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【発明の名称】 植物病害防除剤組成物および植物病害防除方法
【発明者】 【氏名】望月 正己

【要約】 【課題】自然環境に悪影響を与えることなく、作業者にとって簡便で安全性が高く、各種の植物の病害を効果的に防除する、微生物の胞子を含有する植物病害防除剤組成物およびそれを用いる植物病害防除方法を提供する。

【解決手段】パエニバチルス(Paenibacillus)属細菌の胞子及び胞子発芽促進剤を含有する植物病害防除剤組成物。植物地上部および植物の根あるいは根の周辺の土壌に、パエニバチルス属細菌の胞子及び胞子発芽促進剤を含有する植物病害防除剤組成物を施用することを特徴とする植物病害防除方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 パエニバチルス(Paenibacillus)属細菌の胞子及び胞子発芽促進剤を含有することを特徴とする植物病害防除剤組成物。
【請求項2】 パエニバチルス(Paenibacillus)属細菌が、パエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans) である請求項1記載の植物病害防除剤組成物。
【請求項3】 パエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans) が、パエニバチルス・マセランスIK−1203株(FERM P−18161)及びパエニバチルス・マセランスIK−1313株(FERM P−18162)から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の植物病害防除剤組成物。
【請求項4】 パエニバチルス属細菌の胞子の含有量が0.001〜99.9重量%であり、胞子発芽促進剤の含有量が0.1〜99.999重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の植物病害防除剤組成物。
【請求項5】 胞子発芽促進剤が、栄養基質、キレート化合物及び無機塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の植物病害防除剤組成物。
【請求項6】 植物地上部に請求項1〜5のいずれかに記載の植物病害防除剤組成物を施用することを特徴とする植物病害防除方法。
【請求項7】 植物の根あるいは根の周辺の土壌に請求項1〜5のいずれかに記載の植物病害防除剤組成物を施用することを特徴とする植物病害防除方法。
【請求項8】 植物病害が、糸状菌、細菌または微生物媒介ウイルスより発生する植物病害である請求項6または請求項7記載の植物病害防除方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物病害防除剤組成物および植物病害防除方法に関する。さらに詳しくは、自然環境に悪影響を及ぼすことなく、作業者にとって簡便で安全性が高く、効果的に植物の病害を防除する植物病害防除剤組成物および植物病害防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】植物、例えば農作物の栽培において、病害の防除技術は現場の要望にもかかわらず有効な手段を欠く現状にある。空気伝染性病害に対しては、茎葉部への殺菌剤の散布が行われているが、耐性菌の出現などにより、しばしば効果が失われることが知られている。土壌伝染性病害に対しては燻蒸剤や蒸気あるいは太陽熱による土壌消毒が行われてきた。しかし、毒性の高い燻蒸剤を使用すると環境汚染を引き起こしたり、あるいは土壌中の微生物を非選択的に殺菌してしまうため、土壌の微生物相が大きく変化し、かえって病害を激発させてしまうという問題も起きてきた。一方、他の防除手段として、土壌病害に対して抵抗性の高い品種や台木の育種が行われてきているが、病原菌の寄生性が分化し、抵抗性植物を侵しうる新しい病原菌のレースが出現するといった問題があり、その利用には限界があった。また、最近の野菜栽培では、施設の普及や産地の指定化にともなって、栽培される作物が単一となる傾向にあり、輪作の実施も困難な状況で、連作障害の問題も深刻化している。
【0003】近年、農園芸植物を各種病害から保護する方法として、安全性や効果の持続性を考慮して、化学合成殺菌剤ではなく、各種病害を引き起こす病原菌と拮抗する微生物を用いて病害の発生を予防する方法が行われている。この様な植物の病害防除に用いる微生物として、トルコデルマ属、グリオクテディウム属、バチルス属に属する微生物等が挙げられる。しかし、その何れも特定(少数)の植物の病害防除に有効であるにすぎず、充分に満足し得るものではなかった。
【0004】日本の農業の現場では、イネ科、ウリ科、ナス科、バラ科、マメ科、アブラナ科、ユリ科、キク科、アカザ科、セリ科など、多数の作物が栽培され、これらの農作物でボトリチス(Botrytis) 属、ギッベレラ(Gibberella) 属、グロメレラ(Glomerella) 属、ピリキュラリア(Pyricularia)属、コルチシウム(Corticium)属、フザリウム(Fusarium) 属、プラスモジオホラ(Plasmodiophora) 属、ピシウム(Pythium)属、リゾクトニア(Rhizoctonia)属、バーティシリウム(Verticillium) 属、フィトフトラ(Phytophthora) 属、シリンドロクラディウム(Cylindrocladium)属、ティラビオプシス(Thielaviopsis)属、ピレノケータ(Pyrenochata)属、モノスポラスカス(Monosporascus)属などの病原菌により多数の病害が発生しており、これら病害を微生物によって効率的に防除する方法が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記観点からなされたものであり、自然環境に悪影響を与えることなく、作業者にとって簡便で安全性が高く、各種(多数)の植物の病害を効果的に防除する、微生物の胞子を含有する植物病害防除剤組成物およびそれを用いる植物病害防除方法を提供することを目的とするものである。
【0006】本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、パエニバチルス(Paenibacillus)属に属する細菌の胞子及び胞子発芽促進剤を含有する組成物を用いることにより、上記の課題が解決されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成させたものである。
【0007】すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)パエニバチルス(Paenibacillus)属細菌の胞子及び胞子発芽促進剤を含有することを特徴とする植物病害防除剤組成物。
(2)パエニバチルス(Paenibacillus)属細菌が、パエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans) である前記(1)記載の植物病害防除剤組成物。
(3)パエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans) が、パエニバチルス・マセランスIK−1203株(FERM P−18161)及びパエニバチルス・マセランスIK−1313株(FERM P−18162)から選ばれる少なくとも1種である前記(1)または(2)記載の植物病害防除剤組成物。
(4)パエニバチルス属細菌の胞子の含有量が0.001〜99.9重量%であり、胞子発芽促進剤の含有量が0.1〜99.999重量%である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の植物病害防除剤組成物。
(5)胞子発芽促進剤が、栄養基質、キレート化合物及び無機塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の植物病害防除剤組成物。
(6)植物地上部に前記(1)〜(5)のいずれかに記載の植物病害防除剤組成物を施用することを特徴とする植物病害防除方法。
(7)植物の根もしくは根の周辺の土壌に前記(1)〜(5)のいずれかに記載の植物病害防除剤組成物を施用することを特徴とする植物病害防除方法。
(8)植物病害が、糸状菌、細菌または微生物媒介ウイルスより発生する植物病害である前記(6)または(7)記載の植物病害防除方法。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の植物病害防除剤組成物は、パエニバチルス属細菌の胞子及び胞子発芽促進剤を含有する組成物である。本発明に用いるパエニバチルス属細菌としては、好ましくはパエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans) が挙げられ、その中でもパエニバチルス・マセランスIK−1203株(FERM P−18161)、パエニバチルス・マセランスIK−1313株(FERM P−18162)の使用が好ましい。
【0009】本発明で用いるパエニバチルス・マセランスIK−1203株(FERM P−18161)(以下、IK−1203株と略称する場合もある)、パエニバチルス・マセランスIK−1313株(FERM P−18162)(以下、IK−1313株と略称する場合もある)などは、出光興産(株)の袖ケ浦技術センターの敷地内の土壌から分離採取されており、次に示す菌学的性質からIK−1203株及びIK−1313株は共にパエニバチルス・マセランスと同定されている。このパエニバチルス・マセランスIK1203株は、微生物の表示(寄託者が付した識別のための表示)をIK−1203として、平成13年1月11日付けで産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所に寄託された。その受託番号はFERM P−18161である。また、パエニバチルス・マセランスIK1313株は、微生物の表示をIK−1313として、平成13年1月11日付けで産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所に寄託された。その受託番号はFERM P−18162である。
【0010】(1)IK−1203株の菌学的性質1.ブイヨン培地でのコロニー形態:円形で薄いコロニーを形成2.グラム染色性:陽性3.細胞の大きさ:0.5〜0.7μm×3.0〜5.0μm4.胞子:形成する。胞子嚢は膨出し、胞子は楕円形で、細胞の亜端に形成。
5.G+C含量:52.0〜53.3%6.カタラーゼ:陽性7.酸素に対する態度:通性嫌気性8.嫌気条件でのN2 固定:陽性9.V−P反応:陰性10.酸生成D−グルコース:陽性L−アラビノース:陽性D−キシロース:陽性D−マンニトール:陽性11.グルコースからのガス生成:陽性12.カゼイン加水分解:陰性13.ゼラチンの加水分解:陽性14.デンプン加水分解:陽性15.チロシンの分解:陰性16.硝酸塩の還元:陽性17.インドールの生成:陰性18.5%Nacl存在下での増殖:陰性【0011】(2)IK−1313株の菌学的性質1.ブイヨン培地でのコロニー形態:円形で薄いコロニーを形成2.グラム染色性:陽性3.細胞の大きさ:0.6〜0.7μm×2.5〜5.0μm4.胞子:形成する。胞子嚢は膨出し、胞子は楕円形で、細胞の亜端に形成。
5.G+C含量:52.8〜53.5%6.カタラーゼ:陽性7.酸素に対する態度:通性嫌気性8.嫌気条件でのN2 固定:陽性9.V−P反応:陰性10.酸性成D−グルコース:陽性L−アラビノース:陽性D−キシロース:陽性D−マンニトール:陽性11.グルコースからのガス生成:陽性12.カゼイン加水分解:陰性13.ゼラチンの加水分解:陽性14.デンプン加水分解:陽性15.チロシンの分解:陰性16.硝酸塩の還元:陽性17.インドールの生成:陰性18.5%Nacl存在下での増殖:陰性【0012】上記の菌学的性質を有するパエニバチルス・マセランスIK−1203株(FERM P−18161)及びIK−1313株(FERM P−18162)は、パエニバチルス・マセランスATCC8509およびパエニバチルス・マセランスATCC8510と比較すると、表1に示すようにショ糖加用ジャガイモ煎汁寒天培地(PSA)上でのコロニー形態が異なることから、IK−1203株とIK−1313株は共に新菌種と結論された。
【0013】
【表1】

【0014】本発明に用いる胞子は、上記パエニバチルス属に属する細菌の培養物から得られる。パエニバチルス属に属する細菌の培養は、例えば往復式振盪培養、ジャーファメンター培養、培養タンク培養等の液体培養や固体培養等、パエニバチルス属に属する細菌の通常の培養方法に準じて行うことができる。
【0015】培養に用いる培地は、胞子を効率よく形成しやすい培地であればよく、炭素源としてグルコース、デンプン、デキストリン、シュークロース、糖密等の糖類、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸類、グリセリン等のアルコール類を、窒素源としてアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩や硝酸塩や酵母エキス、コーン・スティープ・リーカー、肉エキス、小麦胚芽、ポリペプトン、大豆粉等の有機窒素源を、無機塩としてリン酸、カリウム、カルシウム、マンガン、マグネシウム、鉄等の塩類、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第一鉄などを配合することができる。また、必要に応じて消泡剤、界面活性剤等の種々の添加剤を用いることも可能である。
【0016】培養の条件は特に限定されるものではないが、培養は、固体培養あるいは、通気攪拌や振盪培養等の好気的条件下で行われる液体培養が好ましく、温度は好ましくは10〜50℃、より好ましくは15〜40℃の範囲で行う。
【0017】上記のようにして得られたパエニバチルス属に属する細菌の培養物より胞子を分離する方法としては、膜分離、遠心分離、濾過分離等の方法を用いて行うことができる。得られた胞子画分は、そのままある程度の水分を含んだ状態で本発明の植物病害防除剤組成物に用いることが可能である。また、必要に応じて凍結乾燥、スプレードライ等の乾燥法を用いて乾燥物として本発明の植物病害防除剤組成物に用いることが可能である。
【0018】本発明の植物病害防除剤組成物に用いる胞子発芽促進剤としては、一般にパエニバチルス属に属する細菌の胞子の発芽を促進する成分として知られているものであれば特に制限はされず、例えば栄養基質として、炭素源であるグリセロール、L−アラビノース、リボース、D−キシロース、ガラクトース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、イノシトール、マンニトール、D−ソルビトール、α−メチル−D−グルコシド、N−アセチルグルコサミン、アミグダリン、アルブチン、サリシン、セルビオース、マルトース、ラクトース、メリビオース、スクロース、トレハロース、イヌリン、D−ラフィノース、デンプン、デキストリン、グリコーゲン、β−ゲンチビオース、D−ツラノース、α−デンプン、可溶性デンプン、甘草甘味料、エリスリット、キチン、キトサン、セルロース、グリチルリチン、カップリングシュガー、マルチット、メープルシュガー、カチオン化デンプン、転化糖、ハチミツ、水飴、上述した糖類の1種又は2種以上で構成されるオリゴ糖類及び多糖類等や、窒素源であるカザミノ酸などの各種アミノ酸類、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素、全脂大豆粉、脱脂大豆粉、脱脂大豆フレーク、大豆粕、トウモロコシ粕、圧ぺんトウモロコシ、圧ぺん大麦、フスマ、米ぬか、おから、稲ワラ等、その他成分の酵母エキス、ペプトン、ポリぺプトン等を挙げることができる。
【0019】胞子発芽促進剤として、上記栄養基質の他に、無機塩、例えば、リン酸カリウム、リン酸鉄、二重過リン酸石灰、ポリリン酸アンモニウム、縮合リン酸塩(ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム等)、酸性リン酸塩、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の水溶性無機リン酸塩、塩化カリウム、硝酸カリウム等のカリウム塩、銅、鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、モリブテン等の微量元素の塩等を挙げることができる。これらの無機塩は、単独で用いても胞子の発芽を促進させることができるが、糖類と共に用いることが好ましく、糖類の中でもグルコースと共に用いることがより好ましい。
【0020】また、EDTA、炭酸水素ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、グリシルグリシン、8−ヒドロキシキノリン、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、ソルビトール、リン酸、メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウム等のキレート化合物も、本発明の植物病害防除剤組成物に胞子発芽促進剤として配合することができる。
【0021】本発明の植物病害防除剤組成物は、上記パエニバチルス属細菌の胞子及び胞子発芽促進剤をそれぞれ1種又は2種以上含有するものである。本発明の植物病害防除剤組成物に、パエニバチルス属細菌の胞子を配合する際には、含有胞子重量が組成物全量の0.001〜99.9重量%となるように配合することが好ましい。胞子含有量が0.001重量%未満であると病害防除作用が十分でないことがあり、99.9重量%を超えると植物病害防除剤組成物中に胞子発芽促進剤の有効量を組成することができず、やはり病害防除作用が十分でないことがある。
【0022】また、胞子発芽促進剤の配合量は、組成物全量に対して0.1〜99.999重量%とすることが好ましい。胞子発芽促進剤の含有量が0.1重量%未満であると優れた病害防除作用が得られないことがあり、99.999重量%を超えると病害防除作用を発揮するのに十分な量の胞子を植物病害防除剤組成物中に組成することができず、胞子による優れた病害防除効果が得られないことがある。
【0023】本発明の植物病害防除剤組成物は、通常の微生物製剤の製造方法に従って、上記パエニバチルス属に属する細菌の胞子及び胞子発芽促進剤を必要に応じて各種任意成分と共に、粉剤、粒剤、水和剤、乳剤、液剤、フロアブル、塗布剤等に製剤化したものである。
【0024】上記任意成分としては、固体担体として、カチオンクレー、バイロフィライトクレー、べントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、合成含水酸化ケイ素、酸性白土、タルク類、粘土、セラミック、石英、セリサイト、バーミキュライト、パーライト、大谷石、アンスラ石、炭酸カルシウム、石灰石、石炭灰、ゼオライト等の鉱物質微粉末、籾殻、フスマ、カニ殻、エビ殻、オキアミ微粉末、米糠、小麦粉、トウモロコシ穂軸、落花生殻、骨粉、魚粉、粕粉、鋸屑、木粉、炭、くん炭、バーク炭、籾殻くん炭、草木炭、ピートモス、アタパルジャイト、乾燥畜糞、活性炭、油粕等の有機物微粉末等を挙げることができる。また、液体担体としては、水、植物油、液体動物油、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類等)等が挙げられる。更に、必要に応じて補助剤として、界面活性剤、可溶性増量剤、カゼイン、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸、合成高分子(ポリブニルアルコール、ポリアクリル酸類等)、ベントナイト等の固着剤や分散剤、その他の成分として、プロピレングリコール、エチレングリコール等の凍結防止剤、キサンタンガム等の天然多糖類、ポリアクリル酸類等の増粘剤を挙げることができる。
【0025】パエニバチルス・マセランスIK−1203株(FERM P−18161)の胞子、IK−1313株(FERM P−18162)の胞子は、それぞれ単独で、または両者を混合して使用することができる。
【0026】本発明の植物病害防除剤組成物が適用される植物は、稲作、畑作において栽培される植物(作物)であれば何でもよい。本発明の植物病害防除剤組成物によって防除する植物の病害は、糸状菌、細菌または微生物媒介ウイルスより発生する植物病害であり、例えばイネの紋枯病、ばか苗病、いもち病、野菜類や花卉類の灰色カビ病、うどんこ病、トマトの疫病、葉かび病、キュウリのべと病、ネギのさび病、レタスの菌核病、ウリ科、ナス科、バラ科、マメ科、アブラナ科、ユリ科、キク科、アカザ科、セリ科などに発生する炭そ病、白絹病、根ぐされ病、萎ちょう病、根ぐされ萎ちょう病、萎黄病、つる割れ病、急性萎ちょう病、根こぶ病、苗立枯病、半身萎ちょう病、褐色根腐病、黒点根腐病などである。本発明の植物病害防除剤は上記の様な植物の病害の病原菌に対して有効に作用する。
【0027】本発明の植物病害防除剤組成物は、上記の様な各種栽培植物の各種病害を防除する目的で植物に施用されるが、その方法は該植物病害防除剤組成物を効果的に施用できる方法であれば何でもよい。例えば、該組成物を植物の茎葉部に散布あるいは塗布したり、植物の子球、珠球、種子、根あるいは根の周辺の土壌に該組成物を潅注、混和するなど、もしくは該組成物の懸だく液に植物の種子等を浸せきするなどの方法を採ることができる。このように、本発明の植物病害防除剤組成物は、植物病害を防除するため、植物地上部および植物の本圃土壌に施用することができる。
【0028】本発明の植物病害防除剤組成物の施用量は、病害の種類、適用植物の種類等によって異なるため一概には規定できないが、概ね108 〜1017cfu(コロニー形成単位)/10a、好ましくは1010〜1016cfu/10a、より好ましくは1012〜1015cfu/10aである。
【0029】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。まず、本発明の植物病害防除剤組成物の重要な成分であるパエニバチルス属細菌の胞子の製造例について説明する。
〔製造例1、2〕パエニバチルス属に属する細菌の胞子画分(湿菌体)の製造パエニバチルス・マセランスIK−1203株(FERM P−18161)の保存菌の斜面培養物の一白金耳をフラスコ当たり100mLのYP培地(ポリペプトン1%、酵母エキス0.2%、MgSO4 ・7H2 O 0.1%)の入った坂口フラスコ(500ml容)に植菌後、振幅10cm、回転数120rpmの往復振蘯機を用いて30℃で2日間培養した。得られた培養物300mLを培地(ポリペプトン1%、酵母エキス0.2%、MgSO4 ・7H2 O 0.1%)15Lの入った30L容の発酵槽に植菌し、好気的条件下で30℃で72時間培養して培養液を得た。得られた約15Lの培養液を常法に従って遠心分離(6000rpm、20分間)して培養上清と菌体沈澱物に分離した。培養上清を分離後、菌体沈澱物を水で洗浄し、湿重量約640gの湿菌体(胞子画分)を得た(製造例1)。上記で、パエニバチルス・マセランスIK−1203株(FERM P−18161)を用いる替わりに、パエニバチルス・マセランスIK−1313株(FERM P−18162)を用いて同様の操作を行い、パエニバチルス・マセランスIK−1313株(FERM P−18162)湿重量約590gの胞子画分を得た(製造例2)。
【0030】〔製造例3、4〕粉末胞子の製造上記製造例1によって得られたパエニバチルス・マセランスIK−1203株(FERM P−18161)の胞子画分約500gを水3Lに懸濁後、スプレードライヤーに1.5〜2L/hの流速で処理した(入口温度150℃、出口温度100℃)、スプレードライヤーによって得られた乾燥物を粉砕することにより乾燥重量約62gの粉末胞子を得た(製造例3)。同様にして製造例2で得られた胞子画分約500gより約56gのパエニバチルス・マセランスIK−1313株(FERM P−18162)の粉末胞子を得た(製造例4)。
【0031】〔参考例1〕IK−1203株とIK−1313株の in vitro 抗菌活性の確認パエニバチルス・マセランスIK−1203株(FERM P−18161)の胞子とパエニバチルス・マセランスIK−1313株(FERM P−18162)の胞子をPSA培地(即ち、ショ糖加用ジャガイモ煎汁寒天培地)上で各種病原菌と対峙培養した。その結果を表2に示す。この結果から、IK−1203株とIK−1313株の胞子は共に各種病原菌の生育を阻止する能力を持つことが確認された。
【0032】
【表2】

【0033】〔実施例1〜6及び比較例1〜2〕
1.植物病害防除剤組成物の製造表3に示す成分を良く混和して植物病害防除剤組成物(水和剤)を得た(以下、該植物病害防除剤組成物を、単に「水和剤」と略称する場合もある)。また同様にしてパエニバチルス属に属する細菌の胞子は含有するが、胞子発芽促進剤を含有しない比較例の水和剤を製造した。
【0034】
【表3】

【0035】実施例で用いた成分中、カザミノ酸/脱脂大豆粉は胞子発芽促進剤であり、窒素源/炭素源の両方が含まれている。タルク、炭酸カルシウム、珪藻土などは、いわゆる増量剤(任意成分)に相当する成分である。
【0036】2.イモチ病防除試験出光興産(株)袖ケ浦技術センター内圃場に容積80Lのバットを並べ、イネ(品種:コシヒカリ)を植えた。1バットを1区とし、3反復で試験を行った。4月30日移植、出穂日は7月27日。葉いもちには6月10日に、穂いもちには7月11日(穂ばらみ期)と7月25日(穂揃い期)に以下に示す希釈液を散布した。即ち、実施例2および6で得られた水和剤の水による1000倍希釈液(1×1011cfu/L)を300L/10a噴霧器で散布した。比較のために、比較例1および2で得られた水和剤の1000倍希釈液(1×1011cfu/L)を300L/10a噴霧器で散布した。対照薬剤のカスラブサイドゾル、1000倍液は100L/10a噴霧器で散布した。葉いもちは6月30日に株当たりの病斑数を調査した。穂いもちは8月16日に全穂について発病度別に調査した。この試験の結果を表4に示す。
【0037】
【表4】

【0038】3.トマト灰色かび病防除試験出光興産(株)袖ケ浦技術センター内ビニールハウス内圃場に、トマト(品種:桃太郎)を4月14日に定植した。1区10本とし、3反復で試験を行った。5月10日、5月17日、5月24日の計3回散布を行った。実施例1および2で得られた水和剤の1000倍希釈液(1×1011cfu/L)、および実施例5および6で得られた水和剤の1000倍希釈液(1×1011cfu/L)を250L/10a噴霧器で散布した。比較のために、比較例1および2で得られた水和剤の1000倍希釈液(1×1011cfu/L)を250L/10a噴霧器で散布した。対照薬剤のロブラール水和剤、1000倍液も同様に250L/10a噴霧器で散布した。5月10日、5月17日、5月24日、5月31日の計4回発病果率を調査した。この試験の結果を表5に示す。
【0039】
【表5】

【0040】4.キュウリうどんこ病防除試験ポット育苗した4葉期のキュウリ(品種:相模半白節成)を、1区10本とし、3反復で試験を行った。1週間置きに計3回薬剤を散布した。実施例2、3および4で得られた水和剤の1000倍希釈液(1×1011cfu/L)を50ml/株、噴霧器で散布した。比較のために、比較例1で得られた水和剤の1000倍希釈液(1×1011cfu/L)を50ml/株、噴霧器で散布した。対照薬剤のサプロール乳剤、1000倍液も同様に50ml/株、噴霧器で散布した。最終散布の1週間後に本葉の発病度を調査した。この試験の結果を表6に示す。
【0041】
【表6】

【0042】5.リゾクトニア苗立ち枯れ病防除試験フスマで培養したリゾクトニア菌をクレハ園芸培土に混和し、汚染土壌を作成した。実施例2および6で得られた水和剤の2000倍希釈液(5×1010cfu/L)を3L/m2 潅注した。比較のために、比較例1および2で得られた水和剤の2000倍希釈液(5×1010cfu/L)を3L/m2 潅注した。対照薬剤のバリダシン液剤、1000倍液も同様に3L/m2 潅注した。潅注の翌日、トマト(品種:桃太郎)を播種した。1試験区当たり100粒播種し、3反復で試験を行った。調査は播種後14日目に実施した。この試験の結果を表7に示す。
【0043】
【表7】

【0044】6.トマト萎ちょう病防除試験播種箱にクレハ園芸培土を詰めて、トマト(品種:世界一)を播種した。これに実施例2および6で得られた水和剤の1000倍希釈液(1×1011cfu/L)を3L/m2 潅注した。2週間温室で育苗した後、2葉期に成長した苗を、クレハ園芸培土を詰めた9cmビニールポットに仮植した。このビニールポットに、実施例2および6で得られた水和剤の1000倍希釈液(1×1011cfu/L)を3L/m2 潅注した。苗は7葉期に成長するまで温室で育苗した。フスマで培養したフザリウム・オキシスポラムをクレハ園芸培土に混和し、汚染土壌を作成した。これをバット(64cm×38cm×15cm)に詰めた。ここに7葉期に成長するまで温室で育苗したトマトの苗をバット当たり6本定植した。比較のために、比較例1および2で得られた水和剤の1000倍希釈液(1×1011cfu/L)を同様に処理した。対照薬剤のベンレート水和剤、1000倍液は定植前の植え穴に500ml潅注した。試験は1区1バットとし、3反復で行った。定植後60日後に発病度および地際部の導管褐変度を調査した。この試験の結果を表8に示す。
【0045】
【表8】

【0046】
【発明の効果】本発明によれば、植物病害防除剤として人体や環境に安全な有用微生物であるパエニバチルス属細菌の胞子を用い、またこれと胞子の栄養源である胞子発芽促進剤とを組み合わせて用いるため、本発明の植物病害防除剤組成物は自然環境に悪影響を及ぼすことなく、作業者にとって簡便で安全性が高く、かつ効率的に植物の病害を防除することが可能となる。本発明の植物病害防除方法を採用すれば、農作物等の植物を長期間病害より保護できる。
【出願人】 【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
【出願日】 平成13年2月20日(2001.2.20)
【代理人】 【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
【公開番号】 特開2002−249409(P2002−249409A)
【公開日】 平成14年9月6日(2002.9.6)
【出願番号】 特願2001−43116(P2001−43116)