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【発明の名称】 穀物類の虫除け剤
【発明者】 【氏名】吉田 敏治

【要約】 【課題】貯蔵中の米や麦、そば、豆類、トウモロコシ等の穀物、およびこれらの粉や加工品などに寄生するコクゾウムシなどを忌避するのに有効な穀物類の虫除け剤を提供する。

【解決手段】カルダモン、ナツメグ、クローブ、デイル、カレー、タイム、コリアンダー、アモムンム、ミント及びシナモンからなる香辛料群より選ばれた1種以上の粉末又は抽出物もしくは精油を主成分とする虫除け剤であり、特に有効なのは、カルダモン、ナツメグ、シナモンの3種の粉末又は抽出物もしくは精油を主成分として混合した虫除け剤が有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カルダモン、ナツメグ、クローブ、デイル、カレー、タイム、コリアンダー、アモムンム、ミント及びシナモンからなる香辛料群より選ばれた1種以上の粉末又は抽出物もしくは精油を主成分としたことを特徴とする穀物類の虫除け剤。
【請求項2】 カルダモン、ナツメグ、クローブ、アモムンム及びシナモンからなる香辛料群より選ばれた2種以上の粉末又は抽出物もしくは精油を主成分として混合したことを特徴とする穀物類の虫除け剤。
【請求項3】 カルダモン、ナツメグ及びシナモンの粉末又は抽出物もしくは精油を主成分として混合したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の穀物類の虫除け剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、貯蔵中の米(精米及び玄米を含む)や麦、そば、豆類、トウモロコシ等の穀物、又はこれらの粉や加工品(例えば乾麺)などに寄生する害虫を防除する虫除け剤に関する。
【0002】
【従来の技術】香辛料は古くから抗菌、殺菌作用を有し、害虫忌避作用を有することは経験的に知られている。最近、食品添加物に対する毒性への不安や自然食品志向から化学合成保存料を避ける傾向にあり、このため食品の保存に天然香辛料又はその抽出物もしくは精油成分を利用するという多くの提案がなされている。例えば、特開昭58−101670号には、シナモン油、ガーリック油、オニオン油、マスタード油、ピメントペリー油、オレガノ油、カシア油等を袋などの容器に封装した食品の保存法が開示されており、又、特開昭59−132876号公報には、ローズマリー油、シソ油、クローブ、タイム、アリル辛子油等の精油とエチルアルコールとを担体に担持させ、この担体を食品と共に食品容器に収容する食品の保存手段が記載されている。しかしながら、これら公報に記載の発明は、食品としてパン、スポンジケーキ、カステラ、和菓子などの加工食品、魚肉加工品、獣肉加工品等の腐敗性食品を対象としており、しかもこれら腐敗性食品の防かび、抗菌を目的とするものである。すなわち、穀物類を対象としておらず、かつこれら穀物に寄生する害虫を防除することについては開示されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これに対し、最近、貯蔵中の米(精米及び玄米を含む)や麦、そば、豆類、トウモロコシ等の穀物、およびこれらの粉や加工品など(以下穀物類と称する)に害虫が寄生するのを防止する虫除け剤が要請されている。この種穀物類に寄生する害虫の代表例はコクゾウムシ、ココクゾウムシやメイガ類であるが、これら害虫は穀物類を餌として寄生し、保存中の穀物の粒や粉に卵を産み付けて繁殖する。特に、温度、湿度が高くなる春先から繁殖が活発になり、暑中から秋口にかけて発生する確率が高くなる。前記公報に記載された香辛料等は、上記コクゾウムシ、ココクゾウムシやメイガ類等の、穀物類に寄生する害虫を防除するのに有効であるか否か定かでなかった。
【0004】一方、従来、米の虫除け剤に関する特許として特許第2660196号が存在している。この特許は、ニンニクに含まれるアリシンと、唐辛子に含まれるカプサイシンを米の虫除け剤として使用したものである。本発明者は、上記特許に開示されたニンニクや唐辛子以外に、穀物類の防虫作用を奏する香辛料が存在しないか鋭意研究した。この結果本発明に至ったものである。すなわち、本発明は、貯蔵中の米や麦、そば、豆類、トウモロコシ等の穀物、およびこれらの粉や加工品などに寄生するコクゾウムシなどを忌避するのに有効な穀物類の虫除け剤を提供することを目的とする。なお、本発明において穀物類というのは、上記した米や麦、そば、豆類、トウモロコシ等の貯蔵穀物、およびこれらの粉や加工品(例えば乾麺)などを含む。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため請求項1の発明は、カルダモン、ナツメグ、クローブ、デイル、カレー、タイム、コリアンダー、アモムンム(別名:白豆蒄=はくずく)、ミント及びシナモンからなる香辛料群より選ばれた1種以上の粉末又は抽出物もしくは精油を主成分とした穀物類の虫除け剤を提供する。本発明者は、多数ある香辛料について実験したところ、カルダモン、ナツメグ、クローブ、デイル、カレー、タイム、コリアンダー、アモムンム、ミント及びシナモンからなる香辛料群より選ばれた1種以上の粉末又は抽出物もしくは精油成分が、貯蔵穀物類の害虫、例えばコクゾウムシに対する忌避作用が強いことを知見した。また、請求項2の発明は、カルダモン、ナツメグ、クローブ、アモムンム及びシナモンからなる香辛料群より選ばれた2種以上の粉末又は抽出物もしくは精油を主成分として混合した穀物類の虫除け剤を提供する。このような複数の香辛料を混合した混合物であっても、コクゾウムシなどに対する忌避作用が強いことを実験により知見した。この現象は定かでないが、上記複数の香辛料の成分が相乗して害虫の忌避作用を奏するものと考えられる。この発明で好ましい態様は、カルダモン、ナツメグ及びシナモンの粉末又は抽出物もしくは精油を主成分として混合したことである。カルダモン、ナツメグ及びシナモンの3種の成分を同時に用いる場合、最も高い虫除け効果が得られることが判った。
【0006】カルダモンの香気成分は、リモネン、サビネン、ミルセン、リナロール、α−テルピニルアセテート、1,8−シネオールなどが知られている。ナツメグの香気成分は、α−ピネン、サビネン、β−ピネン、デルピネル−4−オール、ゲラニオール、ミリスチシン、エレミシン、サフロール、オイゲノールなどが知られている。さらに、シナモンの香気成分は、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、ピネン、カルオフィレン、o−ヒドロキシなどである。しかしながら、これらの成分のうちどの香気成分が忌避作用を奏するかは定かでない。それぞれの香辛料の成分が複合的に作用して忌避効果を発揮するものと推察される。
【0007】なお、上記香辛料を粉末として使用する場合、香辛料の粉末を粉落ちしない袋に詰めて使用することができる。また、香辛料の成分を精油又は抽出物として用いる場合は、担体に担持させることが望ましい。担体としては紙、布、不織布、デンプン、サイクロデキストリン、セルロース、活性炭、ゼオライト、セピオライト、タルク、セラミック等を使用することができ、これら担体に吸着、含侵、混練させて用いるとよい。香辛料を担持した上記担体は、通気性の袋や容器に収容し、これを穀物と一緒に、穀物を収容した入れ物に収容することによって入れ物内で香辛料の成分が蒸発し、この揮発成分が穀物の虫除けをすることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の実施例について説明する。香辛料の粉末を不織布又はメッシュなどの通気性袋に入れ、これを米と一緒に米びつに収容する。もしくは、この香辛料粉末を収容した通気性袋を、通気孔を開設した紙やプラスチックのケースに収容し、このケースを米と一緒に米びつに入れる。このような使用形態により、香辛料粉末から揮散する揮発成分が米びつ内に拡散し、米に寄生するコクゾウムシを寄せ付けず、又は逃がし、よって米びつに貯蔵している米をコクゾウムシから守る。香辛料としては、本発明者らの実験により、カルダモン、ナツメグ、クローブ、デイル、カレー、タイム、コリアンダー、アモムンム、ミント及びシナモンからなる香辛料群より選ばれた1種以上が有効である。次に、各種香辛料について、コクゾウムシに対する忌避効果を実験により確かめた結果を説明する。
【0009】「実験装置」図1は試験装置を示し、1は天板の大きさが90×180cmの細長いテーブルである。テーブル1の長手方向両端部に、大きさが90×120mmの開閉チャック付きポリ袋2…、3…をそれぞれ5個ずつ並べ、一端側のポリ袋2…を実験区、他端側のポリ袋3…を対照区とする。これら各ポリ袋2…、3…にはそれぞれ先端に直径6mmの小穴4を開け、この小穴4からコクゾウムシが自由に出入りできるようにしてある。各ポリ袋2…、3…は小穴4の開いた端がテーブル1の中央に向くように設置する。
「実験方法」実験区の各ポリ袋2…には、玄米と試料を入れる。試料は香辛料の粉末であり、この粉末を不織布の袋に入れ、香辛料から揮発される臭い成分が不織布の袋を透過してポリ袋2内に拡散するようにしてある。対照区のポリ袋3…には玄米のみを入れ、試料は入れない。テーブル1の中央部にコクゾウムシ5の成虫を放し、このコクゾウムシが実験区のポリ袋2および対照区のポリ袋3に入る数を調べて忌避効果を確認する。さらに、テーブル1の天板を10cm上方から黒色のビニールシート6で覆い、暗黒下でコクゾウムシ5を活動させるものとする。ビニールシート6で覆われた空間の温度を25℃に保ち、テーブル1の中央部にコクゾウムシ5の成虫を250匹放した後、24時間後に実験区及び対照区の各ポリ袋2…、3…に侵入した虫の数を数える。これによりコクゾウムシの忌避効果を調べた。なお、使用した香辛料は、朝岡香辛料株式会社製の粉末香辛料である。
「評価方法」忌避効果を忌避率で示す。すなわち、忌避率=(対照区に侵入した虫の数B−実験区に侵入した虫の数A)×100/(対照区に侵入した虫の数B+実験区に侵入した虫の数A)
で表す。忌避率が100の場合は、全ての虫が実験区を避け(忌避)、対照区のみに侵入したことを意味する。忌避率が0の場合は、香辛料試料に何の反応も示さず、実験区と対照区にそれぞれ同数の虫が侵入したことを示す。忌避率がマイナス(−)の場合は、実験区に虫が誘引されたことを示す。例えば忌避率が90である場合は、95%の虫が対照区に侵入し、5%の虫が実験区に侵入したことを意味する。なお、実験区、対照区のどちらにも侵入しなかった虫の数は計算しない。忌避率が50未満の場合、忌避作用は若干あると認められるものの、安定した忌避効果が得られず、よって忌避率が50以上の場合を有効とする。
【0010】(実験1)実験区の各ポリ袋2…に玄米10gと試料としてカルダモンの粉末5gを入れる。対照区の各ポリ袋3…には玄米10gのみを入れる。その実験結果を表1に示す。
【0011】
【表1】

【0012】この場合、忌避率は83であり、高い忌避効果が認められる。
【0013】(実験2)実験1と同様な実験を、ナツメグ、クローブ、デイル、カレー、タイム、コリアンダー、アモムンム、ミント、シナモン、レモンバーム、オレガノ、ジンジャー、デビル、タラゴン、ローレル、パセリ、メース、アニス、ターメリック、ラベンダー、セロリについてそれぞれ行った。その結果を表2に示す。
【0014】
【表2】

【0015】表2より、忌避率が50以上を示すものは、カルダモン、ナツメグ、クローブ、デイル、カレー、タイム、コリアンダー、アモムンム、ミント、シナモンであり、これらの香辛料は忌避効果があると判断される。これに対し、レモンバーム、オレガノ、ジンジャー、デビル、タラゴン、ローレル、パセリ、メース、アニス、ターメリック、ラベンダー、セロリーは忌避作用が弱いと認められる。
【0016】(実験3)次に、複数の香辛料を組み合わせた場合について同様の実験を行った。実験区の各ポリ袋2…に玄米10gと、試料としてカルダモン粉末5gとナツメグ粉末5gの2種類を入れる。対照区の各ポリ袋3…には玄米10gのみを入れる。前記と同様の試験により表3の結果を得た。
【0017】
【表3】

【0018】この場合、忌避率は81であり、忌避効果が認められる。
【0019】(実験4)実験3と同様な実験を、2種類の香辛料について下記表4の組み合わせで行った。
【0020】
【表4】

【0021】この結果、カルダモン、シナモン、ナツメグ、クローブ、アモムンムの群から選ばれた香辛料の中から2種を用いれば、良好な忌避作用があると認められる。これに対し、ミント、カレー、タイム、コリアンダー、オレガノ、デイルなどは、これらを複数種用いても忌避作用が低いことが確認された。なお、1種類の香辛料の場合に忌避作用を奏するが、これを複数種に混合した場合に忌避作用の低いものがあり、この原因は定かでない。
【0022】(実験5)次に、3種類の香辛料を混ぜた場合について、実験した。すなわち、実験区の各ポリ袋2…に玄米10gと、試料としてカルダモン粉末5gとシナモン粉末5g及びナツメグ粉末5gの3種類を入れる。対照区の各ポリ袋3…には玄米10gのみを入れる。試験の結果、表5を得た。
【0023】
【表5】

【0024】この場合、忌避率は93であり、極めて高い忌避効果が認められる。
【0025】(実験6)実験5と同様な実験を、下記表6の組み合わせで行った。
【0026】
【表6】

【0027】この結果、カルダモン、シナモン、ナツメグ、クローブ、アモムンムの群から選ばれた2種以上の香辛料を用いれば、良好な忌避作用があると認められる。特に、カルダモン、シナモン、ナツメグを混合した場合は、最も効果的であることが確認された。
【0028】
【発明の効果】以上説明した通り本発明によれば、穀物類に寄生する害虫に対し従来の忌避剤に比べて高い忌避作用を奏するとともに、使用している原料が香辛料であるから安全性も高く、食べ物として用いられる穀物類に用いても安心である。
【出願人】 【識別番号】597030464
【氏名又は名称】株式会社アラミック
【識別番号】501088604
【氏名又は名称】吉田 敏治
【出願日】 平成13年1月30日(2001.1.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−226312(P2002−226312A)
【公開日】 平成14年8月14日(2002.8.14)
【出願番号】 特願2001−60886(P2001−60886)