トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業

【発明の名称】 蚊誘引剤
【発明者】 【氏名】白井 良和

【要約】 【課題】蚊を効果的に誘引して殺虫するための蚊誘引剤を提供する。

【解決手段】1〜10000ppmのリシン、0.05〜0.1ppmのイソ吉草酸、1〜100ppmのアラニン、0.1〜5ppmのアンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有する蚊誘引剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】リシン、イソ吉草酸、アラニン、アンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤。
【請求項2】濃度1〜10000ppmのリシン、イソ吉草酸、アラニン、アンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤。
【請求項3】濃度0.05〜0.1ppmのイソ吉草酸、リシン、アラニン、アンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤。
【請求項4】濃度1〜100ppmのアラニン、リシン、イソ吉草酸、アンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤。
【請求項5】濃度0.1〜5ppmのアンドロステノール、リシン、イソ吉草酸、アラニン、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤。
【請求項6】濃度1〜10000ppmのリシン、濃度0.05〜0.1ppmのイソ吉草酸、濃度1〜100ppmのアラニン、濃度0.1〜5ppmのアンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒト、動物や鳥類などの脊椎動物を刺咬する蚊を誘引し、誘引により殺虫するための蚊誘引剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】罹患者数が極めて多いマラリアをはじめ、デング熱、黄熱、日本脳炎、フィラリア症など、蚊媒介性疾病は今なお世界各地で発生している。東南アジアやアフリカなどに限らず、1999年秋には公衆衛生が発達したニューヨークで、イエカ等の媒介による西ナイルウイルス熱の患者が多数発生し、2000年秋にはサウジアラビアで、蚊が媒介するリフトバレー熱が流行したり、2001年1月にはオーストラリアで、蚊が媒介するクンジンウイルス、ロスリバーウイルス、ムレイバレーウイルス患者が発生したりするなど、蚊媒介性疾病は深刻な状況である。
【0003】昔と違って衛生状態が良くなっても、蚊媒介性疾病は、将来に渡って人類や動物を悩まし続ける可能性がある。また、自動車産業が発展し、国民の自動車保有台数が増えるに伴って、タイヤ数も大幅に増え、交換後の廃タイヤも増えている。しかしながら、野積みされた廃タイヤ内にたまった雨水内で、ヤブカ属の蚊が多く発生し、近辺の労働者を悩まし、仕事の能率を落とし、産業の発展を阻害している。また、本来ヒトスジシマカが存在しなかった国に、日本から廃タイヤを輸出することによって、輸出先の国にヒトスジシマカが定着し、ネッタイシマカとともにデング熱を広め、その国の衛生状態をも悪くし、国際的な問題となっている。
【0004】また、地球温暖化に伴って、日本にネッタイシマカが侵入し、定着することでデング熱が広まる可能性もある。また飛行機などの交通手段の発達によって、マラリア原虫を保有するハマダラカが日本国内に侵入し、空港近辺の住民など渡航経験のない人でさえ、マラリアに罹患する危険性がある。これはエアポートマラリアと呼ばれ、実際にいくつかの症例が報告されている。
【0005】一方、昔から現在に至るまで、犬や猫などの動物は人の良き伴侶であり、愛玩動物として飼い主の心の支えとなっているし、愛玩動物に限らず盲導犬や介護犬など多くの役割を果たしている動物もある。しかし、犬などの動物も、アカイエカなどが媒介する糸条虫症(フィラリア症)に罹患し、命を落とす例も多い。また、糸条虫症予防のために動物病院から予防薬を購入し、飼い犬に薬を飲ませ続けねばならず、薬の購入費が高くつき、且つ薬の投与に手間もかかるものである。従って、蚊による刺咬から免れることは非常に重要である。
【0006】ヒトや動物を刺咬する蚊対策として、有機リン剤、カーバメート剤、合成ピレスロイド剤などの殺虫剤、ディートを含有する忌避剤などについて研究がなされてきた。しかし、殺虫剤の多用により、コガタアカイエカで有機リン剤に対する高度の抵抗性を発達させた個体群が生じるなど、殺虫剤抵抗性が生じる恐れもある。
【0007】そこで、殺虫剤や忌避剤を使用せずに、蚊を誘引して捕獲殺虫するための方法が検討されてきた。これまでにも、蚊を誘引する方法としては、温熱や二酸化炭素ガスが知られているが、ヒトや動物の匂いも蚊を誘引する。しかし、蚊を誘引するヒトや動物の具体的な匂い物質が明らかでなく、より効果的な蚊誘引剤の開発が望まれていた。この事情に鑑みて、発明者が鋭意検討を行ってきたところ、遂に蚊誘引に効果的な匂い物質を見出すに至ったものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ヒトや動物、鳥類などの脊椎動物を刺咬する蚊を誘引するための誘引剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明のうち請求項1記載の発明によれば、リシン、イソ吉草酸、アラニン、アンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤とする。このように構成すれば、該誘引剤を、蚊を捕集するトラップ内や電撃殺虫器内または近傍に置くことで、効果的に蚊を誘引して殺虫することができる。
【0010】また、本発明のうち請求項2記載の発明によれば、濃度1〜10000ppmのリシン、イソ吉草酸、アラニン、アンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤とする。このように構成すれば、さらに効果的に蚊を誘引することができる。
【0011】さらに、本発明のうち請求項3記載の発明によれば、濃度0.05〜0.1ppmのイソ吉草酸、リシン、アラニン、アンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤とする。このように構成すれば、一層効果的に蚊を誘引することができる。
【0012】そして、本発明のうち請求項4記載の発明によれば、濃度1〜100ppmのアラニン、リシン、イソ吉草酸、アンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤とする。このように構成すれば、非常に効果的に蚊を誘引することができる。
【0013】一方、本発明のうち請求項5記載の発明によれば、濃度0.1〜5ppmのアンドロステノール、リシン、イソ吉草酸、アラニン、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤とする。このように構成すれば、大変効果的に蚊を誘引することができる。
【0014】また、本発明のうち請求項6記載の発明によれば、濃度1〜10000ppmのリシン、濃度0.05〜0.1ppmのイソ吉草酸、濃度1〜100ppmのアラニン、濃度0.1〜5ppmのアンドロステノール、皮脂のうち、1または2以上を含有することを特徴とする蚊誘引剤とする。このように構成すれば、非常に効果的に蚊を誘引することができる。
【0015】本発明に効果的な蚊としては、例えば、ヒトスジシマカ、オオクロヤブカ、アカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ、カラツイエカ、コガタアカイエカ、シナハマダラカ、オオハマハマダラカ、オオツルハマダラカ、チョウセンハマダラカ、オオモリハマダラカ、コガタハマダラカ、エセシナハマダラカ、ステフェンシーハマダラカ、ガンビアハマダラカ、アノフェレスクアドリマカラータス、アノフェレスファラウティ、アノフェレスアトロパルバス、アノフェレスアルビマヌス、アノフェレスフネスタス、キンパラナガハシカ、アシマダラヌマカ、イナトミシオカ、ヤマトハボシカ、ミスジハボシカ、トウゴウヤブカ、ヤマトヤブカ、ブナノキヤブカ、シロカタヤブカ、ハトリヤブカ、セスジヤブカ、コバヤシヤブカ、エセチョウセンヤブカ、オキナワヤブカ、ムネシロヤブカ、セボリヤブカ、ワタセヤブカ、チシマヤブカ、カラフトヤブカ、ハマベヤブカ、サッポロヤブカ、ダイセツヤブカ、キタヤブカ、ハクサンヤブカ、アカンヤブカ、トカチヤブカ、ヒサゴヌマヤブカ、キンイロヤブカ、オオムラヤブカ、コガタキンイロヤブカ、エゾヤブカ、ホッコクヤブカ、アカエゾヤブカ、アカフトオヤブカ、クロフトオヤブカ、エーデスタエニオリンクス、エーデスソリシタンス、エーデスキャンテーター、エーデストリセリエイタス、ネッタイシマカ、ミスジシマカ、ダウンスシマカ、リバーズシマカ、ヤマダシマカ、タカハシシマカ、エーデススカテラリスなどが挙げられる。
【0016】リシン、イソ吉草酸、アラニン、アンドロステノール(5アルファ-アンドロスト-16-エン-3アルファ-オル)は、和光純薬工業株式会社やシグマアルドリッチジャパン株式会社といった、試薬会社の製品を使用可能である。なお、リシン、アラニンは光学異性体を問わないが、L体が望ましい。
【0017】次に皮脂の収集法について述べる。ヒトの顔面に、ガラス板や金属板、あぶらとり紙、濾紙などをこすりつけ、付着した皮脂をアセトンとジエチルエーテルを1対1の比に混合した溶媒に溶かし、これを繰り返して収集する。十分に収集した後に、溶媒を完全に揮発させると皮脂が残る。皮脂を収集するヒト顔面は脂性肌であることが望ましい。
【0018】本発明の誘引剤の剤型は問わないが、液剤が望ましい。粉末、液体の試薬、皮脂をエタノールや水に入れ、攪拌した溶液または懸濁液を用いる。皮脂は固形物であるため、そのままガラス、プラスティック、金属、木材などの板、棒に塗布して用いてもよい。さらに、液剤を濾紙や脱脂綿にしみ込ませたり、ボトルに入れて吸液芯に浸透させ、リングヒーターで加熱して揮散させたりする方法が挙げられる。
【0019】また、ツェツェバエに誘引性を示す1-オクテン-3-オルを混合し、誘引性を高めることも可能である。その他、二酸化炭素、温熱ヒーターなどの他の蚊誘引方法と併用して使用することもできる。蚊を誘引して殺虫する方法としては、高電圧の電撃格子による電撃殺虫方法の他、粘着剤や粘着テープに粘着させる方法が挙げられる。
【0020】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0021】実施例1イソ吉草酸0.1ppm水溶液 3mLを作製し、シャーレ上の濾紙に滴下し、該濾紙を置いたシャーレを、さらに表面温度34℃となるよう調整した温熱ヒーターの上に置き、ヒトスジシマカ未吸血雌成虫120頭を入れた幅150×奥行き100×高さ180cmの蚊帳内に置いた。イソ吉草酸0.1ppm水溶液により、温熱ヒーター近傍に蚊を誘引することができた。
【0022】実施例2イソ吉草酸0.1ppm水溶液 1.5mLL-リシン100ppm水溶液 1.5mLを混合した水溶液を作製し、シャーレ上の濾紙に滴下し、該濾紙を置いたシャーレを、さらに表面温度34℃となるよう調整した温熱ヒーターの上に置き、ヒトスジシマカ未吸血雌成虫120頭を入れた幅150×奥行き100×高さ180cmの蚊帳内に置いた。イソ吉草酸0.1ppm水溶液とL-リシン100ppm水溶液により、温熱ヒーター近傍に蚊を誘引することができた。
【0023】実施例3イソ吉草酸0.1ppm水溶液 2mLL-リシン100ppm水溶液 2mLL-アラニン10ppm水溶液 2mLを混合した水溶液を作製し、シャーレ上の濾紙に滴下し、該濾紙を置いたシャーレを、さらに表面温度34℃となるよう調整した温熱ヒーターの上に置き、ヒトスジシマカ未吸血雌成虫120頭を入れた幅150×奥行き100×高さ180cmの蚊帳内に置いた。イソ吉草酸0.1ppm水溶液とL-リシン100ppm水溶液とL-アラニン10ppm水溶液により、温熱ヒーター近傍に蚊を誘引することができた。
【0024】実施例4イソ吉草酸0.1ppm水溶液 0.5mLL-リシン100ppm水溶液 0.5mLL-アラニン10ppm水溶液 0.5mLアンドロステノール1ppm水溶液 0.5mLを混合した水溶液を作製し、シャーレ上の濾紙に滴下し、該濾紙を置いたシャーレを、さらに表面温度34℃となるよう調整した温熱ヒーターの上に置き、ヒトスジシマカ未吸血雌成虫120頭を入れた幅150×奥行き100×高さ180cmの蚊帳内に置いた。イソ吉草酸0.1ppm水溶液とL-リシン100ppm水溶液とL-アラニン10ppm水溶液とアンドロステノール1ppm水溶液により、温熱ヒーター近傍に蚊を誘引することができた。
【0025】実施例5皮脂 0.1gを、ガラスシャーレ上に塗布し、さらに表面温度34℃となるよう調整した温熱ヒーターの上に置き、ヒトスジシマカ未吸血雌成虫120頭を入れた幅150×奥行き100×高さ180cmの蚊帳内に置いた。皮脂により、温熱ヒーター近傍に蚊を誘引することができた。
【0026】参考例1被験者(30歳男性)の一方の前腕をいくつかの濃度に希釈したL-リシン(和光純薬工業株式会社)水溶液に、他方の前腕(対照区)を蒸留水に10秒間浸漬し、水をよく切って、両前腕をヒトスジシマカ口吻切断虫35頭を入れた試験容器内に挿入し、両前腕への降着蚊数を30秒ごとに10分間記録した。
【0027】結果を表1に示した。1、100、10000ppm処理区で有意に誘引性を示し、100ppm処理区の降着蚊数が水処理区の2.54倍となり、L-リシンが高い誘引性を示した。
【0028】
【表1】

【0029】参考例2ペントバルビタールナトリウムを腹腔内注射して麻酔したヘアレスマウス2頭の頭部以外に、いくつかの濃度に希釈したイソ吉草酸(和光純薬工業株式会社)の水溶液または蒸留水(対照区)をそれぞれ1mL塗布した。次に、麻酔したマウスをそれぞれシャーレに置いてヒトスジシマカ無処理虫35頭を入れた試験容器内に入れ、10分間に頭部以外を吸血した蚊数を記録した。
【0030】結果を表2に示す。0.01ppm処理区でイソ吉草酸は有意に誘引した。
【0031】
【表2】

【0032】参考例3脂性肌の被験者の顔面を、市販のあぶらとり紙にて拭き取り、アセトン:エーテル=1:1の溶媒に浸漬し、皮脂を溶出させ、あぶらとり紙を取り出した。溶液は4℃下に保管し、これを40日間続けることによって皮脂を集めた。その後、溶媒を揮発させ、残った皮脂を検体とした。被験者(30歳男性)の両前腕を水洗後、皮脂0.1gを片方の前腕に塗布し、他方の前腕を無処理の対照区とした。次に、両前腕をヒトスジシマカ口吻切断虫35頭を入れた試験容器内に挿入し、両前腕への降着蚊数を30秒ごとに10分間記録した。
【0033】表3に示すように、皮脂を処理した前腕は、対照区に比べて有意に高い誘引性を示し、誘引比は、対照区の3.31倍を示した。
【0034】
【表3】

【0035】参考例4被験者(31歳男性)の一方の前腕に数濃度に希釈したL-アラニン(和光純薬工業株式会社)水溶液1mLを塗布し、他方の前腕に対照区として蒸留水1mLを塗布した。両前腕をヒトスジシマカ口吻切断虫35頭を入れた試験容器内に挿入して、30秒ごとに10分間の降着蚊数を調査した。試験は6反復行い、3反復ごとに左右の処理する前腕を交替した。
【0036】結果を表4に示した。L-アラニン1、100ppm処理区では、対照区に対して有意に蚊を誘引した(表4)。
【0037】
【表4】

【0038】参考例55アルファ-アンドロスト-16-エン-3アルファ-オル(シグマアルドリッチジャパン株式会社)の1、10ppm水溶液1mLを、被験者(32歳男性)の一方の前腕に塗布し、他方の前腕に対照区として蒸留水1mLを塗布した。次に、両前腕をヒトスジシマカ口吻切断虫35頭を入れた試験容器内に挿入して30秒ごとに10分間の降着蚊数を記録し、6反復行った。
【0039】結果を表5に示した。1ppm処理区では蚊を有意に誘引した。
【0040】
【表5】

【0041】
【発明の効果】本発明によれば、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカ、ヤマトヤブカ、トウゴウヤブカ、シナハマダラカ、オオクロヤブカなどが侵入した室内や車内に、本発明の蚊誘引剤と電撃殺虫器や粘着剤を組み合わせて置き、しばらくヒトを入れないことで、ヒトが入らない間に、侵入した蚊を誘引捕獲・殺虫することができ、有害な殺虫剤を使用することなく、誘引捕獲・殺虫後に安心して室内や車内にヒトが入ることができ、蚊刺咬から免れることができる。
【0042】また、家庭の庭や野外に、本発明の蚊誘引剤と電撃殺虫器や粘着剤を組み合わせて置き、誘引殺虫することで、庭や野外の一定領域での蚊個体数を減少させたり、個体数のモニタリングに活用したりすることが可能である。
【出願人】 【識別番号】598142885
【氏名又は名称】白井 良和
【出願日】 平成13年2月19日(2001.2.19)
【代理人】 【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
【公開番号】 特開2002−241204(P2002−241204A)
【公開日】 平成14年8月28日(2002.8.28)
【出願番号】 特願2001−41282(P2001−41282)