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【発明の名称】 ヨウ化アルキル含有ガスの凝縮防止方法
【発明者】 【氏名】宮沢 孝明

【氏名】田口 信洋

【要約】 【課題】ヨウ化アルキルを用いて燻蒸する際のヨウ化アルキル含有ガスの凝縮を防止する方法を提供する。

【解決手段】燻蒸剤を気化室で加熱によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを配管内を経て燻蒸庫に供給する燻蒸方法において、該ヨウ化アルキル含有ガスにプロペラントを添加し、または配管を保温若しくは加熱して燻蒸庫内に供給する方法である。この方法によれば、従来の臭化メチルによる燻蒸用の気化装置、または燻蒸装置を用いて、簡便にヨウ化アルキルを燻蒸剤として凝縮させることなく使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燻蒸剤を気化室で加熱によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを配管内を経て燻蒸庫に供給する燻蒸方法において、該ヨウ化アルキル含有ガスにプロペラントを添加した後に該燻蒸庫に供給することを特徴とする、ヨウ化アルキル含有ガスの凝縮防止方法。
【請求項2】 該プロペラントが、空気、窒素、二酸化炭素およびヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のガス、または空気、窒素、二酸化炭素およびヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上と燻蒸剤気化ガスとの混合ガスである、請求項1記載の凝縮防止方法。
【請求項3】 該プロペラントの添加が、該ヨウ化アルキル含有ガスの温度がヨウ化アルキルの沸点より1〜60℃高い温度で行うことを特徴とする、請求項1または2記載の凝縮防止方法。
【請求項4】 該燻蒸庫と気化室とを連結する配管内のガス組成が、該ヨウ化アルキル3〜97v/v%であり、該プロペラント97〜3v/v%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の凝縮防止方法。
【請求項5】 燻蒸剤を気化室で加熱によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを気化室と燻蒸庫とを連結する配管を経て燻蒸庫に供給する燻蒸方法において、該配管を保温材で被覆してガス温度をヨウ化アルキルの沸点より−30〜60℃高い温度に維持することを特徴とする、ヨウ化アルキル含有ガスの凝縮防止方法。
【請求項6】 該配管の内圧が20〜120kPaである請求項5記載の凝縮防止方法。
【請求項7】 該保温材が、発泡スチロール、ウレタン、スポンジおよび布帛からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の部材であることを特徴とする、請求項5または6記載の凝縮防止方法。
【請求項8】 燻蒸剤を気化室で加熱によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを気化室と燻蒸庫とを連結する配管に導入させて燻蒸庫に供給する燻蒸方法において、該配管を加熱装置で加熱することを特徴とする、ヨウ化アルキル含有ガスの凝縮防止方法。
【請求項9】 該加熱装置が、電熱ヒーターまたは熱媒を循環させる加熱ジャケットによるものである、請求項8記載の凝縮防止方法。
【請求項10】 該ヨウ化アルキルが、ヨウ化メチルであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の凝縮防止方法。
【請求項11】 請求項1〜10記載の凝縮防止方法によって得たヨウ化アルキル含有ガスを燻蒸庫に供給し、ヨウ化アルキル0.02〜12.6v/v%で燻蒸することを特徴とする燻蒸方法。
【請求項12】 該燻蒸庫内のガスの一部をプロペラントとして循環使用することを特徴とする、請求項11記載の燻蒸方法。
【請求項13】 該ヨウ化アルキルが、ヨウ化メチルであることを特徴とする請求項11または12記載の燻蒸方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヨウ化アルキルを燻蒸剤として使用する際のヨウ化アルキル含有ガスの凝縮を防止し、燻蒸剤を投薬ラインに残すことなく気化し、かつ濃度ムラなく燻蒸庫に燻蒸剤ガスを供給するための凝縮防止方法および、該方法によって得た燻蒸ガスを燻蒸庫に供給して燻蒸する燻蒸方法に関する。
【0002】
【従来の技術】人の活動は多種多様な生物と調和を保ちつつ営まれているが、時としてある種の生物は害となり有害生物と呼ばれる。有害生物の排除は、生活や産業活動維持のために不可欠となっており、その対策としては殺菌、殺虫、除草あるいは駆除があり、殺生物剤等の薬剤を使用することが多い。これら薬剤の使用形態としては、散布、塗布、設置または燻蒸等の形態が一般的である。
【0003】例えば、殺菌殺虫を目的とする薬剤の使用形態の一つである燻蒸は、薬剤をガス化して使用するものであり、土壌、農産物、建屋・構造物から文化財等も対象とすることができるものである。そして、燻蒸対象の規模や量に対応しやすく、かつ有効成分がガス化していることから使用量を少なくでき、燻蒸後の薬剤成分の排除も容易で残留性も低いという利点がある極めて有用な殺菌殺虫手段である。
【0004】燻蒸方法としては、文化財収蔵庫、図書館、青果物や穀物の倉庫等からなる燻蒸庫を目貼して封止し、内部を所定の温度に維持して燻蒸用ガスを充填し、所定時間燻蒸することにより殺虫、殺黴、殺卵等を行なうものがある。また、耐圧構造を持つ減圧チャンバーを燻蒸庫として用い、予め内部を陰圧とした上で薬剤を投与し、より高濃度で薬剤を供給するとともに酸素分圧を下げることで引火性ガスでも安全に使用できる減圧燻蒸方法などがある。このような燻蒸剤として、臭化メチル、青酸、エチレンオキシド、リン化水素、フッ化サルフリル、クロルピクリン、ホルムアルデヒド、二硫化炭素、メチルイソチオシアネート、D−D剤等の単剤またはこれらの合剤が使用されている。
【0005】具体的には、例えば臭化メチルを燻蒸剤として使用する場合では、気化器に液状の臭化メチルを供給してこれを気化器内の加熱器で気化させ、ついで臭化メチルガスをその蒸気圧によって、またはブロアーを使用して燻蒸庫内に供給する。燻蒸庫に供給された臭化メチルは、気化器からの臭化メチルガスの供給量の増減によって所定濃度に調整する。なお、燻蒸庫内に攪拌扇を配置して気化器からの臭化メチルガスと燻蒸庫内の空気とを攪拌し、均一にしてもよい。
【0006】しかしながら、従来の燻蒸剤の中でも臭化メチルは殺虫効果が優れることや商品の価格等から多用される化合物であるが、臭素がオゾン層破壊物質となることが判明して以来、一部の不可欠用途、検疫・出荷前処理並びに緊急使用の場合を除いて、生産およびその使用が極めて限定されてきた。したがって、臭化メチルの代替品の選択が急務となっている。
【0007】一方、このような臭化メチルの代替として、有効性においてほぼ同等で物理的性質も比較的臭化メチルに近いヨウ化メチルを含むヨウ化アルキル使用の可能性が注目されている。例えば、特表平10−513487号公報には、植物病原体、線虫、細菌および雑草を効果的に制御する土壌燻蒸剤としてのヨウ化メチルの使用が開示されている。また、特開平10−29901号公報には、有機溶剤とヨウ化メチルとを含有する土壌燻蒸剤が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、臭化メチルの沸点は標準状態で4.5℃であるため通常は常温で気体であるが、例えばヨウ化メチルの沸点は標準状態で42.5℃であるため、いったん気化しても凝縮しやすい。特に、既存の燻蒸装置や燻蒸器、燻蒸剤用気化器等は、臭化メチルや臭化メチルと他の燻蒸剤との合剤の気化を目的として設計されているため、既存の燻蒸装置をそのまま使用したのでは、気化器で発生させた燻蒸用ガスを燻蒸庫に供給する配管内で燻蒸ガスが凝縮しやすい。このため、燻蒸庫におけるヨウ化アルキル含有ガスを所定の有効濃度とするには、凝縮によってガス量から失われるヨウ化アルキル量を見込んで気化する必要があり、極めて不経済である。加えて、ヨウ化アルキルを代替剤として用いる場合の根本的な問題として、製造原料のヨウ素の希少性がある。ヨウ素は貴重な地下資源であり、産業上の採算ベースとしての採集地域が限定されている。日本はその主要な供給国であり、チリの46%に次いで二番目であって44%を供給し、残り10%はアメリカ合衆国が供給している。その供給量は全世界でも年間16,000トン程である。現に、ヨウ化アルキルは化学合成時のメチル化試薬として僅かに市場に流通しているにすぎず、燻蒸剤として使用するには価格が高い。普及に関しては、製造量の問題と有効性を高めるための手段を検討し、いかに少量で効果を発揮できるかの技術の確立が不可欠である。
【0009】更に、例えばヨウ化メチルは本来メチル化剤であって、医薬農薬の合成原料として使用され、反応性が極めて高い化合物である。このため、例えば文化財等を燻蒸する場合には問題がある。すなわち、文化財の燻蒸は、防黴、防虫を対象とするものであるが、その目的は文化財自体の後世への保存維持にある。従って、文化財自体への影響が何より重要となる。しかしながら、ヨウ化メチルは臭化メチルより沸点が高いため気化しにくく凝縮され易い。このため燻蒸下において凝縮が起これば凝縮したヨウ化メチル液は文化財の薬害原因となるおそれがあり、特に燻蒸剤としてヨウ化メチルをガス状態で均一に供給する必要性は、従来の臭化メチル使用の場合と比較して格段に高いといえる。
【0010】その上、例えばヨウ化メチルは、臭化メチルと同様な殺虫性を有するものの臭化メチルに比較して殺菌性が弱く、カビ等の微生物を燻蒸する場合には大量の投薬が必要となる場合がある。実際の燻蒸では、害虫のみならず有害菌を燻蒸対象とする場合が多く、投薬量として最も効果の弱い対象物を基準とすると使用量が増大するのも事実である。このため、迅速な燻蒸作業を目的とすると高濃度のヨウ化アルキル含有ガスを燻蒸庫に供給することが好ましいが、ヨウ化アルキル含有ガス濃度の増加に伴ってその凝縮の程度も増加する。この点からも、燻蒸剤としてヨウ化アルキルをガス状態で均一に供給する必要性は、極めて高い。
【0011】また、ヨウ化アルキルは、臭化メチルと相違してオゾン層の破壊などの問題は少ないものの、燻蒸使用後に、これを直ちに大気に放出したのでは、環境保全の観点から好ましくない。
【0012】このように、ヨウ化アルキルを燻蒸剤として使用するに際し、薬剤としての有効性に加え、環境問題を十分に考慮し、有効に燻蒸剤としてヨウ化アルキルを使用するシステムの開発が求められる。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、燻蒸剤としてのヨウ化アルキルの使用において、ヨウ化アルキル含有ガスが凝縮を生ずるメカニズムを詳細に検討した結果、気化器から排出されるヨウ化アルキル含有ガスにプロペラントを添加してヨウ化アルキル含有ガスとプロペラントとを十分に混合すること、または燻蒸庫への配管を保温しまたは加熱することで、ガス燻蒸用途のヨウ化アルキルを投薬ラインに残すことなく気化させ、かつ濃度ムラを生ずることなく燻蒸庫に供給できることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】すなわち、上記課題は、以下の(1)〜(13)によって解決される。
【0015】(1) 燻蒸剤を気化室で加熱によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを配管内を経て燻蒸庫に供給する燻蒸方法において、該ヨウ化アルキル含有ガスにプロペラントを添加した後に該燻蒸庫に供給することを特徴とする、ヨウ化アルキル含有ガスの凝縮防止方法。
【0016】(2) 該プロペラントが、空気、窒素、二酸化炭素およびヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のガス、または空気、窒素、二酸化炭素およびヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上と燻蒸剤気化ガスとの混合ガスである、前記(1)記載の凝縮防止方法。
【0017】(3) 該プロペラントの添加が、該ヨウ化アルキル含有ガスの温度がヨウ化アルキルの沸点より1〜60℃高い温度で行うことを特徴とする、前記(1)または(2)記載の凝縮防止方法。
【0018】(4) 該燻蒸庫と気化室とを連結する配管内のガス組成が、該ヨウ化アルキル3〜97v/v%であり、該プロペラント97〜3v/v%であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかひとつに記載の凝縮防止方法。
【0019】(5) 燻蒸剤を気化室で加熱によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを気化室と燻蒸庫とを連結する配管を経て燻蒸庫に供給する燻蒸方法において、該配管を保温材で被覆してガス温度をヨウ化アルキルの沸点より−30〜60℃高い温度に維持することを特徴とする、ヨウ化アルキル含有ガスの凝縮防止方法。
【0020】(6)該配管の内圧が20〜120kPaである上記(5)記載の凝縮防止方法。
【0021】(7) 該保温材が、発泡スチロール、ウレタン、スポンジおよび布帛からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の部材であることを特徴とする、前記(5)または(6)記載の凝縮防止方法。
【0022】(8) 燻蒸剤を気化室で加熱によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを気化室と燻蒸庫とを連結する配管に導入させて燻蒸庫に供給する燻蒸方法において、該配管を加熱装置で加熱することを特徴とする、ヨウ化アルキル含有ガスの凝縮防止方法。
【0023】(9) 該加熱装置が、電熱ヒーターまたは熱媒を循環させる加熱ジャケットによるものである、前記(8)記載の凝縮防止方法。
【0024】(10) 該ヨウ化アルキルが、ヨウ化メチルであることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の凝縮防止方法。
【0025】(11) 上記(1)〜(10)記載の凝縮防止方法によって得たヨウ化アルキル含有ガスを燻蒸庫に供給し、ヨウ化アルキル0.02〜12.6v/v%で燻蒸することを特徴とする燻蒸方法。
【0026】(12) 該燻蒸庫内のガスの一部をプロペラントとして循環使用することを特徴とする、上記(11)記載の燻蒸方法。
【0027】(13) 該ヨウ化アルキルが、ヨウ化メチルであることを特徴とする上記(11)または(12)記載の燻蒸方法。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明の第一は、燻蒸剤を気化室で加熱によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを配管を経て燻蒸庫に供給する燻蒸方法において、該ヨウ化アルキル含有ガスにプロペラントを添加した後に該燻蒸庫に供給することを特徴とする、ヨウ化アルキル含有ガスの凝縮防止方法である。
【0029】ヨウ化アルキルの内で、最も低沸点の化合物であるヨウ化メチルでもその沸点は標準状態で42.5℃であり、通常は常温で液体である。このため、従来の燻蒸装置を使用して臭化メチルに代えてヨウ化アルキルを燻蒸剤として使用する場合には、気化室で加熱によって気化したヨウ化アルキルガスが燻蒸庫に至る間に凝縮し、投薬ラインに残液する。しかしながら、ヨウ化アルキルガスが凝縮する前にヨウ化アルキル含有ガスにプロペラントを添加すると、ガス全体におけるヨウ化アルキルのガス分圧が低下してヨウ化アルキルの凝縮が防止でき、同時に、燻蒸庫に供給するヨウ化アルキル含有ガスの濃度ムラを抑制することができることが判明した。以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】本発明の凝縮防止方法では、燻蒸剤を気化室で加熱によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを配管を経て燻蒸庫に供給するものである。「気化室」や燻蒸剤をガス化するための「加熱」手段としては、燻蒸剤を熱によって気化するものであれば、燻蒸剤を気化させる公知のものをその名称の如何を問わず使用することができる。従って、従来、臭化メチルやエチレンオキサイドなどを燻蒸剤として使用する場合に使用される気化室、気化装置、気化器、発熱体、熱源、加熱器、加熱装置等と称されるものを使用することができる。また、「配管」としても、加熱手段によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを燻蒸庫に供給するために使用するものであれば、その材質、管径、形状などを問わず、公知のものを使用することができる。同様に、「燻蒸庫」も、被燻蒸物を収納し、燻蒸ガスによって被燻蒸物を燻蒸処理するものであればその名称を問わずに従来公知のものを使用することができる。
【0031】燻蒸剤を気化室で加熱してヨウ化アルキル含有ガスを得るには、燻蒸成分である液状または固体状のヨウ化アルキルを加熱するほか、ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤を加熱すればよい。ヨウ化アルキルとしては、炭素数1から4のアルキルモノヨード、アルキルジヨード、アルキルトリヨード、アルキルテトラヨードなどがある。これらの中でも、ヨウ化メチルまたはヨウ化エチルが好ましい。これらは、例えば文化財に用いられる素材全般にわたっても腐蝕等の作用が比較的少く、殺生物効果が確実だからであり、従来品である臭化メチルよりも抗菌性に優れるからである。特に好ましくは、ヨウ化メチルである。臭化メチルよりも抗菌性に優れると共にコクゾウ虫に対する殺虫効果にも優れるからである。
【0032】本発明においてヨウ化アルキル含有ガスとしては、ヨウ化アルキル単独のほか、これに他の成分を含んでいてもよい。例えば、ヨウ化アルキルに他の燻蒸成分を含有する燻蒸剤を加熱して得たガスなどがある。このようなヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤としては、セラミクスなどの担体にヨウ化アルキルを担持させ、または溶剤にヨウ化アルキルを溶解させたものなどがある。これらのヨウ化アルキル含有燻蒸剤に含まれるヨウ化アルキル含有量は、燻蒸剤全量に対してヨウ化アルキルが5〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、とくには15〜85質量%含有されていることが好ましい。この範囲で、特に殺生物性に優れると共に、被燻蒸物への変質腐食などの影響が少ないからである。
【0033】また、ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤としてヨウ化アルキルを含有する溶液がある。このような溶液に使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールなどの直鎖または分岐を有していてもよいアルコール類、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等がある。本発明では、これらの内、メタノール、テトラヒドロフランであることが好ましい。ヨウ化アルキルと沸点が近いからである。
【0034】本発明の方法では、ヨウ化アルキル含有ガスとしてヨウ化アルキル含有燻蒸剤を加熱して得たガスのほか、ヨウ化アルキルを含有しない他の燻蒸剤をヨウ化アルキル含有燻蒸剤の気化と同時に気化させてたものも含まれる。使用できる他の燻蒸剤としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、メタアクロレイン、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、アリルアルコール、ブチルアルコール、過酸化水素、クロルピクリン、二硫化炭素、フッ化サルフリル、臭化メチルおよび青酸等がある。本発明では、ヨウ化アルキルと共に上記ヨウ化アルキルを含有しない他の燻蒸剤の1種以上を併用してもよい。これらはヨウ化アルキルよりもその沸点が低いためヨウ化アルキルの気化条件で同時に気化することができ、かつ併用によってヨウ化アルキルの燻蒸効果が損なわれないからである。本発明では、これらヨウ化アルキルを単独で使用するほか、燻蒸効果を有する他の燻蒸成分の2種以上を併用して気化させてもよい。
【0035】ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤を加熱してヨウ化アルキル含有ガスを得るには、気化室内の加熱手段によりヨウ化アルキルまたは他の成分をそれらの沸点以上に加熱する。減圧燻蒸でなければ通常気化室内は常圧または燻蒸剤ガスの発生により加圧下にある。含まれるヨウ化アルキルの種類によって加熱温度は異なるが、ヨウ化アルキルの沸点よりも1〜150℃、より好ましくは10〜100℃、特に好ましくは20〜80℃高い温度に加熱することが好ましい。この範囲であれば、燻蒸処理における気化条件下でヨウ化アルキルが気化室内で凝縮することがないからである。なお、化合物の沸点は気化室内の圧力によって異なるため、ここでいう沸点とは、気化室内の圧力下におけるヨウ化アルキルの沸点をいうものとする。気化室内におけるヨウ化アルキル含有ガスの温度が含まれるヨウ化アルキルの沸点より1℃を超えて温度が下がると、気化したヨウ化メチルの凝縮が発生しやすいからである。その一方、該ヨウ化アルキル含有ガスのガス温度が含まれるヨウ化アルキルの沸点より150℃を超えると熱源エネルギーが過量に必要となり、不経済である。
【0036】燻蒸剤をガス化するための加熱手段へのヨウ化アルキル自体またはヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤の供給は、燻蒸庫のサイズ、燻蒸庫に供給する燻蒸ガスの供給量などによって適宜選択することができる。単位体積当たりの気化量が多ければ気化室の内圧が上昇し、このため気化ガスが凝縮しやすくなる。一般には、気化室体積に対して、燻蒸剤を7ミリモル/m3〜1.1モル/m3で供給し気化することが好ましく、より好ましくは10ミリモル/m3〜1.1モル/m3、特に好ましくは50ミリモル/m3〜1.1モル/m3である。
【0037】本発明における「プロペラント」とは、ヨウ化アルキル含有ガスに含まれる「ヨウ化アルキル」のガス分圧を低下させるために添加させる他のガスである。従って、ヨウ化アルキルおよび被燻蒸物と反応しないガスであれば広く使用することができる。具体的には、空気、窒素、二酸化炭素、ヨウ化アルキル以外の燻蒸性ガス、燻蒸剤に含有される溶剤ガスおよびヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のガスがある。本発明では、これらの中でも空気、窒素、二酸化炭素またはヘリウムを単独で使用し、または2種以上を併用することが好ましい。このようなプロペラントをヨウ化アルキル含有ガスに供給する態様としては下記のi)、ii)、iii)がある。
【0038】i)気化ガスがヨウ化アルキル単独の場合には、プロペラントとして、空気、窒素、二酸化炭素およびヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のガスを使用することが好ましい。ヨウ化アルキルを気化室に導入して気化すると共に、該気化ガスにプロペラントを供給してヨウ化アルキルのガス分圧を低下させる。これによって、たとえ気化温度よりも温度が低下し、または圧力が増加した場合であってもヨウ化アルキルガスの凝縮を防止することができるからである。
【0039】ii)ヨウ化アルキル含有ガスが、ヨウ化アルキルと共に他のガス成分を含む場合、特に、他の燻蒸成分を同時に気化させた場合や燻蒸剤に溶剤などの揮発性物質を含有する場合するには、該燻蒸剤を加熱すると気化室内にヨウ化アルキルと共にヨウ化アルキル以外のガス成分が混在する。この場合には、ヨウ化アルキル以外のガス成分はプロペラントとして作用する。このため、更に空気、窒素、二酸化炭素またはヘリウムを添加すれば、結果として空気、窒素、二酸化炭素、ヨウ化アルキル以外の燻蒸性ガス、燻蒸剤に含有される溶剤およびヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のガスをプロペラントとして使用したことになる。なお、空気、窒素、二酸化炭素またはヘリウムをヨウ化アルキルガスに添加しない場合には、ヨウ化アルキル以外の燻蒸性ガスおよび燻蒸剤に含有される溶剤がプロペラントである。
【0040】iii)燻蒸庫に導入したガスを再度気化室に循環させて使用する場合には、燻蒸庫内のガス成分がプロペラントとなる。従って、ヨウ化アルキル含有ガスが他の燻蒸成分を含有するものであり、かつ気化ガスに空気、窒素、二酸化炭素およびヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を供給した場合には、空気、窒素、二酸化炭素、ヨウ化アルキル以外の燻蒸性ガス、燻蒸剤に含有される溶剤ガスおよびヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のガスがプロペラントとなる。
【0041】プロペラントは、ヨウ化アルキルの気化の前後を問わず気化室または気化室と燻蒸庫とを連通する配管等を経て供給することができる。しかしながら、いずれにしても気化したヨウ化アルキル含有ガスが凝縮する前にプロペラントを添加する必要がある。具体的には、ヨウ化アルキル含有ガスの温度が、ヨウ化アルキルの沸点よりも1〜60℃高い温度、より好ましくは1〜50℃高い温度において、プロペラントを供給する。ヨウ化アルキルの沸点は外圧によって異なるため、ここでいうヨウ化アルキルの沸点とは、プロペラントを添加する際の雰囲気下におけるヨウ化アルキルの沸点を意味するものとする。一般に、凝縮は温度の低下、ガス圧の増加によって発生する。しかしながら、上記範囲のガス温度を維持している場合にプロペラントを添加すると、凝縮の発生がないからである。なお、該プロペラントの添加後のガス全圧は、5〜150kPaであり、より好ましくは10〜130kpa、特に好ましくは20〜120kpaである。この圧力範囲であれば、気化室体積、気化室と燻蒸庫とを連結する配管の体積、燻蒸庫体積、該配管内温等に制限されずにヨウ化アルキルの凝縮を防止することができるからである。
【0042】なお、ヨウ化アルキルに添加するプロペラントは、ガス状であれば常温であっても、加熱によりヨウ化アルキル含有ガスと同じ温度またはこれより高温に調整してあってもよい。しかしながら、該プロペラントが常温である場合には、プロペラントの添加によって形成されるヨウ化アルキルとの混合ガスの温度が低下する。この結果、ヨウ化アルキル含有ガスとプロペラントとの混合ガスの温度が、該混合ガス雰囲気下におけるヨウ化アルキルの沸点より−30℃より低くなると、一般にヨウ化アルキルの凝縮が発生しやすくなる。その一方、該混合ガス雰囲気下におけるヨウ化アルキルの沸点より60℃を超えて高温になると、配管内のガス圧が高くなり、プロペラントの添加による加圧とあいまって耐圧性の配管を要し、新たな機器の調製が必要となる。このため、ヨウ化アルキルとプロペラントとの混合後のガス温度が、該混合ガス雰囲気下におけるヨウ化アルキルの沸点より−30〜60℃高いガス温度を維持できるように、供給するプロペラントの温度を調製することが好ましい。
【0043】本発明では、このようなヨウ化アルキルの気化とプロペラントの添加によって、気化室と燻蒸庫とを連結する配管内におけるヨウ化メチルと該プロペラントとの濃度が、全ガス成分を100%としてそれぞれ該ヨウ化アルキル97〜3v/v%、プロペラント3〜97v/v%、より好ましくはヨウ化アルキル70〜4v/v%、プロペラント30〜96v/v%、特に好ましくはヨウ化アルキル60〜4v/v%、プロペラント40〜96v/v%とする。なお、燻蒸庫からの排気ガスを気化室や該配管に循環させてプロペラントとして使用する場合には、プロペラントにヨウ化アルキルが含まれる。この場合には、燻蒸庫からの排ガスに含まれるヨウ化アルキル量は、上記気化室で気化したヨウ化アルキルに加算してヨウ化アルキル濃度として算出するものとする。本発明は、ヨウ化アルキルにプロペラントを添加することでヨウ化アルキルの凝縮を防止するものであり、特にヨウ化アルキルとプロペラントの濃度とが特定範囲になると、凝縮防止効果に優れることを見出したものだからである。もちろん、ヨウ化アルキル含有ガスが凝縮を発生しないためのヨウ化アルキルの濃度はガス温度によって異なる。またこのガス温度は、燻蒸処理のための気化および気化ガスの燻蒸庫への供給という実用に即した条件下における温度条件内で目的を達成することができる。この意味で、好ましいガス温度は、該混合ガスが燻蒸庫に供給される直前において含まれる該雰囲気下におけるヨウ化アルキルの沸点より−60〜60℃高く、より好ましくは−30〜20℃高く、特に好ましくは−30〜0℃高いことである。これによって、被燻蒸物を加温することなく、かつヨウ化アルキルを凝縮することなく燻蒸庫に供給することができるからである。
【0044】本発明の第二は、燻蒸剤を気化室で加熱によって発生させたヨウ化アルキル含有ガスを配管内を経て燻蒸庫に供給する燻蒸方法において、該配管を保温材で被覆してガス温度をヨウ化アルキルの沸点より−30〜60℃高い温度に維持することを特徴とする、ヨウ化アルキル含有ガスの凝縮防止方法である。なお、ここにいうヨウ化アルキルの沸点とは、該配管内の雰囲気下におけるヨウ化アルキルの沸点を意味するものとする。本発明は、気化したヨウ化アルキル含有ガスの凝縮が、該ガス温度の低下や圧力の増加によって発生することから、配管内のガス温度の低下を防止して凝縮を回避するものだからである。配管長の相違や気化ガス温度の相違、気化ガス濃度の相違などによって凝縮を防止できる保温効果が異なるが、保温材の配設によって気化したヨウ化アルキル含有ガスの温度をヨウ化アルキルの沸点よりも−30〜60℃、より好ましくは−20〜40℃、特に好ましくは−10〜20℃高い温度に維持することで該ガスの凝縮を防止することができる。なお、本発明の凝縮防止方法においても、「燻蒸剤」、「気化室」、「加熱」、「配管」、「燻蒸庫」、および「ヨウ化アルキル含有ガス」として、上記と同じものを使用することができる。
【0045】本発明においては、保温材として一般に配管内の流体の温度を維持するために使用できる公知の保温材を広く使用することができる。従って、発泡スチロール;ウレタンフォーム;スポンジ;フェルト、綿等の布帛;コルク;断熱機構を有する積層紙等がある。本発明では、これらの1種を単独で使用してもよく、または2種以上を併用することもできる。特に、上記のように配管長の相違や気化ガス温度の相違、気化ガス濃度の相違などによって適宜保温材を選択することができる。保温材によって保温効果が異なるためである。
【0046】気化室と燻蒸庫とを連結する配管内のヨウ化アルキル含有ガスまたはプロペラントを添加した場合には、ヨウ化アルキルとプロペラントとの混合ガスの温度は、該配管内の雰囲気下におけるヨウ化アルキルの沸点より−60〜60℃高い温度に維持することが好ましく、この範囲であれば制限はないが、より好ましくは該沸点より−30〜20℃高く、特に好ましくは−30〜0℃が高いことである。この際のヨウ化アルキル濃度は、配管内における全ガス成分を100%として、97〜3v/v%であり同時にプロペラント97〜3v/v%となる。より好ましくはヨウ化アルキル含有ガス70〜4v/v%、プロペラント30〜96v/v%である。特に好ましくはヨウ化アルキル60〜4v/v%、プロペラント40〜96v/v%である。
【0047】なお、本願第二の発明においては、特にヨウ化アルキル含有ガスの気化ガスに対して、空気や窒素などのプロペラントを気化室または気化室と燻蒸庫とを連結する配管に人為的に導入するプロペラントの供給操作は必要ではない。第二の発明は、気化したヨウ化アルキル含有ガスを所定温度に維持することで凝縮を防止するものだからである。しかしながら、蒸庫内を真空にして燻蒸処理する真空燻蒸は、気化室から配管を経て気化ガスのみを燻蒸庫に供給するために空気などのプロペラントは含まれないが、常圧燻蒸の場合には、気化室や配管等に大気圧が存在するためプロペラントは常在する。また、燻蒸成分としてヨウ化アルキルに加えて他の燻蒸性ガスを気化させ、または燻蒸剤に溶剤が含まれる場合には、気化室内に本発明で定義したプロペラントが結果として含まれる。上記配管内におけるヨウ化アルキルの濃度およびプロペラントの濃度とは、このような配管内に存在するプロペラントを含む値である。本願第二の発明においては、上記濃度のヨウ化アルキル含有ガスに関して、気化室と燻蒸庫とを連結する配管を保温材で被覆して上記混合ガス温度を維持することで、特にプロペラントを添加しなくても凝縮を生じることがないとするものだからである。なお、該ヨウ化アルキル濃度を維持できれば、気化ガスに更に人為的にプロペラントを添加することは、自由である。
【0048】また、配管を保温材で被覆したのみではガス温度を上記範囲に維持することができない場合には、配管を加熱装置の使用によって、該ガスを加温し上記範囲のガス温にすることもできる。このような加熱装置としては、電熱ヒーターまたは熱媒を循環させる加熱ジャケットによるもの等がある。
【0049】本発明の第三は、上記記載の凝縮防止方法によって得たヨウ化アルキル含有ガスを燻蒸庫に供給し、ヨウ化アルキル0.02〜12.6v/v%で燻蒸することを特徴とする燻蒸方法である。
【0050】本発明では、ヨウ化アルキルの凝縮を防止できるため、燻蒸庫内に該ガスを供給するに際して投薬ラインに燻蒸剤を残すことなく、特に、該燻蒸剤がヨウ化アルキルに他の燻蒸成分を含有する場合には含まれる全ての燻蒸成分を投薬ラインに残存することなく燻蒸庫に供給することができ、その生産量の少ないヨウ化アルキルを有効に使用して燻蒸することができる。ヨウ化アルキルを0.02〜12.6v/v%としたのは、この範囲で、十分な燻蒸効果が得られると共に、被燻蒸物の変質、腐食などが少ないからである。なお、燻蒸濃度は、被燻蒸物の材質、特性などを考慮して適宜上記範囲内で選択することができる。これにより、より被燻蒸物の変質などを防止した燻蒸処理が可能となる。ヨウ化アルキルの濃度は、より好ましくは0.2〜12.6v/v%であり、特に好ましくは0.5〜1.0v/v%である。特に、ヨウ化メチルの場合には、0.02〜12.6v/v%、より好ましくは0.2〜4v/v%であり、特に好ましくは0.5〜3v/v%である。なお、ここにいうヨウ化アルキルの濃度は、燻蒸庫内の全ガス成分に対する濃度である。
【0051】燻蒸庫内では、被燻蒸物に適した燻蒸剤濃度および圧力で燻蒸処理を行うことができる。一般には、密閉式の燻蒸庫や被燻蒸物が収納された室内を目張りなどして燻蒸ガスが遺漏しないようにしたものに、燻蒸ガスを供給する。一般には、燻蒸温度は、被燻蒸物によって適宜選択しうるのであるが、温度0〜40℃であることが好ましく、より好ましくは20〜30℃である。燻蒸ガスであるヨウ化アルキル含有ガスが、ヨウ化アルキルを凝縮することなく燻蒸庫内に導入されると、燻蒸庫内のヨウ化アルキル濃度は気化室や気化室と燻蒸庫とを連結する配管内よりも低いために、新たに凝縮を生ずることはない。このため常温で燻蒸処理をすることができるのである。なお、燻蒸時間は、被燻蒸物や燻蒸剤の種類により適宜選択できるが、一般には、5〜120時間で十分である。
【0052】また、気化器から燻蒸剤をガス化して燻蒸庫に供給すると、ヨウ化アルキルの気体比重が大きいために、供給した燻蒸剤と燻蒸庫内の空気との混合に時間がかかる。このため、燻蒸庫内には攪拌扇を配置して庫内の空気と燻蒸剤ガスとを攪拌して均一にしてもよい。本発明においては、プロペラントを添加して凝縮を防止した場合には、すでにプロペラントによって燻蒸剤がプロペラント内に混合され、かつプロペラントの添加によってガスの比重が下げられるために、燻蒸庫内に供給した燻蒸剤が気化ガスと容易に混合され、庫内の空気と均一になる。
【0053】本発明の燻蒸方法においては、被燻蒸物の特質を考慮した湿度を選択することができる。従って、被燻蒸物が主として金属である場合には、湿度60%以下で燻蒸することにより燻蒸処理中の金属の腐食を防止することができる。その一方、屏風、掛け軸、書籍、本、紙、漆器や絵画等の乾燥に弱い文化財の場合には、湿度60〜80%、より好ましくは60〜70%で燻蒸することにより、文化財の収縮、亀裂などの乾燥による破損を防止することができる。
【0054】なお、本発明において、文化財とは文化財保護法第2条に規定する第1号に規定する有形文化財および第3号に規定する民俗文化財であって、建築物を除いたものをいう。従って、従来から文化財の燻蒸処理の対象となる一般に使用することができる。
【0055】また、文化財に制限されず、従来臭化メチルを使用して燻蒸されていた各種の被燻蒸物、例えば、建材、穀物、野菜や果物などの青果、花卉などの燻蒸に応用することができる。
【0056】本発明の燻蒸方法では、更に燻蒸庫内に供給した気化した燻蒸剤を含有する庫内ガスを燻蒸庫に循環させてもよい。このように循環使用することで、燻蒸剤を効率的に使用することができるからである。循環させる燻蒸庫内ガス量については特に制限はない。また、循環ガスの供給個所についても、再度燻蒸庫に供給することができればいずれであってもよい。しかしながら、上記配管の一部または気化室の一部から供給させると、該燻蒸庫内ガスを上記するプロペラントとして使用することができる。
【0057】
【実施例】以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0058】(実施例1)図1に示す装置を用いて空気ポンプの吸入口に塩化カルシウム管を装着して脱水し、冷却装置の冷却温度22℃として、表1に示す条件でヨウ化メチルを気化させ、空気による希釈の効果を評価した。結果を表1に示す。
【0059】その結果、上記条件下では、ヨウ化メチルを1分間に2g(0.35L/分)蒸発でき、この条件下で空気量10L/分でプロペラントを供給するとヨウ化アルキルの凝縮が生じなかった。このときの排気直前のヨウ化メチル濃度は、3.50v/v%であり、算出したヨウ化メチルの分圧は350hPaであった。
【0060】
【表1】

【0061】(実施例2)冷却器の温度を0℃にし、表2に示す条件に変更した以外は実施例1と同様に操作して空気による希釈の効果を評価した。結果を表2に示す。
【0062】その結果、上記条件下では、ヨウ化メチルを1分間に2g(0.35L/分)蒸発し、この条件下で空気量10L/分でプロペラントを供給すると、0℃における排気直前のヨウ化メチル濃度は、3.50v/v%であり、算出したヨウ化メチルの分圧は170hPaと算出された。
【0063】
【表2】

【0064】(実施例3)図2に示す装置を用いて、ヨウ化メチルを気化して文化財を燻蒸した。まず、予め窒素ガスにより1kg/cm2に加圧したヨウ化メチル(2)を計量器(7)に1.68kg供給した。次いで気化器(10)に付属させたブロア(12)を40L/分の送風力で稼動させ、気化器を通過させ発生したガスと混合させつつ混合ガスを燻蒸庫(30)に送った。また、燻蒸庫(30)には前記ブロア(12)に連結する配管(40)を設け、庫内のガスを該ブロア(12)に循環させた。次いで、気化器(10)に付属するヒーター(11)によって気化室内の温度を80℃に調整し、保温材(24)燻蒸ガス送気配管(20)の温度を60℃に維持した。その後、前記計量器(7)から50ml/分程度の液量でヨウ化メチルを気化器(10)に送った。計量器(7)内のヨウ化メチルがなくなった時点で計量器バルブ(8)を閉鎖し、気化器ヒーター(11)の電源を切り投薬終了とした。なお、燻蒸処理が終わるまでブロア(12)による送風を連続した。この際のヨウ化メチルの含有量は、35.4〜37.8v/v%であり、プロペラントは64.6〜62.2v/v%である。また、配管内の圧力は100〜110kPaであった。
【0065】燻蒸庫の体積は12m3であり、ヨウ化メチル1.68kgの投与による到達濃度理論値は140g/m3となる。燻蒸処理は、庫内温度30℃にて暴露時間24時間で行った。なお、庫内のヨウ化メチルの濃度は、理研計器株式会社、干渉式18型および北川式検知管、またヨウ化メチルの分解をチェックするためにヨウ素測定用ガステック9L検知管を使用した。
【0066】被燻蒸物としては、金属・木・竹製民具、絹・木綿・麻製染め物、金糸刺繍、剥製、漆器類、古書、カラーフィルム(ネガおよびプリント)、白黒フィルム(ネガおよびプリント)、絹絵、カラー石版画、モノクロ石版画、デンプン紙、、金属(銀、金、銅、錫、鉛、ニッケル、真鍮、鉄、アルミニュウム)、岩絵具(胡粉、黄土、岱赭、黄緑青、松葉緑青、群青、淡口紫、木藍、岩桃、岩紅、鎌倉朱、コチニール、丹、弁柄石黄、白亜、藤黄、シルバー・ホワイト、クロム・イエロー、カドミニウム・レッド、カドミニウム・イエロー)、油絵具(パーマネント・ホワイト、パーマネント・イエロー・ライト、パーマネント・グリーン・ベール、ビリジャン・ヒュー、コバルト・ブルー・ヒュー、ウルトラ・マリン・ディープ、バーミリオン・ヒュー、クリムソン・レーキ、イエロー・オーカー、バーント・シェンナ、バーント・アンバー、アイボリー・ブラック)、水彩絵具(白色、レモン色、山吹色、朱色、赤色、黄緑色、ビリジアン、青色、藍色、黄土色、茶色、黒色)等、更に燻蒸効果効果判定用生物としてコクゾウムシ、黒コウジカビを庫内に収納した。なお、被燻蒸物の全体収容比率は40%であった。
【0067】この結果、気化器(10)と燻蒸庫(30)とを連結する燻蒸ガス送気配管(20)には、ヨウ化メチルの凝縮は一切観察されなかった。これは、気化システムによって完全にヨウ化メチルがガス化され、かつプロペラントの添加によって凝縮が防止されたと解される。また、被燻蒸物への薬害は一切観察されず、ヨウ化メチルも分解しなかった。その一方、効果判定用生物は100%が死に至っていたため、十分な燻蒸が達成されていた。
【0068】さらに、表3に示したように投薬終了直後のヨウ化メチル濃度が投与理論値と良い一致を示し、燻蒸24時間後の維持濃度も当初の85%を超えてほとんど損失を示していなかった。なお、15%の損失分については、ヨウ化メチルの分解で生じるヨウ素が検出されない(検出限界2ppm)ことにからヨウ化メチルの分解による損失は考えられない。
【0069】
【表3】

【0070】(実施例4)下記表4に示す異なる濃度で燻蒸庫内に燻蒸ガスを供給した場合の、庫中の投薬ヨウ化アルキル含有ガスの濃度変化を経時的に測定した。なお、燻蒸庫内温度は25℃である。結果を表4に示す。この結果、燻蒸庫内に一旦均一にガス化されたヨウ化メチルは、その後24時間の燻蒸期間中にガスの液化などによる濃度変化は見られず安定であることが判明した。
【0071】
【表4】

【0072】(実施例5)実施例1等から得た実施可能な投薬量について、燻蒸庫内を表5に示す温度に調整した場合の気化器への燻蒸剤の投与量と、プロペラト量との関係を算出した。結果を表5に示す。なお、表5におけるMIDは、ヨウ化メチルを示す。
【0073】
【表5】

【0074】
【発明の効果】本発明によれば、従来好ましく使用された臭化メチルの代替品であるヨウ化アルキルを、凝縮させることなく燻蒸庫に供給することができる。このため、投薬ラインにおける燻蒸剤のロスを防止することができる。特に、プロペラントの添加や配管の保温または加熱という簡便な方法によって従来臭化メチルの燻蒸に使用された燻蒸装置をそのまま用いて、簡便にヨウ化アルキルの凝縮を防止することができる。また、凝縮の防止と同時に、燻蒸庫内の空気と気化した燻蒸剤とを極めて均一に混合することができる。
【出願人】 【識別番号】000227652
【氏名又は名称】日宝化学株式会社
【出願日】 平成12年10月23日(2000.10.23)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄 (外4名)
【公開番号】 特開2002−128607(P2002−128607A)
【公開日】 平成14年5月9日(2002.5.9)
【出願番号】 特願2000−323161(P2000−323161)