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【発明の名称】 切り花用前処理剤
【発明者】 【氏名】岡 准慈

【氏名】坂 健一

【氏名】池田 政文

【氏名】森山 智子

【要約】 【課題】花色の退色や保存液の濁り、あるいは花持ち性の悪化の問題を改善し得る、従来の前処理剤よりも高い鮮度保持効果を有する切り花用前処理剤を提供する。

【解決手段】1種又は2種以上の糖0.3〜0.8重量%、1種又は2種以上のカリウム塩をKOとして100〜1000ppm及びアルミニウムもしくは亜鉛の塩またはこれらの含水物より選ばれる1種または2種以上の化合物をAl又はZnとして1〜30ppm有効成分として含有することを特徴とする切り花用前処理剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 1種又は2種以上の糖0.3〜0.8重量%、1種又は2種以上のカリウム塩をKOとして100〜1000ppm及びアルミニウムもしくは亜鉛の塩またはこれらの含水物より選ばれる1種または2種以上の化合物をAl又はZnとして1〜30ppm有効成分として含有することを特徴とする切り花用前処理剤。
【請求項2】 更に配糖体を含有する請求項1記載の前処理剤。
【請求項3】 更に界面活性剤を含有する請求項1〜2記載の前処理剤。
【請求項4】 請求項1〜3の前処理剤の約1.2〜333.3倍濃度の有効成分を配合した切り花用前処理剤の原液。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、切り花用前処理剤に関する。特にバラに優れた効果を有する前処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術】日本は世界有数の切り花消費国であり、その生産、流通、消費の過程における鮮度保持が重要な課題となっている。切り花の老化メカニズムとしては、微生物や水の汚濁による水揚げの低下、エネルギー源の枯渇による植物体内成分の合成量低下、植物ホルモンであるエチレンの作用等が知られている。これらを背景として、これまでに各種の鮮度保持剤が提案されている。
【0003】例えば、特開昭49−18653号には、ブドウ糖及び硫酸アルミニウム等を配合した保存剤が提案されている。また特開平2−108601号にはアブシジン酸、硫酸アルミニウム及び糖類を有効成分として含有するバラ切り花用の鮮度保持剤が提案されている。該公報によれば、アブシジン酸の添加は開花を抑制することにより延命を図る目的で行われ、糖は花の栄養剤として作用し、開花促進、ブルーイング防止作用があるとされている。また特開昭64−61401号公報には、代謝性糖類、ホスホン酸類及び硫酸アルミニウムを配合したバラ切り花用延命剤が提案されている。また特開平6−199602号公報には、代謝性糖類、クエン酸、硫酸アルミニウム、8−ヒドロキシキノリン硫酸塩及び酢酸アンモニウムを配合した切り花用延命剤が提案されている。更に特開平6−183902号には、2−カルボキシエチルホスホン酸及び硫酸アルミニウム、塩化カルシウム、サッカロース等を配合したバラ切り花用保存剤が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら従来技術にはカリウム塩の配合による鮮度保持効果の向上については一切言及がなく、その鮮度保持効果はいずれも未だ十分満足できるものではなかった。
【0005】このような観点から本出願人は優れた鮮度保持効果を有する切り花鮮度保持剤として1種又は2種以上の糖0.8〜2重量%、1種又は2種以上のカリウム塩をKOとして100〜1000ppm及びアルミニウムもしくは亜鉛の塩またはこれらの含水物より選ばれる1種又は2種以上の化合物をAl又はZnとして1〜30ppm有効成分として含有することを特徴とする切り花用鮮度保持剤(特願平10−134366号)を提案した。この鮮度保持剤は観賞段階での一般消費者による使用が最も効果的であった。
【0006】ところで、現在、花卉生産者もしくは集出荷業者が出荷前に処理するために、各種の前処理剤が使用されているが、花色の退色や保存液の濁り、出荷後の花持ち性の悪化などの問題が残されていた。
【0007】本発明の課題は、花色の退色や保存液の濁り、あるいは花持ち性の悪化の問題を改善し得る、従来の前処理剤よりも高い鮮度保持効果を有する切り花用前処理剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は1種又は2種以上の糖0.3〜0.8重量%、1種又は2種以上のカリウム塩をKOとして100〜1000ppm及びアルミニウムもしくは亜鉛の塩またはこれらの含水物より選ばれる1種または2種以上の化合物をAl又はZnとして1〜30ppm有効成分として含有することを特徴とする切り花用前処理剤に係る。
【0009】本発明の前処理剤は本出願人の先願の鮮度保持剤と比較すると、より低い濃度の糖を含有することを特徴とし、一方、先願の明細書においては本発明のような糖濃度が0.8重量%未満では効果が不十分であるとされ、このような点より、本発明は先願発明とは相異すると共に、先願発明に対して進歩性をも有するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の切り花用前処理剤において、糖としては、果糖、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖、マンニトール、ソルビトール、トレハロース等を用いることができるが、花色の保持及び葉の萎凋防止の観点からは果糖、ブドウ糖、ショ糖、トレハロースが好ましい。中でも果糖を用いた場合に最も優れた鮮度保持期間を得ることができる。
【0011】これら糖類の濃度としては、0.3〜0.8重量%、好ましくは0.5〜0.8重量%とするのがよい。尚、本明細書において糖類の濃度は屈折糖度計により測定した値(Brix.糖度)を意味する。糖類の濃度が0.8重量%以上になると切り花の花弁の展開を早め、花卉小売店、花束加工場、量販店等の段階において、切り花の商品価値を損なうおそれがある。また、糖類配合量は0.3重量%未満では効果が不十分であり好ましくない。
【0012】本発明の前処理剤において、カリウム塩の具体例としては、塩化カリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、臭化カリウム、臭素酸カリウム、ヨウ化カリウム等のカリウム塩が挙げられる。カリウム塩の配合は、花色と花弁の弾力性を保持する効果があり、また芳香性の保持と増大に効果がある。カリウム塩の中でも塩化カリウムと炭酸カリウムがその鮮度保持効果の点で好ましく、塩化カリウムが特に好ましい。カリウム塩の配合濃度としては、KOとして100〜1000ppm、好ましくは250〜800ppmとするのがよい。カリウム塩の配合量がKOとして1000ppmを超えると葉への薬害が発生し観賞性を損なうおそれがあり、100ppmを下回ると花弁の弾力性の向上が期待できないので好ましくない。
【0013】本発明においては、アルミニウムもしくは亜鉛の塩またはこれらの含水物より選ばれる1種又は2種以上の化合物をAl又はZnとして1〜30ppm、好ましくは2〜20ppm、更に好ましくは2〜10ppm配合する。アルミニウム化合物及び亜鉛化合物を併用する場合は、Al成分のAlとしての配合量とZn成分のZnとしての配合量の合計が1〜30ppmとなるように配合する。これらアルミニウム化合物としては硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等、亜鉛化合物としては塩化亜鉛等が挙げられるが、中でも硫酸アルミニウムが特に好ましい。アルミニウム化合物又は亜鉛化合物の配合量がAl又はZnとして1ppmを下回ると鮮度保持効果が得られなくなるため好ましくない。
【0014】他方、糖及びカリウム塩とともにアルミニウム化合物又は亜鉛化合物を用いる場合、そのAl又はZnとしての濃度が10ppmを超えて濃くなっても鮮度保持効果を改善する効果は殆どなく、20ppmを上回ると却って低下し、30ppm以上となると、鮮度保持剤としての効果を大きく損なう程度に鮮度保持効果が低下してしまうので好ましくない。斯かる現象は特にバラについて顕著に見られ、その原因は明らかではないが、アルミニウム化合物や亜鉛化合物自体の薬害、及びこれらと糖類、カリウム塩等との相互作用による薬害が考えられる。
【0015】本発明の前処理剤には必要に応じて配糖体を配合することができる。配糖体としては例えばサポニン、ビタミンP、フロリジン、アデノシン、グアノシン、シチジン、からし油配糖体等を例示できる。これらのうちサポニンが特に好ましい。これら配糖体を配合した前処理剤は、後処理剤としても十分に鮮度保持効果を発揮しうる。
【0016】配糖体の配合量としては4ppm以下が好ましく、特に0.1〜3ppm、更には0.5〜1ppm程度とするのが良い。配糖体を配合することにより更に鮮度保持期間を延長し、また、花色、葉の状態を良好に保つことができる。
【0017】また本発明の前処理剤には必要に応じて界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては例えば、4級アンモニウム塩、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルアミドプロピルベタイン等を例示できる。これらのうち第4級アンモニウム塩が特に好ましい。界面活性剤の配合量は0.1〜100ppm、好ましくは0.5〜10ppm程度とするのが良い。界面活性剤を配合することにより水あげを促進し、花色、葉の状態を良好に保つことができる。
【0018】本発明の前処理剤には、各種殺菌剤を1種又は2種以上配合して用いることができる。斯かる殺菌剤としては、ピリジン−2−チオール−1−オキシドナトリウム塩等の4級アンモニウム塩、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン類、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、8−ヒドロキシキノリン、チアベンダゾール、ナトリウム−N−クロロ−パラトルエンスルホナミド−トリ−ハイドレート、硝酸銀、塩素化合物、安息香酸ナトリウム等を例示できる。殺菌剤の配合量としては、0.1〜600ppm、好ましくは1.0〜10ppm程度とするのがよい。これら殺菌剤の中でも、切り花の鮮度保持効果の点ではピリジン−2−チオール−1−オキシドナトリウム塩及びイソチアゾリン類が優れている。殺菌剤としてピリジン−2−チオール−1−オキシドナトリウム塩又はイソチアゾリン類を1種又は2種以上用いる場合、配合量は0.1〜50ppm程度、好ましくは0.1〜10ppmとするのが好ましい。これら殺菌剤は、配合に先立ち予め水やアルコール等の有機溶媒に溶解させて用いることができる。
【0019】本発明の前処理剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、クエン酸、カルボン酸等のpH調整剤、6−ベンジルアミノプリン(BA)、ジベレリン、アブシジン酸、ナフチルフタル酸等の植物成長調整剤、チオ硫酸銀錯塩(STS)、アミノオキシ酢酸(AOA)、シスプロペニルホスホン酸等のエチレン合成阻害剤、各種ビタミン等の生理活性物質、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール等の有機溶媒等を併用することができる。特にSTS、AOAの少なくとも1つ以上と併用すると観賞時において、開花ステージが十分に進行し、且つ観賞期間が延長され好ましい。併用の形態としては同時混合でも或いは順次使用でもいずれでも良い。
【0020】本発明の前処理剤は、各種の溶媒、好ましくは水に各有効成分の所定量を溶解させて製造することができる。もっとも、本発明の前処理剤は、流通、保存の便宜のため、所定濃度の約1.2〜333.3倍の有効成分を配合して製剤、包装し、使用時に所定倍の水で希釈して規定濃度として用いることもできる。また本発明の前処理剤は、その配合成分に油状物、液状物を含まない場合には、粉末状、顆粒状、錠剤状として、使用時に所定量の水で希釈する形態で使用することができる。
【0021】本発明の前処理剤は、例えば花卉生産者、集出荷業者等の段階での前処理に使用する。これによりより高い鮮度保持効果を発揮し、長い品質保持期間を得ることが可能となる。
【0022】本発明の前処理剤は、バラ、カスミソウ、カーネーション、トルコギキョウ、ガーベラ、ダリア、アルストロメリア、洋ラン類等各種の花卉類に効果を有するが、特にバラに対する効果が極めて優れている。本発明の前処理剤を使用した場合、使用しなかった場合に比較して切り花の延命効果があるのはいうまでもないが、加えて花色や葉色の美しさが保持され、高品質な切り花を提供することができる。
【0023】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明につき更に詳細に説明する。なお単に%は重量%を示す。なおNAPT−40はピリジン−2−チオール−1−オキシドナトリウム塩40%溶液である。切り花の鮮度保持試験は以下の方法により行った。
【0024】試験例1対象切り花:バラ(ローテローゼ)
試験方法:徳島県内のバラ園から入手したバラを40cmに水切りし、下葉除去を行い、開花ステージを2に統一して供試した。前処理液を500ml調整し、バラを各処理区5本ずつ浸漬し、5℃で種々の時間前処理を行った。その後、22℃で24時間乾式条件下で保存し、水道水に生け直し、22℃で経時的に観察した。
【0025】評価方法1)開花度: 0…ベントネック落下、しおれ1…かたい2…花弁がゆるむ3…1〜2枚の外側花弁が展開4…3〜5枚の外側花弁が展開5…内側花弁が展開開始6…満開7…ろ芯、中心部が見える2)花色:22℃で水道水に生け直してから、5日後に調査した。
5…非常に優れていた4…優れていた3…問題なし2…軽度のブルーイング1…重度のブルーイング【0026】3)葉の状態:22℃で水道水に生け直してから、5日後に調査した。
5…ハリ、ツヤがあり優れていた4…優れていた3…問題なし2…軽度のしおれ、薬害1…顕著なしおれ、乾燥、薬害4)ベントネック発生率:22℃で水道水に生け直してから、5日後に調査した。
5)生け水中の生菌数:バクテリアチェッカー EASICULT TTC(Orion Diagonostica Inc.)により細菌数を測定した。
6)鮮度保持日数:22℃で水道水に生け直してから、花弁のブルーイング、ベントネック等の萎凋等で観賞価値が無くなるまでの期間とした。
【0027】実施例1水中に、果糖0.3%、塩化カリウム(KOとして315ppm)、硫酸アルミニウム(Alとして5ppm)、NAPT−40(NAPTとして10ppm)を含む切り花用前処理剤を作成した。
【0028】実施例2果糖濃度を0.5%にした以外は実施例1と同様にして切り花用前処理剤を作成した。
【0029】実施例3果糖濃度を0.8%にした以外は実施例1と同様にして切り花用前処理剤を作成した。
【0030】比較例1〜4果糖濃度をそれぞれ0、0.1、1.0及び2.0%にした以外は実施例1と同様にして切り花用前処理剤を作成した。
【0031】実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた前処理剤を用いて行った鮮度保持試験結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】表1の結果より実施例1〜3は24hr乾式保存直後の開花度、花色、葉の状態の全てにおいて良好であった。一方比較例1〜2は花色、葉の状態が劣っていた。比較例3〜4は24hr乾式保存直後の開花度が実施例よりも数値が若干大きいが、この数値の差は業者からすれば大きな差である。
【0034】実施例4〜6サポニンをそれぞれ0.1、0.5及び1.0ppm更に配合した以外は実施例1と同様にして切り花用前処理剤を作成した。実施例4〜6で得られた前処理剤を用いて行った鮮度保持試験結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】表2の結果より実施例4〜6は花色、葉の状態及び鮮度保持期間の全てにおいて良好であった。
【0037】比較例5水中に、ショ糖1.0%、8−ヒドロキシキノリン硫酸塩(8−HQS 100ppm)を含む切り花用前処理剤を作成した。
【0038】比較例6チオ硫酸銀錯塩(STS 0.2mM)を含む水溶液からなる切り花用前処理剤を作成した。
【0039】比較例7水道水のみからなる前処理剤を作成した。
【0040】実施例6、比較例5〜7で得られた前処理剤を用いて行った鮮度保持試験結果を表3〜4に示す。24時間後は出荷から花屋に届いた頃を想定し、5日後は消費者に届いた頃を想定している。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】実施例6では、開花度及び葉の状態が良好で、ベントネックの発生及び生菌も無く、鮮度保持期間も長期であった。比較例5は24時間後の開花度が大き過ぎ、葉の状態も劣り、さらにベントネック発生率が高く生菌数も多く、鮮度保持期間も短かった。比較例6及び7は5日後の開花度が小さく、栄養不足を示し、葉の状態も劣り、さらにベントネックの発生率が高く、生菌数も多く、鮮度保持期間も短かった。
【0044】
【発明の効果】本発明により、花色の退色や保存液の濁り、あるいは花持ち性の悪化の問題を改善することができ、優れた鮮度保持効果を有する切り花用前処理剤を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
【出願日】 平成13年1月24日(2001.1.24)
【代理人】 【識別番号】100081536
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 巌
【公開番号】 特開2002−212002(P2002−212002A)
【公開日】 平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願番号】 特願2001−15241(P2001−15241)