| 【発明の名称】 |
長時間用殺虫マット |
| 【発明者】 |
【氏名】勝田 純郎
【氏名】中山 幸治
【氏名】高橋 朋子
|
| 【要約】 |
【課題】電気蚊取マット方式に適用され、5日間以上の長期間にわたり安定した殺虫効力を持続し得る長時間用殺虫マットを提供する。
【解決手段】20℃における蒸気圧が4.0×10-6mmHg以上のピレスロイド系殺虫成分と揮散調整剤とを含浸させた、最大保持液濃度が0.56mg/mm3 の繊維質製マットであって、上記ピレスロイド系殺虫成分の揮散調整剤に対する重量比は3以下であり、かつ上記ピレスロイド系殺虫成分はマット1枚あたり50mg以上含浸され、上記マットの底面積の0.2〜0.6倍の面積を有しかつ加熱温度が70〜170℃の放熱板上に載置して使用され、5日間以上連続して殺虫効力を持続し得る長時間用殺虫マット。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 20℃における蒸気圧が4.0×10-6mmHg以上のピレスロイド系殺虫成分と揮散調整剤とを含浸させた、最大保持液濃度が0.56mg/mm3 の繊維質製マットであって、上記ピレスロイド系殺虫成分の揮散調整剤に対する重量比は3以下であり、かつ上記ピレスロイド系殺虫成分はマット1枚あたり50mg以上含浸され、上記マットの底面積の0.2〜0.6倍の面積を有しかつ加熱温度が70〜170℃の放熱板上に載置して使用され、5日間以上連続して殺虫効力を持続し得ることを特徴とする長時間用殺虫マット。 【請求項2】 ピレスロイド系殺虫成分がアレスリン、フラメトリン、プラレトリン及びテフラメトリンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の長時間用殺虫マット。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、殺虫成分を含有する長時間用殺虫マットに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来より殺虫等の目的で殺虫成分を加熱蒸散させる方法として、(1)蚊取線香、(2)電気蚊取マットなどが愛好され、近年、(3)液体蚊取、すなわち薬液中に吸液芯を浸漬し、芯上部を加熱して薬液を加熱蒸散させる方法も普及している。このうち、電気蚊取マットは、殺虫成分を含浸させた繊維質製マットを、加熱蒸散装置の該マットと略同形状の放熱板上に載置し、通電により加熱して殺虫成分を蒸散させるもので、放熱板の中心部の温度は140〜180℃の範囲に設定されている。電気蚊取マットは使いやすい製剤であるが、マットの底面全体が放熱板により加熱されるので、揮散調整剤を添加しても殺虫成分の揮散量は経時的に減少する。このため、通常1枚のマットには、1日毎にマットを取り替える設計で1日使用分のピレスロイド系殺虫成分しか配合されておらず、製剤の特性上、長時間用殺虫マットの開発は困難と考えられてきた。一方、液体蚊取でも、電気蚊取マットの場合と同じピレスロイド系殺虫成分が使用されるが、芯上部を間接加熱する構成のため発熱体の温度は電気蚊取マットに比べて若干低くなっている。この方式は1度薬液ボトルを装着するだけで30〜60日間効果が継続するので便利である反面、液漏れ等の危惧は避けられない。 【0003】電気蚊取マット方式の使いやすい長所を取り入れ、かつ長期間効果の持続する製剤の開発も試みられ、例えば特開平5−194103号公報や特開平6−192007号公報には、熱可塑性樹脂粉末と無機粉末及び/又は有機粉末からなる混合物を熱可塑性樹脂粉末の融点付近に加熱してなる加熱蒸散用薬剤含有体が開示され、熱伝導性のよい担体を用いることにより加熱温度を下げ得ることが記載されている。しかしながら、長期間にわたり安定した蒸散性能を得るのが難しく実用には至っていない。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、殺虫成分を含有する繊維質製マットを発熱体放熱板上に載置して該殺虫成分を蒸散させる電気蚊取マット方式において、従来の知見を覆し、5日間以上の長期間にわたり安定した殺虫効力を持続し得る長時間用殺虫マットを提供することを目的とする。 【0005】上記目的を達成するため、本発明者らは、繊維質製マットに含浸される殺虫成分の物理化学的性質、ならびにマットの面積と放熱板の面積との関係が蒸散性能に及ぼす影響を詳細に調べ、特定のマットと特定の放熱板を有する加熱蒸散装置を組み合わせることによって、5日間以上にわたり連続して殺虫効力を持続し得ることを発見した。 【0006】 【課題を解決するための手段】すなわち本発明の長時間用殺虫マットは、20℃における蒸気圧が4.0×10-6mmHg以上のピレスロイド系殺虫成分と揮散調整剤とを含浸させた、最大保持液濃度が0.56mg/mm3 の繊維質製マットであって、上記ピレスロイド系殺虫成分の揮散調整剤に対する重量比は3以下であり、かつ上記ピレスロイド系殺虫成分はマット1枚あたり50mg以上含浸され、上記マットの底面積の0.2〜0.6倍の面積を有しかつ加熱温度が70〜170℃の放熱板上に載置して使用され、5日間以上連続して殺虫効力を持続し得ることを特徴とする。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明の殺虫マットで用いられる殺虫成分は、安全性の高いピレスロイド系化合物で、20℃における蒸気圧が4.0×10-6mmHg以上であることを必須とする。蒸気圧が4.0×10-6mmHgより小さいと、特定の放熱板を有する加熱蒸散装置を組み合わせたとしても所望の効果が得られない。 【0008】好適な殺虫成分として、例えば、アレスリン、フラメトリン、プラレトリン、テフラメトリン(5−プロパルギル−2−フリルメチル2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート)、テラレスリン、エムペントリン、5−プロパルギル−2−メチル−3−フリルメチル2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、トランスフルスリン、フェンフルスリン等をあげることができ、用途や目的に応じて適宜選択することができる。なかでも、アレスリン、フラメトリン、プラレトリン、テフラメトリンが性能上好ましい。なお、化学構造上、不斉炭素や二重結合に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合は、それぞれの各々ならびに任意の混合物も前記殺虫成分に包含されるのはもちろんである。 【0009】本発明の殺虫マットでは、繊維質製マットに前記ピレスロイド系殺虫成分が1枚あたり50mg以上配合される。50mgより少ないと当然のことながら、長期間にわたり殺虫効力を発揮し得ない。なお、繊維質製マットに含浸させるにあたっては、通常、ピレスロイド系殺虫成分の外、必要に応じて殺虫成分の安定剤、揮散調整剤、溶剤、香料、色素等を添加した原液が用いられる。ただし、マットの最大保持液量には限度があるので、例えば、大きさが22×35mmで厚さが2.8mmのマットでは、原液量を1枚あたり1.2g以内に抑えるのが適当である。 【0010】殺虫成分の安定剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルハイドロキノン、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)〔ヨシノックス425〕があり、揮散調整剤としては、例えばピペロニルブトキサイド、N−(2−エチルヘキシル)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ(2,2,2)オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド〔サイネピリン500〕、ステアリン酸ブチル等があげられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。 【0011】また、本発明の殺虫マットでは、ピレスロイド系殺虫成分以外の有効成分、例えば殺ダニ剤、忌避剤、ヒノキチオール、リナロール、シトラール、ピネン、メントール、テルペンアルコール類等の空間用殺菌・抗菌剤、防黴剤等をピレスロイド系殺虫成分の蒸散性を損なわない範囲で添加し多目的組成物とすることもできる。 【0012】本発明の殺虫マットは、前記特定のマットと、このマットの底面積の0.2〜0.6倍の面積を有しかつ加熱温度が70〜170℃の放熱板を備えた加熱蒸散装置とを組み合わせたことに特徴を有する。殺虫成分のマットからの蒸散が一定して継続する機構は、次のように考えられる。まず通電すると、放熱板上に位置するマット部から殺虫成分が蒸散するが、放熱板の面積がマットの底面積の0.2〜0.6倍に狭められているので、初期蒸散量が従来品のように過剰に高すぎることがない。しかる後通電休止時に、生じた殺虫成分の濃度勾配が平衡になるように、非加熱部上に位置するマット部の殺虫成分が放熱板上マット部に移動する。こうして放熱板上マット部には常に所望の殺虫成分量が補給されるため、1日内の経時的な蒸散量は従来品と異なりほぼ一定で推移し、しかも5日以上の長期間にわたって蒸散の継続が可能となるのである。なお、マット底面における放熱板の占有部は、マット中央部であっても辺部であってもよいが、より安定した性能を得るうえでマット中央部の方が好ましい。 【0013】本発明の殺虫マットにおいて、特にピレスロイド系殺虫成分として、アレスリン、フラメトリン、プラレトリン、及びテフラメトリンから選ばれた1種または2種を用いることが好ましい。 【0014】また、本発明の殺虫マットにおいて、ピレスロイド系殺虫成分としてフラメトリンを選択し、マット1枚あたり150〜400mgを含有させ、かつ揮散調整剤としてピペロニルブトキサイド50〜300mgを配合すると共に、放熱板の面積をマットの底面積の0.5倍とすることが好ましい。 【0015】本発明によると、繊維質製マットに含浸される殺虫成分の物理化学的性質、ならびにマットの面積と放熱板の面積との関係を組み合わせることによって、5日間以上にわたり連続して殺虫効力を持続し得る長時間用殺虫マットが提供される。繊維質製マットの材質としては、パルプ、リンター、あるいはその混成品等、従来蚊取マットと同質のものをあげることができる。繊維質製マットの大きさ、形状についても任意に選択し得るが、従来規格のものが使いやすい。このマットには、20℃における蒸気圧が4.0×10-6mmHg以上のピレスロイド系殺虫成分が1枚あたり50mg以上含浸されるが、製造工程、用途や目的を考慮のうえ、殺虫成分に適合した安定剤や揮散調整剤、あるいは溶剤、香料、色素等を適宜添加してマット原液を調整するのが適当である。 【0016】また、前記マットの底面積の0.2〜0.6倍の面積を有しかつ加熱温度が70〜170℃の放熱板の加熱蒸散装置における位置関係、形状等についても任意に決定することができる。例えば、中央部に直径14〜18mm程度の円形もしくは幅8〜18mm程度の帯状放熱板を設け、その周囲にマットの周辺部を支える支柱を配してもよいし、この支柱の代わりに適当な載置板を、前記放熱板との間に間隙が存するように組み合わせても構わない。 【0017】 【実施例】以下に、実施例及び試験例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。 【0018】実施例1.大きさが22×35mmで厚みが2.8mmの繊維質製マットに、d−トランス−アレスリン(商品名:エスバイオスリン)を300mg、揮散調整剤としてのピペロニルブトキサイドを200mg、安定剤を10mg、微量の香料及び青色染料を配合したマット原液を含浸させた。直径16mmで発熱温度が150℃の円形放熱板を中央部に有し、その周囲4ケ所にマットを支える支柱を配した加熱蒸散装置に、前記マットを載置して使用したところ、1日・12時間あたりのd−トランス−アレスリンの蒸散量は約30mgであった。このマットは10日間にわたり安定した蒸散性能と殺虫効力を奏し、しかも液洩れ等の心配がなく使用性にも優れたものであった。 【0019】実施例2.大きさが22×35mmで厚みが2.8mmの繊維質製マットに、d−シス、トランス−フラメトリン(商品名:ピナミンD−f)を250mg、揮散調整剤としてのピペロニルブトキサイドを150mg、安定剤を20mgと微量の青色染料を含む灯油溶液を含浸させた。加熱蒸散装置としては、マット底面積の0.5倍の面積を有し帯状の放熱板を中央部に配設したものを用い、夜間12時間通電し昼間休止するサイクルを10日間継続した。その結果、d−シス、トランス−フラメトリンの蒸散量は毎日約20mgずつで経時的にも安定しており、10日間にわたり十分な蚊防除効果を示した。 【0020】試験例1.実施例1及び実施例2に準じて表1に示す殺虫マットを調製し、種々の加熱蒸散装置に装填して各種の性能評価試験を行った。 (1)蒸散性能:蒸散した殺虫成分を所定時間毎にシリカゲル充填カラムでトラップし、アセトンで殺虫成分を抽出後、ガズクロマトグラフで分析し、殺虫成分の時間あたりの蒸散量を求めた。表1に示す値は、それぞれの製剤の初期の値を1.00とした場合の相対比で示した。 (2)殺虫効力:所定時間毎に下記の連続通気法によりアカイエカに対する仰転効果を評価した。表1に示す値は、dl,d−シス、トランス−アレスリン40mgを含有する1日用マットの初期の値を1.00とした場合の相対有効比で示した。 【0021】(連続通気法)内径20cm、高さ43cmのプラスチック製円筒を2段に重ね、その上に16メッシュの金網で上下に仕切った内径及び高さが共に20cmの円筒(供試蚊を入れる場所)を載せ、更に内径20cm、高さ20cm円筒を載せる。この4段重ねの円筒を台に載せ、台の中央に加熱蒸散装置を置いて供試マット中の殺虫成分を蒸散させる。そして、上部円筒に供試蚊約20匹を放ち、時間の経過に伴う該蚊の仰転数を観察する。暴露20分後に全供試蚊を清潔なポリエチレン容器に移し、3%砂糖水を与え、保存24時間後に死虫率を調べる。 【0022】 【表1】
【0023】試験の結果、特定のマットと、特定の放熱板を有する加熱蒸散装置を組み合わせた本発明の長時間用殺虫マットは、5日間以上にわたり優れた蒸散性能と殺虫効力を示し、便利なうえ極めて実用的であった。これに対し、20℃における蒸気圧が4.0×10-6mmHgより小さいピレスロイド系殺虫成分を用いた場合(対照例1)、蒸気圧が4.0×10-6mHg以上であっても1枚あたりの殺虫成分量が50mgに満たない場合(対照例2)、放熱板の条件に適合しない場合(対照例3〜4)や特開平5−194103号開示の薬剤含有体を用いた場合(対照例5)のいずれも満足のいく性能が得られなかった。 【0024】 【発明の効果】本発明の長時間用殺虫マットは、液洩れ等の心配がなくクリーンな製剤で、5日間以上の長期間にわたり安定した殺虫効力を持続することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000207584 【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
|
| 【出願日】 |
平成9年9月4日(1997.9.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100068618 【弁理士】 【氏名又は名称】萼 経夫 (外3名)
|
| 【公開番号】 |
特開2002−37704(P2002−37704A) |
| 【公開日】 |
平成14年2月6日(2002.2.6) |
| 【出願番号】 |
特願2001−221887(P2001−221887) |
|