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【発明の名称】 殺菌剤組成物および殺菌剤の安定化方法
【発明者】 【氏名】中島 英博

【氏名】平尾 重延

【要約】 【課題】組成物中で高い安定性を持つハロシアノアセトアミド化合物を含む殺菌剤組成物を提供する。

【解決手段】一般式(I):【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(I):【化1】

(式中、Xは、同一または異なって、ハロゲン原子または水素原子であり、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である)で表されるハロシアノアセトアミド化合物、一般式(II):【化2】

(式中、R2およびR3は、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、R4は水素原子またはメチル基であり、nは1〜3の整数である)で表される低級グリコール系溶剤、および、イソシアヌル酸またはジシアンジアミドを含み、水を含まないことを特徴とする殺菌剤組成物。
【請求項2】 前記低級グリコール系溶剤の分子量が134未満である、請求項1に記載の殺菌剤組成物。
【請求項3】 粘度が、20℃で70mPa・s以下である、請求項1または2に記載の殺菌剤組成物。
【請求項4】 一般式(I):【化3】

(式中、Xは、同一または異なって、ハロゲン原子または水素原子であり、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である)で表されるハロシアノアセトアミド化合物を、イソシアヌル酸またはジシアンジアミドと共に、一般式(II):【化4】

(式中、R2およびR3は、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、R4は水素原子またはメチル基であり、nは1〜3の整数である)で表される低級グリコール系溶剤中に共存させ、水を含ませないことを特徴とする、ハロシアノアセトアミド化合物の安定化方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工業用殺菌剤として有用なハロシアノアセトアミド化合物を含有する殺菌剤組成物に関し、特に、長期間室温以上で保存してもハロシアノアセトアミド化合物の分解およびこれに伴うガスの発生を抑制することが出来る安定性に優れた液状殺菌剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ハロシアノアセトアミド化合物は、紙パルプ工程におけるスライムコントロール剤、工業用デンプン、ラテックスエマルジョン等に混合される防腐剤として産業界で広く使用されている。このようなハロシアノアセトアミド化合物を含む防腐剤は、液状製剤として使用されることが多い。
【0003】しかし、ハロシアノアセトアミド化合物は一般に化学的安定性が良いとは言えず、特に液状製剤にした場合、分解反応が起こり、それに伴ないガスを発生するという問題があった。また、有効成分であるハロシアノアセトアミド化合物含有量を低下させると、有害微生物に対する殺菌能力が低下するという問題があった。
【0004】この分解反応を抑制するために、組成物中でのハロシアノアセトアミド化合物の安定性を向上させる方法が以前から研究されている。例えば、ハロシアノアセトアミド化合物を平均分子量134〜600のポリエチレングリコール類に溶解させる方法が開示されている(特公昭53−5375号公報)。しかしながら、このような分子量134〜600のグリコール系溶剤(例えばポリエチレングリコール200または400)を用いた方法では、ハロシアノアセトアミド化合物の安定性を十分に達成することはできない。さらに、このようなグリコール系溶剤は高分子量であるため、組成物の粘度が高くなり、添加する際に用いるポンプ等の装置中で詰まる、または、流れ難いという問題がある。またハロシアノアセトアミド化合物を、エチレングリコール、または、エチレングリコールおよび水の混合液中に溶解させる方法が開示されている(特開昭61−44804号公報)。この方法のようにエチレングリコールを用い、さらに水を配合させることによってある一定の安定性は得られるものの、ガスを発生し易く、そのため長期保存すると製品缶が膨張してしまうという欠点があった。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】従って本発明の目的は、従来の欠点、すなわちハロシアノアセトアミド化合物の組成物中での分解反応を抑制し、それに伴なうガス発生を低減し、長期間にわたる貯蔵安定性を向上された殺菌剤組成物を提供することである。さらに、組成物の粘度を調節することによって、作業性を向上させた殺菌剤組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、組成物中にイソシアヌル酸またはジシアンジアミドを添加し、水を加えないことで、ハロシアノアセトアミド化合物の組成物中での化学的安定性が向上することを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】従って本発明の前記目的は、一般式(I):【0008】
【化5】

【0009】(式中、Xは、同一または異なって、ハロゲン原子または水素原子であり、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である)で表されるハロシアノアセトアミド化合物、一般式(II):【0010】
【化6】

【0011】(式中、R2およびR3は、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、R4は水素原子またはメチル基であり、nは1〜3の整数である)で表される化合物より選択される低級グリコール系溶剤、ならびに、イソシアヌル酸またはジシアンジアミドを含み、水を含ませないことを特徴とする殺菌剤組成物によって達成される。
【0012】さらに本発明は、前記低級グリコール系溶剤の分子量が134未満である、前記殺菌剤組成物である。
【0013】さらに本発明は、粘度が、20℃で70mPa・s以下である、前記殺菌剤組成物である。
【0014】また本発明の他の目的は、一般式(I):【0015】
【化7】

【0016】(式中、Xは、同一または異なって、ハロゲン原子または水素原子であり、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である)で表されるハロシアノアセトアミド化合物を、イソシアヌル酸またはジシアンジアミドと共に、一般式(II):【0017】
【化8】

【0018】(式中、R2およびR3は、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、R4は水素原子またはメチル基であり、nは1〜3の整数である)で表される低級グリコール系溶剤中に共存させ、水を含ませないことを特徴とする、ハロシアノアセトアミド化合物の安定化方法によって達成される。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明に用いるハロシアノアセトアミド化合物は一般式(I)で表される。
【0020】
【化9】

【0021】式中、Xは、同一または異なって、ハロゲン原子または水素原子であり、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくは塩素原子または臭素原子である。R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、粘度を好適に調整するためには好ましくは水素原子である。
【0022】このようなハロシアノアセトアミド化合物として、具体的には、2−ブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−クロロ−2−ブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−クロロ−3−ニトリロプロピオンアミド、2,2−ジクロロ−3−ニトリロプロピオンアミド、N−メチル−2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、N−プロピル−2−クロロ−2−ブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド等が挙げられ、特に2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)が殺菌性の点で好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0023】一般式(I)で表されるハロシアノアセトアミド化合物の含有量は、殺菌剤組成物に対して5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。ここで含有量が5質量%未満の場合、使用する際に、ハロシアノアセトアミド化合物を有効濃度にするために殺菌組成物をより多く添加しなければならず、それに伴なう輸送費または貯蔵費が嵩み経済的ではない。一方で50質量%を超過する場合、ハロシアノアセトアミド化合物が結晶化し、添加量に見合った効果が得られず、いずれも好ましくない。
【0024】本発明の殺菌剤組成物は、さらにイソシアヌル酸またはジシアンジアミドを共存させることで、ハロシアノアセトアミド化合物の組成物中での安定性をさらに向上させることができる。イソシアヌル酸の含有量は、質量比でハロシアノアセトアミド化合物1に対して、好ましくは0.0005〜0.06、より好ましくは0.003〜0.04、さらに好ましくは0.005〜0.03である。ここで含有量がハロシアノアセトアミド化合物1に対して0.0005未満の場合、安定化効果が低く、一方で0.06を超過する場合、完全に溶解せず、添加量に見合った効果が得られないため、いずれも好ましくない。またジシアンジアミドの含有量は、好ましくは質量比でハロシアノアセトアミド化合物1に対して0.002〜0.5、好ましくは0.003〜0.3、さらに好ましくは0.005〜0.2である。ここでハロシアノアセトアミド化合物1に対して0.02未満の場合、安定化効果が低く、一方で0.5を超過する場合、添加量に見合った効果が得られないため、いずれも好ましくない。イソシアヌル酸およびジシアンジアミドは、それぞれ単独で使用してもよく、二種を併用してもよい。
【0025】本発明で用いられる溶剤は、一般式(II)で表される化合物より選択される低級グリコール系溶剤である。
【0026】
【化10】

【0027】式中、R2およびR3は、同一または異なって、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基であり、粘度を好適に調整するためには好ましくはメチル基またはエチル基である。R4は水素原子またはメチル基であり、nは1〜3の整数である。ここで、nが2または3の場合、R4は同一でも異なっていてもよい。
【0028】一般式(II)で表される低級グリコール系溶剤として、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0029】ここで好ましくは、分子量134未満の低分子量のグリコール系溶剤を用いることであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルである。より好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコールまたはプロピレングリコールである。ここで分子量が134を超過すると、組成物の粘度が高くなり好ましくない。
【0030】このような低級グリコール系溶剤を用いることによって、高分子量のグリコール系溶剤を用いるより、組成物の粘度を低く調製することができる。具体的に組成物の粘度は、好ましくは20℃で70mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下であり、ここで粘度が70mPa・sを超過すると粘度が高くなり、ポンプ内で詰まりやすくなる。
【0031】さらに本発明の殺菌剤組成物は、ハロシアノアセトアミド化合物と共に、殺菌力の相乗効果を奏するような化合物を配合しても良い。このような化合物として例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、3,3,4,4−テトラクロロチオフェン−1,1−ジオキシド、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール、メチレンビスチオシアネート、1,4−(ビスブロモアセトキシ)−2−ブテン、オルトフタルアルデヒド、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。これらの化合物の組成物に対する溶解度はそれぞれ異なるため、好ましい含有量はそれぞれ適宜調節される。
【0032】上述の組成に従うことによって、殺菌効果を下げずに、ハロシアノアセトアミド化合物の高い安定性およびガス発生の抑制を実現し、かつ好適な粘度を有する殺菌剤組成物を調製することができる。
【0033】本発明の殺菌剤組成物は、計量された各成分を混合し、ハロシアノアセトアミド化合物やその他の固形成分が完全に溶剤に溶解するまで混合することによって製造される。
【0034】
【実施例】次に実施例および比較例によって本発明を詳細に説明する。
【0035】実施例1〜29および比較例1〜11の殺菌剤組成物を、表1に示す配合量(質量部)に従い調製した。表中、DBNPAは2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、EGはエチレングリコール、DEGはジエチレングリコール、TEGはトリエチレングリコール、PGはプロピレングリコール、DEMMはジエチレングリコールモノメチルエーテル、DPMMはジプロピレングリコールモノメチルエーテル、DCDAはジシアンジアミド、ICAはイソシアヌル酸を表す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】実施例および比較例の殺菌剤組成物について、以下の試験を行った。調製した殺菌剤組成物10gをガラス製のスクリューバイアルびんに入れ50℃恒温庫内で保管し、経時的に各殺菌剤組成物のサンプルの一部を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドの残存濃度を測定した。それらの残存率を表2に示す。なお、残存率は次式により算出した。
【0039】
【数1】

【0040】式中、XはDBNPAの初期濃度、X’は経過日数時におけるDBNPAの濃度を示す。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】また、実施例および比較例の殺菌剤組成物において、時間経過により発生したガスの量を測定した。各殺菌剤組成物15gを、容量10mlのガラス製のアインホルン発酵管に入れ、50℃恒温庫内で保管し、発酵管内に溜まった発生ガス量をアインホルン発酵管の目盛りによって経時的に目測した。この結果を表3に示す。表中、×は発生ガス量が10ml以上であったことを示す。
【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】表2によると、水を含まない組成の比較例1〜6は、28日経過した時点でハロシアノアセトアミド化合物の残存率が70質量%前後になり、56日経過した時点では50質量%前後にまで低下している。その点、水を含む組成の比較例7〜9の多くは、比較例1〜6に比べれば安定しているが、それでも56日経過した時点ではいずれも70質量%を下回っている。また表3によると、いずれの比較例もガスを発生している。それに比べて、実施例は50日を超過しても80質量%前後、ほとんどはそれ以上のDBNPA残存率を維持しており、かつガスの発生もほとんど観察されていない。また、いずれの実施例の組成物も、70mPa・s未満の好適な粘度を有していた。
【0047】
【発明の効果】本発明のハロシアノアセトアミド化合物を含む殺菌剤組成物は、イソシアヌル酸またはジシアンジアミド、および、低級グリコール系溶剤を用い、さらに水を組成に含まないことによって、ハロシアノアセトアミド化合物の分解、それに伴なうガス発生を著しく抑制することができる。そのため、高濃度のハロシアノアセトアミド化合物を含む組成物を室温以上でも安定して長期保存することができる。
【0048】さらに本発明の殺菌剤組成物は粘度が低いため、ポンプ等による添加がスムーズになり、作業効率を高めることができる。
【出願人】 【識別番号】390035873
【氏名又は名称】東京ファインケミカル株式会社
【出願日】 平成13年2月6日(2001.2.6)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄 (外4名)
【公開番号】 特開2002−226307(P2002−226307A)
【公開日】 平成14年8月14日(2002.8.14)
【出願番号】 特願2001−30045(P2001−30045)