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【発明の名称】 抗菌組成物
【発明者】 【氏名】児玉 秀文

【要約】 【課題】低毒性で抗菌力が強く、スプレー液に適した抗菌組成物を提供する。

【解決手段】デヒドロ酢酸ナトリウム、チアベンダゾールは、いずれも低毒性の抗菌剤として公知の化合物である。本発明では、これに第3成分として公知のピリチオンナトリウムを組み合わせることにより、相乗的に広い抗菌スペクトラムと強い抗菌力を得ることができた。好適な抗菌組成物の組成比は、抗菌性と溶媒可溶性の観点から、溶媒100に対して外割で、0.5〜3%のデヒドロ酢酸ナトリウムと、0.2〜3%のピリチオンナトリウムと、0.1〜0.6%のチアベンダゾールとするのが望ましい。溶媒には、低級アルキルアルコールと低級脂肪族グリコールと水との混合系を用いる。この抗菌剤と溶媒の組合せにより、経時的に変色や沈殿析出がなく、ノズル詰まりのないスプレー液として好適に利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項 1】 デヒドロ酢酸またはデヒドロ酢酸ナトリウムと、ピリチオンナトリウムと、チアベンダゾールとを含むことを特徴とする抗菌組成物。
【請求項 2】 抗菌剤が、デヒドロ酢酸ナトリウムと、ピリチオンナトリウムと、チアベンダゾールとから主としてなり、溶媒が低級アルキルアルコールと、低級脂肪族グリコールと、水とから主としてなることを特徴とする抗菌組成物。
【請求項 3】 抗菌剤が、溶媒100に対して外割で、0.5%〜3%のデヒドロ酢酸ナトリウムと、0.2%〜3%のピリチオンナトリウムと、0.1〜0.6%のチアベンダゾールとから主としてなることを特徴とする請求項2記載の抗菌組成物。
【請求項 4】 溶媒が、20%〜60%の低級アルキルアルコールと、10〜30%の低級脂肪族グリコールと、20〜60%の水とからなる群より選ばれた少なくともひとつであることを特徴とする請求項2記載の抗菌組成物。
【請求項 5】 低級アルキルアルコールが、エチルアルコール及びイソプロピルアルコールからなる群から選ばれた少なくともひとつであることを特徴とする請求項4記載の抗菌組成物。
【請求項 6】 低級脂肪族グリコールが、プロピレングリコールであることを特徴とする請求項4記載の抗菌組成物。
【請求項 7】 デヒドロ酢酸またはデヒドロ酢酸ナトリウムの代わりに、安息香酸、安息香酸塩、プロピオン酸、プロピオン酸塩、ソルビン酸、及びソルビン酸塩からなる群から選ばれた少なくともひとつを用いることを特徴とする請求項1記載の抗菌組成物。
【請求項 8】 デヒドロ酢酸ナトリウムの代わりに、安息香酸塩、プロピオン酸塩、及びソルビン酸塩からなる群から選ばれた少なくともひとつを用いることを特徴とする請求項2記載の抗菌組成物。
【請求項 9】 ピリチオンナトリウムと、チアベンダゾールを含むことを特徴とする抗菌組成物。
【請求項10】 請求項9の抗菌剤を低級アルキルアルコールと低級脂肪族グリコールと水とから主としてなる溶媒に混合したことを特徴とする抗菌組成物。
【請求項11】 請求項2記載の抗菌組成物を主剤とする抗菌性スプレー液。
【請求項12】 請求項2記載の抗菌組成物を主剤とする靴用抗菌性スプレー液。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌組成物、特に抗菌性スプレー液に適した抗菌組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、低毒性の抗菌剤としてデヒドロ酢酸ナトリウムを主成分とするものは、広く知られている。しかし、その用途の多くは水性インク等で、強い抗菌力を要しないものである。これらの点を改善するため、デヒドロ酢酸ナトリウムにベンツイミダゾール系化合物を添加し、抗菌性の向上を試みた抗菌防黴組成物も知られている(特公昭61−36723号公報、特開昭55−87709号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、デヒドロ酢酸ナトリウムもチアベンダゾールのごときベンツイミダゾール系化合物も、各々食品添加物として許容される程度に低毒性である利点はあるが、その効力にはおのずから限界がある。またこれらをスプレー液として用いる場合、水難溶性であるチアベンダゾールの溶解が不可欠の要件となる。
【0004】本発明は、上記のごとき問題点を解決しかつ要件を満たしたもので、比較的安全で、強い抗菌性を有する抗菌組成物を提供することを目的としている。
【0005】また本発明は、かかる抗菌組成物を主剤とした経時的に安定なスプレー液を提供することを目的としている。
【0006】
【問題を解決するための手段】上記目的を達成した本発明の抗菌組成物は、抗菌剤がデヒドロ酢酸ナトリウム(DHA−S)と、ピリチオンナトリウムと、チアベンダゾール(TBZ)とから主としてなり、溶媒がアルコール系溶剤と水との混合系からなることを特徴としている。
【0007】また本発明の抗菌性スプレー液は、上記抗菌組成物を主剤としたことを特徴としており、特に靴内部の抗菌に適している。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で使用するデヒドロ酢酸ナトリウム、ピリチオンナトリウム、チアベンダゾールは、いずれも抗菌剤として公知の化合物である。しかし、この三者の組合せ、特にピリチオンナトリウムを第3成分として添加することにより、後述する実施例からも明らかなように、広い抗菌スペクトラムと強い抗菌力が得られる。その理由は必ずしも明らかではないが、デヒドロ酢酸ナトリウムは主に防カビ剤としての役割をし、ピリチオンナトリウムは細菌、酵母にも抗菌力を発揮する抗菌防カビ剤であり、チアベンダゾールは防カビ剤として機能する傍ら、前記両化合物の効力促進用の助剤的な効果も奏しているものと推定される。抗菌剤の組成比は用途に応じて適宜選択すればよく特に制限はないが、抗菌力と溶媒可溶性の観点から、溶媒100に対して外割で、0.5〜3%のデヒドロ酢酸ナトリウムと、0.2〜3%のピリチオンナトリウムと、0.1〜0.6%のチアベンダゾールとするのが望ましい。デヒドロ酢酸ナトリウムは、0.5%未満では抗菌性の持続力低下の問題があり、3%を越えると安定性に問題が生じる。またデヒドロ酢酸ナトリウムと同様な効果を示す化合物である安息香酸塩、プロピオン酸塩、ソルビン酸塩をデヒドロ酢酸ナトリウムの代わりに使用することもできるが、効力の面よりデヒドロ酢酸ナトリウムの使用が望ましい。ピリチオンナトリウムは、0.2%未満では抗菌スペクトラムの減少の問題があり、3%を越えると液への着色の問題が生じる。同様にチアベンダゾールも、0.1%未満では、抗菌スペクトラムの減少の問題があり、0.6%をこえると、溶解性の問題が生じる。総じてこれらの組成比では、下限を下回ると強い抗菌力は得られない。また上限を越えると、後述する溶媒との関係で溶媒不溶の分散系となり、特にスプレー液として使用する場合、スプレーノズルを詰まらせる等の問題が生じる。
【0009】本発明の溶媒には、低級アルキルアルコールと低級脂肪族グリコールと水との混合系を用いる。本発明は、基本的には水系溶媒であるが、低級アルキルアルコールを添加することにより、抗菌力の即効性を促し、低級脂肪族グリコールの添加により液剤の安定性を付与する。低級アルキルアルコールは、特に制限はないが、安全性の観点からエチルアルコール(エタノール)、イソプロピルアルコール(IPA)等の使用が好ましい。また、低級脂肪族グリコールとしては、プロピレングリコール(PG)、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールの使用が望ましい。中でもPGの使用が安定性の面より特に望ましい。溶媒の組成比は、基本的には特に制限はないが、スプレー液として使用する場合は重要であり、20〜60%の低級アルキルアルコールと、10〜30%の低級脂肪族グリコールと、20〜60%の水とするのが望ましい。低級アルキルアルコールが20%未満では、抗菌効力の即効性に問題があり、60%を上回るとアルコール臭や保存性の問題が生じる。低級脂肪族グリコールが10%未満では、安定性に問題があり、30%を越えるとスプレー後の乾燥性、指触感に問題が生じる。前記有機溶媒との相対比で、水が20%未満でも、60%を越える場合でも、抗菌剤の溶解性や液の安定性等に問題が生じる。
【0010】前記のごとき本発明の組成物は、抗菌性スプレー液に特に適している。スプレー液として要求される要件のうち、乾燥時間の短縮は低級アルキルアルコールで、保存時の安定性は低級脂肪族グリコールで解消されている。とりわけ靴の中は、トリコフィトン属(Trichophyton Sp.)やスポロスリクスシェンキー(Sporothrix schenckii)、カンディダ アルビカンス(Candida albicans)等の表在性真菌症の原因となる菌が生育しやすい危険な環境である。また、靴下などを媒体として家庭内の雑菌、カビなどが多数持ち込まれやすいきわめて不衛生な場所である。例えば、本発明のスプレー液を1回/日程度少量靴の中に散布すると、白癬菌などの増殖も抑制でき、結果的に水虫の治癒効力を発現する。更に、表在性真菌症の予防にも成る。また、黴や雑菌などが原因となる臭いも解消でき、好適な環境となる。
【0011】
【実施例1−2及び比較例1−5の抗菌液の組成】表1の組成の各実施例及び比較例抗菌液を、次の手順により調整した。まず、室温にてDHA−Sとピリチオンナトリウムを蒸留水に溶解させた。次いでTBZをIPA/エタノール/PG各量の有機溶媒に加え撹拌した。その後、両溶媒を混ぜ合わせ目的物を調整した。
【0012】
【表1】

【0013】
【試験例1】表1の実施例1〜2及びは比較例1〜2につき、ペーパーディスクを用いたハローテストを行った。ハローテストの手順はAmerican Association Textile Chemists Colorists(AATCC)のAntimicrobial Committee Report記載のAntimicrobial test and Procedureを参考とした。ペーパーディスクには東洋濾紙製の枝肉の抗菌物質検査用(直径10mm)を用い、滅菌シャーレには積水化学製の滅菌シャーレ90(浅型、直径90mm)を用いた。培地にはそれぞれの菌に適応するポテトデキストロース寒天(PDA)、サブロー寒天、オートミール寒天、Malts extract Ager、酵母用寒天(YM Ager)、標準寒天を用いた。ペーパーディスク上への抗菌液の塗布量は一律50μlとした。テスト結果を表2に示す。
【0014】
【表2】

【0015】表2から明らかなように、本発明の抗菌組成物は、抗菌剤組成の一つを除いた例に比して、各菌に対して幅広く、高い抗菌効果がある。
【0016】
【試験例2】表1の実施例1及び比較例3〜5につき、スプレー液としての評価テストを行った。各テストの結果を表3に示す。
【0017】
【表3】

【0018】表3から明らかなように、本発明の抗菌組成物は、溶媒組成の少なくとも一つを欠いた比較例に比して、沈殿の有無、ノズル詰まりの抑制、乾燥時間、噴霧性能等のスプレー液として必要な特性全般において良好な結果を示すものである。
【0019】
【実施例3−4及び比較例6−7の抗菌性エマルション塗料の組成】表4の組成の各実施例及び比較例抗菌性エマルション塗料を、次の手順により調整した。まず、室温にてDHA−Sとピリチオンナトリウムを蒸留水に溶解させた。次いで、TBZをIPA/エタノール/PGの有機溶媒に加え撹拌した。その後、両溶液とアクリル系樹脂約40%を含む水系エマルション塗料ベースを混ぜ合わせ目的物を調整した。
【0020】
【表4】

【0021】
【試験例3】表4の実施例3〜4及び比較例6〜7に関しても試験例1と同様に、ペーパーディスクを用いたハローテストを行った。培地にはPDA培地を用いた。結果を表5に示す。
【0022】
【表5】

【0023】表5から明らかなように、本発明の抗菌剤は、塗膜として残る樹脂中でも高い抗菌性を示すものである。実施例3は実施例4及び比較例6〜7に比して、スペクトラムが広く、且つ高いカビ抵抗性を示す。また、保存菌株だけでなく野生菌株に対しても高い抗菌性を示す。
【0024】
【発明の効果】本発明の抗菌組成物によれば、次記のごとき利点があり、抗菌防カビ性を必要とする多くの分野に適用できる。またスプレー液では、靴用としてだけでなく手軽な抗菌を求める分野に適応できる。
(1)低毒性で抗菌力が強い。
(2)抗菌スペクトラムがデヒドロ酢酸ナトリウム系としては格段広い。
(3)溶液が経時的に変色しない。
(4)抗菌剤の析出、沈殿がなく、スプレー液として優れている。
(5)塗膜(樹脂)中でも安定した抗菌性を示す。
【出願人】 【識別番号】500211807
【氏名又は名称】第一ビル管理株式会社
【出願日】 平成13年3月29日(2001.3.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−20207(P2002−20207A)
【公開日】 平成14年1月23日(2002.1.23)
【出願番号】 特願2001−136717(P2001−136717)