 陽人
【氏名】西 真司
【氏名】岡田 大士
【氏名】田之上 隼雄
【氏名】市來 征勝
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| 【要約】 |
【課題】人体や環境に有害でなく、切り花の収穫後出荷前に適用するための、長期間の輸送が可能である切り花前処理剤及び前処理方法を提供する。
【解決手段】ショ糖ラウリン酸エステルと有機酸を含み、切り花に対して出荷前に適用されるための切り花前処理剤である。収穫後出荷前に、切り花に対して切り花前処理剤を適用すると長期間の鮮度保持が可能となり、長期の輸送期間が可能となり、輸送後の水あげが飛躍的に向上される。特に、花よりも葉の方が先に萎れて黄変し、全体としての商品価値が失われるような切り花、例えば、キク、ユリ、ソリダコなどに適している。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ショ糖ラウリン酸エステルと有機酸を含み、収穫後出荷前の切り花に適用されるための切り花前処理剤。 【請求項2】 前記有機酸が乳酸である請求項1記載の切り花前処理剤。 【請求項3】 前記切り花が、葉の鮮度が鑑賞限度を決定する切り花である請求項1又は2記載の切り花前処理剤。 【請求項4】 収穫後出荷前に、切り花に対してショ糖ラウリン酸エステルと有機酸を含む切り花前処理剤を適用することを特徴とする切り花前処理方法。 【請求項5】 前記有機酸が乳酸である請求項4記載の切り花前処理方法。 【請求項6】 前記切り花が、葉の鮮度が鑑賞限度を決定する切り花である請求項4又は5記載の切り花前処理方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、収穫後の切り花を生産地から消費地へ輸送するのに、長期間の輸送を可能にする切り花前処理剤及び該切り花前処理剤を切り花に適用する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】切り花生産地から消費地に輸送する場合、輸送日数が短い近郊生産地が有利である。これに対して、消費地から遠隔した土地に位置する場合、近郊産地に比べ輸送日数が多くなり、鮮度が低下しやすいというハンディがある。 【0003】例えば、鹿児島県の大島地区は切り花の主要産地であるが、離島であるために、該地区から県外などの消費地に輸送する場合、輸送日数が3〜4日かかることも珍しくない。 【0004】このような点を考慮して、鹿児島県では、キク、ユリ、ソリダコなどが主に生産されている。これらの切り花は、他の花に比べて花の持ちが良く、長期間の輸送がしやすいとされている。一方、このような切り花は、体積比にして花の割合より葉の割合が明らかに大きいため、葉の鮮度が切り花全体の品質を左右する。実際に、輸送後の吸水が不良であったキクは、花自体は長期間にわたって咲き続けるにも関わらず、葉の方が先に萎れて黄変し、商品価値が失われるようになる。 【0005】切り花の鑑賞期間は、収穫後の鮮度保持技術によって大きく変動するため、古くから様々な切り花鮮度保持剤が開発されてきた。しかしながら、現在、市販されている殆どの鮮度保持剤は、切り花の出荷、流通後に小売店や消費者が使用するためのもの、所謂、切り花の後処理剤として開発されたものであり、農家が出荷、輸送前に行う前処理剤の例は少ない。 【0006】前処理剤の代表的なものとしてSTS製剤(チオ硫酸銀)がある。STS製剤処理により、花の萎凋を促進するエチレンガスの作用を阻害して、開花日数を延長することができる。しかしながら、STS製剤の効果がある切り花はカーネーションなどの特定の品種に限定されており、キク、ユリ、ソリダコには効果がない。これらの切り花に対して鮮度保持効果を有する前処理剤は無い。 【0007】一方、流通後の切り花の鮮度を保持する後処理剤として、塩化ベンザルコニウム等の殺菌剤、硫酸アルミニウム等の凝集沈殿剤などが利用されている。 【0008】しかし、STS製剤を含めた上記の薬剤の中には反応性が高く、人体に触れると皮膚の荒れを生じる恐れがあるものがある。また、金属イオンを含有するものは環境下に蓄積する可能性があり、これらの切り花鮮度保持剤は必ずしも安全性において万全の製剤とは言い難い。しかも、これらの薬剤は主に花の鮮度保持と微生物繁殖抑制を主眼においたものであり、葉の鮮度保持を図ったものは無い。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】前記従来の切り花鮮度保持剤には、反応性が高く、重金属イオンを含み、人体や環境に影響を与えるものや、特定の品種の切り花に対しては鮮度保持効果を期待できないものがあった。そこで本発明は、人体や環境に有害でなく、なおかつ輸送後の葉の吸水を促進させて切り花の鮮度を保持することができる切り花前処理剤及び切り花前処理方法を提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】前記した問題点を解決する、本発明の切り花前処理剤は、ショ糖ラウリン酸エステルと有機酸を含み、切り花に対して出荷前に適用されるための切り花前処理剤であることを特徴とする。また、本発明の切り花前処理方法は、収穫後出荷前に、切り花に対してショ糖ラウリン酸エステルと有機酸を含む切り花前処理剤を適用することを特徴とする。 【0011】本発明の切り花前処理剤に適した切り花は、葉の鮮度が鑑賞限界を決定する切り花であり、即ち、花持ちはよくても葉の方が先に萎れて黄変し、全体としての商品価値が失われるような切り花である。このような切り花は、例えばキク、ユリ、ソリダコなど花自体に対して茎葉の占める割合が比較的大きい切り花である。これらの切り花はエチレン感受性植物ではないため、エチレン作用阻害剤であるSTS製剤処理では鮮度保持効果が得られないが、本発明の切り花前処理剤で処理することにより、長期間の鮮度保持が可能となる。尚、カーネーションのようなエチレン感受性の切り花に対しては、本発明の切り花前処理剤と共にエチレン作用阻害剤を併用すると、切り花の鮮度保持に好ましい。 【0012】本発明の前処理剤に含まれるショ糖ラウリン酸エステルと有機酸は食品添加物としても用いられているものである。生分解性が良く、しかも全て炭素、酸素、水素からのみ構成されており、焼却しても有害ガスを発生することなく、排水しても重金属の放出、蓄積を招くことはない。 【0013】ショ糖ラウリン酸エステル本発明に使用されるショ糖ラウリン酸エステルは、溶液の表面張力を小さくし、溶液の植物への浸透効果を増大させる界面活性剤としての作用を持つ。この溶液を出荷前の切り花に吸水させると、切り花内の固相と液相との境界面(界面)の性質が変化すると考えられ、輸送後の吸水が飛躍的に促進される。吸水量が増大すると、切り花の重量が増大すると同時に葉が硬くしっかりと展開するようになる。その原因は、本発明の切り花前処理剤を適用することにより、吸水中の切り花内の水分バランスが良好に保たれるので、乾燥ストレスにより誘導されるアブシジン酸(植物の落葉を促進するホルモン)の影響を受けないためと考えられる。 【0014】有機酸本発明に使用される有機酸には、日本で食品添加物として認可されている有機酸を用いることができる。例えば、ソルビン酸、アジピン酸、酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。 【0015】前処理剤として生分解性のショ糖ラウリン酸エステルのみを用いると、処理液中に微生物が繁殖してしまい、吸水されにくくなるが、有機酸を加えることにより処理液中の微生物繁殖を抑制することができる。有機酸としては乳酸を好適に用いることができる。ショ糖ラウリン酸エステルと併用することにより、葉の萎凋現象を相乗的に大幅に遅らせることが可能となる。有機酸の濃度は、100ppm〜400ppmの範囲が好ましく、最も好ましくは250ppm前後の範囲である。有機酸が100ppm未満であると処理液中の微生物増殖の抑制が充分ではなく、また、400ppmを超えると前処理後の切り花の吸水に悪影響を与える。 【0016】 【実施例】〔実施例1〕前処理液として、■水道水のみ、■塩化ベンザルコニウム100ppm水溶液、■ショ糖ラウリン酸エステル100ppm水溶液、■ショ糖ラウリン酸エステル100ppm+乳酸250ppmからなる水溶液、■ショ糖ラウリン酸エステル100ppm+乳酸500ppmからなる水溶液の5種類を2リットルずつ調製した。これらの前処理液が入った花桶に、収穫後2時間を経過したソリダコ(切り花長85cm)を10本ずつ入れ、20℃下で5時間前処理液を吸水させた。次いで、輸送のシュミレーションとして、前処理が終了した切り花を新聞紙に包み、段ボールに箱詰めし20℃下で21時間貯蔵した。 【0017】次いで、ソリダコを20℃、300ルクス、12時間日長下で水道水を用いて水挿しした。その後、2日目から1日おきに12日目までの葉の萎れと処理液中の茎の変色について外観鮮度の変化を観察し、また、その間のソリダコの重量変化を10日目まで測定した。 【0018】また、同様に前記5種類の前処理液2リットルを調製し、20℃下でソリダコ10本を吸水させ続けた場合の前処理液の一般生菌数を測定した。下記の表1に異なる界面活性剤および異なる乳酸濃度で前処理したソリダコの外観鮮度、図1に異なる5種類の前処理剤を用いたソリダコに、輸送シミュレーション経過後水挿しを行い、2日目から1日おきに10日目までの重量変化を測定した結果を表すグラフ、図2に異なる5種類の前処理剤を用いて、20℃下でソリダコ10本を吸水させ続けた場合の前処理液の一般生菌数の変化を表わすグラフを示す。 【0019】外観の鮮度において、各観察項目を鮮度指数で表した。鮮度指数として、葉のしおれに関しては、◎は変化なし、○は下位葉のしおれ、△は中位葉までのしおれ、×は上位葉までのしおれを表し、処理液中の茎変色に関しては、◎は変化なし、○はわずかに変化あり、△は明らかに変化あり、×は著しく変化ありを表す。 【0020】 【表1】
【0021】表1によれば、■ショ糖ラウリン酸エステル100ppm+乳酸250ppm水溶液前処理のソリダコは、他の前処理に比べて水挿し後12日経過しても葉のしおれと処理液中の茎の変色が無く、ショ糖ラウリン酸エステルと乳酸の併用がソリダコの外観鮮度の保持に有効であることが分かる。 【0022】図1のグラフによれば、■ショ糖ラウリン酸エステル100ppm+乳酸250ppm水溶液前処理のソリダコは、水挿し中の重量が最も増加しており、吸水が順調に行われていることが分かる。 【0023】図2のグラフによれば、乳酸を添加した前処理剤は、一般生菌数の増加が抑制されることが分かる。 【0024】〔実施例2〕前処理液として、■ 水道水のみ; ■ 界面活性剤A(DKエステル S−L18A:商品名、第一工業製薬株式会社製のショ糖ラウリン酸エステル、モノエステル対ジ・トリエステルの割合が70:30)100ppm+乳酸250ppmからなる前処理液; ■ 界面活性剤B(DKエステル S−110:商品名、第一工業製薬株式会社製のショ糖ステアリン酸エステルとショ糖パルミチン酸のエステルの混合物、モノエステル対ジ・トリエステルの割合が50:50)100ppm水溶液+乳酸250ppmからなる前処理液; ■ 界面活性剤C(DKエステル S−160:商品名、第一工業製薬株式会社製のショ糖ステアリン酸エステルとショ糖パルミチン酸のエステルの混合物、モノエステル対ジ・トリエステルの割合が70:30)100ppm+乳酸250ppmからなる前処理液。 【0025】上記4種類の前処理液を2リットルずつ調製した。これらの前処理液が入った花桶に、収穫後2時間を経過したソリダコ及びキク(切り花長85cm)を10本ずつ入れ、20℃下で5時間前処理液を吸水させた。 【0026】次いで、輸送のシミュレーションとして、前処理が終了した切り花を新聞紙に包み、段ボールに箱詰めして20℃下で21時間貯蔵した。次いで各切り花を20℃、300ルクス、12時間日長下で水道水を用いて水挿しを行った。その後、水挿しを開始してから1日目、2日目、4日目、6日目、9日目に、葉の萎れと開花度についての外観鮮度の変化を観察し、また、その間の切り花の重量変化を測定した。 【0027】下記の表2に異なるショ糖脂肪酸エステルで前処理したソリダコの外観鮮度、下記の表3に異なるショ糖脂肪酸エステルで前処理したキクの外観鮮度を示す。外観の鮮度において、葉のしおれ具合を鮮度指数で表した。鮮度指数としては、◎は変化なし、○は下位葉のしおれ、△は中位葉までのしおれ、×は上位葉までのしおれを表す。 【0028】 【表2】
【0029】 【表3】
【0030】表2及び表3によれば、ショ糖ラウリン酸エステル100ppm+乳酸250ppm前処理のソリダコ及びキクは、その他のショ糖脂肪酸エステルと乳酸を用いたものよりも、葉のしおれ始める時期が抑制された。 【0031】前処理から輸送シミュレーションを経た切り花を水挿しして、0日目、2日目、3日目、5日目、7日目、10日目の重量変化を調べた。ソリダコの結果を図3に、キクの結果を図4にグラフとして示す。図3及び図4によれば、ショ糖ラウリン酸エステル100ppm+乳酸250ppm前処理のソリダコ及びキクは、水挿し後の重量が明らかに増加しており、10日間にわたって吸水性が保持されていることが分かる。 【0032】 【発明の効果】本発明の切り花前処理剤を、切り花の出荷前に適用すると、輸送後水挿し中の吸水が明らかに促進されて、従来より長期間鮮度が保持できる。結果として、長時間の輸送が可能になると同時に、輸送後の後処理剤の使用や水挿し中の切り戻し作業の必要がなくなる。また、本発明の切り花前処理剤は人体や環境に有害でない。
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| 【出願人】 |
【識別番号】591155242 【氏名又は名称】鹿児島県
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| 【出願日】 |
平成13年3月12日(2001.3.12) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2002−265301(P2002−265301A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月18日(2002.9.18) |
| 【出願番号】 |
特願2001−68764(P2001−68764) |
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