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【発明の名称】 害虫忌避剤
【発明者】 【氏名】川上 真人

【要約】 【課題】高い忌避作用を有し、且つ安全性に優れると共に、人に対しては臭気などで不快に感じさせることなく、屋内でも屋外でも安心して使用できるアリ、ゴキブリ類の忌避剤の提供。

【解決手段】式(I)から(III)までのいずれかの式で表わされる化合物の1種または2種以上を有効成分として含有する害虫の忌避剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下式(I)から(III)までのいずれかの式で表わされる化合物の1種または2種以上を有効成分として含有する害虫の忌避剤。
【化1】

(式中、Phはフェニル基又はハロゲン置換フェニル基、Rは水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。)
【化2】

(式中、Phはフェニル基又はハロゲン置換フェニル基、Rは炭素原子数1〜3のアルキレン基を表す。)
【化3】

(式中、Phはフェニル基又はハロゲン置換フェニル基、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項2】 害虫が昆虫類である請求項1に記載の忌避剤。
【請求項3】 害虫がアリ類またはゴキブリ類である請求項2に記載の忌避剤。
【請求項4】 Ph,Ph及びPhのいずれか1又は全てがフェニル基である請求項1から3までのいずれか1項に記載の害虫の忌避剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、ハエ類、蚊類、ゴキブリ類、シラミ類などの昆虫、ダニ類その他の節足動物などに含まれる害虫の忌避剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ハエ類、蚊類、ゴキブリ類、シラミ類などの昆虫、ダニ類その他多様な虫類に含まれ、人間居住環境を汚染し、伝染病を媒介する虫が知られており、それらのある種のものが害虫として駆除の対象となっていた。
【0003】近年、なかでもアリ類、ゴキブリ類が不快害虫として駆除の対象となってきている。従来、これらアリ類、ゴキブリ類の忌避剤としては、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤をはじめとする多くの殺虫剤が知られており、特にN,N−ジエチル−m−トルアミド(以下、DEETと略記する)は優れた忌避剤として広く使用されている。しかしその効果は限定的であり、十分満足できるものではなく、さらなる忌避剤の開発が広く試みられている。アリ類、ゴキブリ類は主として家屋内が駆除対象区域となるため、前記の殺虫剤の毒性や人間環境の汚染も問題となっている。
【0004】上記のような観点から、天然精油又はその成分による忌避剤が提案されている。アリ類の忌避剤としては、例えば、特開平1−294601号公報及び特開平4−288003号公報には天然テルペノイドモノマー、これらの低重合オリゴマー又は低共重合オリゴマーがゴキブリやイエシロアリに対して忌避効果を示すことが開示されており、特開平4−321613号公報にはカヤツリグサ科植物からの抽出物がアズマオオズカアリに対して忌避効果を示すことが開示されており、特開平5−255007号公報にはボルネオール又はイソボルネオールがアリの方向感覚を狂わす効果を有することが記載されている。また特開平10−130114号には、天然精油であるオークモス、オレンジフラワー油、サンダルウッド油等がアリに対して忌避効果を示すことが記載されている。またゴキブリについては、前記特開平10−130114号に、天然精油であるオレンジフラワー油、ゲラニウム油、タイムホワイト油等が忌避効果を示すことが記載されている。
【0005】これらの物質は安全性の点においては問題はないのであるが、忌避効果は必ずしも満足すべきものではなかった。また、天然精油を使用した場合、精油の収穫時期や産地により含有成分が異なる場合があり、有効成分を特定しその含有量を把握していないと、忌避効果の強さ、持続性などに差異が生じるおそれがある。このためDEETが比較的広く用いられてきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらDEETのアリ類に対する効果は主に接触的忌避効果であり、非接触的に一定の空間内でアリ類を寄せつけない空間的忌避効果はあまり期待できないという欠点があった。特に大型のアリに対してはその接触的忌避効果さえも満足できるものではなかった。また、ゴキブリ類に対するDEETの効果も接触的忌避効果であり、空間的忌避効果はなく、接触面以外からのゴキブリ類の侵入を阻止できないという欠点があった。このため、空間的忌避効果を有し、その効果が持続しうるアリ、ゴキブリ類に対する忌避剤が強く望まれていた。
【0007】即ち、害虫、特にゴキブリ類及びアリ類に対して、高い忌避効果を有し、低濃度でも高い忌避効果を持続することができ、しかも人間に対する安全性が高い忌避剤が望まれ、特に一定空間内における、アリ類に対する空間的忌避効果に優れ、その侵入を持続的に阻止できると共に、接触的忌避効果にも優れたアリ類の忌避剤が望まれていた。さらに、上記のような高い忌避作用を示し且つ安全性に優れると共に、人に対しては臭気などで不快に感じさせることなく、屋内でも屋外でも安心して使用できるアリ類の忌避剤が望まれていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、下式(I)から(III)までの式のいずれかで表わされる化合物の1種または2種以上を有効成分として含有する害虫の忌避剤に関し、特にゴキブリ類またはアリ類に有効な害虫忌避剤に関する。
【0009】
【化4】

【0010】(式中、Phはフェニル基又はハロゲン置換フェニル基、Rは水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。)
【0011】
【化5】

【0012】(式中、Phはフェニル基又はハロゲン置換フェニル基、Rは炭素原子数1〜3のアルキレン基を表す。)
【0013】
【化6】

【0014】(式中、Phはフェニル基又はハロゲン置換フェニル基、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の式(I)で表わされる化合物としては、蟻酸シンナミル、酢酸シンナミル、プロピオン酸シンナミル、イソ酪酸シンナミル、酪酸シンナミルなどを挙げることができる。この中で例えば酢酸シンナミルは、従来香料の保留剤として知られている化合物であり、カシア油、シンナモン油、ヒヤシンス油等に含まれている。また、シンナミルアルコールを酢酸で、触媒を用いてエステル化することにより合成することができる。他のシンナミルアルコールのエステル、例えば蟻酸シンナミル、プロピオン酸シンナミル、イソ酪酸シンナミル、酪酸シンナミルも同様に知られており、市場で容易に入手することができる。
【0016】本発明の式(II)で表わされる化合物としては、フェニルメチルメチルケトン、フェニルエチルメチルケトン、フェニルプロピルメチルケトンなどを挙げることができる。特にフェニルメチルメチルケトン、フェニルエチルメチルケトンが良好である。
【0017】式(III)で表わされる化合物としては、スチリルメチルケトン、スチリルエチルケトン、スチリル−n−プロピルケトン、スチリルイソプロピルケトン、スチリル−n−ブチルケトン、スチリル−sec−ブチルケトン、スチリルイソブチルケトン、スチリル−tert−ブチルケトンなどを挙げることができる。特にスチリルメチルケトン、スチリルエチルケトンが良好である。このうちスチリルエチルケトンは、香料としても使用されており、市場で容易に入手できる。
【0018】本発明の害虫忌避剤はそのまま使用することもできるが、通常好ましくは適当な担体その他の配合剤を用いて各種の形態に調製して用いることができる。液剤の形態に調製するのに用いうる溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ケロシン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などを挙げることができる。さらに使用目的により、乳化剤、分散剤、懸濁剤、展着剤、湿潤剤、安定剤、噴射剤等を添加し、油剤、乳剤、水和剤、エアゾール剤等の形状で利用することができる。
【0019】また、固剤の剤形に調製するのに用いうる担体としては、例えば珪藻土、カオリン、酸性白土、アルミナ、ベントナイト、石膏、シリカ、活性炭等の鉱物性粉末や、木粉、小麦粉、デンプン、紙等を挙げることができ、粉剤、粒剤、錠剤等の剤形で使用することができる。
【0020】本発明の害虫忌避剤の有効成分の濃度及び使用量は、その剤形や適用方法、対象となる虫の種類、適用場所などの条件に応じて適宜に選択することができる。しかし、本発明の忌避剤の含有量は通常0.01%〜50重量%、好ましくは0.02〜20重量%、さらに実用的に好ましくは0.1%〜10重量%である。0.01重量%未満では有効な忌避剤としての効果を得られない場合がある。また50重量%を越えると、忌避効果には問題ないのであるが、臭気が感じられる場合があり生活環境上好ましくない。本発明の害虫忌避剤の適用量は、0.1〜10g/m、好ましくは0.2〜5g/m,さらに好ましくは0.5〜2g/mである。0.1g/m未満の量では十分な忌避効果を得ることができない。また10g/mを越えても忌避効果向上への影響が少なく、コスト的にも好ましくない。
【0021】さらに、本発明の害虫忌避剤には、先に記載したもの以外の公知の害虫忌避剤、効力増強剤、酸化防止剤、殺菌剤、防黴剤、着香料、着色剤、紫外線吸収剤等を配合することができる。配合可能な他の害虫忌避剤としては、DEET、ジ−n−ブチルサクシネート、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1−エチニル−2−ペンテニル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、N−ヘキシル−3,4−ジクロルマレイミド等を挙げることができる。
【0022】効力増強剤としては、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ−〔2,2,1〕−5−ヘプテン−2,3−ジカルボキシイミド、オクタクロロジプロピルエーテル等を挙げることができる。酸化防止剤としてはジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール及びその誘導体、γ−オリザノール等を挙げることができる。防菌防黴剤としては安息香酸エチル、ソルビン酸、2−(4’−チアゾイル)−ベンズイミダゾール等を挙げることができる。
【0023】着香料としては、ターピネオール、ゲラニオール、酢酸リナロール等を、着色料としては、βーカロチン、クロロフィル、ローダミンBステアレート等を、紫外線吸収剤としては、p−tert−ブチルフェニルサリシレ−ト、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0024】
【実施例】以下、処方例及び試験例を示して本発明について具体的に説明する。
試験例1本発明の忌避剤によるアリに対する忌避効果について、以下のような試験を行った。
(1)供試剤供試剤として蟻酸シンナミル、酢酸シンナミル、プロピオン酸シンナミル、イソ酪酸シンナミル、酪酸シンナミル、フェニルメチルメチルケトン、フェニルエチルメチルケトン、スチリルメチルケトン、スチリルエチルケトンを使用し、対照薬剤としてDEET、ボルネオールおよびオークモスを使用した。
(2)供試虫としてアミメアリ(Pritomymex pungen Mayr)を使用した。
(3)試験方法:ロ紙接触忌避試験法8×13cmの長方形のロ紙No.2に、供試剤の塗布量が1g/mとなるように所定濃度に調整したアセトン溶液2mlを均一に塗布した。30分間風乾後、この処理ロ紙を無処理のロ紙(8×13cm)とならべてガラス板上に置き、その上に、底面(直径10cm)をくり抜き内壁に流動パラフィンを塗布したポリスチレン製カップ(直径13cm、9.5cmH) をガラス板上の2枚のロ紙の中央に置いた。そのカップ内に供試虫10頭を放飼し、一定時間経過後の薬剤処理紙上のアリの数を数えた。試験は2反復とし、その平均値を示した。各供試剤の忌避効果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】いずれの実施例においても、どの対照薬剤より良好な忌避効果が得られた。120分後には対照薬剤では忌避効果が低下傾向が見られるのに対し、供試剤では忌避効果の低下はほとんど見られなかった。特に酢酸シンナミル、スチリルメチルケトンで優れた忌避効果が得られた。
【0027】試験例2試験例1で優れた忌避効果が得られた酢酸シンナミルおよびスチリルメチルケトンについて表2に示したように適用量を変化させて、試験例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】表2に示したように、酢酸シンナミルおよびスチリルメチルケトンのいずれの場合にも、0.1g/mの適用量で忌避効果を発現していることが分かる。
【0030】試験例3本発明の忌避剤によるアリに対する初期の忌避効果について、以下のようなフィールド試験を行った。
(1)供試剤供試剤として蟻酸シンナミル、酢酸シンナミル、プロピオン酸シンナミル、イソ酪酸シンナミル、酪酸シンナミル、フェニルメチルメチルケトン、フェニルエチルメチルケトン、スチリルメチルケトン、スチリルエチルケトン、対照薬剤としてDEET、ボルネオール、オークモスを使用した。
(2)供試虫としてクロオオアリ(Camponotus japonicus Mayr)を使用した。
(3)試験方法:ロ紙接触忌避試験法8×15cmのロ紙No.2に、供試剤の塗布量が1g/mとなるように所定濃度に調整したアセトン溶液2mlを均一になるように塗布した。30分間風乾後、この処理ロ紙をクロオオアリの巣への通り道に置き、この処理紙に接触した時の挙動を観察した。20頭が接触するまで数えた。各供試剤の忌避効果を下表3に示す。なお評価は下記基準で実施した。
+++:処理紙の近くで向きを変えた。
++:処理紙に接触すると向きを変えた。
+:処理紙に乗って接触すると向きを変えた。
−:処理紙に乗って通り抜けた。
【0031】
【表3】

【0032】いずれの実施例試料においても++以上の忌避効果で見ると、比較例4、5および6に示す対照試料のDEET、ボルネオール、オークモスに比べて、良好な空間的忌避効果を示している。特に蟻酸シンナミル、酢酸シンナミル、スチリルメチルケトンなどで良好な忌避効果が得られた。
【0033】試験例4本発明の忌避剤によるルリアリ(Iridomyrmex itoi Forel)に対する忌避効果について、試験例3と同様にしてフィールド試験を行った。各供試剤の忌避効果を下表4に示す。
【0034】
【表4】

【0035】いずれの供試剤試料の実施例においても、比較例7,8および9に示す対照試料のDEET、ボルネオール、オークモスに較べて、極めて良好な空間的忌避効果を示している。
【0036】試験例5本発明の忌避剤によるゴキブリに対する初期の忌避効果について、以下のような試験を行った。
(1)供試剤供試剤として蟻酸シンナミル、酢酸シンナミル、プロピオン酸シンナミル、イソ酪酸シンナミル、酪酸シンナミル、フェニルメチルメチルケトン、フェニルエチルメチルケトン、スチリルメチルケトンおよびスチリルエチルケトンを、対照薬剤としてDEET、ボルネオール、オークモスを使用した。
(2)供試虫としてチャバネゴキブリ(Blattella germanica)を使用した。
(3)試験方法:ロ紙接触忌避試験法試験容器として、34×26×11cm(H)のポリプロピレン製容器を使用した。ゴキブリの逃亡を防ぐために内壁面の上部に流動パラフィンを塗布し、餌と水を入れた容器を設置し、ゴキブリ(雄成虫30,雌成虫30)計60頭を放す。11ψ(cm)のロ紙No.2に、供試剤の塗布量が1g/mとなるように所定濃度に調整したアセトン溶液2mlを均一になるように塗布した。30分間風乾する。この処理ロ紙と無処理の11ψ(cm)ロ紙とならべてガラス板上に置き、その上に90ψ×7H(mm)のポリスチレン製シャーレ(4カ所に約15mmの出入り口を持つ)を倒置して設置する。一定時間経過後のゴキブリの存在位置を数えて、下記の式により忌避率を算出した。試験は2反復とし、その平均値を示した。各供試剤の忌避効果を下表5に示す。なお忌避率は下式により計算した。
忌避率(%)=[(無処理区個体数−処理区個体数)/無処理区個体数]×100【0037】
【表5】

【0038】本発明忌避剤が、ゴキブリに対して極めて良好な忌避効果を示すことが分かる。
【0039】
【発明の効果】害虫、特にゴキブリ類及びアリ類に対して、高い忌避効果を有し、低濃度でも高い忌避効果を持続することができ、しかも人間に対する安全性が高い忌避剤を提供する。特に、一定空間内においてゴキブリ類及びアリ類に対する空間的忌避効果に優れ、その侵入を持続的に阻止できると共に、接触的忌避効果にも優れたゴキブリ類及びアリ類の忌避剤を提供する。さらに、上記のような高い忌避作用を示し且つ安全性に優れると共に、人に対しては臭気などで不快に感じさせることなく、屋内において安心して使用できる害虫の忌避剤を提供する。
【出願人】 【識別番号】390015853
【氏名又は名称】理研香料工業株式会社
【出願日】 平成12年11月1日(2000.11.1)
【代理人】 【識別番号】100099494
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 和彦
【公開番号】 特開2002−145703(P2002−145703A)
【公開日】 平成14年5月22日(2002.5.22)
【出願番号】 特願2000−335124(P2000−335124)