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【発明の名称】 スライム剥離剤及びスライム剥離方法
【発明者】 【氏名】八木 稔

【要約】 【課題】安全な薬剤を用いて、水系に付着しているスライムを、容易かつ効率的に、工業的に有利に剥離することができるスライム剥離剤及びスライム剥離方法を提供する。

【解決手段】マレイミド類を有効成分として含有することを特徴とするスライム剥離剤、及び、スライムが付着している水系に、マレイミド類を連続的、間欠的又は一時的に添加することを特徴とするスライム剥離方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】マレイミド類を有効成分として含有することを特徴とするスライム剥離剤。
【請求項2】マレイミド類が、一般式[1]で表される化合物である請求項1記載のスライム剥離剤。
【化1】

(ただし、式中、R1及びR2は水素又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R3は、水素、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数1〜10の無置換若しくはヒドロキシル基置換アルキル基である。)
【請求項3】スライムが付着している水系に、マレイミド類を連続的、間欠的又は一時的に添加することを特徴とするスライム剥離方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スライム剥離剤及びスライム剥離方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、安全な薬剤を用いて、水系に付着しているスライムを、容易かつ効率的に、工業的に有利に剥離することができるスライム剥離剤及びスライム剥離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】各種工場の冷却水系では、細菌、糸状菌、藻類などから構成されるスライムが発生し、熱効率の低下、通水配管の閉塞、配管金属材質の腐食などのスライム障害が起きる。また、スライム障害は、紙パルププロセス水系、廃水処理水系、鉄鋼水系、切削油水系などにおいても重大な問題を引き起こす。さらに、逆浸漬膜分離装置など、膜を利用した分離装置の膜面にスライムが形成されると、処理水量が著しく低下するという問題が生ずる。従来、冷却水系におけるスライム対策としては、薬剤を用いる方法がとられている。薬剤としては、付着したスライムを剥離ないし洗浄するスライム剥離剤、洗浄剤、あるいはスライムの付着を防止するスライムコントロール剤、殺菌剤などが用いられている。これらの薬剤のうち、スライムコントロール剤と殺菌剤は、水中の微生物濃度を低く保つことにより、スライムの付着ポテンシャルを低減させることを目的として使用されている。一般的に、スライムコントロール剤は、菌の酵素反応の阻害、細胞膜の変性作用により、殺菌、抑制すると言われている。一方、スライム剥離剤は、主として多糖類からなる菌体外の粘着物質の粘性をなくすことにより、菌の集合体を分散し、付着面より剥離するものと考えられている。従来より、スライム剥離剤、洗浄剤としては、オゾンや過酸化水素などの過酸化物が用いられているが、これらは配管材などの金属材料を腐食したり、取り扱いに危険を伴ういう問題がある。そこで、腐食性が少なく安全なスライム剥離剤として、ヒドラジンやハロゲン化イソチアゾロン系化合物なども使用されている。しかし、ヒドラジンには発ガン性の問題があり、またハロゲン系の化合物を使用すると、環境への悪影響が問題視される。このために、より安全性の高いスライム剥離剤及び剥離方法面が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、安全な薬剤を用いて、水系に付着しているスライムを、容易かつ効率的に、工業的に有利に剥離することができるスライム剥離剤及びスライム剥離方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、従来は、水中生物に対する増殖抑制効果(特公昭39−17546号公報、特開昭63−156703号公報)のみが知られていたマレイミド類が、水系に付着したスライムの剥離に対して優れた効果を有することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(1)マレイミド類を有効成分として含有することを特徴とするスライム剥離剤、(2)マレイミド類が、一般式[1]で表される化合物である第1項記載のスライム剥離剤、【化2】

(ただし、式中、R1及びR2は水素又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R3は、水素、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数1〜10の無置換若しくはヒドロキシル基置換アルキル基である。)、及び、(3)スライムが付着している水系に、マレイミド類を連続的、間欠的又は一時的に添加することを特徴とするスライム剥離方法、を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明のスライム剥離剤は、マレイミド類を有効成分として含有する。本発明のスライム剥離方法においては、スライムが付着している水系に、マレイミド類を連続的、間欠的又は一時的に添加する。本発明に用いるマレイミド類に特に制限はなく、例えば、マレイミドのほかに、マレイミドの窒素原子に置換基を有する化合物、2位及び/又は3位の炭素原子に置換基を有する化合物、マレイミド環とベンゼン環などとの縮合環を有する化合物などを挙げることができる。本発明において、マレイミド類としては、一般式[1]で表される化合物を好適に用いることができる。
【化3】

一般式[1]において、R1及びR2は、水素又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R3は、水素、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数1〜10の無置換若しくはヒドロキシル基置換アルキル基である。一般式[1]で表される化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、シトラコン酸イミド、N−メチルシトラコン酸イミド、N−エチルシトラコン酸イミド、2,3−ジメチルマレイン酸イミド、N−メチル−2,3−ジメチルマレイン酸イミド、N−エチル−2,3−ジメチルマレイン酸イミドなどを挙げることができる。これらのマレイミド類は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、マレイミドを特に好適に用いることができる。
【0006】本発明において、これらのマレイミド類は、そのまま用いることができ、増量剤その他の薬剤と配合して粉剤又は錠剤とすることもでき、あるいは、適当な溶媒に溶解して液剤として使用することもできる。液剤とする場合の溶媒としては、水を好適に用いることができるが、必要に応じて親水性溶媒も使用することができる。親水性溶媒としては、例えば、アルコール類、グリコール類、アミド類、グリコールエステル類、エステル類などを挙げることができる。本発明方法において、スライムが付着している水系へのマレイミド類の添加量に特に制限はなく、スライムの付着状態に応じて適宜選択することができるが、通常はマレイミド類の残留濃度が1〜1,000mg/Lであることが好ましく、5〜100mg/Lであることがより好ましく、10〜50mg/Lであることがさらに好ましい。適用する水系のpHに特に制限はなく、通常のpH範囲である3〜10程度の範囲で十分に使用することができる。本発明方法において、スライムが付着している水系へのマレイミド類の添加方法に特に制限はなく、例えば、水系中のマレイミド類の残留濃度が常に一定になるように連続的に添加することができ、水系中のマレイミド類の平均残留濃度が所定の値になるように間欠的に添加することもでき、あるいは、付着しているスライムを剥離するために一時的に添加し、スライムが剥離した後はマレイミド類の添加を中止することもできる。マレイミド類を間欠的に添加する方法に特に制限はなく、付着しているスライムの性状に応じて、低濃度長時間注入と高濃度短時間注入を適宜選択することができる。本発明のスライム剥離剤は、さらに必要に応じて、殺生物剤、微生物増殖抑制剤、腐食防止剤、スケール防止剤、消泡剤、界面活性剤などを配合することができる。本発明方法によれば、健康面、環境面及び設備面から安全性の高いマレイミド類を、スライムが付着している水系に添加して、付着スライムを効果的に剥離することができる。
【0007】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1厚木市水5Lに、ポリペプトン25.2g、酵母エキス25.2g、塩化ナトリウム12.6g及び水酸化ナトリウム3.25gを溶解し、オートクレーブを用いて121℃で15分殺菌し、PY培地を調製した。このPY培地を、活性炭カラムを通して脱塩素した厚木市水で5mg−BOD/Lとなるように連続的に希釈(pH8.0)し、30℃となるように熱交換したのち、内径3mmのシリコーンチューブに通水速度5.5m/秒で48時間通水し、シリコーンチューブ内面にスライムを付着させた。シリコーンチューブ30cmについて、内面に付着したスライムを掻き取り、掻き取った懸濁液を、容量目盛り付き遠心沈殿管を用いて4,000Gで、10分間遠心分離した。スライムの湿容量は、1.50mLであった。同様にして、PY培地希釈水を48時間通水してシリコーンチューブ内面にスライムを付着させ、さらにPY培地希釈水にマレイミドを濃度1mg/Lになるよう連続添加した水を、同じ条件で24時間通水したのち、シリコーンチューブ30cmについて内面に付着したスライムを掻き取り、同様に遠心分離した。スライムの湿容量は0.50mLであり、スライム剥離率は67%であった。マレイミドの添加濃度を2mg/L、5mg/L、10mg/L、20mg/L及び50mg/Lとし、同様にして、PY培地希釈水を48時間通水したのち、マレイミド添加PY培地希釈水を24時間通水する操作を行い、スライムの剥離率を求めた。マレイミドの各添加濃度に対して、スライムの剥離率は、77%、88%、92%、93%及び93%であった。
実施例2マレイミドの代わりにN−メチルマレイミドを用い、その添加濃度を1mg/L、2mg/L、5mg/L、10mg/L、20mg/L及び50mg/Lとし、実施例2と同様にしてスライムの剥離率を求めた。N−メチルマレイミドの各添加濃度に対して、スライムの剥離率は、43%、59%、79%、86%、91%及び91%であった。
実施例3マレイミドの代わりにN−エチルマレイミドを用い、その添加濃度を1mg/L、2mg/L、5mg/L、10mg/L、20mg/L及び50mg/Lとし、実施例2と同様にしてスライムの剥離率を求めた。N−エチルマレイミドの各添加濃度に対して、スライムの剥離率は、30%、43%、55%、70%、88%及び92%であった。
比較例1マレイミドの代わりにヒドラジンを用い、その添加濃度を1mg/L、2mg/L、5mg/L、10mg/L、20mg/L及び50mg/Lとし、実施例2と同様にしてスライムの剥離率を求めた。ヒドラジンの各添加濃度に対して、スライムの剥離率は、0%、3%、7%、23%、51%及び87%であった。実施例1〜3及び比較例1の結果を、第1表に示す。
【0008】
【表1】

【0009】第1表に見られるように、PY培地希釈水にマレイミド類を添加した実施例1〜3においては、従来よりスライム剥離剤として知られているヒドラジンを添加した比較例1に比べてスライム剥離率が高く、マレイミド類がスライム剥離に対して優れた効果を有することが分かる。試験した3種類のマレイミド類化合物の中では、特にマレイミドが有効であり、また、ヒドラジンと比較して、低濃度でもスライム剥離効果が大きいことに特色が認められる。
実施例4100冷凍トン規模の電子部品工場の開放循環冷却水系を対象として、試験を行った。この冷却水系にマレイミドを濃度5mg/Lとなるように添加し、2週間通常の冷却水系の運転を行った。目視観察によると、マレイミドを添加する前の冷却塔充填材の表面には茶褐色のスライムが付着していたが、2週間後に冷却塔充填材の表面にはスライムがほとんど認められず、スライムが剥離していることが確認された。
比較例2厚木市水をバブリングして得られた脱塩素水1Lに、石油化学工場の冷却水系から採取した菌体を含む汚れ成分(スライム)を105℃乾燥物として1重量%となるように添加し、200rpmで5分間撹拌して汚れ成分を分散させたのち、4日間室温下に放置した。4日後に沈渣を取り出し、電子顕微鏡による観察を行ったところ、沈渣表面に角張った突起物や糸状物質が多数見られた。
実施例5厚木市水をバブリングして得られた脱塩素水1Lに、石油化学工場の冷却水系から採取した菌体を含む汚れ成分(スライム)を105℃乾燥物として1重量%となるように添加し、さらにマレイミドを濃度5mg/Lとなるように添加し、200rpmで5分間撹拌して汚れ成分を分散させたのち、4日間室温下に放置した。4日後に沈渣を取り出し、電子顕微鏡による観察を行ったところ、糸状物質が消失し、表面の突起物も丸みを帯びた状態であった。比較例2と実施例5の結果から、マレイミドはスライムの表面状態を変化させる作用があり、これによりスライム剥離効果を有することが推定される。
【0010】
【発明の効果】本発明のスライム剥離剤及びスライム剥離方法によれば、健康面、環境面及び設備面から安全性の高いマレイミド類を用いて、水系に付着しているスライムを、容易かつ効率的に、工業的に有利に剥離することができる。
【出願人】 【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
【出願日】 平成12年9月13日(2000.9.13)
【代理人】 【識別番号】100075351
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 充
【公開番号】 特開2002−87909(P2002−87909A)
【公開日】 平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願番号】 特願2000−278618(P2000−278618)