トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 植物保護用組成物およびその使用方法
【発明者】 【氏名】河合 博

【要約】 【課題】植物の耐乾燥性、耐寒性を向上できる植物保護用組成物およびその使用方法を提供する。

【解決手段】トレハロース、トレハロース−6−リン酸、セラギノースから選択される少なくとも一種を好ましくは組成物全体に対して0.01〜30質量%、硝酸カルシウムなどの水溶性カルシウムを好ましくは組成物全体に対して0.1〜20質量%を主成分として含有する植物保護用組成物を用いる。この植物保護用組成物を10,000体積倍を上限として水に希釈して植物の茎葉および/または果実に散布する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トレハロース、トレハロース−6−リン酸、セラギノースから選択される少なくとも一種と水溶性カルシウムとを主成分として含有することを特徴とする植物保護用組成物。
【請求項2】 組成物全体に対してトレハロース、トレハロース−6−リン酸、セラギノースから選択される少なくとも一種が0.01〜30質量%、水溶性カルシウムが0.1〜20質量%の範囲で各々原液中に含まれていることを特徴とする請求項1記載の植物保護用組成物。
【請求項3】 水溶性カルシウムとして硝酸カルシウムを使用することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の植物保護用組成物。
【請求項4】 請求項1記載の植物保護用組成物を10,000体積倍を上限として水に希釈して植物の茎葉および/または果実に散布することを特徴とする植物保護用組成物の使用方法。
【請求項5】 非イオン性、陰イオン性、陽イオン性もしくは両性の界面活性剤、固着剤、増粘剤、沈殿防止剤、中和剤、防腐剤、増量剤から選択されるアジュバントを、単独または2つ以上混合して、さらに含有させて植物に適用することを特徴とする請求項4記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、作物の耐乾燥性、耐寒性の付与、および作物のカルシウム欠乏による生理障害の防止を目的とした、植物保護用組成物およびその使用方法に関するものであり、特に作物中のカルシウム含有量を高め収穫物の収量および商品価値を向上するために有効な手段を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】農地において、水分不足による乾燥害と低温による冷害は近代農業の進んだ現在でも大きな問題である。温度管理や水分管理が天候まかせの露地作物においては勿論、最近では栽培品種の変化、生産コストの削減、人手の不足等の影響を受け、ビニールハウスなどの施設栽培においてもその被害は拡大しつつある。土壌の水分不足からおこる乾燥害の例としては地上部のしおれ、葉の縁枯れなどがある。
【0003】さらに土壌の乾燥からくる二次的な障害として一般にカルシウム欠乏症といわれる、トマトやピーマンの尻腐れ症、イチゴのチップバーン、ハクサイなど結球野菜の芯腐れ症、メロンの発酵果、生長点の芯止まり症、花芽分化異常などがある。
【0004】また、低温による冷害の例としては、葉の黄化、根傷み、花芽異常、不稔、結実不良、果実肥大不良などがある。これらの障害は直接作物の収量、品質に多大な悪影響を及ぼしているのが現状である。
【0005】これらの乾燥害、冷害の対策としてパラフィンなどを散布して葉の蒸散量を抑制する方法(特開平05−328859号公報)、アミノ散発酵液の葉面散布(特開平04−58833号公報)、プロリン、トリプトファンの散布(北海道上川農業試験場)などが検討されているが、効果の再現性に乏しく、時に葉の褐変・黄化などの薬害を生じることがあった。
【0006】また、トレハロースを用いた植物の活性剤(特開平10−25209号公報)、トレハロースと水溶性キトサンを用いた鮮度保持剤(特開平11−196765号公報)などがあるが、その効果として耐寒性、鮮度保持など特に用途、効果がが限定されたものが多く、とくに野菜や穀物の収量や品質を大きく低下させる要因である乾燥からくるカルシウム欠乏症に対して効果が未確認である。
【0007】さらに、カルシウム欠乏症対策に、カルシウム成分を葉面散布などの方法で施用することも従来よりされてはきたが、本質的に圃場で発生するカルシウム欠乏の原因は、乾燥からくる吸水(吸肥)不足による二次的な障害であることが圧倒的であり、植物に乾燥耐性を付与することに重点を置かないこれらの方法は、充分に満足のいく効果が得られていなかったのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】植物は乾燥条件下では、第1段階として、葉の約90%をしめる水分が葉の気孔から過剰に蒸散してしまうため葉中の細胞の膨圧が低下ししおれ症状が発生する。しおれた葉では養水分の細胞間の移動が停止し、さらには呼吸作用による同化養分の消費が多くなり、結果として組織の発達に悪影響を及ぼす。さらに第2段階として本来植物の体内蒸散流に乗って根部から吸収されるはずのカルシウムの供給が絶たれ、組織の軟化、壊死が発生する。これら組織の軟化、壊死は元来水分蒸散の少ない果実や、新葉、生長点に多くみられ、収量や商品価値を著しく低下させる。
【0009】逆に、低温条件下で葉は気孔を閉じ、蒸散による熱量の放出を抑えるようになる。蒸散が抑えられた結果、乾燥時と同様に植物体内での養水分の移動は悪くなり、活発に細胞分裂を行なっている生長点や花などへの栄養分の移動が阻害される。さらには、花粉の異常、発芽管の異常、根傷みなどを誘発し、収量や歩留まりが低下する結果を引き起こす。
【0010】上記の症状の対策として、従来より遮光シート、保温シート、灌水設備、暖房設備などが取り入れられてきてはいるが、それらの技術導入に要するコストは生産者にとって負担であり、とくに反収(10アール当りの収益)の低い作物では安価で施用の楽な対処方法の確立は急務であった。
【0011】本発明の第1の目的は、上記従来技術に存在する問題点を解決し、作物の耐乾燥性、耐寒性の付与、および作物のカルシウム欠乏による生理障害の防止を可能とした、植物保護用組成物を提供することであり、そして、本発明の第2の目的は、この植物保護用組成物の使用方法であって、特に作物中のカルシウム含有量を高め収穫物の収量および商品価値を向上するために有効な手段を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者はこのような背景をふまえ、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を行なった結果、植物、微生物、昆虫、きのこ類などに広く存在し、生物の乾燥耐性、耐冷性に大きく関わっているとされるトレハロースと、その誘導体であるトレハロース−6−リン酸、トレハロースと生態内での挙動、物性が近似している非還元性三糖セラギノースから選択される少なくとも一種と、植物の組織の軟化、壊死の防止物質である水溶性カルシウムを含有する組成物を植物に適用することにより植物の耐乾燥性、耐寒性の向上に効果があることを見出し、本発明を成すに至った。
【0013】上記の課題を解決する本発明の請求項1の発明は、トレハロース、トレハロース−6−リン酸、セラギノースから選択される少なくとも一種と水溶性カルシウムとを主成分として含有することを特徴とする植物保護用組成物に関するものである。
【0014】本発明の請求項2の発明は、請求項1記載の植物保護用組成物において、組成物全体に対してトレハロース、トレハロース−6−リン酸、セラギノースから選択される少なくとも一種が0.01〜30質量%、水溶性カルシウムが0.1〜20質量%の範囲で各々原液中に含まれていることを特徴とする。
【0015】本発明の請求項3の発明は、請求項1あるいは請求項2記載の植物保護用組成物において、水溶性カルシウムとして硝酸カルシウムを使用することを特徴とする。
【0016】本発明の請求項4の発明は、請求項1記載の植物保護用組成物を10,000体積倍を上限として水に希釈して植物の茎葉および/または果実に散布することを特徴とする植物保護用組成物の使用方法に関するものである。
【0017】本発明の請求項5の発明は、請求項4記載の使用方法において、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性もしくは両性の界面活性剤、固着剤、増粘剤、沈殿防止剤、中和剤、防腐剤、増量剤から選択されるアジュバントを、単独または2つ以上混合して、さらに含有させて植物に適用することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用されるトレハロースは2分子のD −グルコースが1,1結合した非還元性二糖の一種で、結合様式がα,α−、α,β−、β,β−の3種の異性体がある。分子量は342.30である。
【0019】トレハロースは他のスクロースやマルトースに比べ水溶液中で不凍水の量が多い、水和殻の水分子の運動性が低い、水和殻の値が大きい、ガラス転移点が高いという特徴を持つ。生態中では緊急時のエネルギー源として、また組織の骨格維持に必須な物質として、さらには不凍剤としての意味を持つ。
【0020】例を挙げると、ほとんどの昆虫類はトレハロースを飛び立つときのエネルギー源としていたり、乾燥させたドライイーストが水分の補給とともに生命機能を復活させるのもこのトレハロースのおかげであるといわれる。
【0021】これらの基礎的な研究とは裏腹にトレハロースそのものを植物に施用しその効果を確認した事例は非常に少ない。理由は、以前は安価な合成法が確立しておらず、キログラム当り数万円と非常に高価な物質であったからである。
【0022】ところが近年になって澱粉から酵素法によって安価に製造できるようになり、その使用は多岐な方面に拡大しつつあるのが現状である。これらの特徴を持ったトレハロースおよびその関連化合物であるトレハロース−6−リン酸、セラギノースから選択される少なくとも一種を、植物細胞の軟化、壊死に大きくかかわるカルシウムと同時に散布や灌水することで相乗的に乾燥障害、低温障害を回避することが可能となる。
【0023】本発明において使用されるトレハロースは製法にとらわれることはないが、効果的な1実施例として澱粉やマルトースから大腸菌などを利用した酵素法により製造する方法が挙げられる。また、その結合様式においても制約は受けないが、天然に存在するα,α−型が好ましく使用できる。
【0024】本発明において使用されるトレハロース−6−リン酸は製法にとらわれることはないが、効果的な1実施例としてトレハロースを大量に蓄積する特徴を有する菌体を多量に培養し、それらの抽出物からトレハロース誘導体であるトレハロース−6−リン酸を得る方法が挙げられる。また、その結合様式においても制約は受けないが、天然に存在するα,α−型が好ましく使用できる。
【0025】本発明において使用されるセラギノースは製法にとらわれることはないが、効果的な1実施例として大量に蓄積が確認されているイワヒバ科の植物の抽出物や嫌気性バクテリア抽出物からセラギノースを得る方法が挙げられる。また、その結合様式においてもなんら制約を受けるものではない。本発明において使用されるこれらの物質はそれぞれ単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
【0026】本発明において使用される水溶性カルシウムは、硝酸カルシウム、塩化カルシウムなど水に溶解するカルシウム塩であれば、問題無く使用できる。さらにその製造法、形態などになんら制約を受けるものではない。また本発明中の水溶性カルシウムは、クエン酸やリンゴ酸、蟻酸などの有機酸や、セリン、プロリン、メチオニン、トリプトファンなどのアミノ酸に代表されるカルボキシル基を有する有機化合物でキレート化して使用しても良い。この場合もキレート剤になんら制約を受けるものではない。本発明において使用されるこれらの水溶性カルシウムは、それぞれ単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
【0027】本発明の植物保護用組成物全体に対してトレハロース、トレハロース−6−リン酸、セラギノースから選択される少なくとも一種が0.01〜30質量%、水溶性カルシウムが0.1〜20質量%の範囲で各々原液中に含まれていることが好ましい。トレハロース、トレハロース−6−リン酸、セラギノースから選択される少なくとも一種が0.01〜30質量%とするのが効果的であり、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは1〜5%質量の範囲である。0.01%質量未満であると効果が顕著で無くなるため好ましくない。30質量%を超えるとトレハロースの溶解速度が低下しハンドリングが悪くなるため好ましくない。
【0028】水溶性カルシウムが0.1〜20質量%とするのが効果的であり、より好ましくは0.2〜15質量%、さらに好ましくは1〜10%質量の範囲である。0.1%質量未満であると効果が顕著で無くなるため好ましくない。20質量%を超えると水溶性カルシウムの水溶性が低下して生産性が悪くなると同時に、植物に過剰症が発生し易くなるため好ましくない。
【0029】水溶性カルシウムとして硝酸カルシウムを使用することが好ましい。水溶性カルシウムとしては水に対する溶解度が高い、水溶液が中性に近い、肥料三大要素である窒素成分を同時に供給できる、植物や環境に有害な物質に変化する恐れのある塩素イオンを含まない、カルシウムの植物内での移動を促進するなどの理由から硝酸カルシウムを特に好ましく使用できる。硝酸カルシウムはその製法、形態にはなんら制約を受けず、また上記のメリットを損なわない範囲で他のカルシウム塩と組み合わせて使用することも可能である。
【0030】本発明の植物保護用組成物の使用に当たっては、本発明の植物保護用組成物を10,000体積倍を上限として水に希釈して植物の茎葉および/または果実に散布する。使用濃度、散布量は植物の種類、栽培体系などにより便宜選択して利用されるが、10,000体積倍を超えて使用すると効果が顕著でなくなるので好ましくない。好ましくは、10〜5,000体積倍、さらに好ましくは100〜2,000体積倍で希釈して使用する。
【0031】本発明の植物保護用組成物を使用する際は植物の茎葉および/または果実に散布する。本発明においては植物の茎葉および/または果実に適用する方法は特に限定されず、散布以外にも、浸漬、塗布などの方法が挙げられる。具体的な散布例としては、例えば、本発明の植物保護用組成物を水に拡散し、動力噴霧器、肩掛け噴霧器、ブロードキャスター、スプレイヤー、有人または無人ヘリコプター、煙霧器、ハンドスプレー、などを用いて、10アール当たり0.5〜300リットル散布する方法が挙げられる。
【0032】また、育苗期、本圃移植後どちらも植物の茎葉および/または果実に散布、浸漬、塗布、全て効果があるが、本圃移植後は浸漬、塗布は作業的に無理があり、経済的にも不利になるので、好ましくは植物の地上部に散布し施用する。施用間隔としては、新葉が展葉するのに合わせて通常3〜14日おきに定期的に施用するのが望ましいが、生育ステージ、品種、生育状況によっては、毎日施用することも間隔をあけて施用することも可能である。
【0033】散布量の一実施形態として、次のような例が挙げられる。水稲の場合、水に拡散した本発明の植物保護用組成物を育苗期では育苗箱当たり10〜2,000ml施用する。10ml未満では効果が顕著で無くなるので好ましくない。2,000mlを超えて施用すると苗に過湿の影響が出やすくなるので好ましくない。好ましくは100〜1,000ml、さらに好ましくは200〜800ml施用する。本田散布では10アール当たり1〜500l、好ましくは10〜300l、さらに好ましくは50〜200l施用する。
【0034】最も好ましい施用方法として、育苗期は1.5葉期から5日おきに500ml/育苗箱、本田移植後は10日おきに100l/10アール施用する方法が挙げられる。
【0035】本発明の植物保護用組成物に、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性もしくは両性の界面活性剤、固着剤、増粘剤、沈殿防止剤、中和剤、防腐剤、増量剤から選択されるアジュバントを、単独または混合して、さらに含有させて植物に適用することが好ましい。
【0036】本発明で用いるアジュバントは、特に限定されるものではなく、本発明の植物茎葉散布用組成物を阻害するものでなければ問題無く使用できる。
【0037】本発明において使用される界面活性剤としては、例えばアルキルスルホコハク酸塩、縮合リン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル酢酸エステル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤が挙げられ、その塩としてアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
【0038】さらに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキジプロピレングリコール等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。また、必要に応じてカチオン系、両イオン系界面活性剤を用いてもよい。
【0039】本発明において使用される固着剤としては、例えばD一ソルビット、パラフィン、カゼイン石灰、シリコーン、デンプン類、樹脂粉末、水膨潤性高分子物質などが挙げられる。
【0040】本発明において使用される増粘剤としては、、例えばキサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、コロイド状シリカ、α化デンプンなどの水溶性高分子化合物、高純度ベントナイト、親水性シリカなどが挙げられる。
【0041】本発明において使用される沈殿防止剤としては、例えばアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性湿潤・分散剤、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのノニオン性湿潤・分散剤などが挙げられる。
【0042】本発明において使用される中和剤としては、例えば硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0043】本発明において使用される防腐剤としては、例えばホルマリン溶液、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラヒドロキシ安息香酸エステル、1,2−ベンツチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0044】本発明において使用される増量剤としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、酸性白土、活性白土、アタパルガスクレーなどの粉末担体、バーミキュライト、パーライト、軽石などの粒状担体、ホワイトカーボン、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、粉末セルロース、デンプン、デキストリン、糖類、米糠、油粕、コーンフィード、ふすまなどが挙げられる。
【0045】また本発明の植物茎葉散布用組成物に必要に応じて、シリコーン等の消泡剤、エチレングリコール、プロピレングリコール等の凍結防止剤を添加することもできる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0046】
【実施例】以下本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0047】(実施例1)容量1,000mlのビーカーに硝酸カルシウム四水和物(和光純薬工業株式会社)560g、トレハロース(株式会社林原)50g、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート100gに水を加え1,000mlにメスアップしTC1を作製した。TC1の比重は1.25、水溶性カルシウム濃度でおよそ7.5質量%であった。TC1と同様の製法でトレハロース50gをトレハロース30gとし、さらにトレハロース−6−リン酸を20gに置き換えてTC2を作製した。さらに同様の製法でトレハロースをイワヒバより抽出精製した純度98.7%セラギノースに置き換えてTC3を作製した。さらに比較例として塩化カルシウムを水に溶解し、水溶性カルシウム濃度で7.5質量%に調整したものをA1とした。
【0048】(試験1)温室内でφ90mmのポリポットにキュウリ(品種:夏すずみ)の種を播種し、子葉が完全展葉したものを各試験区100株用意した。試験区の構成としては水道水を散布処理する対照区、TC1を処理するTC1区、A1を処理するA1区とした。試験開始時より灌水量を減らし、10日後からは無灌水で試験を行った。各処理液TC1、A1は水で500体積倍に希釈して試験に供した。処理は試験開始時に1回目、その後3日おきに葉面散布にて行なった。処理開始から2週間経過したところで、地上部茎葉のしおれ程度を3段階にて評価し、その平均を算出することで耐乾燥性の評価を行なった。しおれ程度は、全くしおれ症状の認められないものを0、葉のみがしおれているものを1、株全体がしおれているものを2とした。試験の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】表1の結果から明らかなように、水を散布した対照区、A区においては、著しいしおれ症状が確認されたが、本発明品であるTC1区においては葉のしおれ症状が軽く、およそ3分の1の程度にとどまった。トレハロースと水溶性カルシウムからなる組成物が耐乾燥性を付与した結果である。
【0051】(試験2)試験1と同様に温室内で栽培したキュウリの苗を各区100株準備し、試験区の構成としては水道水を散布処理する対照区、TC1を処理するTC1区、A1を処理するA1区とした。灌水量は通常の水分管理をし、試験開始10日後から温室外(雨よけ栽培、最高気温15℃、最低気温7℃)にて栽培を行なった。各処理液TC1、A1は水で500体積倍に希釈して試験に供した。処理は試験開始時に1回目、その後3日おきに葉面散布にて行なった。処理開始から2週間経過したところで、地上部茎葉のしおれ程度を3段階にて評価し、その平均を算出することで耐乾燥性の評価を行なった。しおれ程度は、全くしおれ症状の認められないものを0、葉のみがしおれているものを1、株全体がしおれているものを2とした。試験の結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】表2の結果から明らかなように、水を散布した対照区、A区においては、著しいしおれ症状が確認されたが、本発明品であるTC1区においては葉のしおれ症状が軽く、葉の黄化も少なかった。トレハロースと水溶性カルシウムからなる組成物が耐寒性を付与した結果である。
【0054】(試験3)茨城県鉾田町のトマト生産者圃場にてトマトの典型的なカルシウム欠乏症状である尻腐れ症の発生に及ぼす本発明品の効果試験を行なった。供試品種はハウス桃太郎を用い、1区あたり50株の試験区を設けた。育苗期1.5葉期から7日おきに対照区は水道水、TC1区はTC1の500体積倍希釈液、TC2区はTC2の500体積倍希釈液、TC3区はTC3の500体積倍希釈液、A1区はA1の500体積倍希釈液を葉面に散布し、本圃定植後も引き続き処理を行なった。生育ステージ全般で土壌水分量はやや控えめとし、1〜5段目果房までの収穫物中に何%の割合で尻腐れ症状が確認できたかを調査した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】表3から明らかなように、比較的乾燥条件下で発生の多いトマトの尻腐れ症(カルシウム欠乏症)が本発明品の散布で抑えられる。比較例であるA1の散布ではほとんど効果を示さなかったことから、水溶性カルシウム単独での散布はほとんど効果がないことが明らかとなった。
【0057】(試験4)宮城県遠田郡田尻町の圃場にて、コマツナの芯止まりに及ぼす本発明品の効果試験を行なった。試験区は1区当り30m2 とした。本葉展開時より5日おきに対照区は水道水、TC1区はTC1の500体積倍希釈液、TC2区はTC2の500体積倍希釈液、TC3区はTC3の500体積倍希釈液、A1区はA1の500体積倍希釈液を葉面に散布し、収穫時に何%の割合で芯止まり症状が確認できたかを調査した。結果を表4に示す。
【0058】
【表4】

【0059】表4から明らかなように、低温日照不足条件下で発生の多いコマツナ芯止まり症が本発明品の散布で抑えられることがあきらかとなった。比較例であるA1の散布ではほとんど効果を示さなかったことから、水溶性カルシウム単独での散布はほとんど効果を示さないことが明らかとなった。
【0060】
【発明の効果】本発明の植物保護用組成物は、植物、微生物、昆虫、きのこ類などに広く存在し、生物の乾燥耐性、耐冷性に大きく関わっているとされるトレハロースと、その誘導体であるトレハロース−6−リン酸、トレハロースと生態内での挙動、物性が近似している非還元性三糖セラギノースから選択される少なくとも一種と、植物の組織の軟化、壊死の防止物質である水溶性カルシウムを含有する組成物であり、植物に適用することにより植物の耐乾燥性、耐寒性が顕著に向上する。
【0061】本発明の植物保護用組成物を10,000体積倍を上限として水に希釈して植物の茎葉および/または果実に散布することにより、植物の耐乾燥性、耐寒性が顕著に向上するとともに、特に作物中のカルシウム含有量を高め収穫物の収量および商品価値を向上できる。
【出願人】 【識別番号】596013420
【氏名又は名称】河合 博
【出願日】 平成12年1月20日(2000.1.20)
【代理人】 【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
【公開番号】 特開2002−87907(P2002−87907A)
【公開日】 平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願番号】 特願2000−12131(P2000−12131)