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【発明の名称】 遺体の保存処置方法
【発明者】 【氏名】岩崎 全陽

【氏名】三浦 洋子

【要約】 【課題】簡便な操作によって遺体の腐敗を抑制し、異臭の発生などを防止でき、遺体の外観を美しく保つことができるともに、血液などの体液の漏出を停止し作業者への感染事故を防止することのできる遺体の保存処置方法を提供する。

【解決手段】遺体の顔面、頸部および耳部を、グリシン系界面活性剤を含ませた殺菌消臭剤吸収体で拭き清める拭き清め工程と、さらに二酸化塩素を含ませた前記殺菌消臭剤吸収体で、前記遺体における体液漏出部を拭く体液漏出部拭き清め工程と、前記遺体の頭下および腹上に、二酸化塩素を含む二酸化塩素吸収体を設置し、前記遺体を納棺する納棺工程と、二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素ガス発生剤を、棺の中に配置し、二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素ガス発生工程とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 遺体の顔面、頸部および耳部を、グリシン系界面活性剤を含ませた殺菌消臭剤吸収体で拭き清める拭き清め工程と、さらに二酸化塩素を含ませた前記殺菌消臭剤吸収体で、前記遺体における体液漏出部を拭く体液漏出部拭き清め工程と、前記遺体の頭下および腹上に、二酸化塩素を含む二酸化塩素吸収体を設置し、前記遺体を納棺する納棺工程と、二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素ガス発生剤を、棺の中に配置し、二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素ガス発生工程とを備えたことを特徴とする遺体の保存処置方法。
【請求項2】 前記二酸化塩素吸収体は、グリシン系界面活性剤を含んでいることを特徴とする請求項1記載の遺体の保存処置方法。
【請求項3】 納棺された前記遺体の下に吸水性シートを敷設する吸水性シート敷設工程を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の遺体の保存処置方法。
【請求項4】 前記殺菌消臭剤吸収体、前記二酸化塩素吸収体および前記二酸化塩素ガス発生剤のうち少なくとも1つに、植物抽出成分を0.05重量%〜20重量%含ませたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遺体の保存処置方法。
【請求項5】 グリシン系界面活性剤および二酸化塩素を含んだ遺体保存処置用吸収体。
【請求項6】 前記遺体保存処置用吸収体は、植物抽出成分を0.05重量%〜20重量%含んでいることを特徴とする請求項5記載の遺体保存処置用吸収体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遺体を埋葬または火葬するまでの間の腐敗を抑制し、消臭し、外観を美しく保つことができるとともに、作業者への感染事故を防止することのできる遺体の保存処置方法に関する。
【0002】
【従来の技術】臨終後の遺体は大脳や内臓から分解が始まり、外観が損なわれたり、体液などの漏出によって異臭が発生する。そこで従来より、納棺した遺体の周囲にドライアイスを配置し、遺体を冷却することで腐敗を抑制する方法が広く採用されている。
【0003】しかしながら、ドライアイスによる冷却は遺体表面にとどまり、遺体内部の分解腐敗を十分抑制することが困難であるとともに、ドライアイスが当たった部分が急冷することで遺体が黒ずみやすいという問題点を有している。また、ドライアイスの保管施設不足や供給不足のため、入手が困難な場合があり、供給が遅れることで臨終からドライアイス処理までの時間が長引くと、遺体に血斑が生じやすく、ドライアイス処理を行っても一端発生した血斑は消えないという問題点を有している。さらに、ドライアイスが昇華することで発生する二酸化炭素ガスは、地球温暖化現象を引き起こすガスであることが知られおり、環境へ与える影響が大きいという問題点を有している。
【0004】そこで近年、酸化力が強い二酸化塩素をドライアイスのかわりに使用する遺体の保存処置方法が行われている。この二酸化塩素は、遺体の血斑の原因となる赤血球中のヘモグロビンに配位して、赤色から暗紫色を呈する発色団を形成する2価の鉄原子を3価に酸化することで無色化し、血斑を消失させ、かつ雑菌を死滅させることができる。
【0005】二酸化塩素を使用した遺体の保存処置方法としては、特開昭59−186901号公報に、「遺体表面を安定化二酸化塩素で塗布乃至蒲団、シーツ、枕などに含浸して包被する遺体保存方法」が開示されている。また、特開昭60−42301号公報に、「安定化二酸化塩素を遺体表面に塗布乃至包被し、又、遺体内部に注入する遺体保存方法」が開示されている。また、特開昭60−148506号公報に、「二酸化塩素のアルカリ性水溶液を含浸した保水性マットを、一面が液体および気体の透過性大の薄層、他面が液体および気体の透過性小の薄層の袋体中に封入した祭礼用化粧布とそれを用いた遺体保存方法」が開示されている。また、特開平7−265367号公報に、「安定化二酸化塩素を含む吸水性樹脂粉末である遺体の体液封止剤とそれを用いた遺体保存方法」が開示されている。また、実開昭62−12327号公報に、「経典型に成形した箱体に二酸化塩素を粉状化して袋詰めした防腐防臭剤と二酸化塩素水溶液を布に含ませた清浄布とを組み合わせて収納した遺体損傷防止剤セットとそれを用いた遺体保存方法」が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の遺体の保存処置方法は、以下に述べる問題点を有している。
(a)二酸化塩素溶液を直接遺体の皮膚に塗布する場合は、カルキ様の刺激臭が強いため作業性に欠けるとともに、酸化漂白作用が強力すぎるため不自然な程に皮膚が白くなり、白蝋化を起こし遺体を損傷するという問題点を有する。
(b)二酸化塩素溶液を塗布せずに二酸化塩素ガスを発生させるだけの場合は、血斑を消失させるまでに長時間を要するという問題点を有する。
(c)上記従来の方法では、遺体の顔面や頸部を主とする部分のシワやむくみを消すことができないという問題点を有する。
(d)遺体に傷口や手術痕がある場合は、臨終後もその部位から血液や他の体液が漏出してくる場合があり、著しく外観を損ねるとともに、作業者への感染事故のおそれがあるという問題点を有する。
(e)内臓の腐敗を防止するために注射器で二酸化塩素溶液を注入する場合には、操作に熟練を要するとともに、誤って注射針を手や指などに刺し、傷を生じたり、ウイルス性の疾病に感染する事故の可能性があるという問題点を有する。また、処理後の注射器や注射針の廃棄も厳重な注意が必要であるという問題点を有する。
(f)化粧布を遺体に被せる場合には、該化粧布を被せた部分しか血斑を消す効果が見られないという問題点を有する。
(g)耳孔、鼻孔、咽喉などからの体液漏出を防止するために、二酸化塩素を含む吸水性樹脂を体液漏出部に詰め込む場合には、作業に熟練を要するとともに、吸水性樹脂が体液を吸収すると膨潤し、著しく体積が増大するため、顔面の様相が変わりやすく外観が著しく損なわれるという問題点を有する。
【0007】本発明の目的は、上記従来の課題を解決することであり、簡便な操作によって遺体の腐敗を抑制し、異臭の発生などを防止でき、遺体の外観を美しく保つことができるともに、血液などの体液の漏出を停止し、作業者への感染事故を防止することのできる遺体の保存処置方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、遺体の顔面、頸部および耳部を、グリシン系界面活性剤を含ませた殺菌消臭剤吸収体で拭き清める拭き清め工程と、さらに二酸化塩素を含ませた前記殺菌消臭剤吸収体で、前記遺体における体液漏出部を拭く体液漏出部拭き清め工程と前記遺体の頭下および腹上に、二酸化塩素を含む二酸化塩素吸収体を設置し、前記遺体を納棺する納棺工程と、二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素ガス発生剤を、棺の中に配置し、二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素ガス発生工程とを備えたことを特徴とする遺体の保存処置方法である。
【0009】本発明に従えば、簡単な操作によって遺体の腐敗、異臭の発生などを防止でき、シワやむくみが取れ、血斑を消して外観を美しく保つことができるともに、血液などの体液の漏出を防止し、作業者への感染事故を防止することができる。
【0010】また本発明は、前記二酸化塩素吸収体は、グリシン系界面活性剤を含んでいることを特徴とする。
【0011】本発明に従えば、グリシン系界面活性剤を含んでいるので、このグリシン系界面活性剤に二酸化塩素が溶解し、グリシン系界面活性剤の皮膚への浸透と相まって、二酸化塩素の吸収性が増大する。したがって、さらに遺体の腐敗、異臭の発生などを効果的に抑制することができる。
【0012】また本発明は、納棺された前記遺体の下に吸水性シートを敷設する吸水性シート敷設工程を備えたことを特徴とする。
【0013】本発明に従えば、棺の外へ、体液、殺菌消臭剤などが染み出さない。また本発明は、前記殺菌消臭剤吸収体、前記二酸化塩素吸収体および前記二酸化塩素ガス発生剤のうち少なくとも1つに、植物抽出成分を0.05重量%〜20重量%含ませたことを特徴とする。
【0014】本発明に従えば、植物抽出成分を含むので、二酸化塩素のカルキ様の匂いを消すことができる。
【0015】また本発明は、グリシン系界面活性剤および二酸化塩素を含んだ遺体保存処置用吸収体である。
【0016】本発明に従えば、グリシン系界面活性剤および二酸化塩素の両方を含んでいる吸収体であるので、該吸収体で遺体を拭き清めれば、効果的にシワやむくみを取ることができ、血斑を消して外観を美しく保つことができるともに、血液などの体液の漏出を防止できる。
【0017】また本発明は、前記遺体保存処置用吸収体は、植物抽出成分を0.05重量%〜20重量%含んでいることを特徴とする。
【0018】本発明に従えば、前記遺体保存処置用吸収体は、植物抽出成分を含むので、二酸化塩素のカルキ様の匂いを消すことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の遺体の保存処置方法の工程図である。また、図2は、遺体3が納められた棺4の平面図である。
【0020】まず、工程a1において、遺体3の顔面、頸部および耳部を、グリシン系界面活性剤を含む殺菌消臭剤吸収体で拭き清める。特に、目、鼻、口、シワ、およびむくみの部分を重点的に拭き清めることが好ましい。
【0021】この工程a1により、殺菌消臭剤吸収体で顔面、頸部および耳部を拭き清めるため、皮膚表面の脂肪分、水分、垢などの老廃物を除去することができる。したがって、皮膚が緊張し、しわが伸びて黄疸、むくみなどを取ることができる。また、前記老廃物がきれいに除去されるため、後述する工程a4における二酸化塩素ガスが遺体3内に吸収されやすくなる。したがって、二酸化塩素ガスの酸化力により皮膚中のタンパク質を収れんさせることができる。よって、皮膚の緊張を長時間にわたって維持することができ、しわが十分に伸びる。さらに、工程a1で用いる殺菌消臭剤吸収体は、二酸化塩素を含まないので、作業中の刺激臭がなく、作業者に不快感を与えない。
【0022】次に、工程a2において、さらに二酸化塩素を含ませた前記殺菌消臭剤吸収体で、前記遺体3における体液漏出部を拭き清める。
【0023】この工程a2により、遺体3の傷口などからの血液、肺水、腹水などの体液を安全に取り除くことができるとともに、前記殺菌消臭剤吸収体に含ませた二酸化塩素がガスとなり、体液漏出部に作用し、体液や傷口などを凝固させ、体液の漏出を停止することができる。体液、特に血液の漏出が止まりにくい場合でも二酸化塩素を含む殺菌消臭剤吸収体で体液漏出部を拭くことにより、血小板、フィブリンなどのタンパク質を強力に凝固させ漏出を停止することができる。
【0024】次に、工程a3において、図2に示すように、前記遺体3の頭下および腹上に、二酸化塩素を含む二酸化塩素吸収体1を設置し、前記遺体3を棺4に納める。
【0025】この工程a3により、遺体3の頭下と腹上に二酸化塩素吸収体1を配置しているため、分解しやすい脳および内臓に二酸化塩素のガスが効率よく吸収され、タンパク質の凝固作用と殺菌作用によって分解を抑制することができ、口部、鼻孔、耳孔などからの液体の漏出も抑制することができる。
【0026】また、前記二酸化塩素吸収体1にグリシン系界面活性剤をさらに含ませれば、グリシン系界面活性剤に二酸化塩素が溶解し、グリシン系界面活性剤の皮膚への浸透と相まって二酸化塩素の吸収が増大する。したがって、脳および内臓の腐敗防止、消臭、血斑の消失などをより促進することができる。このようなグリシン系界面活性剤と二酸化塩素との併用により、癌で死亡した場合の遺体に特に上記効果を発揮、すなわち、脳および内臓の分解を抑制することができる。
【0027】また工程a3において、前記遺体3を棺4に納めた後に、前記遺体3の頭下および腹上に、二酸化塩素を含む二酸化塩素吸収体1を設置してもよい。
【0028】次に、工程a4において、図2に示すように、二酸化塩素を発生させる二酸化塩素ガス発生剤2を、棺4中の遺体3の周囲に配置し、二酸化塩素ガスを発生させる。
【0029】この工程a4により、二酸化塩素ガスが徐々に棺4中に充満し、遺体3の外部の異臭成分、すなわちタンパク質や漏出した体液が分解することで発生するメルカプタン、硫化水素、アミンなどの異臭成分を酸化するため、消臭効果を向上させることができる。また、空中落下菌も速やかに死滅するため、遺体3の腐敗の進行を抑制することができるとともに、さらに、二酸化塩素ガスが棺4の外に揮散しにくいため、上記効果を長時間持続させることができる。
【0030】また、ガス状の二酸化塩素が遺体3の皮膚から吸収されることにより、赤血球中の発色団を形成する2価の鉄原子を3価に酸化することができる。そのため、遺体3の顔面、頸部、および耳部などに生じた血斑を消失させることができるとともに、直接遺体3の皮膚には二酸化塩素溶液を接触させないため、不自然に遺体3が白くなったり白蝋化するのを防止できる。
【0031】また本発明の遺体の保存処置方法は、グリシン系界面活性剤と二酸化塩素とを併用した保存処置方法なので、特に癌で死亡した場合の遺体により効果がある。また本発明の遺体の保存処置方法を、終息後10時間以内の遺体に行えば、終息後10時間以後に行った遺体と比べて、大幅に上記効果を得ることができる。
【0032】前記殺菌消臭剤吸収体に含ませる殺菌消臭剤としては、グリシン系界面活性剤を用いることが好ましい。このグリシン系界面活性剤は、毒性が非常に低いため、作業者の負担を軽減することができる。
【0033】その他の殺菌消臭剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤、ベタイン型、アラニン型、スルホベタイン型の両性界面活性剤などが挙げられる。
【0034】また、前記殺菌消臭剤中に、ポリオキシエチレン(C12〜C22アルキル)エーテル、ポリオキシエチレン(C5〜C15アルキルフェニル)エーテルなどのノニオン性界面活性剤を含ませてもよい。ノニオン性界面活性剤をさらに含ませることで、遺体3の顔面を美しくすることができるとともに、殺菌性をさらに向上させることができる。
【0035】また、前記殺菌消臭剤が、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤である場合には、それら界面活性剤は優れた洗浄力を有するため、遺体の汚れや皮脂、余分な水分を強力に除去することができるともに、殺菌性も優れているため作業者への感染事故なども防止することができる。特に両性界面活性剤は毒性が低いことに加え、溶液のpHなどに影響されず、タンパク質が共存する条件でも優れた殺菌性を示すため好ましく用いられる。
【0036】前記両性界面活性剤としては、N,N,N−トリアルキル−N−(C10〜C20アルキレン)アンモニオカルボキシベタイン、N,N−ジアルキル−N−βヒドロキシエチル−N−(C8〜C20アルキレン)アンモニオカルボキシベタインなどのベタイン型両性界面活性剤、N−(C10〜C20アルキル)アミノエチルグリシン、N,N−ジ(C6〜C12アルキルアミノエチル)グリシン、N−(C6〜C12アルキルアミノエチル)−N−アルキルジ(アミノエチル)グリシン、N−(C10〜C20アルキル)オキシメチル−N,N−ジアルキルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤、N−(C8〜C14アルキル)アラニンなどのアラニン型両性界面活性剤、N−(C8〜C14アルキル)スルホタウリン、(C12〜C20アルキル)アミノメチルベンゼンスルホン酸などのスルホベタイン型両性界面活性剤が用いられる。
【0037】前記カチオン性界面活性剤としては、適宜置換されてもよいC8〜C20アルキル基、C8〜C20アルキルアミドエチル基、C4〜C12アルキル基またはC6〜C16アルコキシ基で置換されてもよいフェノキシエチル基、C8〜C16アルキルカルボニル基、C6〜C20アルキルアミノエチル基、C6〜C20アルキルチオエチル基、C8〜C20アルキルベンジル基、ベンジル基のうちいずれか1つ以上を有する四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などが好ましく用いられる。
【0038】また、前記殺菌消臭剤である前記両性界面活性剤が、グリシン型またはアラニン型両性界面活性剤である場合は、グリシン型またはアラニン型の両性界面活性剤の官能基であるアミノ基、カルボキシル基がそれぞれ二酸化塩素によって酸化されN−オキシド、過酸を生じる。N−オキシド、過酸は、いずれもタンパク質との反応性が高いため、筋肉中のミオグロビンなどと反応し美しい肌色を呈することができるとともに、口唇を鮮やかな赤色に呈色させることができるため遺体の顔面、頸部、耳部の色調を整え活き活きとさせることができる。
【0039】前記各吸収体の材質としては、木綿、麻などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの合成繊維を含む織布および不織布、パルプ、紙、ウレタンスポンジ、セルローススポンジ、アクリル高分子架橋材など高分子吸収材を含有するシート、活性炭、シリカゲル、硫酸カルシウムなどの無機粉末などが使用される。
【0040】前記二酸化塩素ガス発生剤は、デンプン、寒天、カラギーナンなどの多糖類のゲル、高分子吸収材、ケイ酸ナトリウムゲルなどに二酸化塩素を吸収させたゼリー状のもの、粘土、活性炭、シリカゲル、硫酸カルシウムなどに二酸化塩素を吸着させた粉末や顆粒状のものなどが挙げられる。
【0041】前記各吸収体に二酸化塩素を含ませる場合は、二酸化塩素溶液を噴霧するか滴下して使用することができ、ゼリー状のものは練り混むか塗布し、粉末、顆粒状のものは載せるか包んで使用することができる。二酸化塩素ガス発生剤として二酸化炭素溶液を使用する場合は、開口容器などに入れて遺体の横に置くか噴霧、滴下することができ、ゼリー状や粉末、顆粒状のものを使用する場合は、棺内に適宜分散させて塗布するか、布などに撒いて使用することができる。
【0042】二酸化塩素溶液を使用する場合の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、水などが使用される。ここで、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムなどの弱塩基性の塩類、塩化シアヌルなどを混合すると安定性が増し、二酸化塩素の急激な気化を抑制することができる。
【0043】前記二酸化塩素溶液の濃度としては、100〜200,000ppm、好ましくは1,000〜50,000ppmのものが用いられる。ここで、二酸化塩素の濃度が200,000ppmよりも高くなると、刺激臭が強くなりすぎ、作業者に不快感を与えるとともに、急激な二酸化塩素ガスの発生が見られることで、皮膚が白くなる傾向が生じるため好ましくない。また、100ppmよりも低くなると、所定の効果、すなわち、遺体を美しい肌色を呈色させるとともに、口唇を鮮やかな赤色に呈色させ、遺体の顔面、頸部、耳部の色調を整え活き活きとさせるなどといった効果が得られにくくなる傾向が生じるため好ましくない。
【0044】また、本発明の遺体の保存処置方法は、好ましくは、前記遺体の下に吸水性シートを敷設する吸水性シート敷設工程を含む。この工程を含むことにより、遺体から体液が漏出したり、殺菌消臭剤などが流れ落ちた場合でも、吸水性シートがそれらを吸収するため、周囲を汚染しないとともに、異臭の発生を抑制することができる。ここで、吸水性シートには、パルプや脱脂綿などの吸水材やアクリル系高分子架橋体などの高分子吸収材などが使用される。
【0045】また好ましくは、前記殺菌消臭剤吸収体、前記二酸化塩素吸収体および二酸化塩素ガス発生剤のうち少なくとも1つに、植物抽出成分を0.05重量%〜20重量%含ませる。植物抽出成分の殺菌効果により防腐、消臭効果をさらに高めることができとともに、芳香を付加することで二酸化塩素のカルキ様の臭気を消すことができる。
【0046】前記植物抽出成分としては、椿油、レモン油、レモングラス油、オレンジ油、ガムテレピン、セスキテルピン、ミルセンなどの精油成分、杉、ヒバ、ヒノキ、松、桑、桜、熊笹、桃、ヨモギなどの抽出液などが使用される。ここで、植物抽出成分を0.05重量%以上とするのは、0.05重量%より少なくなると、殺菌効果や消臭効果が得られがたくなるからである。また、20重量%以下とするのは、20重量%より多くなると、経済的でなくなるとともに、香気が過剰になりかえって作業者などに不快感を与えることで作業性が低下し、また雰囲気を損なうからである。
【0047】本発明の遺体保存処置用吸収体は、グリシン系界面活性剤および二酸化塩素の両方を含んで構成される。したがって、該遺体保存処置用吸収体を用いて遺体を拭き清めれば、効果的にシワやむくみを取ることができ、血斑を消して外観を美しく保つことができるともに、血液などの体液の漏出を防止できる。また、グリシン系界面活性剤と二酸化塩素とを併用するので、特に癌で死亡した場合の遺体により効果がある。
【0048】また本発明の遺体保存処置用吸収体は、植物抽出成分を0.05重量%〜20重量%含むことが好ましい。該植物抽出成分を含めば、二酸化塩素のカルキ様の匂いを消すことができ、該遺体保存処置用吸収体を用いて遺体を拭き清めた場合でも、作業者は不快な思いしなくて済み、作業性が向上する。
【0049】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する。まず、準備工程として高分子吸水樹脂を含有するマットを遺体の下に敷設した。
【0050】次に、拭き清め工程として0.005〜0.5%、好ましくは0.01〜0.1%のジ(オクチルアミノエチル)グリシン(商品名:オバノール明治、100倍希釈)を10〜20ml含浸させたガーゼ、不織布、布や脱脂綿などの布帛で遺体の顔面、耳、首を数回ずつ、特に目、鼻、口と、シワやむくみが見られる部分は重点的に拭き清めた。
【0051】次に、体液漏出部拭き清め工程として、0.005〜0.5%、好ましくは0.01〜0.1%のジ(オクチルアミノエチル)グリシン(商品名:オバノール明治、100倍希釈)を10〜20ml含浸させたガーゼ、不織布、布や脱脂綿などの布帛に、1,000〜200,000ppm、好ましくは2,000〜8,000ppmの濃度の二酸化塩素溶液をスプレーで10〜20ml噴霧して含ませ、体液が漏出している部分を拭き清めた。
【0052】次に、納棺工程として、まず遺体を納棺した。次いで、0.005〜0.5%、好ましくは0.01〜0.1%のジ(オクチルアミノエチル)グリシン(商品名:オバノール明治、100倍希釈)を10〜20ml含浸させたガーゼ、不織布、布や脱脂綿などの布帛に、1,000〜200,000ppm、好ましくは2,000〜8,000ppmの濃度の二酸化塩素溶液をスプレーで10〜20ml噴霧して含ませ、遺体の頭下および腹上に設置した。
【0053】次に、二酸化塩素ガス発生工程として、1,000〜200,000ppm、好ましくは2,000〜8,000ppmの濃度の二酸化塩素溶液を10〜30ml入れたプラスチック製の開口容器を、棺の中に配置した後、布団で覆った。
【0054】以上の工程を経ることで、遺体の顔面、頸部のしわが速やかに伸びた。また、顔面、頸部などに生じたむくみや血斑が消失し、自然な肌色に戻った。
【0055】また、注射などによって二酸化塩素溶液を遺体に注入しなくても、脳や内臓の腐敗を抑制することができ、耳孔、鼻、口腔からの液体の漏出も見られず、異臭の発生もなかった。
【0056】さらに、特に、顔面に限らず、出血部位がある場合はその部位をジ(オクチルアミノエチル)グリシンを含浸した不織布で拭き清めることによって血痕を取り除くことができ、二酸化塩素ガスによってその後の出血も停止できることがわかった。
【0057】またさらに、ドライアイスを使用しないため、遺体の黒ずみは見られず遺体の外観を美しく保つことができるとともに、冷却されていないため、火葬に付した場合の所要時間が、ドライアイスを使用した場合の1時間半程度に比べ、30分も短い1時間に短縮され、燃料の消費量も大幅に削減することができた。
【0058】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、(I)グリシン系界面活性剤である殺菌消臭剤を含む吸収体で顔面、頸部、耳部を拭き清めるため、皮膚表面の余分な脂肪分や水分、垢などの老廃物を除去することができ、皮膚が緊張し、シワが伸びてむくみを取ることができる。また、さらに皮膚に吸収される二酸化塩素ガスの酸化力によって皮膚のタンパク質を凝固させ、収れんさせることができるため遺体の外観を美しく保つことができる。
【0059】(II)遺体の傷口などからの体液を安全に取り除くことができるため安全性や作業性に優れるとともに、血小板やフィブリンなどに二酸化塩素が直接作用して凝固させ血液の漏出が止まるため、遺体の外観を美しく保つことができる。
【0060】(III)頭下と腹上に二酸化塩素吸収体を設置しているため、特に分解しやすい脳や内臓部分に二酸化塩素が効率よく吸収され、タンパク質の凝固作用と殺菌作用によってそれらの分解を抑制することができるとともに、口部、鼻孔、耳孔からの液体漏出を抑制することができるため、周囲の汚染や作業者への感染事故を防止でき、安全性や衛生性に優れる。
【0061】(IV)二酸化塩素ガス発生剤を、棺の中に配置し二酸化塩素ガスを発生させるため、体内のタンパク質や漏出した体液が分解することで発生するメルカプタン、硫化水素、アミンなどの異臭成分を酸化し消臭することができる。また、空中落下菌も速やかに死滅するため、防腐効果を向上させることができる。また、二酸化塩素ガスが揮散しにくいため、上記効力を長時間持続させることができる。また、二酸化塩素ガスが遺体に吸収されることで、顔面、頸部、耳部などに生じた血斑を消失させることができるとともに、二酸化塩素溶液を皮膚に直接接触させないため、漂白作用が強くなりすぎず、遺体が不自然に白くなったり白蝋化するのを防止できる。
【0062】(V)簡単な作業により上記(I)〜(IV)の効果が得られるとともに、拭き清め工程に使用する殺菌消臭剤吸収体中には二酸化塩素を含有しないので、作業中の刺激臭がなく、作業者に不快感を与えないため、作業性に優れる。また、ドライアイスを用いないので、前記ドライアイスが昇華することで発生する二酸化炭素ガスの排出量を抑制することができ、地球温暖化の進行を抑制することができる。
【0063】また本発明によれば、前記二酸化塩素吸収体に、殺菌消臭剤であるグリシン系界面活性剤が含まれているので、殺菌消臭剤に二酸化塩素が溶解し、殺菌消臭剤の皮膚への浸透性と相まって二酸化塩素の皮膚への吸収性が増大するため、腐敗防止性や消臭性、血斑の消失性などを強化することができる。また、グリシン系界面活性剤と二酸化塩素との併用により、癌で死亡した場合の遺体の脳および内臓の分解を抑制することができる。
【0064】また本発明によれば、遺体から体液が漏出したり、殺菌消臭剤が流れ落ちたりする場合でも吸水性シートがそれらを吸収するため、周囲の汚染を防止できるとともに、異臭の発生を抑制することができるので衛生性をさらに高めることができる。
【0065】また本発明によれば、植物抽出成分を含むので、消臭力をさらに高めることができ、二酸化塩素のカルキ臭も消すことができる。また、種々の香気成分を選択し付加することにより、遺族の心情を満たすことができる。
【0066】また本発明によれば、グリシン系界面活性剤および二酸化塩素の両方を含んでいる吸収体であるので、効果的にシワやむくみを取ることができ、血斑を消して外観を美しく保つことができるともに、血液などの体液の漏出を防止できる。
【0067】また本発明によれば、前記遺体保存処置用吸収体は、植物抽出成分を0.05重量%〜20重量%含むので、二酸化塩素のカルキ様の匂いを消すことができ、作業者は不快な思いしなくて済み、作業性が向上する。
【出願人】 【識別番号】501294272
【氏名又は名称】有限会社環境基本計画
【出願日】 平成13年7月25日(2001.7.25)
【代理人】 【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎 (外3名)
【公開番号】 特開2002−87902(P2002−87902A)
【公開日】 平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願番号】 特願2001−224509(P2001−224509)