| 【発明の名称】 |
イネの籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)から得られた作物発芽抑制剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】加藤 忠弘
|
| 【要約】 |
【課題】安全で安価で、しかも作物発芽抑制効果に優れ、簡単に製造でき、安定して供給できる作物発芽抑制剤を提供する。
【解決手段】イネ籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)からの水や有機溶媒抽出物をそのまま、あるいはこれを含有してなることを特徴とする作物発芽抑制剤を見出すことで、上記課題を解決することができた。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】イネの籾殻や糠またはムギ類種子殻やふすま(麩)からの抽出物をそのまま、あるいはこれを含有してなることを特徴とする作物発芽抑制剤。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、イネ籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)からの抽出物をそのまま、あるいはこれを含有してなることを特徴とする安全で農業分野で広く使用可能な作物発芽抑制剤に関するものである。 【0002】 【従来の技術】イネ籾殻の水もしくは熱水抽出物を利用する例を、以下に示す。CN119557にイネ籾殻抽出物を含有する漢方薬の原料として例示されている。DE3439914にはイネ籾殻熱水抽出物を含有する毛髪用ドリンク剤が記載されている。特開平3−259082にはイネ籾殻の水抽出物より得られるイネモミガラパーオキシダーゼの製造法が記載されている。SU1546488、SU531845にはイネ籾殻から、ペントースの原料に用いられるペントサンの製造方法について記載されている。CN1063087、特開昭62−288110には、イネ籾殻から高純度シリカを製造する方法が記載されている。 【0003】コムギあるいはオオムギの種子殻抽出物に関する報告を以下に示す。化学と生物Vol.27、No.2(1989)、日本農芸化学会講演要旨集(昭和59年度、61年度、62年度、63年度、平成1年度、平成2年度および平成3年度)には、野性二条オオムギの休眠種子の有機溶媒(80%メタノール)抽出から得られたジヒドロアクチニジオリドが、イネ、オオムギ、レタス等、種子の発芽および生長を阻害することが記載されている。 【0004】特開平7−165524には、玄米抽出物の殺菌剤としての利用が記載されている。特開平7−179319には、玄米抽出物の殺虫剤としての利用が記載されている。 【0005】しかしながら、イネ籾殻や糠またはコムギおよびオオムギの種子殻(ふ)やふすま(麩)からの水もしくは有機溶媒抽出物について、発芽阻害や除草活性などの農業利用に関する報告はない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】世界人口の爆発的な増加にともない、より安定的な食糧確保が望まれている。しかしながら、穀物の収穫前に芽が出てしまう穂発芽による被害は、古くから認められてきており、特にイネ、ムギの穂発芽が起こると食糧として利用できず、減収となることから、農業上大きな問題となっている。耐穂発芽性に優れた品種改良も盛んに行われているが、その効果は十分ではない。そこで、人体にとって安全で安価で、しかも作物発芽抑制効果に優れ、簡単に製造でき、安定して供給できる作物発芽抑制剤の開発が望まれている。 【0007】 【課題を解決するための手段】イネ、ムギは古来食糧として人類が口にしてきており、安全性が実証されてきている。それらの精製過程で生ずるイネ籾殻、コムギ、オオムギなどの種子殻(ふ)は、多量に出る農産廃棄物であるが、それらのより有効な利用の途は乏しい。また、イネ籾殻やムギ類種子殻(ふ)の成熟期に雀などの鳥類による喰害をうけており、イネ籾殻やムギ類種子殻(ふ)の安全性は、家畜や自然の鳥類によっても確かめられている。 【0008】そこで、本発明者らは、安価に得られ、しかも、安全性が実証されているイネ籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)に着目し、鋭意研究を重ねた。その結果、イネ籾殻や糠あるいはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)の抽出物に顕著な作物発芽抑制効果のあることを見い出し、本発明を完成するに至った。 【0009】すなわち、本発明は、イネ籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)からの水あるいは有機溶媒抽出物をそのまま、あるいはこれを含有してなることを特徴とする作物発芽抑制剤であって、イネ籾殻や糠あるいはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)を水や有機溶媒抽出により、簡単、安価に、しかも安全に上記の効果を示す非常に優れた作物発芽抑制剤を得ることができる。 【0010】イネ籾殻やムギ類種子殻(ふ)から作物発芽抑制成分を抽出する場合、種子殻を粉砕または粉体化すると表面積が大きくなるため、極めて抽出効率が良好になる。この方法は、粉砕機を用い、公知の方法に従えばよい。粉砕しなくてもよいが、この場合には、種子殻組織の分解および抽出に長時間を要する。 【0011】水抽出に当たっては、イネ籾殻や糠あるいはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)をそのまま、好ましくは粉砕または粉体化したものに加水する。加水量については、試料に対して4〜40倍量で効率よく抽出されるが、収率、作業性等に応じて適宜選択すればよい。この後加温してゆき、所定の温度、保持時間で抽出を完了する。なお、最初から熱水を加えて抽出を行ってもよい。抽出を完了した後、圧搾、濾過を行えば、抽出液が得られる。 【0012】抽出液中のこの有効成分は熱に比較的安定であるので、水抽出の際の抽出温度は、5〜100℃の範囲で、好ましくは50℃以上の高温が効率的である。低温でも長時間置けば、充分に抽出を行うことができる。抽出時間は、熱水抽出の場合には短時間でよいが、それ以下の場合には、数時間から数日必要である。低温の場合は、種子殻の粉砕状態にもよるが、数日〜数週間必要である。ただし、この場合にも、なるべく最後には加熱するのがより効果的である。 【0013】抽出液中の有効成分は、水抽出の場合、イネ籾殻や糠あるいはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)の組織に働く植物細胞壁分解酵素(例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等)を作用させて前処理を行い、有効成分を抽出する方法が効率的である。 【0014】本発明品のイネ籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)からの抽出には、上述のように水抽出し、その抽出物中の有効成分をさらに他の溶媒で抽出すると、より有効である。これは、作物発芽抑制成分が濃縮されたためと思われる。 【0015】さらに、有機溶媒抽出でも、各有効成分が抽出されることが明らかになった。使用する有機溶媒の例としては、以下のものが例示される。メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類。含水メタノール等の含水アルコール類や含水アセトン等。ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素類。ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、テトラリン、クメン、ビフェニル等の芳香族炭化水素類。その他、酢酸エチル、ジクロロメタン、等。これら単独またはそれらの組み合わせにより有効成分を抽出することができる。 【0016】イネ籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)は農産廃棄物として取り扱われ、作物発芽抑制成分が含まれているという概念さえなく、上述した簡単な操作によって作物発芽抑制剤を調製しうるとは思いもよらないことであった。従来は焼却するか、堆肥製造の原料でしかみられておらず、含有する作物発芽抑制成分を使用するなどいう考えはなかった。本発明においては、水や有機溶媒などを用いてイネ籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)から作物発芽抑制成分の抽出を行うことで、初めて、非常に優れた作物発芽抑制剤としての目的を達成することができるようにしたのである。 【0017】イネの品種には、例えばジャポニカ米には、ササニシキ、コシヒカリ、ヒトメボレ、日本晴、農林1号、ハエヌキ等、また、インディカ米には、カサラス等など数多くある。コムギの品種には、アオバコムギ、アブクマワセ、カンケイW421、タイセツコムギ、タクネコムギ、チホクコムギ、ツホクコムギ、ハルヒカリ、ハルミノリ、ハルユタカ、ホクシン、ホロシリコムギ、ムカコムギ、春のあけぼの、北見66号、農林61号、Lancer、RL4137など数多くある。オオムギの品種には、アカギ2条、ベンケイ、関取2号、カシマムギ、キカイムギなど数多くある。以上例示したイネ、コムギは広くイネ籾殻や糠あるいはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)に含有される。 【0018】 【実施例】本発明品の作物発芽抑制効果試験について、以下に記載する。なお、本発明はその要旨を越えない限り以下の試験例に限定されるものではない。本発明品は調製例1、調製例2および調製例3によって調製した。 【0019】コムギ種子発芽阻害試験操作法ペトリ皿(直径60x15mm)に2枚重ねたろ紙(No.2)を敷き、所定濃度のサンプル水溶液4mlを加え、その上にコムギ種子(品種:RL4137)20粒を置いた。15℃で蛍光灯下4日間放置し、発芽および発根したコムギ種子数を数えた。比較のため、サンプルの代わりに蒸留水を用いて同様に行いコントロールとした。 【0020】イネ種子発芽阻害試験操作法ペトリ皿(直径60x15mm)に2枚重ねたろ紙(No.2)を敷き、所定濃度のサンプル水溶液4mlを加え、その上にイネ種子(品種:ハエヌキ)20粒を置いた。25℃で暗黒下3日間放置し、発芽および発根したイネ種子数を数えた。比較のため、サンプルの代わりに蒸留水を用いて同様に行いコントロールとした。 【0021】種子の発芽率および発根率発芽率および発根率は以下の計算式で求めた。 【式1】発芽率=100x(サンプル溶液中の発芽種子数)/(コントロール条件の発芽種子数) 【式2】発根率=100x(サンプル溶液中の発根種子数)/(コントロール条件の発根種子数) 【0022】コムギ種子発芽阻害試験(1) 【表1】
注1: サンプルは調製例1により得たものである。 【0023】イネ種子発芽阻害試験(2) 【表2】
注2: サンプルは調製例2により得たものである。 【0024】コムギ種子発芽阻害試験(3) 【表3】
注3: サンプルは調製例3により得たものである。 【0025】コムギ穂発芽抑制効果試験(4) 調製例1で得られた本発明化合物を500ppmの水溶液に調製し、その中にコムギの穂(品種:ホクシン)を室温で24時間浸した。風乾後、高湿度条件下に4日間保ち、穂発芽度を調査した。比較のため、サンプルの代わりに蒸留水を用いて同様に行いコントロールとした。その結果、本発明化合物は、コムギの穂発芽を完全に抑制した。 【0026】製剤品のコムギ発芽抑制効果試験(5) 調製例1で得られた本発明化合物を製剤例2の如き水和剤(濃度500ppmの水溶液)に調製し、その中にコムギ種子(品種:ホクシン)を室温下24時間浸した。風乾後、高湿度条件下に4日間保ち、種子発芽度を調査した。比較のため、サンプルの代わりに蒸留水を用いて同様に行いコントロールとした。その結果、本発明化合物の水和剤は、コムギの種子発芽を完全に抑制した。 【0027】製剤品のコムギ穂発芽抑制効果試験(6) 調製例1で得られた本発明化合物を製剤例2の如き水和剤(濃度500ppmの水溶液)に調製し、その中にコムギの穂(品種:ホクシン)を,室温下24時間浸した。風乾後、高湿度条件下に4日間保ち、穂発芽度を調査した。比較のため、サンプルの代わりに蒸留水を用いて同様に行いコントロールとした。その結果、本発明化合物の水和剤は、コムギの穂発芽を完全に抑制した。 【0028】以上のように、イネ籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)の水あるいは有機溶媒抽出物は顕著な種子発芽抑制効果や穂発芽抑制効果があることがわかった。 【0029】イネの籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)の水あるいは有機溶媒抽出物は、イネやムギ類に対する優れた種子発芽抑制剤として使用できるだけでなく、他の作物、例えば、バレイショのようないも類、タマネギ、ニンニクのような鱗茎類、トウモロコシのような雑穀類、など、様々な作物の発芽抑制剤として利用できる。 【0030】さらに、イネの籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)の水あるいは有機溶媒抽出物は、一緒にまたは別々に、あるいは連続的に施用することができ、別々に施用する場合、一般的にその施用順序は予防結果にいかなる影響を与えることはない。 【0031】イネの籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)の水あるいは有機溶媒抽出物を作物発芽抑制剤の有効成分として用いる場合は、そのまま使用してもよいが、通常は固体担体、液体担体、ガス状担体等と混合し、必要あれば界面活性剤、分散剤、その他の製剤用補助剤を添加して、油剤、乳剤、水和剤等に製剤して使用する。これらの製剤には、有効成分として本発明化合物を通常、重量比で0.01%〜95%含有する。 【0032】製剤補助剤として使用する坦体、希釈剤、界面活性剤を例示する。固体坦体として、タルク、カオリン、ベントナイト、珪藻土、ホワイトカーボン、クレーなど。 【0033】液体希釈剤として、水、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アルコールなど。 【0034】界面活性剤は、その効果により使い分けるのがよく、乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなど。分散剤として、リグニンスルホン酸塩、ジブチルナフタリンスルホン酸塩など、湿潤剤として、アルキルスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩などを、あげることができる。 【0035】上記製剤には、そのまま使用するものと水等の希釈剤で所定濃度に希釈して使用するものとがある。希釈して使用する時の本発明化合物の濃度は0.01〜1.0%の範囲が望ましい。また、本発明化合物の使用量は畑、田、果樹園、温室などの農園芸地1haあたり、10〜5000g、より好ましくは50〜1000gである。 【0036】これらの使用濃度及び使用量は剤形、使用時期、使用方法、使用場所、対象作物等によっても異なるため、上記の範囲にこだわることなく増減することは勿論可能である。 【0037】さらに、本発明化合物は他の有効成分、例えば、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、植調剤、殺ダニ剤などと組み合わせて使用することもできる。 【0038】イネの籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)は、多量に出る農産廃棄物であり、今までほとんどその用途が考えられていなかったものである。本発明品のような作物発芽抑制効果に優れたものが簡単、安価に得られたことは、従来考えられなかったイネの籾殻や糠、ムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)の新しい利用用途を開発したものである。 【0039】以下、調製例、製剤例を示す。なお、本発明はその要旨を越えない限り以下の調製例、製剤例に限定されるものではない。 【0040】調製例1 コムギ種子殻(ふ)の水抽出物の調製コムギ種子殻(ふ)(品種:カンケイW421)200gをよく粉砕し、これに水1リットルを加え、60℃で48時間アルゴン雰囲気下で浸漬放置後、ガーゼでろ過し、得られた抽出液をアスピレーター減圧下、60℃で水蒸気蒸留を行い、流出液をジクロロメタンを用いて分配し、溶媒を留去して水抽出物を得た。 【0041】調製例2 イネ籾殻の水抽出物の調製イネ籾殻(品種:カサラス、インディカ米)300gをよく粉砕し、これに水1リットルを加え、60℃で24時間抽出した後、ろ過した。得られた水抽出液を酢酸エチルと分配し、抽出物を得た。 【0042】調製例3 コムギ種子殻(ふ)の80%メタノール水抽出物の調製コムギ種子殻(ふ)(品種:カンケイW421)200gをよく粉砕し、これに80%メタノール1リットルを加え、60℃で24時間抽出した後、ろ過した。得られた抽出液を酢酸エチルと分配し、抽出物を得た。 【0043】 製剤例1 :粉剤 重量部 調製例1で得た本発明化合物 3 クレ− 40 タルク 57を粉砕混合し,散粉として使用する. 【0044】 製剤例2 :水和剤 重量部 調製例1で得た本発明化合物 50 リグニンスルホン酸塩 5 アルキルスルホン酸塩 3 珪藻土 42を粉砕混合して水和剤とし,水で希釈して使用する. 【0045】 製剤例3 :粒剤 重量部 調製例2で得た本発明化合物 5 ベントナイト 43 クレ− 45 リグニンスルホン酸塩 7を均一に混合し更に水を加えて練り合わせ,押し出し式造粒機で粒状に加工乾燥して粒剤とする. 【0046】 製剤例4 :乳剤 重量部 調製例3で得た本発明化合物 20 ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル 10 ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート 3 キシレン 67を均一に混合溶解して乳剤とする. 【0047】 【発明の効果】イネの籾殻や糠またはムギ類種子殻(ふ)やふすま(麩)からの抽出物は、イネやムギ類に対する優れた種子発芽抑制剤として使用できるだけでなく、広く作物の発芽抑制剤として利用できる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】501127567 【氏名又は名称】加藤 忠弘
|
| 【出願日】 |
平成13年2月23日(2001.2.23) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2002−255719(P2002−255719A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月11日(2002.9.11) |
| 【出願番号】 |
特願2001−97356(P2001−97356) |
|