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【発明の名称】 地盤表面のカビ発生抑制方法
【発明者】 【氏名】住野 正博

【要約】 【課題】保存しようとする地盤の表面のカビ発生を抑制しつつ、地盤表面の結露の発生、および地盤・遺構の乾燥によるひび割れを抑制できるような方法を提供する。

【解決手段】保存しようとする地盤に、防カビ剤を含むシラン系樹脂を含浸させる。その際、シラン系樹脂は、約1乃至約10重量%の防カビ剤を含むのが好ましい。また、防カビ剤を含むシラン系樹脂を地盤に含浸させた後に、防カビ剤を含む溶液を地盤に含浸させてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 保存しようとする地盤に、防カビ剤を含むシラン系樹脂を含浸させることにより地盤表面のカビ発生を抑制する方法。
【請求項2】 請求項1に記載の方法であって、前記シラン系樹脂は、1乃至10重量%の防カビ剤を含むことを特徴とする地盤表面のカビ発生を抑制する方法。
【請求項3】 請求項1または2に記載の方法であって、前記防カビ剤を含むシラン系樹脂を前記地盤に含浸させた後に、防カビ剤を含む溶液を前記地盤に含浸させることを特徴とする地盤表面のカビ発生を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、保存しようとする地盤表面におけるカビの発生を抑制する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば土工工事の作業中等に、住居跡、水路跡、墓跡等の埋没遺跡や遺構を発見することがある。このような場合、文化財を保護するという見地から、このような遺跡を、それを含む地盤ごと原位置で建屋内に展示又は保存用の建屋内に移設して保存する方法が採られてきた。
【0003】ところで、遺跡を地盤ごと建屋内にて保存した場合、地盤表面にカビが発生することが頻繁にあった。カビの発生は、保存対象である遺跡を損傷して、展示物としての価値を失わさせるものであった。
【0004】そこで、カビ発生を防止する対策として、地盤の保存環境の条件を調整する方法が従来採られてきた。すなわち、完全密封の条件下の場合は、室内温度を20℃以下、湿度を90%以上に設定して保存を行い、一方、完全密封でない条件下では、温度を18℃以下、湿度を60%以下とするとともに、空気の滞留を防ぐために周辺空気を流速約3m/分で流動させて保存を行ってきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前者の条件においては、地盤表面に結露が発生してしまい結果的に遺跡を損傷する要因となる。また後者の条件においては、空気を流動させたため、地盤表面および遺構に乾燥によるひび割れが生じてしまい、いずれの対策も問題がある。
【0006】そこで本発明は、遺跡を含む地盤を建屋内に原位置で保存・展示する際に、地盤表面のカビ発生を抑制しつつ、地盤表面における結露の発生、および地盤・遺構の乾燥によるひび割れを抑制できるような方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明にかかる地盤表面のカビ発生を抑制する方法は、保存しようとする地盤に、防カビ剤を含むシラン系樹脂を含浸させることを特徴とする。好ましくは、上記シラン系樹脂は、1乃至10重量%の防カビ剤を含むことを特徴とする。また、好ましくは、上記防カビ剤を含むシラン系樹脂を上記地盤に含浸させた後に、防カビ剤を含む溶液を上記地盤に含浸させることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】保存しようとする地盤のカビ発生を抑制するためには、防カビ剤を地盤土中に拡散させるとよいのだが、地盤土中へ拡散させるにあたり、防カビ剤を地盤含浸用樹脂に添加して、この防カビ剤入り樹脂を地盤に含浸させることとするのがよい。本発明者は、地盤含浸用樹脂としては、湿潤な土中に拡散しやすく、かつ、土中の水分と安定な複合化層を形成するシラン系樹脂が特に好適であることを知見した。
【0009】シラン系樹脂は、その表面張力が約15〜20ダイン/cm(g/sec)であり、水の表面張力の約73ダイン/cmや、他の樹脂、例えばエポキシ樹脂の50ダイン/cm、ポリエチレン樹脂の32ダイン/cm等に比して極めて小さいため、地盤の土粒子の表面を覆う薄い水膜の水分と置換しながら土粒子表面に沿って、土中深くまで拡散浸透していく。
【0010】またシラン系樹脂は、土中の水分と、脱アルコール反応、次いで脱水縮合反応を繰り返し、無機質結合であるシロキサン結合を形成しながら、高分子であるポリシロキサンとなる。このポリシロキサンは、地盤中の土・砂等と類似した構造を有するため地盤の土と馴染みやすく、したがって安定した複合化層を形成することができる。安定した複合化層を形成できるので、地盤のひび割れを抑制できるとともに、土中水分の蒸発による結露の発生を抑制できる。
【0011】そこで、本発明者は、地盤のカビ発生を抑制しつつ乾燥によるひび割れや結露の発生を抑制するために、上記特性を有するシラン系樹脂に防カビ剤を含有させ、このような防カビ剤入りシラン系樹脂を地盤に含浸させるという本発明を完成するに至った。本発明のカビ発生抑制適性を確認するために、後に示す表1の土質地盤に図1の方法で下記シラン系樹脂を含浸させ、実験をおこなった。
【0012】<実験材料について>A.シラン系樹脂シラン系樹脂は、その特性により、はっ水型、低分子固結型、高分子固結型等いくつかのタイプに分けられる。以下の実験では、下記8つの樹脂または樹脂の組合せを用いた。
1.はっ水型■コンフィックスSM−7(商品名:恒和化学工業株式会社製)
■シンエツバイオウォーターガードM(商品名:信越化学工業株式会社製)
2.低分子固結型■ストーンパワーNEW(商品名:紺商株式会社製)
■OH(商品名:ワッカー社製)
3.はっ水・低分子固結型(既調合タイプ)
■H(ワッカー社製)
4.はっ水型・低分子固結型の組合せ■上記1.■のSM−7を含浸させ、その後引き続き上記2.■のストーンパワーNEWを含浸させる。「KST」と称する。
■上記1.■のSM−7を含浸させ、その後引き続き上記2.■のOHを含浸させる。「KSO」と称する。
5.低分子型・高分子型の組合せ(現場調合タイプ)
■上記2.■のOHと、SILRES MSE100(商品名:ワッカー社製)とを現場で或いは事前に混合したもの。調合率は土質によって違える。対象土が砂質の場合、OH:MSE100=50部:50部とし、シルト質の場合、80〜70部:20〜30部とする。
【0013】B.防カビ剤防カビ剤については、以下のものを使用した。
■マルカサイドOX−1(商品名:大阪化成株式会社製):置換フェノール系およびカルバミン酸系化合物である。
■マルカサイドAP(商品名:大阪化成株式会社製):有機窒素系化合物および有機窒素イオウ系化合物である。
■アモルデン(商品名:大和化学工業株式会社製):イミダゾール系およびチアゾール系配合物である。
【0014】<フィールド実験>1.実験方法現場(フィールドで)の竪穴式住居跡の遺構土(試験工区)の地盤表面に、上記8つの樹脂または樹脂の組合せを含浸させて、そのカビ発生抑制効果を確認する実験をおこなった。図1に示すように、適宜な高さに設置した容器1に規定量の樹脂液2を充填するとともに、遺構土3の表面に不織布等の敷物4を敷設した。その後、樹脂液2を、容器1の排出口5にチューブ6で連結され、1mあたり6個の割合で配設された、排出口5とのヘッド差が約30〜40cmの滴下口7を通じて約2〜2.5l/hrの速度で滴下させ、敷物4を介して遺構土3に自然含浸させた。含浸させる樹脂量は、3.5、7、または14l/mとした。上記KSTおよびKSOについては、2タイプの樹脂を順次含浸させた。試験工区の条件は、温度−3〜10℃、湿度70〜98%とし、3ヶ月以上の間、カビ発生の観測を続けた。ここでいう遺構土は、次の表1に示すような土質を有する関東ローム遺構土である。
【0015】
【表1】

【0016】2.実験結果上記実験の結果を表2に示す。
【表2】

【0017】本発明にかかる防カビ剤内添のはっ水型シラン系樹脂(バイオウォーターガードM)を含浸させた試験工区では、3ヶ月経過後もカビの発生は全く認められなかった。それ以外の7種類の樹脂または樹脂の組合せを含浸させた試験工区では、実験開始後2週間から3ヶ月の間に白カビや黒カビが発生した。また、樹脂を含浸させなかった試験工区でも、実験開始後2ヶ月経過後にカビが発生した。このように、本発明の方法により防カビ剤入りのシラン系樹脂を含浸させた土においては、カビの発生をほぼ完全に抑制することができることが確認された。
【0018】<室内実験その1>1.実験方法フィールドの樹脂未含浸工区から採取したφ20cm、高さ20cmの不撹乱土の内部から、φ5cm、高さ7cmの不撹乱土サンプルを、ステンレスリングを用いて採取した。各不撹乱土サンプルの上面に、バイオウォーターガードMと、上記3種類の防カビ剤をその濃度が2重量%となるようにOHにそれぞれ配合した3種類の防カビ剤入りOHと、SM−7およびストーンパワーNEWの混合樹脂液に上記3種類の防カビ剤をその濃度が2重量%となるようにそれぞれ配合した3種類の防カビ剤入り混合樹脂液とをそれぞれ散布して含浸させた。また、不撹乱土サンプルのひとつは無処理(「ブランク」)のままとした。樹脂硬化後、フィールドの遺構土表面に発生したカビを採取してこれを水で希釈したカビ入り溶液を各サンプル表面に撒布した。各サンプルを温度30℃、湿度90%以上の条件下で促進養生し、本発明による防カビ抑制効果を検討した。
【0019】2.実験結果上記実験の結果を表3に示す。
【表3】

【0020】無処理のブランクのサンプルにおいては、促進養生開始から1週間が経過した時点でカビが発生し始めた。一方、防カビ剤を配合した各樹脂液、および防カビ剤内添のバイオウォーターガードMをそれぞれ含浸させた各サンプルにおいては、養生開始から3ヶ月経過したときにはじめてカビ発生が認められた。このように、本発明の方法により防カビ剤入りのシラン系樹脂を含浸させた土においては、未処理の土に比べて、カビの発生が顕著に抑制されることが確認できた。
【0021】<室内実験その2>1.実験方法上記「室内実験その1」においてカビが発生した各サンプルを用いた。各サンプルにおいて、その表面の1/2の面積について、発生したカビを除去した。その後、上記3種類の防カビ剤をその濃度が2重量%となるように配合した3種類のイソプロピルアルコール液を各サンプルの表面に散布した。上記実験においてバイオウォーターガードMを散布含浸させたサンプルには、同樹脂を散布した。温度30℃、湿度90%以上の条件下で促進養生して、カビ発生の有無を検討した。
【0022】2.実験結果上記実験の結果を表4に示す。
【表4】

【0023】表4からも分かるように、いずれのサンプルについても、養生開始から2ヶ月が経過した後もカビの発生は認められなかった。このように、防カビ剤入り樹脂を含浸させた土の表面に、防カビ剤入り溶液を更に散布して含浸させることによって、カビ発生抑制効果はより顕著なものとなることが確認できた。
【0024】<その他>上記実験では、2重量%の防カビ剤を配合した樹脂およびイソプロピルアルコール液を用いたが、その濃度はこれに限定されない。防カビ剤を多く配合するほど防カビ効果は高くなるが、コストとの関係から約10重量%以下とするのが好適である。また、防カビ効果を適正に発揮させる観点から、濃度は約1重量%以上とするのが好ましい。
【0025】また、樹脂硬化後に散布する防カビ剤入り溶液の溶媒として、イソプロピルアルコールを例示したが、実際には防カビ剤を溶かすことのできる液体であればどのようなものでも構わない。
【0026】また、上述したように、実験対象となる地盤の表面に不織布等の敷物を敷設して樹脂を含浸させる方法は好ましくはあるが、この構成は必須ではない。さらに、上述した例においては、防カビ剤入り樹脂を含浸させた土の表面に、更に防カビ剤入り溶液を散布することとしたが、防カビ剤入り溶液を含浸させる方法は、散布による必要はなく、どのような方法によっても構わない。
【0027】
【発明の効果】本発明の方法により防カビ剤入りのシラン系樹脂を含浸させることによれば、地盤表面におけるカビの発生をほぼ完全に抑制することができる。また、防カビ剤入り樹脂を含浸させた土の表面に、更に防カビ剤入り溶液を含浸させることによって、カビ発生抑制効果はより顕著なものとなる。また、地盤に含浸させる樹脂としてシラン系樹脂を採用したので、地盤のひび割れや地盤表面における結露の発生を抑制することができる。
【出願人】 【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
【出願日】 平成13年2月9日(2001.2.9)
【代理人】 【識別番号】100071283
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 健輔 (外3名)
【公開番号】 特開2002−234802(P2002−234802A)
【公開日】 平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願番号】 特願2001−34018(P2001−34018)