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【発明の名称】 陸棲軟体動物忌避剤
【発明者】 【氏名】野上 竜一郎

【氏名】北 陽都

【氏名】水島 健一

【要約】 【課題】安全で薬効が長期間持続し、より強い忌避効果を効果的に発揮する陸棲軟体動物忌避剤を提供する。

【解決手段】椿油かすにタンニン類を含む生薬を配合して調製した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 椿油かすに、陸棲軟体動物に対する忌避効果を有する生薬を配合して調製した陸棲軟体動物忌避剤。
【請求項2】 椿油かすにタンニン類を含む生薬を配合して調製した陸棲軟体動物忌避剤。
【請求項3】 請求項1において、前記生薬が、ゴバイシ(五倍子)、キジツ(枳実)、クジン(苦参)、サイコ(柴胡)、アセンヤク(阿仙薬)、アロエ、ゲンノショウコ、チモ(知母)、ニンドウ(忍冬)、ヨウバイヒ(楊梅皮)、ザクロヒ(石榴皮)、セッコツボク(接骨木)、チクセツニンジン(竹節人参)、トウジン(党参)の生薬であり、これらのうち1種又は2種以上が椿油かすに配合されている陸棲軟体動物忌避剤。
【請求項4】 請求項1又は2又は3において、椿油かすに対する生薬の配合比率が0.1〜10.0重量%である陸棲軟体動物忌避剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ナメクジ類やマイマイ類などの陸棲軟体動物に対して強い忌避効果を発揮する陸棲軟体動物忌避剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ナメクジ類や蝸牛などのマイマイ類は、植物の新芽、花、葉などを広範囲にわたって食害し、野菜、椎茸、花卉などに大きな被害を及ぼす害虫である。このため、農業、花卉園芸、家庭園芸などの分野では、その駆除が大きな課題となっている。
【0003】これらナメクジ類やマイマイ類などによる被害を防ぐために、従来では、メタアルデヒドを主成分とする薬剤が使用されている。この薬剤は、殺虫を目的とするものであって、ナメクジ類などに対して強い薬効を有しているが、植物に付着した場合は植物そのものに悪影響を及ぼすだけではなく、土壌にも悪影響を与える。また、有害であるため、散布などの取り扱い時には人体への接触を避ける必要があり、特に家畜やペットなどに対しても配慮する必要がある。しかも、散水や降雨によって流出するので、効果が一過性であり、また流出した周辺環境に薬害を及ぼす恐れもある。
【0004】そこで、天然産物である椿油かすを用いた忌避剤が提案されている(特開平8−175925号公報)。この椿油かすは、椿の種子から搾油した後の搾りかすであって、これに含まれる椿サポニン成分が陸棲軟体動物に対し忌避効果を発揮する。また、椿油かすは天然産物であるので、人体、植物、家畜などに対して安全で、土壌などに対しても悪影響を与えない利点があり、しかも散水や降雨があっても薬効が長期間持続する利点も有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記椿油かすは、以上のような各種の利点は有するものの、陸棲軟体動物に対する忌避効果は十分とは言えない。このため、農業や花卉園芸業界などからは、安全で薬効が長期間持続し、より強い忌避効果を発揮する忌避剤が要求されている。
【0006】本発明者は、以上のような要求に基づいて研究開発を続けた結果、薬用として人体にも用いられているタンニン類(例えばピロガロールタンニンやカテコールタンニン)を含有する生薬が、陸棲軟体動物に対して忌避効果を発揮することを知った。そこで、本発明の目的は、上記椿油かすにタンニン類を含有する生薬を配合することにより、両者が相まって安全で薬効が長期間持続し、より強い忌避効果を効果的に発揮する陸棲軟体動物忌避剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の陸棲軟体動物忌避剤は、椿油かすに陸棲軟体動物に対する忌避効果を有する生薬を配合して調整する。生薬としては、主にタンニン類を含む生薬を配合して調製する。
【0008】この忌避剤は、生薬に含まれる主にタンニン類の成分が陸棲軟体動物に対して忌避効果を発揮する。つまりピロガロールタンニンなどのタンニン類の成分等が、ナメクジなどの体表のゼラチン質と結合して、その行動を阻害するので、忌避効果をもたらす。しかも、前記タンニン類の成分と椿油かすが含有する椿サポニン成分と相俟って陸棲軟体動物に対してより強い忌避効果を発揮し、これにより植物に対する陸棲軟体動物による食害が効果的に防がれる。また、前記椿油かすと生薬は何れも天然物であるので、人体、植物、家畜などに対して安全で、土壌や周辺環境などに対しても悪影響を与えることがない。しかも、椿油かすは散水や降雨があっても流出しにくいので、これに前記生薬を混合することによって前記椿サポニン成分やタンニン類の成分による薬効が長期間持続(約1か月程度)する。
【0009】前記生薬としては、ゴバイシ(五倍子)、サイコ(柴胡)、アセンヤク(阿仙薬)、ゲンノショウコ、チモ(知母)、ニンドウ(忍冬)、ヨウバイヒ(楊梅皮)、ザクロヒ(石榴皮)、セッコツボク(接骨木)、チクセツニンジン(竹節人参)、トウジン(党参)などのタンニン類を含有する生薬及びこれらの生薬と同じく忌避効果を有するキジツ(枳実)、クジン(苦参)、アロエの生薬が用いられ、これらのうち1種又は2種以上を椿油かすに配合することが好ましい。上記の各生薬は、何れも忌避効果を有しているが、なかでも五倍子と楊梅皮は比較的強い忌避効果を発揮する。そして、これらの生薬を椿油かすに配合することによって、所期目的の忌避剤が得られる。
【0010】前記椿油かすに対する生薬の配合比率は0.1〜10.0重量%とすることが好ましい。この配合比率とすれば、安全で薬効が長期間持続し、より強い忌避効果を発揮する忌避剤の低価格での提供が可能となる。前記生薬の配合比率が0.1重量%未満であると、忌避剤としての薬効効果が不十分となり、一方、10.0重量%を越えると、もはや効果に差は見られないばかりか、生薬は高価であるので忌避剤の低価格での提供が行えない。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の陸棲軟体動物忌避剤を具体的な実施例を挙げて説明する。なお、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例1供試動物:チャコウラナメクジ評価方法:図1に示すように、目盛付きのガラスピペット1を用い、その中央に目印として幅10mmの白色ビニルテープ2を巻付け、このテープ2の左右45mmの位置に両面テープ3を幅20mmとなるように巻付け、この両面テープ3の上に忌避剤4を固定した。そして、供試動物(チャコウラナメクジ)5を中央のテープ2上に静かに置き、動き始めてから5秒毎に頭の前端位置をピペット1の目盛を見てグラフとして記録した。ここで、頭の前端とは、刺激に敏感な触角を除く最前部を意味している。
忌避剤:椿油かす100重量%に対し、タンニン類を含有する生薬である五倍子0.5重量%を配合した粉末状のものを用いた。ここで用いた椿油かすは、椿の種子から搾油した後の搾りかすであり、また五倍子は、ウルシ科のヌルデの木にヌルデノミミフシアブラムシが付けた刺し傷によって生じる虫コブを乾燥して粉末化したものである。
評価結果は、図2のグラフに示す通りである。同図及び後述の各図は、供試動物の実際の挙動軌跡を示している。
【0012】実施例2供試動物及び評価方法は、実施例1と同様にして行った。
忌避剤:椿油かす100重量%に対し、タンニン類を含有する生薬である柴胡0.5重量%を配合した粉末状のものを用いた。この柴胡は、セリ科のミシマサイコの根を乾燥して粉末化したものである。
評価結果は、図3のグラフに示す通りである。
【0013】実施例3供試動物及び評価方法は、実施例1と同様にして行った。
忌避剤:椿油かす100重量%に対し、タンニン類を含有する生薬であるゲンノショウコ0.5重量%を配合した粉末状のものを用いた。
評価結果は、図4のグラフに示す通りである。
【0014】実施例4供試動物及び評価方法は、実施例1と同様にして行った。
忌避剤:椿油かす100重量%に対し、タンニン類を含有する生薬であるチモ0.5重量%を配合した粉末状のものを用いた。チモはユリ科のハナスゲの根茎を乾燥し粉末化したものである。
評価結果は、図5のグラフに示す通りである。
【0015】実施例5供試動物及び評価方法は、実施例1と同様にして行った。
忌避剤:椿油かす100重量%に対し、タンニン類を含有する生薬であるニンドウ0.5重量%を配合した粉末状のものを用いた。ニンドウはスイカズラ科のスイカズラの葉および茎を乾燥し粉末化したものである。
評価結果は、図6のグラフに示す通りである。
【0016】実施例6供試動物及び評価方法は、実施例1と同様にして行った。
忌避剤:椿油かす100重量%に対し、タンニン類を含有する生薬であるヨウバイヒ0.5重量%を配合した粉末状のものを用いた。ヨウバイヒはヤマモモの樹皮を乾燥し粉末化したものである。
評価結果は、図7のグラフに示す通りである。
【0017】実施例7供試動物及び評価方法は、実施例1と同様にして行った。
忌避剤:椿油かす100重量%に対し、忌避効果を有する生薬であるキジツ0.5重量%を配合した粉末状のものを用いた。キジツはダイダイの未熟果実を乾燥し粉末化したものである。
評価結果は、図8のグラフに示す通りである。
【0018】実施例8供試動物及び評価方法は、実施例1と同様にして行った。
忌避剤:椿油かす100重量%に対し、忌避効果を有する生薬であるクジン0.5重量%を配合した粉末状のものを用いた。このクジンは、豆科のクララの根を乾燥して粉末化したものである。
評価結果は、図9のグラフに示す通りである。
【0019】以上の各実施例においては、何れも供試動物が忌避剤に接触すると、忌避剤を避けるように反転することから、これらの忌避剤が優れた忌避効果を発揮することが判断できた。特に、実施例1においては、供試動物が忌避剤に接触した後に激しくもがくので、非常に優れた忌避効果を発揮する。
【0020】以上の忌避剤は、粉末状で使用してもよいが、直径3〜10mm程度の大きさに造粒すれば一層長期にわたる忌避効果を発揮する。
【0021】
【発明の効果】以上のように、本発明の陸棲軟体動物忌避剤によれば、陸棲軟体動物に対して強い忌避効果を発揮するので、植物に対する陸棲軟体動物による食害を効果的に防ぐことができる。また、前記忌避剤の成分である椿油かすと生薬は、何れも天然産物であるので、人体、植物、家畜などに対して安全で、土壌や周辺環境などに対しても悪影響を与えることはない。しかも、椿油かすは散水や降雨があっても流出しにくいので、これに前記生薬を配合することによって前記椿油かすの椿サポニン成分と前記生薬の忌避効果を有するタンニン類等の成分の薬効を長期間持続できる。
【出願人】 【識別番号】000159412
【氏名又は名称】吉原製油株式会社
【出願日】 平成13年1月22日(2001.1.22)
【代理人】 【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄 (外2名)
【公開番号】 特開2002−212016(P2002−212016A)
【公開日】 平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願番号】 特願2001−12987(P2001−12987)