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【発明の名称】 殺菌剤組成物
【発明者】 【氏名】平野 龍一

【氏名】星野 純

【氏名】安藤 英人

【氏名】吉川 和俊

【要約】 【課題】安全性が高く、環境に優しく、しかも殺菌力の強い殺菌剤を提供する。

【解決手段】水性媒体中に溶解したとき、ヨウ化物濃度が10ppm 〜2000ppm 、過酸化水素濃度が0.1ppm〜100ppm、ペルオキシダーゼ活性が0.001U/ml 〜2U/ml(ピロガロール法による測定) 、pHが1.5 〜4.0 である殺菌液を供給する殺菌剤組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヨウ化物、過酸化物、ペルオキシダーゼ及びpH調整剤を含み、水性媒体中に溶解したとき、ヨウ化物濃度が10ppm 〜2000ppm 、過酸化水素濃度が0.1ppm〜100ppm、ペルオキシダーゼ活性が0.001U/ml 〜2U/ml(ピロガロール法による測定) 、pHが1.5 〜4.0 である殺菌液を供給することを特徴とする殺菌剤組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は病院、食品工場、畜舎等の環境殺菌及び医療機器、食品加工機器、調理器具、食器、手指等の殺菌に関するものである。
【0002】
【従来の技術】病院、食品工場、畜舎等の環境殺菌剤、医療機器、食品加工機器、調理器具、食器、手指等の殺菌剤としてこれまで種々の殺菌剤が開発されており、アルコール系、アルデヒド系、塩素系、4級アンモニウム系、両性界面活性剤系、ビグアナイド系の殺菌剤を例示することができる。アルコール系殺菌剤は細菌芽胞に効果がない、揮発しやすいため残効性に乏しい、有機物の存在下で効力が低下する等の欠点を有し、アルデヒド系の殺菌剤には毒性が高い、カビに対する効果が弱い等の問題がある。塩素系殺菌剤は結核菌に対する効果が弱い、有機物の存在下で速やかに分解し効力を失う、金属、木、ゴム、布等に対する腐食性が強い、臭気が強い、環境中でトリハロメタンを生成する等の問題を有している。4級アンモニウム系殺菌剤は、結核菌、細菌芽胞に効果がない、カビ及びウィルスに対する効果が弱い、有機物の存在下で効力が低下する等の問題点がある。両性界面活性剤系殺菌剤は、細菌芽胞に効果がなく、結核菌、ウィルス、カビに対する効果が弱い。ビグアナイド系殺菌剤は、結核菌等の抗酸菌、細菌芽胞、ウィルスに効果が弱い、耐性菌が生じる、菌株により効力に違いがある等の問題がある。これまで人体や環境に対する安全性に優れ、細菌、カビ、ウィルス、原虫等の広範囲の微生物に対し強い効果を示す殺菌剤は見出されていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来技術における上記の問題点を解決し、安全性が高く、環境に優しく、しかも殺菌力の強い殺菌剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記諸問題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、安全性の高いヨウ化物、過酸化物及びペルオキシダーゼを適正な濃度で混合し、しかもpHを1.5〜4.0で制御することにより広範囲の微生物に対する顕著な殺菌力が速やかに発現することを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明はヨウ化物、過酸化物、ペルオキシダーゼ及びpH調整剤を必須成分とする殺菌剤組成物を提供する。以下、本発明を詳細に説明する。本発明の殺菌組成物は成分としてヨウ化物、過酸化水素または水性媒体中で過酸化水素を生成する過酸化物、ペルオキシダーゼ及びpH調整剤を含む。これらの他にペルオキシダーゼのエンハンサー、ペルオキシダーゼの安定化剤等を加えることも可能である。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが適しているが、水性媒体中でヨウ素イオンを生成する化合物であれば良く、これらに限定されるものではない。ヨウ化物の処理濃度範囲は10ppm 〜2000ppm であるが、好ましい濃度範囲は50ppm 〜1000ppm である。過酸化物としては、過酸化水素、過炭酸ナトリウム及び過ホウ酸ナトリウムが適しているが、水性媒体中で過酸化水素を生成する化合物であれば良く、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化メチル、過酸化エチル、過酢酸、ペルオキソ硫酸塩、ペルオキソリン酸塩等も使用可能である。過酸化物は、水性媒体中の過酸化水素濃度が0.1ppm〜100ppm、好ましくは0.5ppm〜50ppm になるように添加する。
【0006】ペルオキシダーゼとしては、植物由来の西洋ワサビ、イネ、大豆のペルオキシダーゼが例示され、糸状菌由来のペルオキシダーゼとして不完全菌Arthromycesramosus 、Geotrichum candidum 、Curvularia inaequalis 、Drechsiera biseptata、Ulocladium botrytis 、Pellicularia filamentosa、担子菌Coprinus cinereus のペルオキシダーゼ、白色腐朽菌Phanerochaete chrysosporium 、Bjerkandera adusta、Trametes vesicolor、Pleurotus ostreatus 、Phlebia radiata等のリグニンペルオキシダーゼ及びマンガンペルオキシダーゼ、が例示される。細菌類のペルオキシダーゼとしては、Flavobacterium sp.、Bacillus stearothermophilus 、Streptomyces viridosporusのペルオキシダーゼが例示される。しかし本発明に使用可能なペルオキシダーゼはこれらに限定されるものではない。
【0007】ペルオキシダーゼは、化学修飾、固定化して使用することも可能である。化学修飾に関しては、化学修飾剤としてポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−無水マレイン酸共重合体、ポリオキシアルキレン誘導体−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、メトキシポリエチレングリコール−スクシニミジルスクシネート共重合体、無水酢酸等が例示されるがこれらに限定されるものではない。ペルオキシダーゼの固定化に関しては、担体結合法に用いられる固定化担体としては、カルボキシメチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース等のセルロース誘導体;Amberlite 、Diaion、DEAE-Sephadex 、DEAE- セルロース等のイオン交換樹脂;アガロース、デキストリン、キチン、キトサン、ポリアクリルアミドゲル、シリカゲル、アルミナ、セライト、ラテックス、多孔質ガラスおよび磁気粒子を例示できるが、これらに限定されるものではない。包括法に用いられる固定化担体としては、コラーゲン、アガロース、アルギン酸、カラギーナン、ポリアクリルアミド、各種光架橋性樹脂、各種感光樹脂、コロジオン、硝酸セルロース、ジビニルベンゼンポリマー、リン脂質が例示されるがこれらに限定されるものではない。また、架橋法で用いられる架橋剤としては、マレインイミド誘導体、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソチオシアナートが例示されるが、これらに限定されるのもではない。ペルオキシダーゼは上記の固定化担体等に公知の方法で固定化される。
【0008】ペルオキシダーゼは使用条件、ペルオキシダーゼの種類により、0.001U/ml 〜2U/ml になるように水性媒体中に添加される。pH調整剤としては、グリシン-HClバッファー、クエン酸、コハク酸、フタール酸、リン酸、リン酸塩等を単独または組み合わせたもの等を使用することができるが、水性媒体のpHを1.5 〜4.0 に保持できるものであればよく、これらに限られるものではない。
【0009】ペルオキシダーゼのエンハンサーとしては、p-ヨードフェノール、p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸が例示されるが、ペルオキシダーゼの活性を増強するものであればよく、これらに限定されるものではない。また、ペルオキシダーゼの安定化剤としては、塩化カリウム、フェノール、ヘマチン、ショ糖、グリセリン、エタノールを例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0010】各成分は殺菌力を必要とするまで、反応が進行しないような形で保存し、使用時に各成分はそれぞれが適切な濃度になるように水性媒体中で混合される。これは、各成分を別々に保存するか、ヨウ化物とペルオキシダーゼを過酸化物から分離することにより可能である。また、各成分を顆粒化、カプセル化し、水性媒体中で混合されるまで反応しないようにし、各成分を混合した製剤形態で保存することも可能である顆粒化に用いられる賦型剤としては無水硫酸ナトリウム、デキストリン、グルコース、乳糖等を例示できる。顆粒を水溶性ポリマーフィルム等で保護、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等で表面被覆することも可能である。
【0011】
【実施例】本発明を実施例により具体的に説明するが。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例110mlの普通ブイヨン培地を入れた試験管に大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) 、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびサルモネラ菌(Salmonella enteritidis)のそれぞれを1白金耳植菌し、37℃でOD610 が約1.0 になるまで振とう培養を行った。それを50mMリン酸バッファー(pH6.0) で10倍に希釈し、試験菌液とした。50mMリン酸バッファー(pH6.0) に溶解したヨウ化カリウム12% 水溶液、過酸化水素0.1%水溶液及び西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)10U/ml 水溶液を0.01mlづつ目的のpHになるように調整した6mM のクエン酸−リン酸バッファー 1.96ml に加えた。得られた 1.99ml の液と試験菌液0.01mlとを速やかに混合後、30℃で静置し、0.5 分、1分、2分、5分、15分、30分及び60分後に処理液をサンプリングし、適宜希釈後、普通寒天培地に塗末し生菌数を測定した。生菌数が検出限界(5/ml)以下になった最短時間を滅菌時間とした。結果を表1に示す。pH4.0 未満でより強い殺菌力を示した。なお、HRP 水溶液の代わりに50mMリン酸バッファー(pH6.0)0.01ml を添加した区(pH2.5〜5.0)では、60分後の生菌数の減少は認められなかった。
【0012】
表1 殺菌液の 滅菌時間(分) pH 大腸菌 黄色ブドウ球菌 緑膿菌 サルモネラ菌 2.5 0.5 0.5 0.5 0.5 3.0 0.5 0.5 0.5 0.5 3.5 0.5 0.5 0.5 0.5 4.0 0.5 1.0 1.0 1.0 5.0 1.0 5.0 2.0 1.0 初発菌数:約106/ml【0013】実施例2ポテト・デキストロース寒天斜面培地に黒カビAspergillus niger を接種し、25℃、1週間培養した。これに50mMリン酸バッファー(pH6.0) を入れ、攪拌することにより胞子の懸濁液を調整した。これをガーゼでろ過し菌糸の断片を除き、試験胞子液とした。50mMリン酸バッファー(pH6.0) に溶解したヨウ化カリウム12% 水溶液、過酸化水素0.1%水溶液及び西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)10U/ml水溶液を0.01mlづつ目的のpHになるように調整した6mM のクエン酸−リン酸バッファー1.96mlに加えた。得られた 1.99ml の液と試験菌液0.01mlとを速やかに混合後、30℃で静置し、0.5 分、1分、3分、5分、15分、30分及び60分後に処理液をサンプリングし、適宜希釈後、ポテト・デキストロース寒天培地に塗末し生存胞子数を測定した。生存胞子数が検出限界(5/ml)以下になった時間を滅菌時間とした。結果を表2に示す。pH4.0 未満でより強い殺菌力を示した。なお、HRP水溶液の代わりに50mMリン酸バッファー(pH6.0)0.01ml を添加した区(pH2.5〜5.0)、60分後の生菌数の減少は認められなかった。
【0014】

【0015】実施例3ポテト・デキストロース寒天斜面培地に黒カビAspergillus niger を接種し、25℃、1週間培養した。これに50mMリン酸バッファー(pH6.0) を入れ、攪拌することにより胞子の懸濁液を調整した。これをガーゼでろ過し菌糸の断片を除き、試験胞子液とした。50mMリン酸バッファー(pH6.0) に溶解したヨウ化カリウム12% 水溶液、過酸化水素0.1%水溶液及び大豆ペルオキシダーゼ(SBP)20U/ml 水溶液を0.01mlづつ目的のpHになるように調整した6mM のクエン酸−リン酸バッファー1.96mlに加えた。得られた 1.99ml の液と試験菌液0.01mlとを速やかに混合後、30℃で静置し、0.5 分、1分、3分、5分、15分、30分及び60分後に処理液をサンプリングし、適宜希釈後、ポテト・デキストロース寒天培地に塗末し生存胞子数を測定した。生存胞子数が検出限界(5/ml)以下になった時間を滅菌時間とした。所定濃度の比較剤にも同様に菌を接種し、経時的に生菌数を測定した。結果を表3に示す。pH4.0 未満でより強い殺菌力を示し、その殺菌力は比較剤以上であった。なお、HRP 水溶液の代わりに50mMリン酸バッファー(pH6.0)0.01ml を添加した区(pH2.0〜5.0)では60分後の生菌数の減少は認められなかった。
【0016】

【0017】実施例4普通ブイヨン寒天斜面培地に枯草菌(Bacillus subtilis) 、セレウス菌(Bacillus cereus) を植菌し、30℃で7日間培養して芽胞を形成させた。それを50mMリン酸バッファー(pH6.0) 中に懸濁し、70℃、20分の熱処理により栄養細胞を殺滅したものを試験菌液とした。50mMリン酸バッファー(pH6.0) に溶解したヨウ化カリウム12% 水溶液、過酸化水素0.2%水溶液及び西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)10U/ml 水溶液を0.01mlづつ6mM のクエン酸−リン酸バッファー1.96mlに加えた。得られた 1.99ml の液と試験菌液0.01mlとを速やかに混合後、30℃で静置し、0.5 分、1分、2分、5分、15分、30分及び60分後に処理液をサンプリングし、適宜希釈後、コロニー数を測定した。所定濃度の比較剤にも同様に菌を接種し、経時的に生菌数を測定した。生存芽胞数が検出限界(5/ml)以下になった時間を滅菌時間とした。結果を表4に示す。いずれの菌の芽胞に対しても、pH4.0 未満で強い殺菌力を示し、しかもその殺菌力は比較剤以上であった。なお、HRP 水溶液の代わりに50mMリン酸バッファー(pH6.0)0.01ml を添加した区(pH2.5〜5.0)では60分後の生芽胞数の減少は認められなかった。
【0018】
表4 殺菌液の 滅菌時間(分) pH 枯草菌 セレウス菌 2.5 15.0 0.5 3.0 15.0 0.5 3.5 15.0 0.5 4.0 30.0 1.0 5.0 60.0 1.0 比較剤1 >60 >60 比較剤2 60 1.0 初発芽胞数:約106/ml比較剤1:次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素150ppm)
比較剤2:ヨードホール(有効ヨウ素濃度100ppm)
【0019】実施例5ヨウ化カリウム12% 水溶液、過酸化水素0.1%水溶液及び西洋ワサビペルオキシダーゼ10U/ml水溶液を0.1ml づつ6mM クエン酸−リン酸バッファー(pH6.0)19.7ml に加えた。これをエコーウィルス液またはポリオウィルス液(約4000TCD50/ml)5mlと混合後、30℃で静置し、0.5 分、1分、5分、15分、30分及び60分後にチオ硫酸ナトリウムを0.1Nとなるように添加して、殺ウイルス活性成分であるヨウ素分子を不活性化した。処理液0.1ml をサンプリングし、HeLa細胞を培養した試験管5本に添加した。6日間観察を続け、CPE(細胞変性作用) の阻止の有無を検定した。すべての試験管でCPE 阻止が観察された場合をウィルス不活化作用が認められたものと判断した。結果を表5に示した。本発明殺菌組成液は、供試したウィルスに対し比較剤以上の強い不活化活性を示した。
【0020】
表5 試験サンプル ウィルス不活化時間(分) エコーウィルス ポリオウィルス 本発明殺菌組成液(pH3.0) 0.5 0.5 比較剤 1 1 比較剤:次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素150ppm)
【0021】実施例6ヨウ化カリウム12%及び西洋ワサビペルオキシダーゼ10U/mlを含む水溶液100ml 及び過酸化水素1000ppm を含む1.2Mクエン酸−リン酸バッファー100ml を20Lの水に溶解し、本発明殺菌組成液を調製した(pH3.0) 。これを洗剤で洗浄した食品加工工場の床に1L/m2 散布した。比較剤として、次亜塩素酸ソーダ150ppm液を1L/m2 散布した。散布5分後に薬液を水洗除去し、ふき取り法により各処理区4ヶ所の100cm2あたりの生菌数を測定した。即ち、滅菌水で湿らせた綿棒を用いて10cm×10cmの部分の菌をふき取り滅菌水10mlに懸濁した。これを適宜希釈し、0.1mlを普通寒天培地に塗抹し、30℃で2日間培養後、コロニー数を計測した。結果を表6に示した。本発明殺菌組成液は比較剤以上の殺菌力を示した。
【0022】
表6 試験サンプル 殺菌前生菌数(A) 殺菌後生菌数(B) B/A 本発明殺菌組成液(pH3.0) 6.3 ×105 <102 <0.0002 比較剤 4.5 ×105 1.2×103 0.03 【0023】
【発明の効果】本発明によれば、安全性が高く、環境に優しく、しかも殺菌力の強い殺菌剤が提供される。
【出願人】 【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
【出願日】 平成12年10月20日(2000.10.20)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−128618(P2002−128618A)
【公開日】 平成14年5月9日(2002.5.9)
【出願番号】 特願2000−320740(P2000−320740)